○ノロウイルスの検出法について
(平成15年11月5日)
(食安監発第1105001号)
(各都道府県・各保健所設置市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬食品局食品安全部監視安全課長通知)
ノーウォーク様ウイルスの検査法については、「ノーウォーク様ウイルス(NLV)のRT―PCR法について(平成13年11月16日付け食監発第267号)」(以下「NLVの検出法」という。)により示しているところですが、本年8月29日に食品衛生法等の一部を改正する法律(平成15年法律第55号)の一部が施行された際に、近時の学会の状況等を踏まえて、食中毒事件票中の「小型球形ウイルス」を「ノロウイルス」に改めたことから、今般、検査法を改訂し、別添のとおり「ノロウイルスの検出法」としてとりまとめましたので、検査の実施に当たっては、この方法により実施するようお願いいたします。
なお、NLVの検出法については廃止します。
記
1 NLVの検出法からの主な変更点は以下のとおりです。
① 大型の貝の処理方法(中腸腺の内容液を用いる方法)を記載したこと。
② 検体からのRNA抽出方法として、QIAamp Viral RNA Miniキットを用いた方法のみを例として記載したこと。
③ 逆転写反応を行う方法として、Super Script Ⅱを用いた方法のみを例として記載したこと。
④ RNA抽出時のコントロールとしてのポリオウイルス2型(Sabin株)に代えて、エコー9型ウイルスHill株を用いることとし、そのプライマーを設定したこと。
⑤ プライマー及びプローブを新たに設定したこと。
⑥ リアルタイムPCR法によるノロウイルスの検出方法を記載したこと。
⑦ 機器、試薬を書き改めたほか、細部について加筆したこと。
2 既にお知らせしているように、電子顕微鏡による検査で、小型球形ウイルスの形態は示すもののノロウイルスと同定できない場合、又はPCR法あるいは細胞培養法等でサポウイルス(サッポロウイルス)及びアストロウイルスが検出された場合には、食中毒事件票の病因物質欄には「ノロウイルス以外の小型球形ウイルス」と記載するか、又は同定されたウイルス名を記載し、病因物質の種別欄では「その他のウイルス」に分類してください。
○ノロウイルスの検出法について
(平成15年11月5日)
(食安監発第1105001号)
(各検疫所長あて医薬食品局食品安全部監視安全課長通知)
(公印省略)
ノーウォーク様ウイルスの検査法については、「ノーウォーク様ウイルス(NLV)のRT―PCR法について(平成13年11月16日付け食監発第267号)」(以下「NLVの検出法」という。)により示しているところですが、本年8月29日に食品衛生法等の一部を改正する法律(平成15年法律第55号)の一部が施行された際に、近時の学会の状況等を踏まえて、食中毒事件票中の「小型球形ウイルス」を「ノロウイルス」に改めたことから、今般、検査法を改訂し、別添のとおり「ノロウイルスの検出法」としてとりまとめましたので、検査の実施に当たっては、この方法により実施するようお願いいたします。
なお、NLVの検出法については廃止します。
記
NLVの検出法からの主な変更点は以下のとおりです。
① 大型の貝の処理方法(中腸腺の内容液を用いる方法)を記載したこと。
② 検体からのRNA抽出方法として、QIAamp Viral RNA Miniキットを用いた方法のみを例として記載したこと。
③ 逆転写反応を行う方法として、Super Script Ⅱを用いた方法のみを例として記載したこと。
④ RNA抽出時のコントロールとしてのポリオウイルス2型(Sabin株)に代えて、エコー9型ウイルスHill株を用いることとし、そのプライマーを設定したこと。
⑤ プライマー及びプローブを新たに設定したこと。
⑥ リアルタイムPCR法によるノロウイルスの検出方法を記載したこと。
⑦ 機器、試薬を書き改めたほか、細部について加筆したこと。
○ノロウイルスの検出法について
(平成15年11月5日)
(事務連絡)
(各地方厚生局食品衛生担当課あて医薬食品局食品安全部監視安全課通知)
ノーウォーク様ウイルスの検査法については、「ノーウォーク様ウイルス(NLV)のRT―PCR法について(平成13年11月16日付け食監発第267号)」(以下「NLVの検出法」という。)により示しているところですが、本年8月29日に食品衛生法等の一部を改正する法律(平成15年法律第55号)の一部が施行された際に、近時の学会の状況等を踏まえて、食中毒事件票中の「小型球形ウイルス」を「ノロウイルス」に改めたことから、今般、検査法を改訂し、別添のとおり「ノロウイルスの検出法」としてとりまとめ、都道府県等及び検疫所に対し、別添のように通知しましたのでお知らせします。
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(別添)
ノロウイルスの検出法
目次
Ⅰ ノロウイルスのRT―PCR法
1 必要な器具と試薬
2 操作上の注意
3 食品の処理
4 ふん便材料の処理
5 QIAamp Viral RNA MiniキットによるRNAの抽出
6 DNase処理
7 RT反応
8 1st PCR
9 Nested PCR法
10 PCR結果の判定
Ⅱ ハイブリダイゼーション
A マイクロプレートハイブリダイゼーション法
1 必要な器具と試薬
2 ゲルからのDNA抽出法(MinElute Gel Extraction KitによるPCR産物の精製)
3 ハイブリダイゼーション
B ドットハイブリダイゼーションによるノロウイルス遺伝子確認検査
1 必要な器具と試薬
2 操作法
3 判定
Ⅲ リアルタイムPCR法によるノロウイルスの定量的検出法
1 必要な器具と試薬
2 反応プレートの準備
Ⅳ 文献
Ⅰ ノロウイルスのRT―PCR法
1 必要な器具と試薬
1) 器具
サーマルサイクラー、超遠心器、冷却遠心器(5,000rpm)、マイクロ冷却遠心器(15,000rpm)、ホモジナイザーあるいはストマッカー、Vortex、電気泳動装置、UV照射写真撮影装置、ヘラ、ハサミ、メス、ピンセット、濾紙、マイクロピペット(2、20、200、1000μl)、チューブ(0.2ml、0.5ml、1.5ml)、遠心管(15ml、50ml)、1ml注射器、18G注射針
2) 試薬
ショ糖、ポリエチレングリコール6,000、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム、エタノール、Distilled water(Deionized,Sterile,autoclaved,DNase free、RNase free)(和光純薬工業Cat No.318―90105,(以下「Distilled water」という。))、ノロウイルス検出用プライマー(以下、「NVプライマー」という。詳細については後述。)、エコーウイルス9型Hill株プライマー(詳細については後述。)、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA・2Na)、電気泳動用アガロースME(岩井科学、250g入りCat.No.50013R)、エチジュウムブロマイド
Random primer hexamer:Amersham Pharmacia、Cat.No.27―2166―01
Super Script Ⅱ RNase H Reverse Transcriptase:Invitrogen,Cat.No.18064―014 100mM DTT:Super Script Ⅱに添付
QIA Viral RNA Mini Kit:QIAGEN、Cat.No.52904
DNasel:TaKaRa、Code No.2215A
Ribonuclease Inhibitor:TaKaRa、Code No.2310A
Takara EX Taq:TaKaRa、Code No.RR001A
50倍濃度TAE buffer:Tris 242g、氷酢酸 57.1ml、0.5M EDTA(pH8.0)100mlを蒸留水で1,000mlとする。
2 操作上の注意
1) 患者のふん便を取り扱う時には安全キャビネット内で行い、感染防止に最大の注意を払うこと。
2) PCRを行う際には手袋をし、チューブの蓋を開ける時にはその前に軽く遠心した後、オープナーを用いること。
3) RT―PCR反応液の調製をする部屋とPCR産物の電気泳動の部屋を分けることとし、それができない時には、それぞれの操作を別のクリーンベンチ内で行うこと。その際クリーンベンチのファンを止めること。コンタミ防止とRNaseの混入防止に細心の注意を払うこと。
3 食品の処理
1) 貝の中腸腺を用いる方法(超遠心法)
本項ではノロウイルスによる食中毒の原因食品として最も重要視されている貝類の処理方法について記す。他の食品においても基本的にはこの方法に準じて行える。超遠心器のローターとの関係もあるが、貝の中腸腺が1gあるいはそれ以上の時は1個または2個を1検体とし、貝1ロットに付き3検体から10検体(中腸腺として合計12gから24g程度を目途とする。)の検査を行う。シジミ、アサリ等のように中腸腺が1g以下の貝では中腸線1gから1.5gを1検体として、3検体から5検体の検査を行う。
(1) 殻付き貝類はヘラ、メス等で貝柱を切り、殻を開く。
(2) 貝の外套膜を取り、次いで中腸腺の周りに付いている脂質部分をメス、ハサミ等で可能な限り取り除き、中腸腺を取り出す。中腸腺を摘出する際にはできる限り周りの白い組織(脂肪)を取り除くこと。特にリアルタイムPCRを行うときには完全に取り除くこと。
(3) ホモジナイザーまたはストマッカー用のサンプリングバッグに中腸腺をいれ、次いで7~10倍量のPBS(-)を加え粉砕する。貝類の乳剤は15%以上の濃度にしないこと。15%以上にするとRNAの回収率が悪くなる。
(4) 粉砕した試料を遠心管に移す。
↓10,000rpm.20分間冷却遠心し、上清を新しい試験管に採る。
(5) 超遠心用遠心管に30%ショ糖溶液を遠心管量の10%程度入れ、それに(4)の遠心上清を静かに重層させる(ショ糖溶液層を壊さないように初めは特に注意して少量ずつ入れる)。
↓35,000rpm.180分間あるいは40,000rpm.120分間冷却遠心する。
(6) アスピレーター、注射器等で液層を吸引し、沈渣のみとする。
(7) 遠心管の管壁をPBS(-)で軽く1回洗い、管壁の周りの水分を滅菌した濾紙で吸い取る。
(8) 沈渣に200μlのDDW(超純水を高圧滅菌後、0.22μmフィルターで濾過したもの。)を加え、浮遊させる。これをウイルスRNAの抽出に用いる。
(浮遊液に不純物が多いときには10,000rpm.20分間の遠心を行い、その上清をRNA抽出に用いる。)
((注) 超遠心器を使えない時には以下の操作を行う。
ポリエチレングリコールによる濃縮方法
(1) 前項1)(4)の遠心上清にポリエチレングリコール6,000を8%、NaClを2.1g/100mlになるように加え、軽く攪拌し、4℃の冷蔵庫に一晩置く、または室温で2時間攪拌する。
↓5,000~12,000rpm.20分間、冷却遠心する。
(2) 上清をアスピレー夕ー、注射器等で吸引し、沈渣のみとし、管壁の周りの水分を滅菌した濾紙で吸い取る。さらにPBS(-)で管壁を軽く2回洗い、その後濾紙で水分を完全に取る。
(3) 沈渣を200μlのDDWに浮遊させる。これをウイルスRNAの抽出に用いる。浮遊液に不純物が多い場合には10,000rpm.20分間の冷却遠心を行い、その上清をRNA抽出に用いる。)
2) 貝の中腸腺の内容液を用いる方法
大型の貝(平貝、ウチムラサキ貝等)からウイルスを検出する場合は、中腸腺の内容液を用いることができる。カキ、アサリ、シジミ等の小型の貝類ではウイルス回収率が必ずしもよくないので、本法は適さない。
(1) 前項1)(2)において、中腸腺を内容液が漏れないように取り出し、大きめの遠心管に入れ、ガラス棒等で中腸腺を潰した後、一度凍結融解する(-40℃以下で凍結させ、融解するときには50℃程度のお湯ですばやく融解する)。
(2) 10,000rpmで20分間冷却遠心し、上層の液層を新しいチューブに採る。
(3) 得られた液をRNA抽出に用いる。ただし、QIAamp Viral RNA MiniキットによるRNAの抽出では560μlまでしかサンプルを添加できないので、それ以上の量の時には2つに分けて行うか、PBS(-)で6倍希釈した後、前項のポリエチレングリコールあるいは超遠心器による濃縮を行い、200μlのDistilled waterに再浮遊させ、それをRNA抽出に用いる。
4 ふん便材料の処理
1) ふん便の10%乳剤(PBS(-))を作製する。
2) 10%乳剤を激しく攪拌した後、10,000から12,000rpmで、20分間冷却遠心する。
3) 遠心上清の138μlをサンプルとして、次項5の方法でRNAの抽出を行う。
5 QIAamp Viral RNA MiniキットによるRNAの抽出
RNAの抽出には多くの方法があり、また抽出キットも多数市販されている。それぞれが良いと判断した方法を用いて良い。ここではQIAamp Viral RNA Miniキットを用いる方法を紹介する。
QIAamp Viral RNA MiniキットはCarrier RNAが含まれており、RNA抽出効率が高いが、前項4のようなサンプルの調製が必要となる。またこのキットにはDNase処理が含まれていないので、各自が行わなければならない。
1) 使用前に行う試薬の調整
サンプルを室温(15~20℃)に戻す。
Buffer AW1(Kit Cat.No.51104)に96~100%エタノールを25ml加える。Buffer AW2(Kit Cat.No.51104)に96~100%エタノールを30ml加える。
Carrier RNA(凍結乾燥品)のチューブにBuffer AVL 1ml添加しCrrier RNAを完全に溶解させ、Buffer AVLに全量を添加する。添加したBuffer AVL/Carrier RNAは室温で2週間、2~8℃で6ケ月間安定である。Buffer AVL/Carrier RNA中に沈殿物がある場合には、加熱(80℃)により溶解する。ただし、加熱は5分間以内とし、6回以上の加熱は行わないこと。Buffer AVL/Carrier RNAは使用前に室温に戻す。
2) 操作法
以下の操作は室温で行う。
(1) 1.5mlチューブにBuffer AVL/Carrier RNA560μlを入れる。
(2) 10%ふん便乳剤遠心上清(10,000rpm,10分間)を138μl(増量することも可能である。詳細はキットの添付マニュアルを参照)とエコーウイルス9型Hill株を2μl(10,000個程度の粒子数)入れ、サンプルとBufferを充分混合するため15秒間Vortexにかけ、室温(15~25℃)に10分間置く。チューブをスピンダウンする。
エタノール(96~100%)560μlをチューブに加え、15秒間Vortexをかけた後、チューブをスピンダウンする。液が混濁した時には9,000×g(10,000rpm)で5分間遠心する(リアルタイムPCRを行うときにはこの遠心を行ったほうが良い)。
(3) (2)の液630μlをQIAampスピンカラム(2mlコレクションチューブに注入し、蓋を閉め、6,000×g(8,100rpm)で1分間遠心する。QIAampスピンカラムを新しい2mlのチューブに移し、残りの(2)の液630μlを入れ、同様に遠心し、全ての液が無くなるまで行う(サンプル量が138μlのときには、この操作が2回で終わる)。
(4) QIAampスピンカラムを開け、Buffer AW1 500μlを入れる。
(5) 蓋を閉め、6,000×g(8,100rpm)で1分間遠心する。QIAampスピンカラムを新しい2mlのチューブに移し、ろ液の入っているチューブは捨てる。
(6) QIAampスピンカラムにBuffer AW2 500μlを加え、20,000×g(14,000rpm)で3分間遠心する。Buffer AW2とろ液等が接触した時には(7)を行う(このような事は通常起きない)。
(7) QIAampスピンカラムを新しい2mlのチューブに移し、ろ液の入っているチューブは捨てる。フルスピードで1分間遠心する。
(8) QIAampスピンカラムを新しい蓋つき1.5mlのチューブに移し、ろ液の入っているチューブは捨てる。QIAampスピンカラムの蓋を開け、室温に戻したBuffer AVE 60μlを加え、蓋を閉めて1分間置いた後、6,000×g(8,100rpm)で1分間遠心する。
(9) このろ液が抽出RNAであり、抽出RNAは-80℃での保存が望ましいが、-20℃以下で1年間は安定である。
6 DNase処理
食品、人のふん便中には様々なDNAが含まれており、しばしばPCRで非特異バンドが出現するので、それらを抑制するため、DNase処理を行う。またそうすることで、この時点までにDNAの混入が起きた時でも、それらを消化することができる。したがって、キットにDNase処理が含まれていない時にはこの操作を行うことが望ましい。注意としてDNase Ⅰを使用するマイクロピペットは専用のものを用い、可能であればオートクレイブができるものが良い。検査終了後、使用したDNaseの含まれている液、チューブは高圧滅菌にかける。
1) 表1に示したようにDNase処理混合液の調製を行う。
表1 DNase処理混合液
試薬 |
15μl系 |
30μl系 |
抽出RNA |
12.0μl |
24.0μl |
5×First-Strand Buffer注1) |
1.5μl |
3.0μl |
Distilled water |
0.5μl |
1.0μl |
DNasel(1U/μl) |
1.0μl |
2.0μl |
注1):使用するReverse Transcriptaseのbufferを用いる。
2) 混合液調製後、37℃に30分間置く。
3) 次いで75℃に5分間置く。
4) 直ちにon ice(または4℃)する。これがDNase処理済み抽出RNAである。
7 RT反応(Super Script Ⅱ RT(Invitrogen)を用いる時)
1) 表2のRT反応調整液を作製する。
表2 RT反応液調製液(Super Script Ⅱ RTを用いる時)
|
15μl系 |
20μl系 |
30μl系 |
50μl系 |
DNase処理RNA |
7.5μl |
10.0μl |
15.0μl |
30.0μl |
5XSSⅡ Buffer |
2.25μl |
3.0μl |
4.5μl |
7.0μl |
10mM dNTPs |
0.75μl |
1.0μl |
1.5μl |
2.5μl |
Random Primer(1.0μg)注2) |
0.375μl |
0.5μl |
0.75μl |
1.25μl |
Ribonuclease Inhibitor(33unit/μl) |
0.5μl |
0.67μl |
1.0μl |
1.67μl |
100mM DTT |
0.75μl |
1.0μl |
1.5μl |
2.5μl |
Super ScriptⅡ RT(200u/μl) |
0.75μl |
1.0μl |
1.5μl |
2.5μl |
Distilled water |
2.125μl |
2.83μl |
4.25μl |
2.58μl |
注2):Random Primerの代わりにNVプライマー、ポリオ2プライマーを用いても良い。
2) 反応は42℃で30分から2時間行う(通常1時間)。
3) 次いで99℃で5分間加熱し、on ice(または4℃)する。
8 1st PCR
1) 1st PCRは、ノロウイルスについては表3の(G1とG2を別々に作製する)、エコーウイルス9型Hill株については表4の混合液を作製する。
表3 ノロウイルス
1 Distilled water |
33.75μl |
2 10×Ex TaqTM buffer |
5.0μl |
3 dNTP(2.5mM) |
4.0μl |
4 NVプライマーF(25μM)注3) |
1.0μl |
5 NVプライマーR(25μM) |
1.0μl |
6 cDNA(Templete) |
5.0μl |
7 EX Taq(5unit/μl) |
0.25μl |
Total |
50.0μl |
表4 エコーウイルス9型Hill株
1 Distilled water |
33.75μl |
2 10×Ex TaqTM buffer |
5.0μl |
3 dNTP(2.5mM) |
4.0μl |
4 E9Hill-Fプライマー(25μM)注4) |
1.0μl |
5 E9Hill-Rプライマー(25μM) |
1.0μl |
6 cDNA(Templete) |
5.0μl |
7 EX Taq(5unit/μl) |
0.25μl |
Total |
50.0μl |
注3):プライマーの塩基配列は表11、図3を参照。
1st PCRに用いるプライマーは、食品のときには、G1ではCOG1F/G1―SKR、G2ではCOG2F/G2―SKRおよびALPF/G2AL―SKR(アルファトロン型を検出するプライマー、この2組のプライマーは混合して用いても良い)を、ふん便材料の時にはG1ではG1―SKF/G1―SKR、COG1F/COG1Rを、G2ではG2―SKF/G2―SKR、G2―SKF/G2AL―SKR、COG2F/COG2R、ALPF/COG2Rを用いることが望ましい。
ただし、このほかのプライマーを用いてもよい。ポリメラーゼ領域のプライマーは表11、図2を参照。
注4):エコーウイルス9型Hill株プライマー文献1)
(E9Hill―F 5’―GTT AAC TCC ACC CTA CAG AT―3’ポジション5192―5211
E9Hill―R 5’―TGA ACT CAC CAT ACT CAG TC―3’ポジション5459―5440
PCR産物は268bpである。)
2) PCR反応
増幅は94℃,3分を1サイクル、94℃,1分、50℃,1分、72℃,2分を40サイクル、72℃,15分を1サイクルで行う。増幅条件はプライマー、サーマルサイクラーによって若干異なることもあるので、それぞれ最適な条件で行うと良い。
3) 電気泳動
PCR産物8μlと5×Loading buffer2μlを混合し、1.5%アガロースゲルを用いて泳動する。泳動bufferはTAEを使用する。
4) アガロースゲル染色
泳動後ゲルをエチジュウムブロマイド染色液(TAE溶液100mlにエチジュウムブロマイド10mg/mlのものを10μl加えた溶液)に20分間入れておく。この時に緩やかに揺すると良い。
5) 写真撮影、バンドの確認
染色したゲルはUV照射で写真撮影し、バンドの確認を行う。食品では1st PCRでバンドが見られなかった時には(多くの例では見られない)、次にNested PCRを行う。
9 Nested PCR法
食品をサンプルとする時にはウイルス量が少ないので、1st PCRで陰性の時にはNested PCRを行う。ただし、Nested PCRを行う時にはコンタミの危険性が高いので細心の注意のもとに実施する。
なお、Nested PCRの陽性コントロールとして、プラスミドに組み込んだノロウイルス(NV)陽性コントロールを用いる。【RNA抽出時のエコーウイルス9型Hill型およびPCR用ノロウイルス陽性コントロールG1,G2の分与を希望する機関は、国立感染症研究所感染症情報センター第六室 西尾治室長あて電子メイル(nishio@nih.go.jp)で依頼すること。】
1) Nested PCRの調製
表5の混合液を作製する。
表5 Nested PCRの混合液
1 Distilled water |
36.75μl |
2 10×Ex TaqTM buffer |
5.0μl |
3 dNTP(2.5mM) |
4.0μl |
4 NVプライマーF(25μM)注5) |
1.0μl |
5 NVプライマーR(25μM) |
1.0μl |
6 1stPCR産物 |
2.0μl |
7 EX Taq |
0.25μl |
Total |
50.0μl |
注5):ノロウイルスのプライマーは1stPCRに用いたものの内側に設定されたプライマーあるいはセミNested PCRで行う。
Nested PCRに用いるプライマーは、G1の1stPCRでCOG1F/G1―SKRを用いたときにはG1―SKF/G1―SKRおよびCOG1F/COG1Rを、G2の1st PCRでCOG2F/G2―SKRを用いたときにはG2―SKF/G2―SKRおよびCOG2F/COG2Rを、ALPF/G2AL―SKRを用いたときにはG2―SKF/G2AL―SKRおよびALPF/COG2Rを用いるのが望ましい。他のプライマーを用いたときにはそれに対応するプライマーを用いること。
2) PCR反応、電気泳動
増幅は1st PCRと同様の条件で行うが、サイクル数は35とする。
Nested PCR産物の電気泳動、UV照射で写真撮影、バンドの確認は1st PCRと同様に行う。(前項8 2)~5)を参照)
10 PCR結果の判定
1) RNA抽出のコントロールとして入れたエコーウイルス9型Hill株(粒子数約10,000個)のPCRで目的とするバンドが認められること。(=RNAの抽出に問題はない。)
2) 検査材料の代わりにDDWを入れた陰性コントロールでバンドが見られない。(=遺伝子の混入がない。)
3) 陽性コントロール(1st PCRではエコーウイルス9型Hill株、Nested PCRではNV陽性コントロール)で目的とするバンドが見られる。(=PCRがうまく行われた。)
4) PCRでの増幅産物は目的とする大きさであること。(=標的の部分が増幅されている。)
以上の条件が満たされたときにPCRの判定を行う。なお、上記条件が満たされないときには再試験を行う。
PCR陽性と判定されたときには、確認試験としてハイブリダイゼーションあるいは遺伝子配列を調べる。ハイブリダイゼーションで陽性、あるいは遺伝子配列で既知のノロウイルスと類似の配列が認められた時に陽性とする。
Ⅱ ハイブリダイゼーション
A マイクロプレートハイブリダイゼーション法
ここではPCR産物の確認試験としてのマイクロプレートハイブリダイゼーション法について記す。この方法はマイクロプレート上でハイブリダイゼーションを行うもので、洗いが簡単であり、反応は酵素抗体法と同一である文献2)。42℃でハイブリダイゼーションを行うと、80%以上の相同性のときに陽性となる。ハイブリダイゼーションの温度を上げるとさらにその感度は高まる文献3)。
1 必要な器具と試薬
1) 器具
恒温器、ヒートブロック、電気泳動装置、UV照射写真撮影装置、マイクロプレートリーダー、UV防御メガネ、サーマルサイクラー、マイクロ冷却遠心器(15,000rpm)、ウォーターバス、メス、フナゲルチィップ(フナコシ、CaT.No.DR―50)、マイクロピペット(2、20、200、1000μl)、マイクロプレート(NUNC―IMMUNO PLATE Cat.No.442404)
2) 試薬
MinElute Gel Extraction Kit(QIAGEN、Cat.No.28604)、ホルムアミド、Tween20、サケ精子DNA、マイクロプレートシール、ペーパータオル、ストレプトアビジン標識ペルオキシダーゼ(BIOSOURCE,Cat.No.SNN1004)、リン酸水素二ナトリウム、クエン酸、30%過酸化水素、硫酸、T3,3,5,5’―Tetramethylbenzidine(TMB)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ウシ血清アルブミン(BSA)(SIGMA、Cat.No.A―2153)、3M酢酸ナトリウム(pH5.0)、100%イソプロパノール、PBS―T(PBS(-)+0.05%Tween20)
2 ゲルからのDNA抽出法(MinElute Gel Extraction KitによるPCR産物の精製)
ゲルからのDNAの抽出には多くの方法があり、また抽出キットも多数市販されている。それぞれが良いと判断した方法を用いて良い。ここでは、MinElute Gel Extraction Kitを用い、マイクロ遠心機を利用する方法を示す。
このプロトコールは、TAE bufferまたはTBE bufferの標準的なアガロースゲル、あるいは低温融解アガロースゲルから、70bpから4kbのDNAフラグメントを高い最終濃度で抽出、精製することができる。1個のスピンカラムにつき、最大400mgのアガロース処理が可能である。Buffer QGはpH7.5以下の時、黄色になる。すべての遠心操作は、一般的な卓上遠心機で≧10,000×g(~13,000rpm)で行う。
1) 使用前に行う試薬の調整
(1) 使用前にBuffer PEにエタノール(96~100%)を添加する(添加容量は試薬ボトルのラベルを参照)。
(2) 3Mの酢酸ナトリウム溶液(pH5.0)が必要な場合がある。
2) 操作法
(1) 清潔で刃の鋭いメスあるいはフナコシのフナゲルチィップでアガロースゲルからDNAフラグメントの部分を切り取る。余分なゲルを取り除いて、ゲルスライスのサイズを最小とする。
(2) 1.5mlのチューブにゲルスライスを入れ、重さを測る。サンプルゲル(100mg=100μlとする)に対して3倍容量のBuffer QGを添加する。
(3) 50℃で10分間(ゲルが完全に溶解するまで)インキュベートする。ゲルの溶解を助けるため、インキュベーション中、2~3分に1度チューブをVortexにかけて溶液を混合する。2%以上のゲルを用いる場合は、インキュベーション時間を長くする。
(4) ゲルスライスが完全に溶解後、溶液の色が黄色であることを確認する(アガロース溶解前のBuffer QGの色とほぼ同じ)。なお、溶液の色がオレンジ色あるいは紫色の場合は、3M酢酸ナトリウム(pH5.0)を10μlずつ添加混合し、溶液の色が黄色になるようにする。(DNAのメンブレンヘの吸着は、pH7.5以下においてのみ効率的に行われるので、pH指示薬によりpH7.5以下で黄色、それより高いpHではオレンジまたは紫色を呈するBuffer QGは、DNA結合に最適なpHを決定するのに大変便利である。)
(5) ゲルと同容量のイソプロパノールをサンプル溶液に添加し、例えば、100mgのアガロースゲルスライスには、100μlのイソプロパノールを添加する。チューブを10回上下混合する。
(6) ラックにセットした2mlコレクションチューブにMinEluteカラムを乗せる。
(7) サンプルをMiEluteカラムに添加し、DNAをカラムに結合して、1分間遠心する。最大の回収率を得るために、サンプル液は残さず全てカラムに添加する。カラムヘ1度に添加可能な最大容量は800μlである。800μlよりサンプル量が多い場合には、数回に分けて添加、遠心操作を行う。
(8) フロースルー液は捨て、MinEluteカラムを同じコレクションチューブに再度乗せる。
(9) 500μlのBuffer QGをスピンカラムに添加し、1分間遠心する。
(10) フロースルー液は捨て、Min Eluteカラムを同じコレクションチューブに再度乗せる。
(11) 洗浄のため、750μlのBuffer PEをMinEluteカラムに添加し、1分間遠心する。
(12) フロースルー液を捨てた後、MinEluteカラムをさらに1分間≧10,000×g(~13,000rpm)で遠心する。
(13) 新しい1.5mlのマイクロ遠心チューブにMinEluteカラムを乗せる。
(14) DNAの溶出を行うために、10μlのBuffer EB(10mM Tris―Cl、pH8.5)あるいはDDWをメンブレン表面の中央に添加し、1分間カラムを放置後、1分間遠心する。
遠心によって得られた溶液が、抽出DNAである。
3 ハイブリダイゼーション
1) 抽出DNAを0.5mlのチューブに取り、1.5M NaCl buffer注6)で、電気泳動時のバンドの濃さに応じ適宜希釈する(DNA量は200ng/ml程度の濃度とする)。なお通常のPCRでバンドがしっかりとみられた増幅DNA(PCR産物8μlを泳動)は5倍から20倍希釈して用いる。
↓98℃、5分間加熱処理、直ちにon iceする。
2) マイクロトレイに固定化液注7)を90μl入れ、それに加熱処理したDNAを10μlずつ1検体当たり3ウェルに入れる(プローブが2種類の時、通常プローブの数+1)。
注6):3倍濃度1.5M NaCl buffer:4.5M NaCl、30mMリン酸二ナトリウム、30mM EDTA、pH7.0(使用時には最終濃度1.5M NaCl bufferとして用いる。)
注7):固定化液:3倍濃度1.5M NaCl buffer3.0ml、DDW6.0ml
図1 トレイのレイアウト
試薬 |
|
1 |
2 NC |
3 G1 |
4 G2 |
5 検体 |
6 検体 |
7 検体 |
|
A |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
Control |
B |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
RING1-Tp(a),(b)プローブ |
C |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
RING2-Plateプローブ |
D |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |