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○食品中の臭素酸カリウム分析法について
(平成15年3月4日)
(食基発第0304001号)
(各都道府県・各政令市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬局食品保健部基準課長通知)
標記については、平成12年3月30日衛化第15号通知により、「食品中の食品添加物分析法」を送付し、その中で試験法を示したところであるが、今般、その後の科学技術の進歩に対応すべく、当該試験法を別紙のとおり改正したので、御了知の上適切な運用方お願いする。
別紙
臭素酸カリウム
Potassium Bromate
KBrO3:167.00
1.試験法の概要
パン中の臭素酸カリウム1)は,水抽出液を銀カラムカートリッジ,イオン交換カートリッジでクリーンアップし,ポストカラムを用いた高速液体クロマトグラフィーで臭素酸として定量する。必要があれば分子量比を乗じて臭素酸カリウムの量として求める。
2.試験法(高速液体クロマトグラフィー)
(1) 検体の採取と試料の調製
一般試料採取法を準用する。
(2) 試料液の調製
試料を粉砕して約5gを精密に量り,水50mlを加え,マグネチックスターラーにより室温で30分間攪拌する。攪拌後,5℃で10,000xg,10分間遠心分離する。上清をろ紙(No.5A)でろ過し,ろ液10mlを正確に量り採り,ディスポーザブルフィルター2),銀カラムカートリッジ3),陰イオン交換カートリッジ4)をこの順番で直列に接続したものに負荷する5)。流下後,ディスポーザブルフィルターと銀カラムカートリッジをはずし,陰イオン交換カートリッジに20v/v%酢酸1ml,続いて水2mlを通して洗浄した後,0.5%硝酸ナトリウム溶液1mlで溶出6)し,その溶出液を試料液とする。
(3) 検量線用標準液の調製
臭素酸カリウム0.130gを正確に量り,水に溶解して正確に100mlとし,標準原液とする。この液1mlを正確に採り,水を加えて正確に100mlとする。さらに,この液1mlを正確に採り,水を加えて正確に100mlとし標準液とする(本液1mlは臭素酸100ngを含む)。標準液を1,2,5,10ml及び20mlをそれぞれ正確に採り,水を加えて正確に100mlとし,検量線用標準液とする(これらの液1mlは,それぞれ臭素酸1,2,5,10ng及び20ngを含む)。
(4) 測定法
① 測定条件
ポストカラム反応装置を備えた可視部吸収検出器付高速液体クロマトグラフを用い,次の条件によって測定する。
カラム充てん剤:化学結合型オクタデシルシリル化シリカゲル8)
カラム管:内径4.6mm,長さ25cm
移動相9):メタノール100mlに脱気した水700mlを加え,酢酸2.0g,10%テトラ―n―ブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)45gを加えて混和後,10%TBAHでpH5.0に調整し,脱気した水で1000mlとする。移動相は調製後よく脱気する。
反応液10):脱気した水700mlに硝酸60ml,臭化カリウム10gを加える。これにo―ジアニシジン・二塩酸塩500mgをメタノール200mlで結晶が残らないように完全に溶解した液を加え,脱気した水で1000mlとする。
移動相の流速:0.9ml/分
カラム温度:40℃
反応液の流速:0.3ml/分
反応コイル:テフロンチューブ,内径0.4mm,長さ5m
反応漕温度:60℃
測定波長:450nm
注入量:100μl
② 検量線
検量線用標準液それぞれ100μlずつを正確に量り,それぞれを高速液体クロマトグラフに注入し,ピーク面積から検量線を作成する。
③ 定量11)
試料液100μlを正確に量り,高速液体クロマトグラフに注入し,得られたピーク面積と検量線から試料液中の臭素酸濃度(ng/ml)を求め,次式によって試料中の臭素酸含量(μg/kg)を計算する。
臭素酸含量(μg/kg)=(C×5)/W
C:試料液中の臭素酸濃度(ng/ml)
W:試料の採取量(g)
試薬・試液等
1.ディスポーザブルフィルター:孔径0.2μm,直径25mm,水系
2.陰イオン交換カートリッジ:使用前に水1mlを通過させる。
3.銀カラムカートリッジ:0.4~2.5meq/カートリッジ程度の交換容量のもの
4.o―ジアニシジン・二塩酸塩:精製結晶
5.酢酸:[試薬特級]
6.20v/v%酢酸:酢酸20mlを正確に量り,水を加えて100mlとする。
7.臭化カリウム:99.999%のもの
8.臭素酸カリウム:[試薬特級]
9.硝酸:精密分析用(70%)
10.硝酸銀:[試薬特級]
11.0.1mol/l硝酸銀溶液:硝酸銀1.69gを正確に量り,水を加えて100mlとする。
12.硝酸ナトリウム:[試薬特級]
13.0.5%硝酸ナトリウム溶液:硝酸ナトリウム0.5gを正確に量り,水を加えて100mlとする。
14.テトラ―n―ブチルアンモニウムヒドロキシド:10%水溶液
15.メタノール:高速液体クロマトグラフィー用
16.水:水道水を超純水製造装置で処理した水
[注]
1) 臭素酸カリウムは,パン以外の食品には使用できないので、パンからの定量法を記載してある。パン以外の食品の場合は,クリーンアップの方法が異なることが考えられる。
2) ディスポーザブルフィルターとして,マイショリディスクW―25―2(東ソー)等が使用できる。
3) 銀カラムカートリッジとして,TOYOPAK IC―SP M(東ソー)及びOnGuard―Ag(DIONEX)等が使用できる。TOYOPAK IC―SP Mを使用する場合,使用前に0.1mol/l硝酸銀溶液10mlをカラムに通した後,水10mlで洗浄し,銀カラムカートリッジを調製する。用時調製する。OnGuard―Agを使用する場合は,使用前に水30mlを通過させる。
4) 陰イオン交換カートリッジとして,Oasis MAX固相抽出カートリッジ60mg/3ml(Waters)を使用する。
5) 負荷する溶液量が多い場合,塩素イオンが混入し発色を妨害する恐れがある。溶出速度は毎分1ml程度とする。
6) 0.5%硝酸ナトリウムを陰イオン交換カートリッジに負荷する前に,カートリッジ内に溶液が残らないように完全に空気で押し出す。
7) 臭素酸標準原液は冷所にて数週間保存可能である。検量線用標準液は,用時調製する。
8) 市販の充てんカラムとしてZorbax SB―C18(Agilent Technologies)及びTSKGELODS―80TSQA(東ソー)等が使用できる。カラムはガードカラムを装着して使用する。
9) テトラ―n―ブチルアンモニウムヒドロキシドは,製品によっては臭素酸を多く含むものがある。本試薬として,東京化成及び和光純薬製の10%水溶液等が使用できる。移動相の脱気が不十分だとベースラインが安定しない。ベースラインの安定性が特に悪い場合,窒素を用いてよく脱気を行う。
10) o―ジアニシジンが完全に溶解しないと液が着色することがあるため,以下のように調製する。o―ジアニシジン・二塩酸塩500mgを20mlのバイアル瓶に入れ,メタノール約15mlを加えてガラス棒で砕きながら溶かし,上澄み液を臭化カリウム・硝酸溶液にあわせる。バイアル瓶中に残ったo―ジアニシジンに,さらにメタノールを加え,ガラス棒で砕いて溶かす。o―ジアニシジンが完全に溶けるまでこの操作を繰り返す。o―ジアニシジンは,微かに加温すると溶けやすい。反応液の臭化カリウムはMerk社製の純度の高いものを使用する。この反応液は数週間使用可能である。
11) 本法の検出限界は0.5μg/kgである。