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○不要電波問題対策協議会の医用電気機器作業部会による「医用電気機器への電波の影響を防止するための携帯電話端末等の使用に関する指針」について

(平成九年三月二七日)

(総第一八号・薬機第四八号)

(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生省健康政策局総務・薬務局医療機器開発課長連名通知)

今般、不要電波問題対策協議会(事務局:郵政省)の医用電気機器作業部会により別添の「医用電気機器への電波の影響を防止するための携帯電話端末等の使用に関する指針」が策定されましたので、お知らせします。

(別添)

医用電気機器への電波の影響を防止するための携帯電話端末等の使用に関する指針

本指針は当協議会が平成七年度から平成八年度にかけて現在運用されている機器について実施した実験データに基づき作成されたものである。しかしながら、実験を行った医用電気機器は延べ七二七機種に上るものの、すべての医用電気機器を網羅しているわけではなく、また、機器の配置や状況等によっても影響が異なることから、この指針を活用するに当たっては、この点を十分考慮しておくことが必要である。

また、各医療現場等で実状に応じた対応を取っていただくことが望ましいとの判断から、本指針では出来る限り多くの情報を提供している。

さらに、当協議会で検討を行った以外にも公共業務用等の無線通信システムが使用されているが、それらが医用電気機器へ影響を及ぼすことを防止するためには、無線通信システムを運用する者が、運用方法等を考慮しつつ別途指針を定めることが望ましい。

Ⅰ 医療機関の屋内における無線設備の利用

一 携帯電話端末の使用

これまでに収集した国内の実験データ、海外での文献等を検討した結果、医療機関の屋内においては、携帯電話端末(注一)から発射される電波により、医用電気機器が誤動作する可能性があるため、次のとおり取り扱うことが望ましい。

(一) 手術室、集中治療室(ICU)及び冠状動脈疾患監視病室(CCU)等

携帯電話端末を持ち込まないこと。やむを得ず持ち込む場合は電源を切ること。

また、これらの部屋の周囲(隣接する上下階及び左右の部屋、廊下等)においても、携帯電話端末の電源を切ること。

〔理由〕 ①手術室、集中治療室、冠状動脈疾患監視病室等においては、人命に直接関わる医用電気機器が多数設備されているため。②携帯電話端末は電源を入れた状態では、通話中以外でも自動的に電波を発射するため。③携帯電話端末から発射される電波は、床、壁等を透過する可能性があるため。④医用電気機器を装着した患者が施設内部(隣接する部屋、廊下等)を移動する(又は移動している)可能性があるため。

(注一) 本項でいう携帯電話端末は、①八〇〇メガヘルツ帯アナログ携帯機(送信出力〇・六ワット以下)、②八〇〇メガヘルツ帯デジタル携帯機(送信出力〇・八ワット以下:バースト出力)、③一・五ギガヘルツ(一五〇〇メガヘルツ)帯デジタル携帯機(送信出力〇・八ワット以下:バースト出力)、④八〇〇メガヘルツ帯ショルダーホン(肩掛け型携帯電話端末:送信出力二~五ワット以下)のものをいう。

(二) 検査室、診察室、病室及び処置室等

(透析室、新生児室を含む。)

携帯電話端末の電源を切ること。(注二)

また、検査室、診察室、病室及び処置室等の周囲(隣接する上下階及び左右の部屋、廊下等)においても、携帯電話端末の電源を切ること。

〔理由〕 ①検査室、診察室、病室及び処置室等では、医用電気機器が多数設備されている可能性が高く、また、医用電気機器を装着した患者が施設内部(隣接する部屋、廊下等)を移動する(又は移動している)可能性があるため。②携帯電話端末は電源を入れた状態では、通話中以外でも自動的に電波を発射するため。③携帯電話端末から発射される電波は、床、壁等を透過する可能性があるため。

(注二) (三)の(注三)に基づいて、各医療機関が独自に使用者や使用区域を限定して携帯電話が使用できる区域を設定することを妨げるものではない。

(三) その他の区域

待合室など医療機関側が携帯電話端末の使用を特に認めた区域でのみ携帯電話を使用すること。(注三)

ただし、病院側が使用を認めた区域においても、緊急時などでは、やむを得ず医用電気機器を使用する可能性があるため、付近で医用電気機器が使用されている場合には、携帯電話端末の電源を切ること。

〔理由〕 携帯電話端末は電源を入れた状態では、通話中以外でも自動的に電波を発射するため。

(注三) 医療機関は、携帯電話端末の使用を認める区域を設定する場合には、当該区域及びその周囲(隣接する上下階及び左右の部屋、廊下等)において医用電気機器を使用しないことを確認すること。

二 小型無線機(アマチュア無線機、パーソナル無線機及びトランシーバ(特定小電力無線局(注四)のものを除く)等)の使用

これまでに収集した国内の実験データ等を検討した結果、小型無線機は携帯電話端末と比較して医用電気機器に影響を与える可能性が高いため、医療機関の屋内等及び医用電気機器の周辺には、緊急時・災害時を除き持ち込まないこと。

(注四) 特定小電力無線局については、四項を参照のこと。

三 PHS(パーソナル・ハンディホン・システム)の使用

これまでに収集した国内の実験データ等を検討した結果、医療機関の屋内に設置されたPHS基地局等から発射される電波により医用電気機器が誤動作する可能性があるため、医療機関の屋内で設置・使用する場合、医療機関は次の注意事項を遵守することが望ましい。

(一) PHS基地局

医療機関の屋内に設置されるPHS基地局は、送信バースト出力一六〇ミリワット(平均出力二〇ミリワット)以下のものに限ること。

基地局を設置する医療機関は、電波による医用電気機器への影響を医用電気機器製造業者、電気通信事業者等の関係者に確認し、医用電気機器に影響を及ぼすことがないよう管理区域を設けるなどの対策を講じた上で、基地局を設置すること。

(二) PHS端末(デジタルコードレス電話(親機・子機)を含む‥送信バースト出力八〇ミリワット(平均出力一〇ミリワット)以下のものをいう。)

ア 使用可能なPHS端末の識別

医療機関内で使用するPHS端末は、携帯電話端末、ハンディタイプのアマチュア無線機、アナログコードレス電話等と容易に識別できるように管理すること。

(例一‥PHS端末を医療機関内で使用する場合には、医療機関の許可を受けなければならないこととする。)

(例二‥医療機関内で使用するPHS端末には、識別用ステッカーを貼付することとする。)

〔理由〕 PHS端末は、携帯電話端末、ハンディタイプのアマチュア無線機、アナログコードレス電話等と外見上容易に区別がつきにくく、外来患者等に対して、携帯電話端末等を医療機関内で自由に使用できる、との誤解を与える可能性があるため。

イ 識別されたPHS端末の取扱い

PHS端末から発射される電波(出力は携帯電話端末の一〇分の一以下)による医用電気機器への影響は携帯電話端末と比較して小さいものの、PHS端末を医用電気機器へ近づけた場合に、医用電気機器がノイズ混入、誤動作等の影響を受けることがあるため、アで識別されたPHS端末を使用する場合、医用電気機器にPHS端末を近づけないこと。

なお、手術室、集中治療室(ICU)及び冠状動脈疾患監視病室(CCU)等においては、人命に直接関わる医用電気機器が多数設備されているため、安全管理上、PHS端末の電源を切ること。

ウ 外部から持ち込むPHS端末の取扱い

患者等が外部から持ち込むPHS端末について、前記ア及びイのような管理ができない場合には、携帯電話端末と同様に取り扱うこと。

四 構内ページングシステム(注五)の基地局、無線LAN及びコードレス電話(アナログ方式)及び特定小電力無線局(注六)

構内ページングシステム基地局、無線LAN、コードレス電話及び特定小電力無線局(以下「小電力無線局」という。)から発射される電波による医用電気機器への影響は携帯電話端末と比較して小さいものの、これらの小電力無線局を医用電気機器の間近まで近づけた場合に、ノイズ混入、誤動作等の影響を受けることがあるため、医用電気機器に小電力無線局を近づけないよう注意することが望ましい。

(注五) 本項でいう構内ページングシステムは、四〇〇メガヘルツ帯の電波を使用する医療機関等が設置した自営の無線呼出(いわゆる「ポケットベル」)であり、「構内無線局」及び「特定小電力無線局」に該当するものである。

(注六) 無線局免許を要しない空中線電力一〇ミリワット以下の無線局(電波法令に合致し、郵政大臣により告示された用途及び周波数等の条件に適合することが必要)であり、医療用テレメータ、テレメータ・テレコントロール、データ伝送、無線電話、無線呼出、ラジオマイク及び移動体識別を行うものなどが該当する。

なお、医療用テレメータのうち、一般的に利用されている一ミリワット程度のものは殆ど影響はない。

Ⅱ 植込み型心臓ペースメーカ装着者の注意事項

植込み型心臓ペースメーカは、その近くで携帯電話端末、自動車電話、ショルダーホン、PHS端末、コードレス電話及び小型無線機を使用したときに、電波による影響を受ける可能性がある。実験結果によれば、この影響は一時的かつ可逆的(元に戻る)であるが、植込み型心臓ペースメーカを装着している人は、次の事項を遵守することが望ましい。

一 携帯電話端末

携帯電話端末の使用及び携行に当たっては、携帯電話端末を植込み型心臓ペースメーカ装着部位から二二cm程度以上離すこと。

また、混雑した場所では付近で携帯電話端末が使用されている可能性があるため、十分に注意を払うこと。

二 自動車電話及びショルダーホン

植込み型心臓ペースメーカを自動車電話及びショルダーホンのアンテナから三〇cm程度以内に近づけないこと。

三 PHS端末及びコードレス電話

PHS端末及びコードレス電話の使用に当たっては、一の携帯電話端末と同様に取り扱うこと。

〔理由〕 PHS端末及びコードレス電話を植込み型心臓ペースメーカへ近づけた場合に全く影響を受けないわけではなく、また、PHS端末及びコードレス電話と携帯電話端末が外見上容易に区別がつきにくく、慎重に取扱うという意味で、携帯電話端末と同様に取り扱うことが望ましい。

四 小型無線機(アマチュア無線機、パーソナル無線機及びトランシーバ(特定小電力無線局のものを除く)等)の使用

小型無線機は携帯電話端末と比較して植込み型心臓ペースメーカに影響を与える可能性が高いため、小型無線機を使用しないこと。

Ⅲ 医療機関以外での医用電気機器の使用

一 在宅医療

人工呼吸器、酸素濃縮装置等の医用電気機器を在宅医療に用いる場合には、少なくとも医用電気機器が使用されている家屋内においては、アマチュア無線機、携帯電話端末等の電波の発生源の電源を切ることが望ましい。

二 在宅医療以外

植込み型心臓ペースメーカ以外にも医療機関以外の場所で医用電気機器が使用される場合があるが、これらの機器の使用者は無線通信システムからの電波による影響について、個別に医用電気機器製造業者、電気通信事業者等の関係者に確認を行うことが望ましい。

Ⅳ 植込み型心臓ペースメーカ装着者及び補聴器使用者への配慮

一 外見だけでは特定できない植込み型心臓ペースメーカ装着者への配慮

携帯電話端末、PHS端末、コードレス電話又は小型無線機(アマチュア無線機、パーソナル無線機及びトランシーバ(特定小電力無線局のものを除く)等)の所持者は、第Ⅱ項で示したような植込み型心臓ペースメーカ装着者と近接した状態となる可能性がある場所(例:満員電車等)では、その携帯電話端末等の無線機の電源を切るよう配慮することが望ましい。

〔理由〕 近くに植込み型心臓ペースメーカ(携帯電話端末等から発射される電波により影響を受ける可能性のある生命維持用の医用電気機器)を装着した人がいる可能性があるため。

二 補聴器使用者への配慮

携帯電話端末又はPHS端末の所持者は、補聴器を使用している者と近接した状態となる可能性がある場所(例:満員電車等)では、その携帯電話端末又はPHS端末の電源を切るよう配慮することが望ましい。

〔理由〕 近くに補聴器(ごく接近した状況では雑音が混入することがある。)を使用している人がいる可能性があるため。

Ⅴ その他の事項

一 医用電気機器を装着した患者の搬送

体外型心臓ペースメーカ、人工呼吸器等の医用電気機器を装着している患者を医療機関外へ搬送するため、待合室等を通過する場合には、随伴者は、搬送路周辺において携帯電話端末が使用されていないことを確認することが望ましい。

二 補聴器使用者への注意事項

携帯電話端末又はPHS端末がごく接近した状況では、補聴器に雑音が混入することがあるため、補聴器使用者が携帯電話端末又はPHS端末の使用に当たっては、補聴器製造業者、端末製造業者あるいは電気通信事業者に確認すること。