添付一覧
○麻痺性貝毒による二枚貝等の捕食生物の毒化について
(平成16年4月13日)
(食安監発第0413003号)
(各都道府県・各保健所設置市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬食品局食品安全部監視安全課長通知)
貝類の貝毒については、昭和55年7月1日付け環乳第29号「麻痺性貝毒等により毒化した貝類の取扱いについて」及び昭和56年8月11日付け環乳第62号「毒化した貝類の流通防止について」等、従来から様々の対策の推進につき御配慮いただいているところですが、今般、別添のとおり、農林水産省の研究事業(研究事業名:「先端技術を活用した農林水産研究高度化事業」)において、検体として採取された複数のトゲクリガニの肝膵臓から、貝類の規制値である4MU/gを超える麻痺性貝毒が検出され、また、その毒化の機構として、麻痺性貝毒をもつ二枚貝をトゲクリガニが捕食することに起因することが示唆されました。
トゲクリガニに含まれる麻痺性貝毒に起因する食中毒事例はこれまで報告されていませんが、麻痺性貝毒による毒化が発生した海域周辺で採捕される二枚貝等の捕食生物についても注意を要すると考えられることから、今後は、下記のとおり取り扱うようよろしくお願いします。
なお、本件については、農林水産省と協議済みであるので念のため申し添えます。
記
1 二枚貝等において麻痺性貝毒による毒化が確認された海域を管轄する都道府県等においては、水産部局とも連携し、ヒトの食用に供する二枚貝等の捕食生物について、麻痺性貝毒に係る毒化実態の調査を積極的に実施すること。
2 上記1の調査における麻痺性貝毒の検査法は、昭和55年7月1日付け環乳第30号「貝毒の検査法等について」に定める麻痺性貝毒検査法によること。
3 上記検査の結果、二枚貝等の捕食生物において、その肝膵臓または付属肢筋肉等を含む可食部1g当たりの麻痺性貝毒の毒量が4MU(マウスユニット)を超える場合にあっては、食品衛生法第6条第2号の規定に違反するものとして取り扱うこと。
4 上記検査の結果、食品衛生法違反が判明した場合については、当課あて速やかに連絡されたい。
(別添)
(先端技術を活用した農林水産研究高度化事業報告書要約)
大課題名:現場即応型貝毒検出技術と安全な貝毒モニタリング体制の開発
中課題名:生息環境に基づく二枚貝等の毒化予知技術の高度化
小課題名:二枚貝捕食者における貝毒成分の蓄積とその動態解明
担当機関:中央水産研究所
1 研究目的
二枚貝類が毒化する海域に生息し、それらを捕食する生物には、食用対象とされる甲殻類なども含まれるが、これら二枚貝捕食者が蓄積する貝毒成分を研究した例は少なく、安全性の判断が難しい状況である。これらの生物について、天然海域における毒成分の蓄積実態を調べ、体組織分布などを明らかにするとともに、その蓄積過程を二枚貝の毒性と比較し、毒化予知につながる基礎的データを得る。
2 方法
麻痺性貝毒(PSP)により二枚貝類が毒化した小名浜港内において、トゲクリガニを2002年および2003年に採取したほか、調査地点でのPSP発生の指標種としてムラサキイガイを採取した。
3 結果の概要
2003年に福島県小名浜港ではムラサキイガイが高毒化し、イガイの毒化確認後に採取したトゲクリガニ試料の約9割にあたる67個体の肝膵臓に毒性が認められた。肝膵臓の毒性の最大値は85.3MU/gを示したが、その毒性には非常に大きな個体差が認められた(図1)。また、付属肢筋肉からは毒性が検出されなかったが、一部試料の胸部筋肉からは4MU/g以下の低レベルの毒性が検出された(表1)。トゲクリガニ1個体あたりの毒性では、人間の最小致死量の1/3にあたる1,000MUを越えた試料があり、筋肉部を含めた可食部あたりの毒性も、二枚貝の規制値である4MU/gを越える試料が散見された(表1)。一方、ムラサキイガイの最大毒性が3.4MU/gであった2002年に調べた38個体では、3個体の肝膵臓に2.6~3.8MU/gの毒性が検出された。これらのことから、トゲクリガニの毒性は個体差が大きいものの、二枚貝の毒性レベルと対応した変化となることが確認された。
図1.2003年に小名浜港で採取したトゲクリガニ肝膵臓の毒性
表1.トゲクリガニ(3/25採取)の部位別毒性と可食部あたりの毒性
Sample No. |
性別 |
体重(g) |
可食部量(g) |
肝膵臓毒性(MU/g) |
胸部筋肉毒性(MU/g) |
付属肢筋肉毒性(MU/g) |
可食部毒性(MU/g) |
3―147 |
F |
116.4 |
33.2 |
85.3 |
2.8 |
N.D. |
22.0 |
3―148 |
F |
117.3 |
32.3 |
N.D. |
N.D. |
N.D. |
0.0 |
3―149 |
M |
219.4 |
77.2 |
24.3 |
N.D. |
N.D. |
4.7 |
3―150 |
F |
94.1 |
25.3 |
25.6 |
N.D. |
N.D. |
7.1 |
3―151 |
M |
226.8 |
76.5 |
5.6 |
N.D. |
N.D. |
0.8 |
3―152 |
F |
148.9 |
36.7 |
12.7 |
N.D. |
N.D. |
2.5 |
3―153 |
F |
126.3 |
31.9 |
9.5 |
N.D. |
N.D. |
1.9 |
3―154 |
F |
168.0 |
41.5 |
N.D. |
N.D. |
N.D. |
0.0 |
3―155 |
M |
164.2 |
54.6 |
8.7 |
N.D. |
N.D. |
1.4 |
3―156 |
F |
162.4 |
43.6 |
14.0 |
N.D. |
N.D. |
3.0 |
3―157 |
M |
138.2 |
48.4 |
10.0 |
N.D. |
N.D. |
1.9 |
3―158 |
M |
339.1 |
117.9 |
54.9 |
3.4 |
N.D. |
7.3 |
3―159 |
M |
190.0 |
60.3 |
8.9 |
N.D. |
N.D. |
1.4 |
3―160 |
M |
183.2 |
53.6 |
20.5 |
N.D. |
N.D. |
3.5 |
3―161 |
F |
170.7 |
39.6 |
N.D. |
N.D. |
N.D. |
0.0 |
(参考資料1)
(参考資料2)
○トゲクリガニの主な生息地(北海道・東北地方)における流通実態等について
|
海域汚染実態(麻痺性貝毒) |
麻痺性貝毒食中毒の患者の喫食状況(トゲクリガニ等の喫食の有無) |
貝類の捕食者(トゲクリガニ含む)に係る貝毒汚染の情報の有無 |
地域でのトゲクリガニの漁獲・喫食実態 |
その他 |
北海道 |
H5:太平洋中部 H6及び7:噴火湾東部・西部・湾口 H8及び9:オホーツク海南部 H10及び11:太平洋東部 H12:発生なし H13及び14:オホーツク海南部 H15:噴火湾湾口 |
平成3年に自主規制期間中のホタテ貝を喫食して食中毒を起こした例あり(貝類捕食者の喫食状況は不明)。この他に、過去20年間麻痺性貝毒食中毒事例なし。 |
情報なし。 |
トゲクリガニが噴火湾及び津軽海峡に分布。 クリガニは津軽海峡で漁を行っている。 |
トゲクリガニとクリガニの漁獲上の区別なし。 津軽海峡は貝毒監視開始(1980年)以来、麻痺性貝毒発生による自主規制はされていない。 |
札幌市 |
海域は道が管理。 |
食中毒事例なし。 |
情報なし。 |
トゲクリガニの入荷はなし(札幌市中央卸売市場)。 クリガニは4から5月頃に入荷あり(根室地方より)。 |
|
小樽市 |
海域は道が管理。 |
食中毒事例なし。 |
情報なし。 |
トゲクリガニの取扱いあり(H15年1月~6月に1150kg)。一般的に販売。 |
|
函館市 |
海域は道が管理。 |
食中毒事例なし。 |
情報なし。 |
少量の漁獲あり(函館市水産物地方卸売市場) |
|
青森県 |
麻痺性貝毒の発生なし(海域管理開始以降)。 |
平成元年にムラサキイガイを喫食して食中毒を起こした例あり(トゲクリガニを含む貝類捕食者の喫食はなし)。これ以降麻痺性貝毒の食中毒事例なし。 |
情報なし。 |
トゲクリガニを一般的に喫食。 |
|
岩手県 |
ほぼ毎年麻痺性貝毒の発生あり。 |
食中毒事例なし。 |
情報なし。 |
少量の漁獲あり。 |
毛ガニ等と漁獲上の区別なし。 |
宮城県 |
麻痺性貝毒発生あり。 H15:南部海域、小泉・伊里前湾。 H16:南部海域。 |
食中毒事例なし。 |
情報なし。 |
トゲクリガニの生産あり(生産量:2000年23.5t、2001年23.2t、2002年41.2t) |
|
仙台市 |
海域は県が管理。 |
食中毒事例なし。 |
情報なし。 |
仙台市場に毎年春先から秋にかけて、宮城県、青森県、福島県から入荷あり(卸売業者2社への聞き取りより)。 |
トゲクリガニとクリガニの市場での区別なし。 |
秋田県 |
麻痺性貝毒の発生なし(海域管理開始以降)。 |
食中毒事例なし。 |
情報なし。 |
トゲクリガニは少なくとも漁獲対象にはなっていない。 |
|
秋田市 |
海域は県が管理。 |
食中毒事例なし。 |
情報なし。 |
喫食なし。 |
|
山形県 |
麻痺性貝毒の発生なし(海域管理開始以降(H7より))。 |
食中毒事例なし(昭和30年以降)。 |
情報なし。 |
一般的には喫食なし。 |
|
福島県 |
平成元年以降、ほぼ毎年麻痺性貝毒発生(H4,9,12及び14は発生なし)。 |
食中毒事例なし。 |
情報なし。 |
12月下旬から6月にかけて、漁港のある地域で一般的に喫食。 |
|
いわき市 |
海域は県が管理。 |
食中毒事例なし。 |
情報なし。 |
一般的には喫食なし。市場等での取扱い、流通もなし。 |
|
茨城県 |
H15:鹿島(ムラサキイガイ) |
食中毒事例なし。 |
情報なし。 |
一般的には漁獲・喫食なし。 |
|
新潟県 |
S57:佐渡市加茂湖 S59、60及び61:両津湾 H6:出雲崎・寺泊町 |
食中毒事例なし。 |
情報なし。 |
佐渡でわずかに漁獲され、流通している。 |
|
新潟市 |
H15は麻痺性貝毒なし(新潟市海域)。 それ以前は情報なし。 |
食中毒事例なし。 |
情報なし。 |
一般的には喫食なし。漁獲の情報もなし。 |
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*上記の表は、漁業関係者への聞き取り等による情報も含むため、実態と異なる場合あり。
