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○医療法の一部を改正する法律の施行に関する件

(昭和二五年八月二日)

(発医第九八号)

(各都道府県知事あて厚生事務次官通達)

医療法の一部を改正する法律は、本年五月一日公布せられ、これに伴う政令、省令もそれぞれ既に公布をみ、八月一日から施行されることとなつたのであるが、医療法人制度の運用については、医療事業の特殊性に鑑み、種々の問題が予想せられ、又これが運用の適否は、我が国における医療事業の発展に影響する所少からぬものと認められるので、本法の運営に当たつては、特に左記事項に御留意の上、所期目的の達成に遺憾なきを期せられたく、命によつて通知する。

第一 一般事項

一 本法制定の趣旨は、私人による病院経営の経済的困難を、医療事業の経営主体に対し、法人格取得の途を拓き、資金集積の方途を容易に講ぜしめること等により、緩和せんとするものであること。

なお、医療法人に対する課税上の特例を設けることは、本法の直接目的とする所ではなく、これについてはむしろ医業一般の問題として別途考慮すべきものとしたこと。

二 医療法人は、病院又は一定規模以上の診療所の経営を主たる目的とするものでなければならないが、それ以外に積極的な公益性は要求されず、この点で民法上の公益法人と区別され、又その営利性については剰余金の配当を禁止することにより、営利法人たることを否定されており、この点で商法上の会社と区別されること。

三 民法による公益法人と医療法人との関係については、本制度はもとより従来設立せられた公益法人に変更を加え、又将来医療事業を行う公益法人の設立せられたることを妨げるものではないが、事業内容が一都道府県内に止まる公益法人につき、その設立を認可するに当たつては、特に公益性の要件に関し必要な基準を設けられたいこと。

四 従来株式会社等商法上の会社組織により医療事業を行つていた者については、できるだけ医療法人によるよう組織変更せしめると共に、今後会社組織による病院経営は認めない方針をとり、本制度を活用せられたいこと。

五 医療機関整備審議会については、本法によりあらたに医療法人の設立認可の決定等につき都道府県知事の諮問に応ずる権利が加えられ、この手続によらないで設立認可等を決定することはできなくなつたので、未だ同審議会に関する条例の制定をみず、又は未だ同審議会を設置していない向にあつては、速やかにこれが整備を図られたいこと。

第二 成立に関する事項

一 医療法人の設立の認可は、公益法人と異なりすべて都道府県知事の行う所であり、数府県に亘る事業内容を有するものについても、その主たる事務所所在地の知事がこれを与えるものであること。

二 認可決定の基準については、法第四五条第一項に定められているが、特にそれが営利を目的とするものでないかどうか、又数コの診療所の開設のみを目的とするものについては、少くともその内一コの診療所について医師又は歯科医師が常時三人以上勤務するに足る設備を有するものであるかどうかにつき、十分注意せられたいこと。

三 第四一条の資産要件としては、定款又は寄附行為に記載された病院又は診療所に必要な物的施設即ち土地、建物等の不動産、医療用器械器具等の動産等を有することを要するが、右の物的施設の全部又は一部を有しないものであつても、これが建設又は購入に必要な資金(借入資金であつても差し支えない)を有する限り、本来の要件は充たされるものであること。但し、何等物的施設を有しないものについては、第六五条との関連もあり、慎重に認可を決定されたいこと。

四 医療法人の設立認可と、当該法人の開設する病院又は診療所の開設許可とは、別個のものであり、法人の主たる事務所所在地の知事と、病院又は診療所開設地の知事とが異なる場合には、特に後者の知事において、当該法人の設立認可又は定款若しくは寄付変更の認可がなされているものであるかどうかを確め又は病院開設の許可を速やかに前者の知事に通知する等その間の連絡に十分注意せられたいこと。

第三 管理に関する事項

一 第四七条は、医療法人の業務の運営が病院又は診療所の経営を中心としてなさるべきことを保障する趣旨であること。従つて当該法人が数個の病院又は診療所を開設する場合には、その管理者のなるべく多数を理事に加えるよう指導せられたいこと。

二 法第七条第二項の規定の趣旨に鑑み、医療法人に剰余金の配当を禁止せられ、従つて営利法人たることは、医療法人の本質上許されないものであること。このため剰余金を生じた場合には、施設の整備改善等に充て、以つて医療内容の向上を図るよう指導せられたいこと。

第四 組織変更等に関する事項

一 定款又は寄付行為変更及び合併の認可決定の基準については、設立の認可決定の場合に準ずること。特に事業の拡張又は附帯業務の経営により、医療内容の低下を来すことのないよう注意せられたいこと。

二 総会の決議又は目的たる業務の成功の不能による解散の認可を決定するに当たつては、医療事業の特殊性に鑑み、解散により、当該地方における住民から必要な医療を奪うことのないよう、特に解散後の病院の処分等につき適切な指導を加えられたいこと。

第五 監督に関する事項

一 法第五一条、第五五条第五項、民法第七七条第二項、第八三条及び規則第三七条に規定する各種の届出義務、特に毎会計年度終了後の決算届出義務については、これが励行につき十分指導されたい。

二 医療法人に対する行政処分と、当該法人の開設する病院又は診療所に対する行政処分とは、別個のものであるが、両者は密接な関連を有するので病院に対する行政処分を行つた知事が、法人の主たる事務所所在地の知事と異なる場合には、速やかに連絡せられたいこと。

なお、医療法人に対する行政処分の場合についても同様にせられたいこと。

三 医療法人に対する監督は、その主たる事務所所在地の知事が行うが、解散及び清算については、その主たる事務所所在地の地方裁判所がこれを行うものであること。

第六 その他の事項

各種申請書類の様式等については、別途医務局長通牒により、指導されたいこと。