アクセシビリティ閲覧支援ツール

添付一覧

添付画像はありません

○食品衛生法第4条の2の規定による食品又は物の販売禁止処分の運用指針(ガイドライン)について

(平成15年8月29日)

(薬食発第0829006号)

(各都道府県知事・各保健所設置市長・各特別区長あて厚生労働省医薬食品局長通知)

食品衛生法等の一部を改正する法律(平成15年法律第55号)は、本年5月30日に公布され、特殊な方法により摂取する食品等の暫定流通禁止措置については、本日施行されたところである。

当該暫定流通禁止措置については、食品衛生上の危害を防止する観点から講じられるものであるが、食品と健康被害の間の高度の因果関係が認められない段階において当該食品の流通を暫定的ながら禁止するものであることから、その運用に係る指針をあらかじめ定めることとしたものである。

今般改正された食品衛生法(昭和22年法律第233号)においては、国、都道府県、保健所を設置する市及び特別区は、食品衛生に関する施策が総合的かつ迅速に実施されるよう、相互に連携を図らなければならない、とされたところであり、貴職におかれても別添の運用指針(ガイドライン)について十分御了知願いたい。

(別添)

食品衛生法第4条の2の規定による食品又は物の販売禁止処分の運用指針(ガイドライン)

第1 規定の趣旨

1 食品衛生法の一部改正

食品衛生法等の一部を改正する法律(平成15年法律第55号)による食品衛生法(以下「法」という。)第4条の2の改正は、食品の製造技術の高度化の進展やいわゆるダイエット用健康食品による健康被害の発生等を踏まえ、必ずしも食品と健康被害との間の高度の因果関係が認められず、結果、法第4条各号のいずれにも該当しない場合であっても、危害発生の未然防止や拡大防止のため、法第4条の2第1項の規定と同様に、流通禁止措置を行えるようにしたものであり、

・一般に食品として飲食に供されている物であって当該物の通常の方法と著しく異なる方法により飲食に供されているもの

・食品によるものと疑われる人の健康に係る重大な被害が生じた場合において、当該被害の態様からみて当該食品に当該被害を生ずるおそれのある一般に飲食に供されることがなかった物が含まれていることが疑われるもの

について、食品衛生上の危害の発生の防止の観点から、食品安全委員会及び薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて、当該食品又は物の販売を暫定的に禁止できることとしたものである。

2 第1項、第2項及び第3項の趣旨・相互関係

(1) 昭和47年食品衛生法改正による第1項の導入趣旨

昭和40年代以降、科学技術の発展により従来利用されなかった資源の活用や新しい物質の開発が行われ、石油から分離したノルマルパラフィン等を基にたんぱく質を作ろうとする等(いわゆる「石油たんぱく」)従来の自然界の動植物の採取等による食品の調達方法とは違った新しい方法で食品を開発しようという試みが実際に行われるに至っていた。これら食経験のない「一般に飲食に供されることがなかつた物」については、物自体の安全性そのものが未知数であり、法第4条各号に該当するものであるか等、従来の食品衛生法の規定のみでは、必ずしも十分にこれらの新しい問題に対処することが難しい面があった。このため、昭和47年改正により追加されたものである。

(2) 今回の第2項の導入趣旨

近年の食品製造技術等の進歩や輸入食品の多様化等により、例えば、海外の一部の地域で嗜好品や香辛料として食されてきた物を、痩身等の一定の効果を期待し、多量に摂取することを目的として、当該成分を抽出・濃縮して錠剤、カプセル等の形状にする等の「一般に食品として飲食に供されている物であって当該物の通常の方法と著しく異なる方法により飲食に供されているもの」が多く流通するに至っている。こうした方法により、これまで食経験のある食品又は成分を、これまで食経験のない水準又は方法で摂取させることが可能となったものであるが、そうした点で第1項と同様の問題が生ずるに至ったことから、今回の改正により追加されたものである。

(3) 今回の第3項の導入趣旨

食品衛生の究極の目的は、食品衛生上の危害を防止することにあるが、万一食中毒事故の発生をみた場合には、直ちにその拡大防止に努めなければならない。そのためには、事故発生を早期に探知又は発見し、その事故の原因を追求し、できるだけ迅速に原因食品や発生の機序を排除するための適切な措置を講じなければならないものである。しかしながら、健康食品と称されているものの中には、何らかの効果を期待して、原材料表示には記載されていない成分等を含有させている懸念が否定できないものがある。その成分が食経験のない「一般に飲食に供されることがなかつた物」である場合等には、原因究明が迅速になし得ない等、適切な措置を講じがたい事態の発生が懸念される。そうした点で第1項と同様の問題が生ずるに至ったことから、今回の改正により追加されたものである。

3 法第4条の2の適用の考え方

当該措置は、食品と健康被害との間の高度の因果関係が認められない段階で、当該食品の流通を暫定的にとはいえ禁止することができるものであり、営業者の「営業の自由」に対し大きな影響を与え得るものである。このことから、当該措置の適用は、食品衛生上の危害の発生を未然に防止するという目的のために必要かつ合理的なものでなければならず、注意喚起等他の手段によっては危害発生を防止し得ない場合の手段として制限的に運用するものである。

なお、今回の改正では、こうした流通禁止措置が暫定的なものであることにかんがみ、これらの禁止措置の解除手続を併せて規定しているところである(法第4条の2第4項)。

第2 本条第2項による暫定禁止措置

1 適用対象となる食品

本項では、「一般に食品として飲食に供されている物であつて当該物の通常の方法と著しく異なる方法により飲食に供されているもの」について、人の健康を損なうおそれがない旨の確証がない場合に、販売禁止の対象となり得るものとなる。

(1) 「一般に食品として飲食に供されている物」の意義

「一般に飲食に供されている物」とは、食品としての食経験が一般にあるものを指す。

このような表現により、第1項の規定により暫定流通禁止措置の対象となり得る一般に飲食に供されることがなかった物(石油たんぱく等)との区別を明確化するものである。

(2) 「当該物の通常の方法と著しく異なる方法により飲食に供されているもの」の意義

「当該物の通常の方法と著しく異なる方法により飲食に供されているもの」とは、食経験のある物であっても、例えば、これまで食経験がない程度まで当該物を濃縮して飲食に供されるような場合や、これまで我が国及び諸外国においても経験することがなかった方法で当該物を摂取させるようなものを想定している。すなわち、食経験のある物に関し、①食経験のない水準の量で当該物を摂取させることを可能とする方法、②当該物を食経験のなかった手段で人体に曝露させる方法が、ここでいう「当該物の通常の方法と著しく異なる方法」に該当すると考えられる。

このため、実際にある食品が「当該物の通常の方法と著しく異なる方法により飲食に供されているもの」に該当するかどうかは、単に加工方法や製造方法等がこれまでの用いられてきた方法とは異なるか否かで判断するのではなく、実際に飲食に供される段階で、当該物を一般的な食経験がない方法により摂取させることを意図しているかどうかによって判断され、具体的には個々の事例によって判断されることとなる。

例えば、以下の事例は、これまで食経験がない方法により飲食に供されている食品と考えられることから、本項で規定する事例に該当することとなり得る。

ア 食品又は食品に含まれる特定の成分を大量に摂取させる食品

これは、食品又は食品に含まれる特定の成分を抽出・濃縮して、当該食品又は特定成分をこれまで摂取した経験のない量で摂取させること(短期的であるか長期的であるかを問わない。)を意図する食品である。こうした食品の場合、当該食品又は成分について食経験があっても、こうした量の摂取については食経験がないことから、本項の対象となり得る。なお、抽出・濃縮技術自体は、加工方法として従来より一般化しているものであるが、その結果、食経験のない水準で大量に特定成分を摂取させることとなる限りにおいて、当該技術により加工された食品は本項の規制対象となり得ることとなる。

また、抽出や濃縮の程度が低い場合であっても、当該特定成分を大量に摂取させることを意図するものは、本項の対象となる場合があり得る。

イ 通常の方法とは異なる方法により消化吸収される食品

通常、食品は、胃、小腸、大腸等における消化を経て吸収されることとなるが、例えば、通常胃における消化を経て小腸で吸収される成分を摂取する際に、胃における消化吸収を受けないカプセル等を用いることによって、小腸で食品の成分が直接消化吸収されることを意図する食品については、こうした形で摂取することに関する食経験がないため、本項の対象となり得る。

(3) 「人の健康を損なうおそれがない旨の確証がないもの」の意義

「人の健康を損なうおそれがない旨の確証がないもの」とは、法第4条の2第1項と同様に、人の健康を損なうおそれがあるもののみでなく、いずれとも判断できない場合も含むものである。すなわち、当該食品を原因とした健康被害発生の疑いを払拭できないという趣旨をいうものである。具体的には、食品に含まれる特定の成分について、①研究機関における試験研究結果、②諸外国からの情報提供、③保健所等からの報告等を通じ健康上の懸念が強く指摘(示唆)された場合、「人の健康を損なうおそれがない旨の確証がないもの」に該当することとなる。なお、国が安全性及び効果を審査して許可した特定保健用食品等十分な科学的評価を受けているものは、基本的に「確証がある」ものと考えられる。

こうした「確証のない」に該当する食品がすべて販売を禁止されるものではなく、第4の手続を経て、暫定流通禁止措置が実際に適用された上で、その販売が禁止されることとなる。

2 本項による暫定流通禁止措置の適用

(1) 本項の適用基準

本項に基づく暫定流通禁止措置を適用すべきか否かについては、「食品衛生上の危害の発生を防止するための必要性があると認める」ときに、食品安全委員会及び薬事・食品衛生審議会の意見を聴いた上で判断されるが、食品衛生上の危害の発生を防止するため必要か否かは、

ア 当該物の摂取により人の健康を損なうおそれの程度

イ 当該物による食品衛生上の危害の発生の防止について、本項の規定による処分以外の方法により期待できる効果

の2つの観点から判断されることとなる。

このうち、ア「当該物の摂取により人の健康を損なうおそれの程度」については、原則として食品安全委員会による食品健康影響評価(リスク評価)を踏まえ、その物の摂取により国民の健康の保護の観点から問題となる程度の健康被害が発生するおそれがあるかどうかを判断する。

また、イ「当該物による食品衛生上の危害の発生の防止について、本項の規定による処分以外の方法により期待できる効果」とは、本項に基づく措置が他の手段によっては危害発生を防止し得ない場合の手段として制限的に運用すべきものであることを踏まえ、食品衛生法に基づく他の措置やその他の方法により食品衛生上の危害の発生を防止できるか否かの効果を薬事・食品衛生審議会において考慮すべきことを明らかにしたものである。例えば、「情報提供等を通じた注意喚起により国民において適切に対処することが可能な場合」、「新たな規格基準の設定を通じて危害の発生のおそれのある製造加工方法を禁止することができる場合」や「適切な表示により過剰摂取を回避できる場合」等により、時間的にも人の健康を保護するのに十分な措置であると認められる場合には、あえて本項を適用する必要はないこととなる。

なお、実際には、上記ア及びイの必要性の判断も、第3項の適用事例のように特定の食品について危害の程度や他の方法の可能性を個別に判断するのではなく、第2の1の(3)の①~③に掲げる場合に、毒性試験結果等から判断して、当該成分を含む食品のうち通常とは著しく異なる方法により摂取されるもの一般のうちから、本措置以外の方法では危害が回避できないようなものを絞り込んでいく形で行われることとなる。

(2) 適用の効果

本項の規定に基づき販売を禁止する場合は、本条の規定の内容を踏まえ、販売の禁止の対象となる物及び摂取方法を併せて指定することとなる。

このため、当該物を、指定を受けていない方法により摂取する場合は、本項の規定による禁止の対象とはならない。また、本項では、食品として販売が禁止されるのみであるため、安全性に問題がないことが確認されるまでの間、販売せずに保管すること等は禁止の対象とはならない。

第3 本条第3項による暫定禁止措置

1 適用対象となる食品

(1) 「食品によるものと疑われる人の健康に係る重大な被害が生じた場合」の意義

「食品によるものと疑われる」とは、人の健康に係る重大な被害が生じた場合において、公衆衛生学的に健康被害の原因を確定することはできないが、

ア 当該健康被害について、医師より、当該患者の症状の経過等が明らかにされており、当該製品を摂取したことが原因であると疑われる旨の情報が得られた場合

イ アには該当しないが、同種の食品を摂取したことにより、同種の健康被害が複数発生している場合

ウ 当該食品の製造業者等の証言、行政庁による立入検査などから判断して、人の健康に係る被害を生ずるおそれのある物質が、当該食品に含有されている蓋然性が高い場合

など、当該食品により当該健康被害が発生したことについて一定の蓋然性が認められる場合に本項の措置の適用を検討することとする。なお、ここでは「食品」という用語を用いているため、法第2条第1項の規定により、原因となった飲食物が医薬品である場合は、本条の適用の対象とはならない。

また、「人の健康に係る重大な被害」とは、死亡事例や、劇症肝炎等の重篤な疾患が少数の人にでも発生した場合などが対象となり、重篤でない疾患が少数の人に生じているのみの場合に対する当該措置の適用を排除する趣旨である。なお、比較的軽症な健康被害の場合であっても、健康被害の発生件数や広がり具合等によっては、この文言に該当する場合もある。

(2) 「当該被害の態様からみて当該食品に当該被害を生ずるおそれのある一般に飲食に供されることがなかつた物が含まれていることが疑われる場合」の意義

被害の態様からみて、当該食品に一般に食品として利用されることがなかった物が含まれており、その物により健康被害が発生したおそれがある場合には、適用対象になることを明らかにしている。

なお、一般に飲食に供されることがなかった物の内容及びその毒性が特定できる場合など、当該食品と健康被害との間の因果関係が明確となった場合には適用されず、この場合には法第4条の規定の適用を受けることとなる。また、健康被害の態様等から原因が明らかな場合も同様に法第4条の規定の適用を受ける。

2 本項による暫定流通禁止措置の適用

(1) 本項の適用基準

基本的に第2の2の(1)と同様の基準で判断されることとなるが、実際には「いわゆる健康食品」を対象に行っている健康被害の公表の取組(平成14年10月4日付医薬発第1004001号医薬局長通知。以下同じ。)により、公表が行われたような事案のうち、特に重大な健康被害が生じた場合について、本項の適用の是非を判断することが想定される。

(2) 適用の効果

第2の2の(2)と同様である。

第4 本措置適用の手続(第2項及び第3項共通)

1 原則として、以下の手続によることとする。

(1) まず、食品安全基本法(平成15年法律第48号)第24条第1項第1号に基づき、食品安全委員会に対し諮問を行い、人の健康に及ぼす影響についての食品健康影響評価(リスク評価)を受ける。

(2) その後、食品安全委員会において人の健康を損なうおそれがないとされたものを除き、薬事・食品衛生審議会に諮問する。

ただし、死亡事例等の重篤な健康被害が生じている場合で、速やかに本項の暫定流通禁止措置を適用する必要があると認められるときは、可及的速やかに薬事・食品衛生審議会に諮問するとともに、事後に食品安全委員会の意見を聴くこととする(食品安全基本法第24条第1項ただし書及び同条第2項)。

2 対象の公表等

(1) 健康被害が既に発生してしまった場合

都道府県等から報告された健康被害については、現行の公表の取組により製品名が公表されているところであるが、本措置の適用がなされた場合、別途その旨を公表することとする。

(2) 健康被害が未だ生じていない場合

薬事・食品衛生審議会の開催に併せ、本措置の適用を検討している対象を公表することとする。

なお、食品安全委員会は食品健康影響評価(リスク評価)を行ったときに評価結果を公表することとされている。

第5 暫定禁止措置の解除手続

法第4条の2第4項では、当該禁止に関し利害関係を有する者の申請等を踏まえ、同条第1項から第3項までの規定による販売禁止処分の解除手続について規定している。

同条第4項で規定する、「厚生労働省令」の内容としては、以下のものが規定されている。

・申請者の住所及び氏名(法人にあっては、その名称、主たる事務所の所在地及び代表者の氏名)

・解除を申請する食品又は物の範囲

・当該禁止に係る食品又は物に起因する食品衛生上の危害が発生するおそれのない理由その他の厚生労働大臣が必要と認める事項

また、同項の「必要に応じ」とは、当該食品に関して、人の健康を損なうおそれがない旨の確証について知見が得られたことや、他のより効果的な手段によって食品衛生上の危害の発生の防止が可能となった場合を想定している。

同項の規定による解除については、利害関係者が申請してきた事項や、当該食品について新たに得られた知見等を踏まえ、当該食品について第2の2の(1)と同様に、食品安全委員会及び薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて、当該物が人の健康を損なうおそれの程度及び当該食品による食品衛生上の危害の発生の防止について、同条の規定による販売禁止処分以外の方法により期待できる効果を踏まえ、食品衛生上の危害が発生するおそれがないと認めるときは、当該禁止の全部又は一部を解除することとなる。