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○乳及び乳製品の成分規格等に関する省令及び食品、添加物等の規格基準の一部改正について

(平成14年12月20日)

(食発第1220004号)

(各都道府県知事・各政令市長・各特別区長あて厚生労働省医薬局食品保健部長通知)

乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(昭和26年厚生省令第52号。以下「乳等省令」という。)及び食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号。以下「告示」という。)の一部が、それぞれ平成14年12月20日厚生労働省令第164号及び厚生労働省告示第387号をもって改正されたので、下記の事項に留意の上、その運用に遺憾のないようにされたい。

第1 改正の趣旨

平成12年に発生した加工乳等による大規模な食中毒事故の再発防止を図るとともに、病原菌の耐熱性に関する新たな知見や国際基準との整合性等を踏まえ、乳等省令及び告示の一部を改正し、所要の措置を講じたものである。

第2 改正の内容

1 乳等省令関係

(1) 製造の方法の基準について

ア 脱脂粉乳の製造基準について

脱脂粉乳に新たに製造基準を設定し、原則として製造工程中の原料の温度管理について、黄色ブドウ球菌が増殖し、かつ、エンテロトキシンを産生する温度帯(10℃を超え、48℃以下)を避けることとしたこと。ただし、乳からクリームを分離する工程等において加熱殺菌を行うまでに原料が前述の温度帯となる場合は、原料が滞留することのないよう連続して行い、加熱殺菌後の濃縮した原料の貯乳等において加熱殺菌から乾燥を行うまでの間に原料が前述の温度帯となる場合は、外部からの微生物汚染がないように機械設備を閉鎖系とするか、前述の温度帯となる時間を6時間未満とすることとしたこと。また、加熱殺菌は、牛乳の例により加熱殺菌することとしたこと。

イ 乳の殺菌基準について

これまで牛乳の製造の方法の基準として、摂氏62度から摂氏65度までの間で三十分間加熱殺菌するか、又はこれと同等以上の殺菌効果を有する方法で加熱殺菌することとされていたが、新たにQ熱病原体(Coxiellaburnetii)の耐熱性に関する知見が得られたことから、保持式により摂氏63度で30分間加熱殺菌するか、又はこれと同等以上の殺菌効果を有する方法で加熱殺菌することとしたこと。また、特別牛乳についても、殺菌する場合は保持式により摂氏63度から摂氏65度までの間で30分間加熱殺菌することとしたこと。

(2) 成分規格について

乳に残留するゲンタマイシン、シロマジン、スペクチノマイシン、ネオマイシンについて、残留基準値及び試験法を新たに設定したこと。

(3) 容器包装について

ア 牛乳、特別牛乳、殺菌山羊乳、部分脱脂乳、脱脂乳、加工乳及びクリームの販売用の合成樹脂製の容器包装について、直接内容物に接触しない部分にナイロン及びポリプロピレンの使用を認めることとしたこと。

イ はっ酵乳、乳酸菌飲料及び乳飲料の販売用の容器包装であって、合成樹脂製容器包装、合成樹脂加工紙製容器包装及び合成樹脂加工アルミニウム箔製容器包装の内容物に直接接触する部分について、ポリプロピレンを主成分とする合成樹脂又はポリエチレンテレフタレートを主成分とする合成樹脂の使用を認めることとしたこと。

内容物に直接接触する部分にポリプロピレンを主成分とする合成樹脂を使用した容器包装についての重金属、蒸発残留物等の各試験法については、従来のポリエチレン製容器包装の試験法を準用することとしたこと。また、内容物に直接接触する部分にポリエチレンテレフタレートを主成分とする合成樹脂を使用した容器包装についての重金属、蒸発残留物等の各試験法については、従来の調製粉乳のポリエチレンテレフタレートラミネート容器包装の試験法を準用することとしたこと。

ウ ポリプロピレンを主成分とする合成樹脂の成分規格として、n―ヘキサン抽出物については5.5%以下、キシレン可溶物については30%以下としたが、これは冷蔵時の耐衝撃性を考慮して設定したものであること。

エ 調製粉乳の容器包装については、これまで認められてきた金属缶と合成樹脂ラミネート容器包装を用いる容器包装として、新たに組合せ容器包装を認めることとしたこと。

(4) その他

ア ナチュラルチーズの定義について、たんぱく質が凝固したものである旨を追加したこと。

イ 脱脂粉乳への他物の使用禁止規定の除外として、たんぱく質量の調整のために使用される乳糖並びに生乳、牛乳、特別牛乳、部分脱脂乳及び脱脂乳から過により得られたものの使用を認めたこと。

2 告示関係

(1) 食品一般の製造、加工及び調理基準について

生乳又は生山羊乳を使用して食品を製造する場合の生乳又は生山羊乳の加熱殺菌の規定として、62℃で30分間加熱殺菌するか、又はこれと同等以上の殺菌効果を有する方法で加熱殺菌しなければならないとされていたが、乳等省令の改正に伴い、保持式により63℃で30分間加熱殺菌するか、又はこれと同等以上の殺菌効果を有する方法で加熱殺菌することとしたこと。

(2) 食肉及び食鳥卵に残留するゲンタマイシン、シロマジン、スペクチノマイシン、ネオマイシンについて、残留基準値及び試験法を新たに設定したこと。

第3 運用上の注意

1 脱脂粉乳の製造基準等について

(1) クリームの分離後は速やかに10℃以下に冷却すること。また、滞留とは、乳が完全にタンク内に貯乳されている状態のみならず、タンクの入り口より原料乳が流入しつつ、出口より流出している状態のものも含むものであること。

(2) 外部からの微生物による汚染を防止する構造とは、タンクの空気取入れ口等についても考慮し、対策を施す必要があるものであること。

(3) 各工程の作業開始時及び終了時等に設備機械より回収した原料を脱脂粉乳の製造に用いる場合には、回収後、直ちに冷却し、10℃以下で管理すること。

(4) 脱脂粉乳の製造基準の他、以下の点についても関係者を指導すること。

ア 搾乳後の生乳は速やかに10℃以下に冷却すること。

イ 生乳の受入れの際には10℃以下のものを受入れること。

ウ 製品の保管は湿気を帯びることのないよう管理すること。

エ 全粉乳、加糖粉乳、調製粉乳、ホエイパウダー等の脱脂粉乳以外の粉乳についても脱脂粉乳の製造基準に準じて指導すること。

(5) 他物の使用禁止規定の除外として、たんぱく質量の調整のために使用が認められた牛乳等からろ過により得られたものとは、牛乳等から限外ろ過により得られた乳たんぱく質が濃縮されたもの又は乳たんぱく質及び乳脂肪が除去されたものであり、コーデックス(FAO/WHO合同食品規格計画)に定められた国際規格であること。

2 乳の殺菌基準について

(1) 保持式により摂氏63度で30分間加熱殺菌を行う場合には、摂氏63度に達するまでに、右図の点線のように実際の原料の温度を超えないように直線的に温度が上昇したとした場合に、経過している時間が少なくとも20分以上経過しているものであること。

(2) 改正後の規定中「これと同等以上の殺菌効果を有する方法で加熱殺菌すること」とは、具体的には、自動制御装置をつけた連続式殺菌装置により摂氏65度以上で30分以上加熱殺菌する方法、又は昭和43年8月9日付環乳第7059号にて示されている方法であること。

(3) ナチュラルチーズの製造に未殺菌乳を使用する場合には、製造工程中において、保持式により摂氏63度で30分間、又は同等以上の殺菌効果を有する方法により加熱殺菌を行うよう指導すること。また、二次汚染についても考慮し、HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point:危害分析重要管理点)の考え方に基づく衛生対策を指導すること。なお、ソフト及びセミソフトタイプのナチュラルチーズについては、これまでと同様に製品中のリステリア菌検査の実施等を指導すること。

3 容器包装について

ポリプロピレンを主成分とする合成樹脂又はポリエチレンテレフタレートを主成分とする合成樹脂とは、それぞれ基ポリマー中のプロピレン又はポリエチレンテレフタレートの含有率が50%以上のものをいうこと。

今般、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする合成樹脂製容器包装等がはっ酵乳、乳酸菌飲料及び乳飲料の販売用の容器包装へ使用が認められたことにより、冷蔵での保管が必要とされる製品が誤って常温流通・保存されることのないように十分な対策を講じると共に、消費者に対しても冷蔵保管が必要であることが明確となるような表示を行う等の措置を施すよう営業者を指導すること。

4 その他

ナチュラルチーズの定義については、コーデックス規格の変更に伴い、たんぱく質が凝固したものである旨を追加し、その他の部分についても整合性を図ったものであること。

第4 施行期日

乳及び乳製品の成分規格等に関する省令及び食品、添加物等の規格基準の一部改正については、公布の日から施行することとされたが、乳、食肉及び食鳥卵に残留するゲンタマイシン、シロマジン、スペクチノマイシン及びネオマイシンの残留基準値及び試験法の改正については平成15年7月1日から、脱脂粉乳の製造基準及び温度管理並びに温度記録の保存の規定については平成16年4月1日から施行するものであること。

また、乳の殺菌基準の改正については平成15年12月31日まで従前の例によることができるとされたが、期間内であってもできるだけ速やかに表示の変更を行い、改正後の規定に適合させるよう指導されたい。なお、製造方法の基準として、牛乳の例によることとなっているものについても平成15年12月31日まで従前の例によることができるものであること。

今回の改正内容の他、平成14年8月28日に薬事・食品衛生審議会より答申を受けた内容については、追って改正することとしていることを申し添える。