↓プレートにシールし、37℃恒温漕に重しをして沈めて2時間以上置く。
3) PBS―Tでプレートを3回洗浄する。
4) 表6に示したようにプローブの調製を行い、98℃、5分間加熱処理、直ちにon iceする。
表6 プローブの調製(1検体当たり)
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プローブコントロール |
RING1-Tp(a),(b)ビオチン標識プローブ |
RING2-Plateビオチン標識プローブ |
100pmol/μl プローブ(プローブコントロールはTE) |
TE 1μl |
RING1-Tp(a)プローブ RING1-Tp(b)プローブ 各0.5μl |
RING2-Plateプローブ1μl |
100μg/mlサケ精子DNA注8) |
5μl |
5μl |
5μl |
3倍濃度1.5M NaCl buffer |
3.3μl |
3.3μl |
3.3μl |
DDW |
0.7μl |
0.7μl |
0.7μl |
注8):サケDNAはDNA量10mg/mlのものをT10E1緩衝液で100μg/mlに希釈したもの
5) 表7に示したようにハイブリダイゼーション液を調整し、4)のプローブ・サケ精子DNA混合液に合わせる。
表7 ハイブリダイゼーション液(1検体当たり)注9)
3倍濃度1.5M NaCl buffer |
30μl |
ホルムアミド |
50μl |
10%Tween20 |
1μl |
DDW |
9μl |
注9):ハイブリダイゼーション液は使用前に冷やしておく。
6) 5)の混合液を各ウェルに100μlずつ入れる。
↓プレートにシールをし、45℃恒温漕に重しをして沈め、6時間以上あるいは1夜置く。
7) シールのプレート側を内側にして巻き込むように剥がす(プレート内のDNAを撒き散らさないように包み込む)。45℃に温めておいたPBS―Tで3回洗浄する。プレート洗浄時にはプレートをペーパータオル等で包み、その後叩き水分を完全に除くと同時にDNAを周りに撒き散らさないように細心の注意を払う。使用したペーパータオル、洗浄液等は1000ppmの次亜塩素酸ソーダに漬ける。
ストレプトアビジン標識ペルオキシダーゼ(1%BSA+PBS―Tで適宜希釈したものを全てのウェルに100μl入れる。ストレプトアビジン標識ペルオキシダーゼを入れた容器は使用後廃棄するか高圧滅菌し、酵素を不活化する。
↓室温1時間置く(軽く振とうするとよい)。
8) プレートをPBS―Tで5回洗浄する。
9) 全てのウェルに発色液注10)を100μl入れる。
注10):TMB1mg、DMS01ml、phosphate―citrate buffer9ml(0.2Mリン酸水素二ナトリウム25.7ml、0.1Mクエン酸24.3ml、DDW50ml、pH5.0)を作製し、30%過酸化水素水2μlを使用直前に入れる。
↓室温15分間(プレートは遮光しておく)。
10) 停止液(4N硫酸)を50μl入れる。
11) 450nmで吸光度を測定する。
12) 判定:コントロールに比べOD値が2倍以上、かつ0.2以上の差が認められた時に陽性とする。
B ドットハイブリダイゼーションによるノロウイルス遺伝子確認検査
この方法はメンブレンにDNAを吸着させて行う方法である。他のウイルスでは一般的にこの方法が用いられている。
1 必要な器具と試薬
1) 器具
恒温水槽、ハイブリダイゼーションインキュベーター、トランスイルミネーター、ヒートシーラー、ポジティブチャージナイロンメンブレン:Nylon menbranes,positively chargedベーリンガー Cat.No.1209272、ハイブリダイゼーションバッグ:ニッポンジーン,Cat.No.533―19171、タッパー:井内Code.No.45―068―022)
2) 試薬
塩化ナトリウム(NaCl)、濃塩酸、DDW、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、マレイン酸、塩化マグネシウム(MgCl2)
20×SSC:NaCl100gを900mlのDDWに溶解(68℃)し、濃塩酸でpH7.2に調整後、DDWで,1000mlとする。
10%SDS:SDS100gを900mlのDDWに溶解(68℃)し、濃塩酸でpH7.2に調整後、蒸留水を加え全量を1000mlとする。
N―Lauroylsarcosine:SIGMA,Cat.No.L―5777
ホルムアミド=Wako,Cat.No.068―00426
Blocking reagent:ベーリンガーCat.No.1096176
NBT/BCIP:ベーリンガーCat.No.1681451
Buffer1:0.1Mマレイン酸;0.15M NaCl(pH7.5,20℃)pHの調整はpH6.5くらいまで固形NaOH(8.5g)で、それ以降は1N NaOHを加えて調整する。
洗浄Buffer:Buffer1に0.3%となるようにTween20を加える。
ブロッキング溶液:Buffer1でBlocking reagentを1%とする。
検出溶液:100mM Tris―HCl;100mM NaCl(pH9.5,20℃)10mlに2.5M MgCl2を200μl加える(最終濃度50mM MgCl2)
Streptavidin Alkaline Phosphatase:Promega,Cat.No.V5591
ビオチン標識プローブ:プローブにビオチンを標識したもの。
2 操作法
1) アガロースゲル電気泳動でNV陽性バンドが認められた部分からDNAを抽出後、100℃で5分間熱変成し、1μlをナイロンメンブレンにスポットし風乾する(上記ゲルからDNA抽出を参照)。
2) トランスイルミネータ上でスポットした面を下にして3分間UV照射する。それをハイブリダイゼーションする。
3) 溶液量は、約20cm2のメンブレンで計算してあるので、メンブレンの面積によって以後適宜調整する。
4) ハイブリダイゼーション液(表8)5mlにビオチン標識プローブを50μl(200ng/ml)加えプローブ溶液を調整し、沸騰水中で5分間(98℃、5分間)加熱しプローブ溶液を調整する。
適量のプローブ溶液(2~5ml)をメンブレンの入っているバックに加え、バッグ中から気泡を追い出した後ヒートシーラーでシールする。
5) 42℃の恒温水槽中で6時間~一夜ハイブリダイゼーションする。
表8 ハイブリダイゼーション溶液
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最終濃度 |
50ml作るのに必要な量 |
20×SSC |
5× |
12.5ml |
10%Blocking reagent |
2% |
10ml |
10%N-Lauroylsarcosine |
0.1% |
0.5ml |
10%SDS |
0.02% |
0.1ml |
ホルムアミド |
50% |
25ml |
DDW |
|
2ml |
6) バッグからメンブレンを取り出し、タッパーに移し0.1%SDSを含む2×SSC(表9参照)20mlで5分間、室温で2回洗浄する。その後、0.1%SDSを含む0.1×SSC(表9参照)20mlで15分間、42℃で2回洗浄する。
使用したプローブ溶液は、数回使用できるので、捨てずに取っておく。使用前には、沸騰水中で5~10分間熱変成する。0.1%SDSを含む0.1×SSCは、あらかじめハイブリダイゼーション温度と同じ温度に温めておく。
表9 洗浄液の組成
|
2×SSC,0.1%SDS |
0.1×SSC,0.1%SDS |
20×SSC |
50ml |
2.5ml |
10%SDS |
5ml |
5ml |
DDW |
445ml |
492.5ml |
Total |
500ml |
500ml |
7) メンブレンを洗浄20mlのBuffer1に10%Tween20を600μl加えたBufferで1分間洗浄する。
8) ブロッキング溶液20mlで30分間、室温でインキュベートする。
9) ブロッキング溶液200mlでStreptavidin Alkaline Phosphataseを5000倍希釈した溶液20mlにメンブレンを浸漬し、30分間室温でインキュベートする。
10) 洗浄Buffer25mlで15分間室温2回洗浄する。
11) 検出溶液20mlで2分間、平衡化のためインキュベートする。
12) 検出溶液5mlにNBT/BCIP stock溶液100μlを加え、発色基質溶液を調整する。加えるstock溶液は50μlでも行える。
13) 検出溶液で平衡化したメンブレンをハイブリダイゼーションバッグに移し、発色気質溶液を3~5ml加え、気泡を追い出した後ヒートシーラーでシールする。発色するまで、静置する。発色中は、振とうしたり攪拌したりしない。
14) 発色が確認できたら、メンブレンをTE Buffer 30~50mlで5分間洗浄して、反応を停止させる
3 判定
スポットが紫色に染色されたものを陽性とする。判定は必ずゲルの陰性コントロールと比較して行う。
Ⅲ リアルタイムPCR法によるノロウイルスの定量的検出法
リアルタイムPCRはRT―PCR法の1stPCRよりも検出感度が良く、PCRにおける増幅産物に蛍光プローブが高い特異性で反応することから、DNAの増殖と定量そしてハイブリダイゼーションが同時に行われ、電気泳動、確認試験も行う必要がなく、短時間で結果が得られるという利点がある。一方、機器、試薬が高価であるという欠点も有する。
ここでは、ABI PRISM 7000(Applied Biosystems)を使った方法を示す。なお、Kageyamaら文献4)のG2用のプライマー(図3参照)およびプローブではアルファトロン型を検出できないので、少し配列を変えたものを用いている。
1 必要な器具と試薬
1) 器具
ABI PRISM 7000、マイクロピペット、Micro Amp Optical96―Well Reaction Plate (ABI Cat.No.N801―0560)、Micro Amp Optical Cap,8caps/strip(ABI Cat.No.4323032)〔操作方法はMicro Amp Optical Capを使用した場合を記すが、Optical Adhesive Covers(ABI Cat.No.4311971)、Optical Cover Compression pads(ABI Cat.No.4312639)、Adhesive Seal Applicators(ABI Cat.No.4333183)を用いても良い〕
2) 試薬
Micro Amp Base(ABI Cat.NO.N801―0531)、Taq Man Universal PCR Master Mix(ABI Cat.No.4304437)、Taq Manプローブ、プライマー
Distilled water((Deionized,Sterile,autoclaved,DNase free、RNase free)和光純薬工業 Cat.No.318―90105、(以下「Distilled water」という。))
2 反応プレートの準備
ふん便および食品からのRNA抽出、cDNAの合成は前項1のRT-PCR法と全く同一の方法で行う。
表10に示した反応液を調整する。なお、リアルタイムPCRではG1とG2を別々に行う。反応液量は食品の時には50μlが望ましい。ふん便材料の時には反応液量35μlあるいは25μlで行ってもよい。
表10 反応液の調整
試薬 |
G1 |
G2 |
Distilled water |
13.88μl |
16.54μl |
Taq Man Universal Master MIX |
25.0μl |
25.0μl |
100pmol/μlプライマー |
COG1F 0.2μl |
COG2F 0.2μl |
COG1R 0.2μl |
ALPF 0.2μl |
|
COG2R 0.2μl |
||
4pmol/μlTaq Manプローブ |
RING1-TP(a)注11) 4.29μl |
RING2AL-TP注13) 2.86μl |
RING1-TP(b)注12) 1.43μl |
||
計 |
45.0μl |
45.0μl |
注11):RING1―TP(a):5’―VICあるいはFAM―AGA TYG CGA TCY CCT GTC CA―TMRA―3’
注12):RING1―TP(b):5’―VICあるいはFAM―AGA TCG CGG TCT CCT GTC CA―TMRA―3’
注13):RING2AL-TP:5’―FAMあるいはVIC―TGG GAG GGS GAT CGC RAT CT―TMRA―3’または、RING2―TP:5,―FAMあるいはVIC―TGG GAG GGC GAT CGC AAT CT―TMRA―3’
2) プレート(Micro Amp Optical 96―Well Reaction Plate)のウェルに45.0μlずつ反応液を入れる。コントロールDNAは3ウェル以上、サンプル、陰性コントロール(NTC:No Template Control)は2ウェル使用する。
3) cDNA5μlを2ウェルずつに加え、蓋(Micro Amp Optical Cap,8caps/strip)を軽く閉める。
4) コントロールDNA G1とG2を別々に(107コピー/5μl)を107から100コピーまで10倍階段希釈し、5μlを3ウェルずつに加え、蓋を軽く閉める。
5) NTCとしてDDW5μlを2ウェルずつに加え、蓋を軽く閉める。
6) プレートをMicro Amp Baseにセットし、蓋をしっかり閉める。
7) ウェルの壁についている反応液を遠心して落とす。(遠心機が無い場合はプレートを軽く叩いたり、振り下ろしたりする。
8) Instrumentタブをクリックし、サーマルサイクラー条件を以下のように設定する。
50℃,2分、95℃,10分を1回、次いで95℃,15秒、56℃,1分を45回、25℃で保存。
9) ランを開始する。
10) ランが終了したら、データ解析をする。
11) Threshold Lineを設定する。Amplification上に全てのデータを表示し、グラフ上の緑色の線を増幅曲線の指数関数的増幅領域の中央に設定し、Analysisをクリックする。緑色の線は、マウスでドラッグするか、Anaiysis Setting内のThresholdフィールドに数値を入力することで移動する。
12) Standard Curveタブをクリックし、Standard Curveを表示する。右側のR2が0.990~1であればよい(1に近いほどよい)。
13) Reportタブをクリックし、Report画面を表示させ、下の画面のウェルをハイライト選択し、解析データを表示させる。(コピー数はPlate画面でも確認できる。)
2つのウェルにおいて、実測値10コピー以上で陽性とする。
なお、リアルタイム用ノロウイルスG1,G2コントロールDNAの分与を希望する機関は、国立感染症研究所感染症情報センター第六室 西尾治室長あて、電子メイル(nishio@nih.go.jp)で依頼すること。
図2 ノロウイルスORF1部分のプライマーとプローブの位置
図3 ノロウイルスORF2部分のプライマーとプローブの位置
表11 ノロウイルスのプライマーとプローブの塩基配列
Ⅳ 文献
1) 藤本嗣人、西尾治他:兵庫県立健康環境科学研究センター研究報告 投稿中
2) Inoue S.et al.:J.Clin.Microbiol.28:1469(1990)
3) 西尾治他:日本臨床60:1175(2002)
4) Kageyama K et al;J.Clin.Microbiol.41:1548(2003)
5) Moe C.I.et al.:J.Clin.Microbiol.32:642(1994)
6) Lew J.F.et al.:J.Virol.68:3391(1994)
7) 林直志他:未発表
8) Saito H.et al.:Microbiol.Immunol.42:439(1998)
9) 山崎謙治他:感染症学雑誌74:470(2000)
10) Ando T. et al.:J.Clin.Microbiol.33:64(1995)
11) 篠原美千代他:第48回日本ウイルス学会学術集会抄録P264(2000)
12) Kobayashi S.et al.:Microbiol.Immunol.44:687(2000)
13) 西尾治他:未発表
14) 石古博昭他:未発表
(国立感染症研究所感染症情報センター第六室 西尾治)