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○食品衛生法施行規則及び食品、添加物等の規格基準の一部改正について
(平成13年6月7日)
(食発第170号)
(各都道府県知事・各政令市長・各特別区長あて厚生労働省医薬局食品保健部長通知)
食品衛生法施行規則(昭和23年厚生省令第23号。以下「規則」という。)の一部が食品衛生法施行規則の一部を改正する省令(平成13年厚生労働省令第128号)により、食品、添加物等の規格基準(昭和34年12月厚生省告示第370号。以下「告示」という。)の一部が食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件(平成13年厚生労働省告示第212号及び第213号)により、平成13年6月7日付でそれぞれ改正されたので、下記の事項に留意の上、その運用に遺憾のないようにされたい。
記
第1 改正の要旨
近年、腸炎ビブリオによる食中毒が多発し、なかでも、血清型O3:K6による食中毒が生食用魚介類加工品を主な原因とし、夏期に集中的に発生している。このため、規則及び告示の一部を改正し、新たに生食用鮮魚介類等について表示基準、成分規格、加工基準及び保存基準を設ける等所要の措置を講じたものである。
第2 改正の内容
1 規則関係
・ 食品衛生法(昭和22年法律第233号)第11条に基づき表示が必要とされる食品について規則別表第3を改正し、同表第11号のイに、新たに「切り身又はむき身にした鮮魚介類(生かきを除く。以下同じ。)であって生食用のもの(凍結したものを除く。)」を追加したこと。
また、同表第7号及び同表第11号のロに包含されていた「ゆでがに」について、同表第11号のイに規定したこと。
・ 生食用鮮魚介類の表示
規則別表第3に追加したことに伴い、規則第5条を改正し、第1項のイ~ハ、ホ及びヘに掲げる事項及び生食用である旨の表示を要することとしたこと。
・ ゆでがにの表示
規則第5条第1項のイ~ハ、ホ及びヘに掲げる事項及び飲食に供する際に加熱を要するかどうかの別の表示を要することとしたこと。
2 告示関係
・ 食品一般の製造、加工及び調理基準に新たに基準を設け、魚介類を生食用に調理する場合は、魚体を飲用適の水で十分に洗浄し、製品を汚染するおそれのあるもの(えらやうろこ等)を除去しなければならないこととしたこと。
・ 「ゆでだこ」、「ゆでがに」、「冷凍食品(生食用冷凍鮮魚介類)」及び「生食用鮮魚介類(切り身又はむき身にした鮮魚介類(生かきを除く。)であって、生食用のもの(凍結したものを除く。)に限る。以下同じ。)」及び「生食用かき」の規格基準について
ア 成分規格について
(ア) 新たに腸炎ビブリオに関する成分規格を設けたこと。「ゆでだこ」及び「飲食に供する際に加熱を要しないゆでがに」については、陰性であること、「生食用鮮魚介類」、「むき身の生食用かき」及び「冷凍食品(生食用冷凍鮮魚介類)」については、最確数1gあたり100以下としたこと。
(イ) 従来、成分規格が定められていた冷凍ゆでだこ及び冷凍食品の範疇であった冷凍ゆでがにについては、引き続き細菌数及び大腸菌群を成分規格としたこと。
イ 加工基準について
(ア) 加工に使用する水は、飲用適の水、殺菌した海水又は飲用適の水を使用した人工海水(以下「人工海水」という。)を使用することとしたこと。
(イ) 殺菌海水とは、紫外線等の処理により殺菌された海水をいい、少なくとも腸炎ビブリオ陰性であること。
(ウ) 第213号における生食用鮮魚介類の加工基準中、・の処理を行っていない鮮魚介類については、化学的合成品たる添加物の使用規定は適用されないこと。
ウ 保存基準について
(ア) 冷凍ゆでがににあっては、-15℃以下で保存し、飲食の際に加熱を要しないゆでがに(冷凍ゆでがにを除く。)にあっては、10℃以下で保存することとしたこと。
(イ) ゆでがについては清潔で衛生的な容器包装に入れ保存しなければならないこととしたが、店頭販売時において、二次汚染防止策が講じられている場合にあっては、必ずしも容器包装に入れる必要はないこととしたこと。
エ 試験方法について
(ア) 新たに腸炎ビブリオの試験法を定めるとともに、同等以上の性能を有すると認められる試験法を認めたこと。
(イ) 「同等以上の性能を有すると認められる試験法」とは、告示において示されている試験法と比較して、特異性及び検出感度等において同等又は優れている試験法のことをいうものであり、別途通知することとする。
第3 施行期日
平成13年7月1日より施行すること。ただし、表示の基準及び生食用鮮魚介類の加工基準中、海水の使用に関する規定は、平成14年6月1日より施行すること。
第4 運用上の注意
1 規則関係
生食用である旨の表示は、「生食用」、「刺身用」、「そのままお召し上がりになれます。」等のように記載し、飲食に供する際に加熱を要するかどうかの別の表示は、「加熱の必要はありません。」、「加熱用」、「加熱してお召し上がり下さい。」等のように記載すること。
2 告示関係
鮮魚介類には長期間の保存を目的とした塩蔵、調味液に漬け込んだものは含まれないが、細切、軽度の撤塩、生干し、調味等簡単な加工を施したものを含むものであること。
また、湯通しした生食用の貝類やかにについても、「生食用鮮魚介類」の規格基準が適用になるものであること。
3 その他
・ 腸炎ビブリオは夏期の海水中に存在することから、生産段階における衛生対策のより一層の推進が必要であり、当職から水産庁に要請したので、食品衛生担当部局と水産担当部局との連携を密にし、対応されたい。
・ 腸炎ビブリオ食中毒対策を推進するために、水産加工施設の把握を行い、今回設けた規格基準等の遵守に関する監視指導を実施されたい。
・ 第5に示す関係営業者に対する指導及び消費者に対する普及啓発を積極的に実施されたい。
第5 その他
1 関係営業者に対し、以下の事項について、管下の関係営業者に対して指導されたい。
・ 漁獲後の魚介類及び活魚の取扱いについて
ア 漁獲後の魚介類を輸送等する場合にあっては、殺菌した海水又は腸炎ビブリオの汚染がない海水を利用するよう努めること。
イ 水槽等に海水を使用する際には、殺菌した海水、人工海水又は腸炎ビブリオの汚染がない海水(以下「殺菌海水等」という。)を使用するよう努めること。
ウ 処理する場合には他の食品等と十分な距離を置くか又は隔壁を設ける等により他の食品等を汚染しないこと。
・ 未加工品の魚介類及び殻付きの貝の取扱いについて
ア 洗浄等に海水を使用する場合には殺菌海水等の使用に努めること。
イ 品質上問題がある場合を除き、4℃以下で保存するよう努めること。
ウ 処理する場合には他の食品等と十分な距離を置くか又は隔壁を設ける等により他の食品等を汚染しないこと。
・ 加工時等に使用する海水等について
加工時等に使用する殺菌海水及び人工海水は、使用に際し用時調整し、使用水の汚れに応じて適時交換し、再利用は避けること。
・ 生食用鮮魚介類等の保存について
品質上問題がある場合を除き、4℃以下で保存するよう努めること。
・ 調理され容器包装に入れ、一定の期限を設け販売される寿司の取扱いについて
10℃以上で保存され販売される寿司については、消費期限等を設定した科学的根拠を確認すること。
・ 寿司及び刺身等の魚介類調理品の取扱いについて
ア すし原料及び刺身等については、調理基準を遵守するとともに、品質上問題がある場合を除き、4℃以下で保存するよう努めること。
イ 器具、容器包装等を介した二次汚染を防止すること。
ウ 調理後は可能な限り速やかに提供することとし、冷蔵保存の状態を出てから消費されるまで最大でも2時間以内とすること。
2 消費者に対する普及啓発について
消費者に対して、家庭での腸炎ビブリオ食中毒予防マニュアル(平成12年5月31日事務連絡)等を参考として、特に以下の事項について行政自ら又は関係営業者を通じた普及啓発活動を積極的に行うこと。
・ 生食用である旨の表示がない切り身又はむき身の鮮魚介類については、生食しないこと。また、殻付きの貝類を生食する場合は、むき身処理の際に飲用適の水で十分洗浄すること。
・ 飲食店等において提供される寿司及び刺身等の魚介類調理品は、冷蔵保存下を出てから速やかに消費すること。
・ 家庭においても生食用鮮魚介類等は、可能な限り4℃以下で冷蔵保存するとともに、冷蔵保存下を出てから2時間以内に消費すること。