添付一覧
○給水装置の構造及び材質の基準に関する省令の一部を改正する省令及び給水装置の構造及び材質の基準に係る試験の一部改正について
(平成16年2月9日)
(健水発第0209003号)
(各都道府県・市・特別区水道行政担当部(局)長あて厚生労働省健康局水道課長通知)
今般、給水装置の構造及び材質の基準に関する省令の一部を改正する省令(平成16年厚生労働省令第6号)及び給水装置の構造及び材質の基準に係る試験の一部を改正する件(平成16年厚生労働省告示第15号)が、平成16年1月26日に公布され、平成16年4月1日から施行されることになった。
ついては、下記に留意の上、貴認可水道事業者等関係者に対する周知方、よろしくご配慮お願いする。
記
1.改正の背景
厚生労働省においては、平成15年4月にとりまとめられた厚生科学審議会答申「水質基準の見直し等について」(以下「答申」という。)を踏まえ、同5月に水質基準に関する省令(平成15年厚生労働省令第101号)、同7月に水質基準に関する省令の規定に基づき厚生労働大臣が定める方法を定める件(平成15年厚生労働省告示第261号)を公布し、新しい水質基準及びその検査方法を定めたところである。
一方、給水装置の構造及び材質の基準に関する省令(平成9年厚生省令第14号。以下「給水装置省令」という。)及び給水装置の構造及び材質の基準に係る試験(平成9年厚生省告示第111号。以下「給水装置試験告示」という。)については、従前より、水質基準及びその検査方法との整合を図りつつ、基準及び試験方法が定められてきたところである。
このようなことから、今般、水質基準等の改正を踏まえ、給水装置省令及び給水装置試験告示について所要の改正を行った。
2.給水装置省令の改正の概要
給水装置省令第2条第1項の浸出に関する基準について、下表のとおり改正を行った。
項目 |
水栓その他給水装置の末端に設置されている給水用具の浸出液に係る基準 |
給水装置の末端以外に設置されている給水用具の浸出液、又は給水管の浸出液に係る基準 |
||
新規 |
ホウ素 |
0.1mg/l以下 |
1.0mg/l以下 |
|
1,4―ジオキサン |
0.005mg/l以下 |
0.05mg/l以下 |
||
アルミニウム |
0.02mg/l以下 |
0.2mg/l以下 |
||
非イオン界面活性剤 |
0.005mg/l以下 |
0.02mg/l以下 |
||
有機物(全有機炭素(TOC)の量) |
0.5mg/l以下 |
5mg/l以下 |
||
変更 |
ホルムアルデヒド |
現行 |
0.05mg/l以下 |
0.05mg/l以下 |
改正 |
0.008mg/l以下 |
0.08mg/l以下 |
||
フェノール類 |
現行 |
0.005mg/l以下 |
0.005mg/l以下 |
|
改正 |
0.0005mg/l以下 |
0.005mg/l以下 |
||
削除 |
1,1,1―トリクロロエタン |
0.03mg/l以下 |
0.3mg/l以下 |
|
有機物等(過マンガン酸カリウム消費量) |
1.0mg/l以下 |
10mg/l以下 |
今回の改正は、水質基準等の改正を踏まえ、必要な改正を行ったものであり、従来と同様、給水装置から浸出するとは考えられない病原微生物、消毒副生成物、農薬等については、基準項目として採用していない。また、基準値の考え方も従来のものと変更はない。
給水装置の末端に設置されている給水用具の浸出液に係る基準のうち、非イオン界面活性剤の基準については、水質基準値の1/10の値を定量することが困難であるため、定量下限値を採用した。また、ホルムアルデヒドの基準については、水質基準値との整合を図るため、基準値の改正を行い、フェノール類の基準については、検査方法の変更により、水質基準値の1/10の値が測定可能となったため、給水装置の末端に設置されている給水用具の浸出液に係る基準値の改正を行った。さらに、1,1,1―トリクロロエタンについては、「特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律」に基づき、原則として、生産、使用が禁止されているため、基準から削除した。
3.給水装置試験告示の改正の概要
給水装置試験告示第2(浸出に関する試験)の浸出用液の調製における水質の確認の方法及び浸出液の分析方法について、必要な改正を行った。
当該改正においては、給水装置省令における基準項目のうち、水質基準項目又は水質管理目標設定項目については、これらと同様の分析(検査)方法を採用することとし、それ以外の項目(給水装置の構造・材質基準のみの項目)については、答申に示された考え方に準じて分析(検査)方法を改正した。なお、分析(検査)方法の詳細を別添1に、分析(検査)項目を具体的に判断するに当たっての基本的な考え方を別添2にそれぞれ示した。
4.改正給水装置省令及び改正給水装置試験告示の施行日
水質基準に関する省令(平成15年厚生労働省令第101号)等の施行日に合わせ、平成16年4月1日とした。
5.経過措置の考え方
(1) 浸出液に係る基準のうち「有機物(全有機炭素(TOC)の量)」については、平成17年4月1日からの施行とし、平成17年3月31日までの間は、従前の「有機物等(過マンガン酸カリウム消費量)」を基準項目とし、従前の基準値を適用するとした。
これは水質基準における経過措置と同様、検査実施機関におけるTOCの検査体制の整備期間を考慮して設定したものである。なお、平成16年4月1日以降においてTOCによる検査・認証が可能である場合は、検査・認証を、有機物等(過マンガン酸カリウム消費量)に代えて弾力的にTOCで行っても差し支えない。
(2) 「パッキンを除く主要部品の材料としてゴム、ゴム化合物又は合成樹脂を使用している水栓その他給水装置の末端に設置されている給水用具」の浸出液に係る基準について、当分の間、フェノール類の基準値を従前のとおり0.005mg/lとした。
これは、ゴム、ゴム化合物又は合成樹脂を水と接触する部分に多く使用している末端給水用具においては、ただちに新基準値を達成することが困難であり、代替材料使用による新基準値達成の目途が付く当分の間、従前の基準値に据え置いたものである。
(3) 給水装置の構造及び材質の基準に関する省令の一部を改正する省令の施行の際、現に設置され、若しくは設置の工事が行われている給水装置又は現に建築の工事が行われている建築物に設置されるものについては、その給水装置の大規模の改造のときまで、改正後の規定の適用を猶予することとした。
これは、給水装置が建築物に付属して設けられるものであるという特徴から、その建築物の工事が始まった時点で既に付随する給水装置についても発注が行われている場合があるという実情に鑑み、現場工事の手戻りや混乱が生じないよう、施行日時点で給水装置工事又は建築工事に着手している場合は、適用除外としたものである。また、「大規模の改造のときまで」適用を猶予したのは、給水装置の一部の補修等に伴い給水管を含めた連結する当該すべての給水装置を取り替えなければならない事態とならないよう配慮したものである。したがって、給水栓のみの取替や給水管の部分的な補修の場合、取替又は補修個所は新基準適合品を使用しなければならないが、その他の連結する給水装置については、必ずしも新基準適合品への取替を要するものではない。
別添1:「浸出用液の調製における水質の確認方法及び浸出液の分析方法」
別添2:「分析項目を具体的に判断するに当たっての基本的な考え方」
別添1
浸出用液の調製における水質の確認方法及び浸出液の分析方法
改正後の「給水装置の構造及び材質の基準に係る試験」(平成9年厚生省告示第111号)における浸出用液の調製における水質の確認方法及び浸出液の分析方法の具体例については、それぞれ表1、表2のとおりとする。
なお、試験操作の設定にあたっては、各検査機関の裁量が認められているところであるが、「水道水質検査のための妥当性評価ガイドラインについて」(平成24年9月6日付健水発0906第1~4号厚生労働省健康局水道課長通知)に基づき、各検査機関で定めた試験方法の妥当性を予め確認すること。
表1 浸出用液の調製における水質の確認方法
pH値 |
水質基準に関する省令の規定に基づき厚生労働大臣の定める方法(平成15年厚生労働省告示第261号。以下「基準検査方法告示」という。)の別表第31に定める方法 |
カルシウム、マグネシウム等(硬度) |
基準検査方法告示の別表第4、同別表第5、同別表第6、同別表第20又は同別表第22に定める方法 |
アルカリ度 |
「水道施設の技術的基準を定める省令の一部を改正する省令及び資機材等の材質に関する試験の一部改正について」(平成16年2月9日付健水発第0209001号厚生労働省健康局水道課長通知。以下「資機材試験方法通知」という。)の別紙方法1に定める方法 |
残留塩素 |
「水道法施行規則第17条第2項の規定に基づき厚生労働大臣が定める遊離残留塩素及び結合残留塩素の検査方法(平成15年厚生労働省告示第318号)」の別表第1、同別表第2又は同別表第3に定める方法 |
表2 浸出液の分析方法
カドミウム及びその化合物 |
基準検査方法告示の別表第3、同別表第5又は同別表第6に定める方法 |
水銀及びその化合物 |
基準検査方法告示の別表第7に定める方法 |
セレン及びその化合物 |
基準検査方法告示の別表第3、同別表第6、同別表第8又は同別表第9に定める方法 |
鉛及びその化合物 |
基準検査方法告示の別表第3、同別表第5又は同別表第6に定める方法 |
ヒ素及びその化合物 |
基準検査方法告示の別表第3、同別表第6、同別表第10又は同別表第11に定める方法 |
六価クロム化合物 |
基準検査方法告示の別表第3、同別表第4、同別表第5又は同別表第6に定める方法 |
亜硝酸態窒素 |
基準検査方法告示の別表第13に定める方法 |
シアン化物イオン及び塩化シアン |
基準検査方法告示の別表第12に定める方法 |
硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素 |
基準検査方法告示の別表第13に定める方法 |
フッ素及びその化合物 |
基準検査方法告示の別表第13に定める方法 |
ホウ素及びその化合物 |
基準検査方法告示の別表第5又は同別表第6に定める方法 |
四塩化炭素 |
基準検査方法告示の別表第14又は同別表第15に定める方法 |
1,4―ジオキサン |
基準検査方法告示の別表第14又は同別表第16に定める方法 |
シス―1,2―ジクロロエチレン及びトランス―1,2―ジクロロエチレン |
基準検査方法告示の別表第14又は同別表第15に定める方法 |
ジクロロメタン |
基準検査方法告示の別表第14又は同別表第15に定める方法 |
テトラクロロエチレン |
基準検査方法告示の別表第14又は同別表第15に定める方法 |
トリクロロエチレン |
基準検査方法告示の別表第14又は同別表第15に定める方法 |
ベンゼン |
基準検査方法告示の別表第14又は同別表第15に定める方法 |
ホルムアルデヒド |
基準検査方法告示の別表第19に定める方法 |
亜鉛及びその化合物 |
基準検査方法告示の別表第3、同別表第4、同別表第5又は同別表第6に定める方法 |
アルミニウム及びその化合物 |
基準検査方法告示の別表第3、同別表第5又は同別表第6に定める方法 |
鉄及びその化合物 |
基準検査方法告示の別表第3、同別表第4、同別表第5又は同別表第6に定める方法 |
銅及びその化合物 |
基準検査方法告示の別表第3、同別表第4、同別表第5又は同別表第6に定める方法 |
ナトリウム及びその化合物 |
基準検査方法告示の別表第3、同別表第4、同別表第5、同別表第6又は同別表第20に定める方法 |
マンガン及びその化合物 |
基準検査方法告示の別表第3、同別表第4、同別表第5又は同別表第6に定める方法 |
塩化物イオン |
基準検査方法告示の別表第13又は同別表第21に定める方法 |
蒸発残留物 |
基準検査方法告示の別表第23に定める方法 |
陰イオン界面活性剤 |
基準検査方法告示の別表第24に定める方法 |
非イオン界面活性剤 |
基準検査方法告示の別表第28又は同別表第28の2に定める方法 |
フェノール類 |
基準検査方法告示の別表第29又は同別表第29の2に定める方法 |
有機物(全有機炭素(TOC)の量) |
基準検査方法告示の別表第30に定める方法 |
味 |
基準検査方法告示の別表第33に定める方法 |
臭気 |
基準検査方法告示の別表第34に定める方法 |
色度 |
基準検査方法告示の別表第35又は同別表第36に定める方法 |
濁度 |
基準検査方法告示の別表第38、同別表第39又は同別表第41に定める方法 |
1,2―ジクロロエタン |
「水質基準に関する省令の制定及び水道法施行規則の一部改正等並びに水道水質管理における留意事項について」(平成15年10月10日健水発第1010001号厚生労働省健康局水道課長通知。以下「水質基準等改正通知」という。)の別添方法1及び同別添方法2に定める方法 |
アミン類 |
資機材試験方法通知の別紙方法4に定める方法 |
エピクロロヒドリン |
資機材試験方法通知の別紙方法2に定める方法 |
酢酸ビニル |
資機材試験方法通知の別紙方法2又は同別紙方法3に定める方法 |
スチレン |
資機材試験方法通知の別紙方法2又は同別紙方法3に定める方法 |
2,4―トルエンジアミン |
資機材試験方法通知の別紙方法5に定める方法 |
2,6―トルエンジアミン |
資機材試験方法通知の別紙方法5に定める方法 |
1,2―ブタジエン |
資機材試験方法通知の別紙方法2又は同別紙方法3に定める方法 |
1,3―ブタジエン |
資機材試験方法通知の別紙方法2又は同別紙方法3に定める方法 |
別添2
分析項目を具体的に判断するに当たっての基本的な考え方
浸出性能の判定基準項目のうち、味、臭気、色度及び濁度については、すべての器具、部品又は材料について分析を行うこととなるが、その他の項目については、水と接触する部分に使用されている材料の成分及びその材料の原料の成分のうち、浸出する可能性のあるものについてのみ分析を行えばよい。
味、臭気、色度及び濁度以外の分析項目を具体的に判断するに当たっての基本的な考え方を以下に示す。
1.金属材料
(1) JIS規格その他の規格(国際規格及び海外規格も含む。)において、すべての成分が規定されている材料の場合は、原則として規定されている成分のうち判定基準項目に該当するものについて分析を行えばよい。
(JIS規格材料の場合の例)
材料名 |
分析項目 |
銅(JIS H 3100のC1220) |
銅 |
銅合金(JIS H 5120のCAC406) |
銅、亜鉛、鉛、カドミウム(注) |
ステンレス鋼(JIS G 3459のSUS304,316) |
鉄、六価クロム |
鋳鉄及び鋼(JIS G 3101) |
鉄 |
(注)
1.カドミウムについては、亜鉛の不純物として含有される可能性があるため、分析項目に含めた。
2.座金、スプリング等として使用されているステンレスで、接触面積比がおおむね10cm2/l以下のものについては、上記分析項目について分析しなくてもよい。
(2) (1)以外の材料の場合は、判定基準項目のうち浸出する可能性のあるものすべてについて分析を行う。なお、成分試験等により、材料又はその原料に含有されていないことが証明されている場合、又は試験を実施しても浸出する量が基準値の1/10以下であることが証明できる場合は分析しなくてもよい。
2.金属以外の材料
判定基準項目のうち浸出する可能性のあるものすべてについて分析を行う。なお、成分試験等により、材料又はその原料に含有されていないことが証明されている場合、又は試験を実施しても浸出する量が基準値の1/10以下であることが証明できる場合は分析しなくてもよい。ただし、(代表的なゴム、樹脂等の分析項目の例)の表の項目については分析を行う。
(代表的なゴム、樹脂等の分析項目の例)
材料名 |
分析項目 |
|
ゴム |
EPDM(エチレンプロピレンジゴム) |
有機物(全有機炭素(TOC)の量)、フェノール類、亜鉛 |
NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム) |
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SBR(スチレンブタジエンゴム) |
有機物(全有機炭素(TOC)の量)、亜鉛 |
|
FKM(フッ素ゴム) |
||
Q(シリコンゴム) |
||
合成樹脂 |
ABS(アクリロニトリル,ブタジエン,スチレン共重合体) |
有機物(全有機炭素(TOC)の量) |
POM(ポリアセタール) |
||
PE(ポリエチレン) |
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PPE(ポリフェニレンエーテル) |
||
PPS(ポリフェニレンサルファイト) |
||
PTFE(ポリテトラフルオロエチレン) |
||
ポリアミド(ナイロン) |
||
PBT(ポリブチレンテレフタレート) |
||
PVC(塩化ビニル) |
有機物(全有機炭素(TOC)の量)、鉛、亜鉛 |
|
合成樹脂塗料 |
一液性エポキシ樹脂 |
有機物(全有機炭素(TOC)の量)、フェノール類、シアン、エピクロロヒドリン、アミン類、ホルムアルデヒド、酢酸ビニル、スチレン、1,2―ブタジエン、1,3―ブタジエン |
二液性エポキシ樹脂 |
有機物(全有機炭素(TOC)の量)、フェノール類、シアン、エピクロロヒドリン、アミン類、2,4―トルエンジアミン、2,6―トルエンジアミン、ホルムアルデヒド、酢酸ビニル、スチレン、1,2―ブタジエン、1,3―ブタジエン |
|
アクリル樹脂 |
有機物(全有機炭素(TOC)の量)、ホルムアルデヒド、酢酸ビニル、スチレン、1,2―ブタジエン、1,3―ブタジエン |
(注)
1.添加剤等として、基準項目に該当する物質を含有している場合は、それらについても分析を行う検討の対象とする。
2.パッキン、ガスケット等として使用されているゴム及び樹脂で、接触面積比がおおむね10cm2/l以下のものについては、上表のうち有機物(全有機炭素(TOC)の量)、フェノール類以外は分析しなくてもよい。
3.その他
水と接触する部分がライニングされているものについては、ライニング材の成分のみを対象とすればよい。ただし、めっき(溶融めっきを除く。)、塗装の場合は、地金等の本体材料の成分も対象とする。