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○tert―ブチルヒドロキノン(TBHQ)に係る試験法について

(平成17年3月3日)

(食安監発第0303001号)

(各都道府県・各保健所設置市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬食品局食品安全部監視安全課長通知)

標記については、平成12年3月30日付衛化第15号別添「第2版 食品中の食品添加物分析法」に掲載されているところですが、今般、国立医薬品食品衛生研究所より、当該試験法より検出感度の高い別添試験法の提示がありましたので通知いたします。

なお、本試験法と同等以上の性能を有する試験法により実施しても差し支えないので申し添えます。

(別添)

tert―ブチルヒドロキノン(TBHQ)試験法

1.試験法の概要:食品中のTBHQはアセトニトリルで抽出し,蛍光検出器付高速液体クロマトグラフィーにより定量する。

2.試験法(液体クロマトグラフィー)

(1) 検体の採取と試料の調製

一般試料採取法を準用する。

(2) 試料液の調製

① 液体試料1)

試料約1gを精密に量り,正確にL―アスコルビン酸パルミチン酸エステル含有ヘキサン飽和アセトニトリル(飽和アセトニトリル)2)10mlを加え,1分間振とうする。3,000rpmで5分間遠心分離した後,アセトニトリル層を採り3),n―ヘキサン4)10mlを加え,よく振り混ぜた後,3,000rpmで5分間遠心分離する。アセトニトリル層を採り,0.45μmのフィルターを通して試料液とする。

② バター及びマーガリン

試料約1gを精密に量り,硫酸ナトリウム1gを加えて混ぜ,n―ヘキサン10mlを加え試料を溶解する。正確に飽和アセトニトリル10mlを加え,1分間振とうする。3,000rpmで5分間遠心分離した後,アセトニトリル層を採り3),n―ヘキサン4)10mlを加え,よく振り混ぜた後,3,000rpmで5分間遠心分離する。アセトニトリル層を採り,0.45μmのフィルターを通して試料液とする。

③ チューイングガム

細切した試料約5gを精密に量り,硫酸ナトリウム5g5)を加えて混ぜ,酢酸エチル30mlを加え,1分間振とうする6)。酢酸エチル層をろ紙(5A)でろ過する。残渣に酢酸エチル30mlを加え同様に操作し,ろ液を合わせ,酢酸エチルを留去する。残留物に飽和アセトニトリルを加えて溶解し50mlの定容とする。この一部を採り3,000rpmで5分間遠心分離した後,10mlを正確に採り,n―ヘキサン10ml4)を加え,よく振り混ぜた後,3,000rpmで5分間遠心分離する。アセトニトリル層を採り,0.45μmのフィルターを通して試料液とする。

④ 固形試料

細切した試料約5gを精密に量り,硫酸ナトリウム5g5)を加えて混ぜ,酢酸エチル30mlを加え,1分間振とうする6)。酢酸エチル層をろ紙(5A)でろ過する7)。残渣に酢酸エチル30mlを加え同様に操作し,ろ液を合わせ,酢酸エチルを留去する。残留物にn―ヘキサンを加えて溶解し,50mlの定容とする。この10mlを正確に採り,正確に飽和アセトニトリル10mlを加え,1分間振とう後,3,000rpmで5分間遠心分離した後,n―ヘキサン層を除き,さらに,アセトニトリル層にn―ヘキサン10mlを加えよく振り混ぜた後,アセトニトリル層を採り0.45μmのフィルターを通して,試料液とする。

(3) TBHQ検量線用標準液の調製

TBHQ100mgを正確に量り,0.01w/v%L―アスコルビン酸パルミチン酸エステル(AP)アセトニトリル溶液に溶解して正確に100mlとする。この液1mlを正確に採り,0.01w/v%APアセトニトリル溶液を加えて正確に100mlとしTBHQ標準液とする(本液1mlはTBHQ10μgを含む)。TBHQ標準液1,5,10,20及び50mlをそれぞれ正確に採り,0.01w/v%APアセトニトリル溶液を加えて正確に100mlとし,TBHQ検量線用標準液とする(これらの液1mlは,それぞれTBHQ0.1,0.5,1,2及び5μgを含む)8)

(4) 測定法

① 測定条件

蛍光検出器付高速液体クロマトグラフを用い,次の条件によって測定する。

カラム充てん剤9):オクタデシルシリル化シリカゲル,粒径5μm

カラム管:内径4.6mm,長さ150―250mm

移動相:5%酢酸・メタノール・アセトニトリル混液(6:2:2)

カラム温度:40℃

流速:1.0ml/分

励起波長:293nm,蛍光波長:332nm

② 検量線

検量線用標準液それぞれ10μlずつを正確に採り,高速液体クロマトグラフに注入し,ピーク面積から検量線を作成する。

③ 定量

試料液10μlを正確に採り,高速液体クロマトグラフに注入し,得られたピーク面積と検量線から試料中のTBHQ濃度(μg/ml)を求め,次式によって試料中のTBHQ含量(μg/g)を計算する。

液体試料及びバター,マーガリン

TBHQ含量(μg/g)=(C×10)/W

C:試料液中のTBHQ濃度(μg/ml)

W:試料の採取量(g)

チューイングガム及び固形試料

TBHQ含量(μg/g)=(C×5×10)/W

C:試料液中のTBHQ濃度(μg/ml)

W:試料の採取量(g)

試薬・試液等

1.tert―ブチルヒドロキノン(TBHQ):[特級]

2.L―アスコルビン酸パルミチン酸エステル:[1級]

3.酢酸エチル:[特級]

4.酢酸:[高速液体クロマトグラフィー用]

5.アセトニトリル:[高速液体クロマトグラフィー用]

6.メタノール:[高速液体クロマトグラフィー用]

7.n―ヘキサン:[特級]

8.L―アスコルビン酸パルミチン酸エステル含有ヘキサン飽和アセトニトリル(飽和アセトニトリル)10):ヘキサンとアセトニトリルを混ぜ,分液ロートにてよく振とうし,分離後,下層を採取する。この液1LにL―アスコルビン酸パルミチン酸エステル100mgを溶解し,飽和アセトニトリルとする。

9.硫酸ナトリウム:[特級]

10.ディスポーザブルフィルター:孔径0.45μm,有機溶媒系

[注]

1) 植物油及びオリーブ油,ごま油等の液体試料に用いる。ただし,ドレッシングは固形試料の試料液の調製法に従う。

2) 分析操作中のTBHQの酸化による減少を防止するために,L―アスコルビン酸パルミチン酸エステルを抽出溶媒に添加する。

3) アセトニトリル層は,全量を採取しなくてもよい。

4) アセトニトリル層の油分を除去するためヘキサンで洗浄する。

5) 試料中の水分が十分に除去されていない場合,さらに硫酸ナトリウムを適量添加する。

6) 固形試料中の油分を酢酸エチルで抽出する。

7) 液が混濁した場合,3,000rpmで5分間遠心分離した後,ろ過する。

8) TBHQ検量線用標準液は,直射日光を避け,冷所にて保存する。

9) 市販の充填カラムとしてTosoh TSKgel ODS―100Sが使用できる。

10) 飽和アセトニトリルは,用時調製する。

11) 一部の試料ではTBHQの保持時間の近傍に妨害ピークが認められるため,確認に注意する。

12) 本法における検出限界は1μg/gである。

13) なお,TBHQは酸化還元性の分解しやすい化合物で,低濃度では容易に分解するため,低濃度では,良好な回収率が得られない。精度管理では,20μg/gでの添加回収実験を実施することで充分な精度を維持できる。

食品中のTBHQの蛍光HPLCによる分析例

オリーブ油のHPLCクロマトグラム(①液体試料)

ピーナッツバターのHPLCクロマトグラム(②バター及びマーガリン)

チューイングガムのHPLCクロマトグラム(③チューイングガム)

ポテトチップスのHPLCクロマトグラム(④固形試料)

参考情報

tert―ブチルヒドロキノン(TBHQ)確認試験法

1.試験法の概要:食品中のTBHQはアセトニトリルで抽出し,質量検出器付ガスクロマトグラフ(GC/MS),または,水素炎イオン化検出器付きガスクロマトグラフ(GC/FID)により確認を行う1)

2.試験法

(1) 検体の採取と試料の調製

一般試料採取法を準用する。

(2) 試料液の調製

TBHQ試験法を準用する。

(3) TBHQ検量線用標準液の調製

TBHQ試験法を準用する。

(4) 測定法

① 測定条件2)

GC/MS又はGC/FIDを用い,次の条件によって測定する。

カラム3):(14%シアノプロピルフェニル)―メチルポリシロキサン架橋タイプ,低/中極性カラム相当品

カラム管:内径0.25mm,長さ30m,膜厚0.25μm

カラム温度:60℃(2分)―(10℃/分)―250℃

注入口温度:270℃(GC/MS),250℃(GC/FID)

トランスファーライン(インターフェース)温度:280℃(GC/MS)

検出器温度:250℃(GC/FID)

注入量:1μl(スプリットレス)

イオン化法:EI

SIM選択イオン:m/z166,123,151

② 定性確認4)

試料液をGC/MS又はGC/FIDに注入し,クロマトグラフ上に検出されたピークがTBHQ検量線標準液の保持時間と一致するか,あるいは,マススペクトルにおいて主要ピークの強度比がTBHQ検量線用標準液と一致することを確認する。

試薬・試液等

TBHQ試験法を準用する。

[注]

1) 本法は,TBHQの確認試験法であり,定量分析は目的としない。

2) その他の測定条件は各測定機器に従い,TBHQ検量線用標準液の強度が最大となるように予め最適化を行う。

3) 市販のキャピラリーGCカラムとしてDB―1701(J&W Scientific)等が使用できる。

4) GC/MSを用いて定性確認を行う場合,食品中の夾雑成分によるマトリクス効果により確認を見誤る恐れがあるため,別途,対象試料の試料液にTBHQ検量線用標準液を添加し,ピークが検出されることを確認する。

GC/MSにおいてマススペクトラムによる確認が不可能である場合,SIMモードにて測定を行い,クロマトグラム上に検出されたピークがTBHQ検量線用標準液と一致することを確認する。

GC/FIDでは,食品中の夾雑成分の影響により確認が不明瞭となる場合がある。その場合はGC/MSにより確認を行う。

食品中のTBHQのGC/MSによる分析例

TBHQ標準品のGC/MSクロマトグラム

TBHQ1μg/g添加オリーブオイルのGC/MSクロマトグラム

食品中のTBHQのGC/FIDによる分析例

TBHQ標準品のGC/FIDクロマトグラム

TBHQ1μg/g添加ポテトチップスのGC/FIDクロマトグラム