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○組換えDNA技術応用食品の検査方法について(一部改正)

(平成15年5月6日)

(食発第0506002号)

(各都道府県知事・各政令市長・各特別区長あて厚生労働省医薬局食品保健部長通知)

組換えDNA技術応用食品の検査方法については、平成13年3月27日付食発第110号において通知(平成14年4月30日付食発第0430001号により一部改正)したところであるが、今般、ニューリーフY・ジャガイモSEMT15―15系統及びRBMT15―101系統に係る安全性審査の手続が終了したことに伴う検査法の改訂並びに大豆に係る検査キットの変更等により、当該通知を下記のとおり改正することとしたので、検査を行う場合には、これらの方法により実施されたい。また、改正後の検査方法全文を添付する。

なお、ばれいしょの定量検査法及び定量PCRに使用する機器のバリデーションに関しては、現在検討を行っているところであり、終了次第順次、これらの検査法についても追加することとしているので御留意願いたい。

1 「2.1.1.2.1.定性PCR」等の項目において、「使用するチューブ、チップは使い捨てとし、使用する直前に121℃20分以上オートクレーブ減菌したものを用いる。」を「使い捨てのチューブ、チップ等を使用し、DNA、DNase等がコンタミネーションしないよう注意して用いること。」に、「超純水を121℃、20分以上オートクレーブで滅菌したものとする。」を「超純水など、DNA、DNase等がコンタミネーションしていないものを用いること。」に改め、また、「また、独立行政法人農林水産消費技術センター作成のJAS分析試験ハンドブック「遺伝子組換え食品検査・分析マニュアルコンタミネーション防止編」も参考にし、コンタミネーション防止に細心の注意を払うこと。」を追記する。

2 「2.1.2.2.GUS試験法」の項目において、検査手順等を詳細に記述するため、別紙1のとおり改める。

3 「2.1.3.New leaf Yジャガイモ(加工品を含む)の検知」の項目を「2.1.3ニューリーフY・ジャガイモSEMT15―02系統(加工品を含む)の検知」とし、別紙2のとおり改める。

4 「3.1.1.ELISA法」の項目において、安全性審査済みの遺伝子組換え大豆の検査キットが「GMOSoya RUR Test Kit」から、穀粒の検査専用の「GMO Soya Test Kit Ver.2.0」に変更されたことから、この手順を別紙3のとおり改める。

5 その他、「農林水産省農林水産技術センター」を「独立行政法人農林水産消費技術センター」に改める等の語句の修正等を行う。

(別紙1)

「2.1.2.2.GUS試験法

遺伝子組換えの指標としてパパイヤ(55―1)に組み込まれているβ―glucuronidase(GUS)遺伝子から発現されるGUSを組織化学的に検出する手法である。GUSの発現している組織に当該酵素の基質である5―bromo―4―chloro―3―indolyl―β―D―glucuronide(X―Gluc)を含む反応液を添加すると、酵素反応によりX―Glucが脱エステル化され、インドキシル誘導体モノマーが生じ、これが空気酸化重合して青色のインジゴチン色素(水不溶性)が生成する。GUSが発現している胚はこの試験法により青色を呈する。

2.1.2.2.1.実験操作

予め、96ウェルプレートに200mMリン酸緩衝液(pH7.0)*1を50μLずつ必要数のウェルに入れておく。試験には、パパイヤ1個体につき12個の胚を用いるため、必要となるウェルは(パパイヤの個体数×12)個である。

採取したパパイヤ果実を縦半分に切り、種子を無作為に1粒選出する。ガラス板上で、メスを用いて外側の粘性のある種皮を取り除く。次に、メスで種子の縦中央に真一文字状に切れ目を入れる。切れ目にメスの先端を入れ、種皮を取り除き、淡白色の胚珠を採取する。次に胚珠の縦中央に見える白線に沿ってメスを入れ、胚珠を縦半分に切断後、ピンセットで切断面より胚を注意深く取り出し、ウェルに入れる。胚を乾燥から防ぐため、胚は取り出す毎にウェルに入れていく。この操作を繰り返し、パパイヤ1個体より12個の胚を取り出す。このとき、胚珠がない種子や種皮が白色の種子もあるため、それらは試験に用いないようにする。検査に用いる全ての胚をウェルに入れた後、各ウェルよりリン酸緩衝液を取り除き、基質溶液*2を50μLずつ入れていく。96ウェルプレートをアスピレーターで15分間脱気を行い、基質溶液の浸透を促す。96ウェルプレート全体をパラフィルムで覆い、37℃恒温器中で10~15時間*4インキュベートする。インキュベート後、各ウェルに70%エタノールを50μLずつ加え反応を停止する。各検体において、青色に染色された胚の数を数え、GUS発現率*5を算出する。

*1200mMリン酸緩衝液(pH7.0)

200mM NaHZ2PO4と200mM Na2HPO4を3.3:6.7(v:v)で混合調整した溶液を200mMリン酸緩衝液(pH7.0)とする。このとき、ボルテックスミキサーにて混合し、pHが7.0であることを確認する。200mMリン酸緩衝液(pH7.0)は、必ず試験を開始する直前に作製し、一試験毎に使い切ること。

*2基質溶液

X―Gluc溶液*3を最終濃度1mMとなるように添加した200mMリン酸緩衝液(pH7.0)を基質溶液とする。この際、ボルテックスミキサーをもちいて十分に混合する。基質溶液は、必ず全ての胚をウェルに入れた後に作製し、一試験毎に使い切ることとする。

*3X―Gluc溶液

X―Gluc粉末20mgをマイクロ遠沈管(1.5mL)に量り取り、1mLのジメチルホルムアミドを加え溶解したものをX―Gluc溶液とする。-20℃で保存する。

*415時間以上インキュベートを行うと、非遺伝子組換えパパイヤの胚でも、青色に染色されてしまうことがあり、正しく判定することが出来ない場合があるので注意が必要である。

*5GUS発現率(%)=〔(青色に染色された胚の数/試験した胚の数である12)〕×100

2.1.2.2.2.結果の判定

検体がパパイヤ(55―1)の場合、理論的には75%(9胚/12胚)の割合で胚が青色に染色される。一方、非遺伝子組換えパパイヤでは、全ての胚は青色に染色されない。しかし、無作為に胚を選出するため、必ずしも上記のGUS発現率を示さない検体も存在する。従って、GUS発現率が30%以上(青色に染色された胚の数が4胚以上)の場合を陽性と判定し、GUS発現率が30%未満(青色に染色された胚の数が4胚未満)の場合を陰性と判別する。

判定例(試料1は、調査した12個の胚のうち青色に染色された胚はみられなかったため、陰性と判別される。また、試料2は、12個の胚のうち、9個が青色に染色されたため、陽性と判別される。)」

「2.1.2.2.GUS試験法

遺伝子組換え体作出の際、組換えの指標とするためβ―glucuronidase(GUS)遺伝子を目的とする外来遺伝子に加えて導入する場合がある。この手法を用いて作出された遺伝子組換え体は、外来遺伝子に加えGUS遺伝子も同時に発現するため、GUS活性を検出することにより遺伝子組換え体であることの判定を行うことが可能となる。GUSは5―bromo―4―chloro―3―indolyl―β―D―glucuronide(X―Gluc)を基質とする。当該基質はGUS活性により脱エステル化されインドキシル誘導体モノマーを生じる。生じたモノマーは空気により酸化されることで重合し、青色の水不溶性インジゴチン色素を生成する。遺伝子組換えパパイヤ(55―1)においてもGUS遺伝子が導入されているため、上記原理に従い、青色を呈することを指標にその活性を検出し、遺伝子組換えパパイヤであることの判定を行うことが可能である。なお、本試験法における試料検体は、呈色反応の識別しやすいことを考慮し、胚を対象とする。

2.1.2.2.1.実験操作

あらかじめ、200mMリン酸緩衝液(pH7.0)*1を1ウェルあたり50μLずつ96ウェルプレートのうち必要数のウェルに分注しておく。試験には、パパイヤ1個体につき12個の胚を用いるため、必要となるウェル数は(パパイヤの個体数×12)である。

採取したパパイヤ果実を縦半分に切り、種子を無作為に1粒選出する。以下の手順に従い胚を取り出す。まず、ガラス板上で、粘性のある外皮をピンセットまたはメスの先端を利用し取り除く。次に、メスで種子の縦中央に切れ目を入れる*2。深く突き刺さないよう留意しながら切れ目にメスの先端を入れ、種皮を完全に取り除き、淡白色の胚珠を採取する。次に、胚珠の縦中央に観察される白線に沿ってメスを入れ、胚珠を縦半分に切断する*3。切断後、切断面に露出する胚をピンセットで注意深く取り出し*4、あらかじめ96ウェルプレートに分注しておいた200mMリン酸緩衝液(pH7.0)に速やかに浸す。この操作を繰り返し、1検体あたり12個の胚を取り出す。胚を採取する過程において、種皮が白色の種子や胚珠が含まれない種子が観察される場合があるが、それらは試験に用いない。ウェルに検査に用いる全ての胚を採取し終えた後、各ウェルよりリン酸緩衝液を除去する。続いて、基質溶液*5を1ウェルあたり50μLずつ加える。基質溶液を添加した後、その浸透を促すためアスピレーターを用いて15分間の脱気処理を行う。脱気処理後、96ウェルプレート全体をパラフィルムで密封し、37℃、10~15時間*7の条件で保温する。保温後、各ウェルに70%エタノールを50μLずつ加え反応を停止する。それぞれの検体について、青色を呈した胚の数を数え、GUS発現率*8を算出する。

*1200mMリン酸緩衝液(pH7.0)

200mM NaHZ2PO4と200mM Na2HPO4を3.3:6.7(v:v)の割合で混合した溶液を200mMリン酸緩衝液(pH7.0)とする。調製時には、ボルテックスミキサーを用いて十分に混合し、混合後、必ずpHが7.0であることを確認する。なお、当緩衝液は、必ず試験を開始する直前に作製し、一試験毎に使い切ること(用時調製)。

*2パパイヤの種子は縦方向に長く、これに比して横方向に短い。この事を基準に、種子を実験者に対して横向きになるよう配置させ、メスを左端にいれ、右端に向かって横方向に切り進めることで切れ目を入れるとよい。メスを深く差し込むと胚を切断してしまうこともあるので注意する。

*3胚珠はその中心部に位置する胚とその周りを覆う胚乳で構成されている。また、全体としては胚乳の示す淡白色をしている。しかし、胚珠表面を注意深く観察することで、淡白色とは明らかに異なる白色の線が中央部を上端から下端にかけてはしっていることが観察される。この白色の線は胚によって示されるものである。胚珠を切断する際には、刃がこの線に対して平行となるようにメスを入れ、胚を傷つけないよう注意しながら二分する。

*4胚が露出しなかった場合、切断面において胚を覆っている胚乳をメスで削り取り、胚を露出させる。その後、ピンセットを用いて注意深く取り出す。この際、胚を傷つけないよう充分注意しながら操作を進める。傷のついた胚は非特異的に青色を呈する場合がある。

*5基質溶液

X―Gluc溶液*6が最終濃度1mMとなるように、200mMリン酸緩衝液(pH7.0)で調製した溶液を基質溶液とする。基質溶液調製時には、ボルテックスミキサーを用いて充分に混合し、均一な溶液として調製する。なお、基質溶液は、必ず試験に供する胚全てを採取し終えた後に調製し、一試験毎に使い切るものとする。

*6X―Gluc溶液

X―Gluc粉末20mgをマイクロ遠沈管(1.5mL)に量り取り、1mLのジメチルホルムアミドを加え溶解したものをX―Gluc溶液とする。-20℃で保存すること。

*7恒温器を使用して保温する。また、15時間を超えて保温した場合、非遺伝子組換えパパイヤの胚が非特異的に染色される可能性が考えられる。この場合、正確な判定を下すことが出来なくなるため、保温時間については記載された時間を厳守すること。

*8GUS発現率(%)=〔(青色を呈した胚の数/試験した胚の数12)〕×100

2.1.2.2.2.結果の判定

検体が遺伝子組換えパパイヤ(55―1)の場合、理論的には75%(9胚/12胚)の割合で胚が青色を呈する。しかし、当該試験法においては、試験に供する胚を無作為に選出するため、必ずしも上記理論値には合致しない。一方、非遺伝子組換えパパイヤでは、青色を呈する胚は観察されない。従って、GUS発現率が30%以上(青色を呈した胚の数が4以上)の場合を陽性と判定し、GUS発現率が30%未満(青色を呈した胚の数が4未満)の場合を陰性と判定する。

判定例:試料1は、試験に供した12個の胚のうち青色を呈した胚はみられない(GUS発現率0%)ため、陰性と判定される。また、試料2は、12個の胚のうち、9個が青色を呈した(GUS発現率75%)ため、陽性と判定される。)」

に改める。

(別紙2)

「2.1.3.New leaf Yジャガイモ(加工品を含む)の検知

2.1.1.2.1.に準じた方法で定性PCRを行う。New leaf Y検知プライマー対として225bpの増幅バンドが検出されるNew leaf Y検出用プライマー対、陽性対照用プライマー対として216bpの増幅バンドが検出されるPssプライマー対(ジャガイモに普遍的なpotato sucrose synthase遺伝子を検知する)を用いる。New leaf Yの確認試験は、161bpの増幅バンドが検出されるPVY―cp遺伝子検出用プライマー対を用いて行う。

New leaf Y検出用プライマー対

Fプライマー(p―FMV05―5’):5’―AAAAGAGCTGTCCTGACAGC―3’

Rプライマー(PVY02―3’):5’―TCCTCCTGCATCAATTGTGT―3’

Pssプライマー対(potato sucrose synthase遺伝子検出用プライマー対)

Fプライマー(Pss01n―5’):5’―TGACCTGGACACCACAGTTAT―3’

Rプライマー(Pss01n―3’):5’―GTGGATTTCAGGAGTTCTTCGA―3’

PVY―cp遺伝子検出用プライマー対

Fプライマー(PVY01―5’):5’―GAATCAAGGCTATCACGTCC―3’

Rプライマー(PVY01―3’):5’―CATCCGCACTGCCTCATACC―3’」

「2.1.3.ニューリーフY・ジャガイモSEMT15―02系統(加工品を含む)の検知

2.1.1.2.1.に準じた方法で定性PCRを行う。ただし、2.1.1.2.1.1.のPCR増幅は、2.1.3.1.のPCR増幅に差し替えて行う。ニューリーフY・ジャガイモSEMT15―02系統の検知プライマー対として86bpの増幅バンドが検出されるニューリーフY・ジャガイモSEMT15―02系統検出用プライマー対、陽性対照用プライマー対として111bpの増幅バンドが検出されるUGPaseプライマー対(ジャガイモに普遍的に内在するUDP―Glucose Pyrophosphorylase(UGPase)遺伝子を検知する)を用いる。ニューリーフY・ジャガイモSEMT15―02系統の確認試験は、123bpの増幅バンドが検出されるニューリーフY・ジャガイモ検出用プライマー対を用いて行う。

ニューリーフY・ジャガイモSEMT15―02系統検出用プライマー対

Fプライマー(NLY0201―5’):5’―TGAAATTCGACTAATTACAAGTTGA―3’

Rプライマー(NLY0201―3’):5’―GCATCGATCGTGAAGTTTCTCAT―3’

UGPaseプライマー対(UGPase遺伝子検出用プライマー対)

Fプライマー(UGPase01―5’):5’―CTCTCCATACTCTCTGCTCCTCG―3’

Rプライマー(UGPase01―3’):5’―CGGCATCAGCAGGAGAAAG―3’

ニューリーフY・ジャガイモ検出用プライマー対

Fプライマー(NLY01―5’):5’―CAAAATCCCAGTATCAAAATTCTT―3’

Rプライマー(NLY01―3’):5’―TGGTTTTGTATCTTTCTTGTTGCTTC―3’

本プライマー対については、独立行政法人食品総合研究所及び国立医薬品食品衛生研究所により開発されたものであることから、配列情報を含む情報の転載、学会等における公表等に関しては、事前に、両機関の担当者と協議すること。

2.1.3.1 PCR増幅

PCR用反応試料管に反応液を以下のように調製する。反応液は、PCR緩衝液*1、0.20mmol/LdNTP、1.5mmol/L塩化マグネシウム、0.5μmol/L5’及び3’プライマー*2、及び0.625units Taq DNAポリメラーゼ*3を含む液に、10ng/μLに調製したDNA試料液2.5μL(DNAとして25ng)を氷中で加え、全量を25μLにする。次に、その反応試料管をPCR増幅装置*4にセットする。反応条件は次の通りである。95℃に10分間保ち反応を開始させた後、95℃0.5分間、60℃0.5分間、72℃0.5分間を1サイクルとして、40サイクルのPCR増幅を行う。次に終了反応として72℃で7分間保った後、4℃で保存し、得られた反応液をPCR増幅反応液とする。PCR増幅のブランク反応液として、必ずプライマー対を加えないもの並びにDNA試料液を加えないものについても同時に調製する。

*1PCR緩衝液

PCR buffer Ⅱ(アプライドバイオシステムズ社製)又は同等の結果が得られるものを用いる。

*2各種プライマーは3.3.1.に示したものを用いる。

*3Taq DNAポリメラーゼ

AmpliTaq Gold DNAポリメラーゼ(アプライドバイオシステムズ社製)又は同等の結果が得られるものを用いる。

*4PCR増幅装置

GeneAmp PCR System 9700(アプライドバイオシステムズ社製)又は同等の結果が得られるものを用いる。」

に改める。

(別紙3)

「3.1.1.ELISA法

試料中のCP4EPSPSタンパク質を検知する手法である。100mesh(編み目の一目の長さ150μm)の篩いを通過した粉末試料0.1gを用いて、SDI社製GMOSoya RUR Test Kitの説明書に記載された手法に従って試験する。以下に方法について記述する。

試料または標準品0.1gをポリプロピレン製遠沈管(50mL容)に正確に量り採り、Soya Extraction緩衝液20mLを加え、ボルテックスミキサーを用い最低1分間混合した後、上清を得るまで5分間静置し、その上清を試料液とする。このキットで作成できる検量線の範囲は0-2.5%であるので、未知検体の抽出液について検量線の範囲内で定量値が内挿できるよう、別にSoya Extraction緩衝液で10倍希釈した試料液も準備しておく。Wellに試料液を100μLずつ加え、室温で1時間放置する。その後、Wash緩衝液で4回洗浄し、RUR Conjugate 1溶液100μLを加え、室温で30分間放置する。その後Wash緩衝液で4回洗浄する。次に、RUR Conjugate 2 溶液100μLを加え、室温で30分間放置した後、Wash緩衝液で4回洗浄する。次いでColor Reagent 100μLを加え、室温で30分間放置した後、Stop Solution 100μLを加えて反応を停止する。反応停止後、マイクロプレートリーダーを用い、450nmの波長でwellの吸光度を測定し、別途購入した標準試料を用い作成した検量線より組換え体の含有量を求める。なお、同一の実験を2wellで行い、得られた値を平均する。」

「3.1.1.ELISA法

試料中のCP4EPSPSタンパク質を検知する手法である。100mesh(編み目の一目の長さ150μm)のふるいを通過した粉末試料0.5gを用いて、SDI社製GMO Soya Test Kit Ver.2.0の説明書に記載された手法に従って試験する。以下に方法について記述する。

試料又は標準品0.5gをポリプロピレン製遠沈管(15mL容)に正確に量り採り、Soya Extraction緩衝液4.5mLを加え、ボルテックスミキサーを用い10秒間混合した後、2,500xgで15分間遠心し、上清を抽出液とする。Soya Assay緩衝液280μLに抽出液20μLを加え撹拌し希釈液とする。更に、Soya Assay緩衝液380μLに希釈液20μLを加え撹拌し、試料液とする。このキットで作成できる検量線の範囲は0―2.5%であるので、未知検体の抽出液について検量線の範囲内で定量値が内挿できるよう、別に10倍希釈した試料液も準備しておく。ウェルに試料液を100μLずつ加え、37℃で1時間保温する。その後、Wash緩衝液で3回洗浄し、Reconstituted and Diluted Soya Conjugate Mix 100μLを加え、37℃で1時間保温する。更にWash緩衝液で3回洗浄する。次に、Color Reagent 100μLを加え、室温で10分間放置した後、Stop Solution 100μLを加えて反応を停止する。反応停止後、マイクロプレートリーダーを用い、450nmの波長でウェルの吸光度を測定し、別途購入した標準試料を用い作成した検量線より組換え体の含有量を求める。なお、同一の実験を2ウェルで行い、得られた値を平均する。」

に改める。

(別添)

組換えDNA技術応用食品の検査方法

1 検体採取方法

1.1.組換えDNA技術応用食品の検体採取

1.1.1.トウモロコシ及び大豆の穀粒の検体採取

組換えDNA技術応用食品が不均一に分布しているということを前提として、ロットを代表するような検体採取を行うため、対象となるロットの大きさ、荷姿、包装形態に応じて、以下に掲げる検体採取を行う。検体採取に際しては、他ロットの穀粒が混入しないよう十分配慮し、使用する器具・容器包装等は使い捨てのものを使用するか、その都度、十分に洗浄等を行い使用すること。

次に、検体採取した穀粒が均質になるよう十分に混合した後、この中から検査に必要な一定量を採り、粉砕器等を用いて均質に粉砕する。

定量用の試料として用いるには、約500g必要である。

1.1.1.1.袋積みの場合

以下の表に従って検体採取を行う。

ロットの大きさ

検体採取のための開梱数

検体採取量(kg)

検体数

≦15

2

1

1

16~25

3

1

1

26~90

5

1

1

91~150

8

1

1

151~280

13

1

1

281~500

20

1

1

501~1,200

32

1

1

1,201~3,200

50

1

1

3,201~10,000

80

1

1

10,001~35,000

125

1

1

35,001~15,0000

200

1

1

15,0001~500,000

315

1

1

≧500,001

500

1

1

1.1.1.2.ばら積みの場合

1.1.1.2.1.サイロ搬入時

サイロに搬入する際に1サイロを1ロットとして、ロット全体を代表する検体となるようオートサンプラー等を用いて検体採取を行うものとし、適正な時間的間隔をもって15回、計10kg以上を検体採取したものを縮分してサイロ毎に1検体(1kg以上)とする。

すでにサイロに搬入したものについては、他のサイロに移動させる時点で同様に検体採取を行う。

1.1.1.2.2.はしけ搬入時

はしけ(内航船を含む。)に搬入する際に1はしけを1ロットとして、ロット全体を代表する検体となるようオートサンプラー等を用いて検体採取を行うものとし、適正な時間的間隔をもって15回計10kg以上を検体採取したものを縮分してはしけ毎に1検体(1kg以上)とする。

1.1.1.2.3.はしけにおける検体採取

すでにはしけに搬入したものについて検体採取を行う場合、1はしけを1ロットとして、ロット全体を代表する検体となるよう上層、中層、下層毎に各5カ所、計15カ所から、計10kg以上を検体採取したものを縮分してはしけ毎に1検体(1kg以上)とする。

1.1.2.パパイヤの検体採取

パパイヤの検体採取については、対象となるロットの大きさに応じて以下の表に従い検体採取を行うこと。

ロットの大きさ

検体採取のための開梱数

検体採取量(個)

≦50

2

2

51~500

3

3

501~35,000

5

5

≧35,001

8

8

1.2.加工食品の検体採取

加工食品の検体採取については、対象となるロットの大きさに応じて以下の表に従い検体採取を行うこと。

1.2.1.トウモロコシ及び大豆の粉砕加工品(コーングリッツ、コーンフラワー、コーンミール等、穀粒を粉砕したもの)

検体採取については、1.1.1.1.袋積みの場合に従う。

1.2.2.それ以外の加工食品

以下の表に従って検体採取を行う。

ロットの大きさ

検体採取のための開梱数

検体採取量(g)

検体数

≦15

2

120

1

16~50

3

120

1

51~150

5

120

1

151~500

8

120

1

501~3,200

13

120

1

3,201~35,000

20

120

1

35,001~500,000

32

120

1

≧500,001

50

120

1

2 安全性未審査の組換えDNA技術応用食品の検査方法

2.1.検査方法

2.1.1.トウモロコシ(CBH351)の検査

トウモロコシの穀粒については、ラテラルフロー法で行う。また、コーングリッツ、コーンフラワー、コーンミール等、遺伝子組換えにより新たに発現されるタンパク質が物理化学的な変化を受けていない粉砕加工品(以下、「トウモロコシ半製品」という。)についても、ラテラルフロー法で行う。

その他のトウモロコシ加工品については定性PCR法で行う。

なお、トウモロコシ半製品については、ラテラルフロー法で行った後、定性PCR法による確認試験を行う。

2.1.1.1.トウモロコシ穀粒からのCBH351トウモロコシの検知

2.1.1.1.1.ラテラルフロー法

市販のTest Kitは、Strategic Diagnostics社(SDI)製TraitBt9 Corn Grain 5―Minute Test Kit (Part# 7000012)を用いる方法である。以下に記述する方法は、キットの説明書に記載の方法と基本的に同一である。なお、実験室で実験を行う場合には、水は、特に断り書きがないかぎり全て逆浸透膜精製したRO水または蒸留水を用いることを推奨する。

2.1.1.1.1.1.実験操作

採取したトウモロコシ穀粒から無作為に800粒を採取し粉砕した後、粉砕物を500mL容程度の口の広い蓋付きの容器に採り、水288mLを加えたのち、10―20秒間、試料が全て濡れるまでよく振とうする。もしこの段階で上澄み液が生じなければ、少量の水を加え、試料をよく振とうし、振とう後上澄み液が生じたかどうか観察する。振とう後、数mL程度の上澄み液が生じるまで水を加える。次に、試料の上澄み液0.5mLをキット付属の1.5mL容試料管に移し、その試料管にTraitBt9テストストリップを垂直に立てる。

通常230gを量り採り粉砕したもの(230gで800粒に満たないときは800粒の粉砕物)。

2.1.1.1.1.2 結果の判定

テストストリップを試料管に立て、5分経過した時点で、テストストリップの表示部を観察する。赤色のラインがテストストリップ表示部に2本現れれば陽性、コントロールラインだけが現れれば陰性と判定する。また、1本も現れなければ、その試験は無効と判定する。

*5分間以上経過すると赤色のラインが濃くなる場合があり、正しく判定することができないので注意が必要。

2.1.1.2.トウモロコシ加工品からのCBH351トウモロコシの検知

加工食品からのDNAの抽出精製法(2.2.3.)に従って、一試料につき2回並行で抽出を行い、得られたDNA溶液を用い、以下の条件で定性PCRを行う。

2.1.1.2.1.定性PCR

定性PCRは、抽出されたDNAの一部をプライマーを用いてPCR増幅し、電気泳動法により、その増幅DNAを検知する方法である。

PCRでは、鋳型DNAが微量存在しても増幅される。従って、目的外のDNA(特にPCR増幅産物)の混入に特に注意を払う必要がある。また、DNAは、人間の皮膚表面から分泌されているDNA分解酵素により分解されるので、本酵素の混入を防止しなければならない。これらの点を考慮し、使い捨てのチューブ、チップ等を使用し、DNA、Dnase等がコンタミネーションしないよう注意して用いること。また、定性PCRの際に用いる水は、特に断り書きがないかぎり全て逆浸透膜精製したRO水または蒸留水をMilli―Q等で17MΩ/cmまで精製した超純水など、DNA、DNase等がコンタミネーションしていないものを用いること。

また、独立行政法人農林水産消費技術センター作成のJAS分析試験ハンドブック「遺伝子組換え食品検査・分析マニュアルコンタミネーション防止編」も参考にし、コンタミネーション防止に細心の注意を払うこと。

2.1.1.2.1.1.PCR増幅

PCR用反応試料管に反応液を以下のように調製する。反応液は、PCR緩衝液*1、0.20mmol/LdNTP、3mmol/L塩化マグネシウム、0.2μmol/L5’及び3’プライマー*2並びに0.625units Taq DNAポリメラーゼ*3を含む液に、10ng/μLに調製したDNA試料液2.5μL(DNAとして25ng)を氷中で加え、全量を25μLにする。次に、その反応試料管をPCR増幅装置*4にセットする。反応条件は次の通りである。95℃に10分間保ち反応を開始させた後、95℃0.5分間、60℃0.5分間、72℃0.5分間を1サイクルとして、40サイクルのPCR増幅を行う。次に終了反応として72℃で7分間保った後、4℃で保存し、得られた反応液をPCR増幅反応液とする。PCR反応のブランク反応液として、必ずプライマーを加えないもの及びDNA試料液を加えないものについても同時に調製する。また、試料からDNAが抽出されていることの確認として、各DNA試料液ごとに、CBH351検出用プライマー対の代わりに陽性対照用プライマー対*5を用い、同様にPCR増幅を行う。

*1PCR緩衝液

PCR buffer Ⅱ(アプライドバイオシステムズ社製)又は同等の結果が得られるものを用いる。

*2CBH351検出用プライマー対は以下の通りである。

F―primer(CaM03―5’):5’―CCT TCG CAA GAC CCT TCC TCT ATA―3’

R―primer(CBH02―3’):5’―GTA GCT GTC GGT GTA GTC CTC GT―3’

*3Taq DNAポリメラーゼ

AmpliTaq Gold DNAポリメラーゼ(アプライドバイオシステムズ社製)又は同等の結果が得られるものを用いる。

*4PCR増幅装置

GeneAmp PCR System9700(アプライドバイオシステムズ社製)又は同等の結果が得られるものを用いる。

*5陽性対照用のプライマー対は以下の通りである。

F―primer(Zein n―5’):5’―CCT ATA GCT TCC CTT CTT CC―3’

R―primer(Zein n―3’):5’―TGC TGT AAT AGG GCT GAT GA―3’

2.1.1.2.1.2.アガロースゲル電気泳動

PCR増幅反応液をアガロースゲル電気泳動により分離し、DNA増幅バンドを確認する。

2.1.1.2.1.2.1.アガロースゲルの作成

必要量のアガロースを秤量し、TAE緩衝液*1を加え、加熱してアガロースを溶解する。次に100mL当たり5μLのエチジウムブロミド溶液*2(10mg/mL)を加え、ゲルが50℃前後まで冷やした後、ゲルメーカーにゲルを流し込み、室温で十分に冷やし固めてゲルを作製する*3。ゲルはすぐに使用するのが望ましいが、緩衝液に浸して数日間保存することもできる。ゲルの濃度は泳動するDNAの長さに応じて決める必要があるので、泳動する目的産物のバンド長にあわせてゲル濃度(1.0―4.0%)を決める。

*1TAE緩衝液

各最終濃度が40mmol/L Tris―酢酸、1mmol/L EDTAとなるように蒸留水を用いて調製したものをTAE緩衝液とする。

*2エチジウムブロミド

2本鎖DNAの鎖の間に入り込む蛍光試薬であり、強力な発ガン作用と毒性がある。取扱いには必ず手袋をはめ、マスクを着用すること。

*3前染色

ここでは、前染色法を述べる。この段階でエチジウムブロミド溶液を加えず、電気泳動終了後、2.1.1.2.1.2.3.に従って、ゲルを後染色しても良い。

2.1.1.2.1.2.2.電気泳動

TAE緩衝液を満たした電気泳動漕にゲルをセットする。PCR増幅反応液7.5μLと適当量のゲルローディング緩衝液を混ぜ合わせた後、ゲルのwellに注入する。ゲルへの試料注入に時間がかかりすぎると、DNAが拡散し鮮明な結果が得られにくくなるので注意する。次に、100V定電圧で電気泳動を行い、ゲルローディング緩衝液に含まれるBPBがゲルの1/2から2/3まで進んだところで電気泳動を終了する。

2.1.1.2.1.2.3.ゲルの染色(後染色)

前染色を行った場合は本項の操作は必要ない。

ゲルが浸る量のTAE緩衝液が入った容器に、泳動後のゲルを移し入れる。次に緩衝液100mL当たり、5μLのエチジウムブロミド溶液(10mg/mL)を加え、容器を振とう器に乗せて軽く振とうしながら30分程度染色する。

2.1.1.2.1.3.ゲルイメージ解析

ゲルイメージ解析装置内のステージに食品包装用ラップを置き、その上に電気泳動と染色が終了したゲルをのせて紫外線(312nm)を照射する。ゲルイメージ解析装置の画面で電気泳動パターンを確認する。DNA分子量標準と比較して目的のバンドの有無を判定する。ブランク反応液で対応するPCR増幅バンドが検知された場合は、DNA抽出操作以降の結果を無効として、改めて実験をやり直す。泳動結果は画像データとして保存しておく。

食品包装用ラップ

ポリ塩化ビニリデン製のフィルムでないと紫外線は吸収されてしまい、像が得られない場合があるので注意を要する。

2.1.1.2.1.4.結果の判定

陽性対照プライマー対を用いたレーンで157bpのPCR増幅バンドが検出され、CBH351検出用プライマー対を用いたレーンで170bpのPCR増幅バンドがされた場合、新たに同一のDNA試料液を用いPCR反応液を調製し、確認用プライマー対を用いPCR増幅を行う。得られたPCR増幅反応液についてアガロースゲル電気泳動、ゲルイメージ解析を行い、171bpの増幅バンドが検知された場合、本検体はCBH351陽性と判定する。なお、2つのDNA抽出液での結果が異なった場合は陽性と判定する。また、どちらか一方の抽出液において対照プライマー対で予定長の増幅バンドが検出されない場合には、再度電気泳動以降の操作を行い、それでも予定長の増幅バンドが検出されない場合には、その抽出液での結果を無効とし、もう一方の抽出液の結果だけで判定する。2つのDNA抽出液とも対照プライマー対を用いたレーンで対応する増幅バンドが検出できない場合には、改めて3回目の抽出を行い、更にPCR以降の操作を実施して、判定を行う。3回目のDNA抽出液を用いた場合でも対照プライマー対でPCR増幅バンドが検出されないときは、本試料からの未承認食品の検知は不能とする。以下に判定例を示す。

判定例

 

試料番号

1

2

3

4

5

6

7

8

9

抽出1

対照プライマー

検出用プライマー

確認用プライマー

 

抽出2

対照プライマー

検出用プライマー

確認用プライマー

判定

陽性

陽性

陽性

陽性

陰性

陰性

陰性

陰性

試料番号9の例の場合には、3回目の抽出を行う。

+は陽性、-は陰性、/は検査不要を表す。

CBH351確認用プライマー対は以下の通りである。

F―primer(Cry9C―5’):5’―TAC TAC ATC GAC CGC ATC GA―3’

R―primer(35Ster―3’):5’―CCT AAT TCC CTT ATC TGG GA―3’

2.1.1.3.トウモロコシ半製品(コーングリッツ、コーンフラワー、コーンミール等)からのCBH351トウモロコシの検知

試料について粉砕せず、そのまま230g採る他は2.1.1.1.1.ラテラルフロー法に従って行い、陽性の結果が得られたものについては、2.2.1.に従い2回並行でDNAを抽出し、DNA試料液を用いて更に2.1.1.2.1.の定性PCRを実施し、どちらかの抽出液由来のPCR増幅液において、陽性対照プライマー対を用いたレーンで157bpのPCR増幅バンドが検出され、CBH351検出用プライマー対を用いたレーンで170bpのPCR増幅バンドが検出された場合、陽性と判定する。

2.1.2.パパイヤ(55―1)の検知

2.1.2.1.定性PCR法

生食用パパイヤ及び加工食品については、検出用として207bpの増幅バンドが検出される55―1検出用プライマー対(NosC―5’,CaMVN―3’)及び陽性対照用として211bpの増幅バンドが検出されるPapainプライマー対(papain―5’,papain―3’)を用いること。なお、250bpの増幅バンドが検出される55―1確認用プライマー対(CaM3―5’,GUS n―3’)が異なる他は2.1.1.2.1.と同様の方法で、定性PCRを行う。

55―1検出用プライマー対

F―primer(NosC―5’):5’―TTA CGG CGA GTT CTG TTA GG―3’

R―primer(CaMVN―3’):5’―CAT GTG CCT GAG AAA TAG GC―3’

Papain遺伝子検出用プライマー対

F―primer(papain―5’):5’―GGG CAT TCT CAG CTG TTG TA―3’

R―primer(papain―3’):5’―CGA CAA TAA CGT TGC ACT CC―3’

55―1確認用プライマー対

F―primer(CaM3―5’):5’―CCT TCG CAA GAC CCT TCC TCT ATA―3’

R―primer(GUSn―3’):5’―TCG TTA AAA CTG CCT GGC AC―3’

2.1.2.2.GUS試験法

遺伝子組換え体作出の際、組換えの指標とするためβ―glucuronidase(GUS)遺伝子を目的とする外来遺伝子に加えて導入する場合がある。この手法を用いて作出された遺伝子組換え体は、外来遺伝子に加えGUS遺伝子も同時に発現するため、GUS活性を検出することにより遺伝子組換え体であることの判定を行うことが可能となる。GUSは5―bromo―4―chloro―3―indoly1―β―D―glucuronide(X―Gluc)を基質とする。当該基質はGUS活性により脱エステル化されインドキシル誘導体モノマーを生じる。生じたモノマーは空気により酸化されることで重合し、青色の水不溶性インジゴチン色素を生成する。遺伝子組換えパパイヤ(55―1)においてもGUS遺伝子が導入されているため、上記原理に従い、青色を呈することを指標にその活性を検出し、遺伝子組換えパパイヤであることの判定を行うことが可能である。なお、本試験法における試料検体は、呈色反応の識別しやすいことを考慮し、胚を対象とする。

2.1.2.2.1.実験操作

あらかじめ、200mMリン酸緩衝液(pH7.0)*1を1ウェルあたり50μLずつ96ウェルプレートのうち必要数のウェルに分注しておく。試験には、パパイヤ1個体につき12個の胚を用いるため、必要となるウェル数は(パパイヤの個体数×12)である。

採取したパパイヤ果実を縦半分に切り、種子を無作為に1粒選出する。以下の手順に従い胚を取り出す。まず、ガラス板上で、粘性のある外皮をピンセットまたはメスの先端を利用し取り除く。次に、メスで種子の縦中央に切れ目を入れる*2。深く突き刺さないよう留意しながら切れ目にメスの先端を入れ、種皮を完全に取り除き、淡白色の胚珠を採取する。次に、胚珠の縦中央に観察される白線に沿ってメスを入れ、胚珠を縦半分に切断する*3。切断後、切断面に露出する胚をピンセットで注意深く取り出し*4、あらかじめ96ウェルプレートに分注しておいた200mMリン酸緩衝液(pH7.0)に速やかに浸す。この操作を繰り返し、1検体あたり12個の胚を取り出す。胚を採取する過程において、種皮が白色の種子や胚珠が含まれない種子が観察される場合があるが、それらは試験に用いない。ウェルに検査に用いる全ての胚を採取し終えた後、各ウェルよりリン酸緩衝液を除去する。続いて、基質溶液*5を1ウェルあたり50μLずつ加える。基質溶液を添加した後、その浸透を促すためアスピレーターを用いて15分間の脱気処理を行う。脱気処理後、96ウェルプレート全体をパラフィルムで密封し、37℃、10~15時間*7の条件で保温する。保温後、各ウェルに70%エタノールを50μLずつ加え反応を停止する。それぞれの検体について、青色を呈した胚の数を数え、GUS発現率*8を算出する。

*1200mMリン酸緩衝液(pH7.0)

200mM NaHZ2PO4と200mM Na2HPO4を3.3:6.7(v:v)の割合で混合した溶液を200mMリン酸緩衝液(pH7.0)とする。調製時には、ボルテックスミキサーを用いて十分に混合し、混合後、必ずpHが7.0であることを確認する。なお、当緩衝液は、必ず試験を開始する直前に作製し、一試験毎に使い切ること(用時調製)。

*2パパイヤの種子は縦方向に長く、これに比して横方向に短い。この事を基準に、種子を実験者に対して横向きになるよう配置させ、メスを左端にいれ、右端に向かって横方向に切り進めることで切れ目を入れるとよい。メスを深く差し込むと胚を切断してしまうこともあるので注意する。

*3胚珠はその中心部に位置する胚とその周りを覆う胚乳で構成されている。また、全体としては胚乳の示す淡白色をしている。しかし、胚珠表面を注意深く観察することで、淡白色とは明らかに異なる白色の線が中央部を上端から下端にかけてはしっていることが観察される。この白色の線は胚によって示されるものである。胚珠を切断する際には、刃がこの線に対して平行となるようにメスを入れ、胚を傷つけないよう注意しながら二分する。

*4胚が露出しなかった場合、切断面において胚を覆っている胚乳をメスで削り取り、胚を露出させる。その後、ピンセットを用いて注意深く取り出す。この際、胚を傷つけないよう充分注意しながら操作を進める。傷のついた胚は非特異的に青色を呈する場合がある。

*5基質溶液

X―Gluc溶液*6が最終濃度1mMとなるように、200mMリン酸緩衝液(pH7.0)で調製した溶液を基質溶液とする。基質溶液調製時には、ボルテックスミキサーを用いて充分に混合し、均一な溶液として調製する。なお、基質溶液は、必ず試験に供する胚全てを採取し終えた後に調製し、一試験毎に使い切るものとする。

*6X―Gluc溶液

X―Gluc粉末20mgをマイクロ遠沈管(1.5mL)に量り取り、1mLのジメチルホルムアミドを加え溶解したものをX―Gluc溶液とする。-20℃で保存すること。

*7恒温器を使用して保温する。また、15時間を超えて保温した場合、非遺伝子組換えパパイヤの胚が非特異的に染色される可能性が考えられる。この場合、正確な判定を下すことが出来なくなるため、保温時間については記載された時間を厳守すること。

*8GUS発現率(%)=〔(青色を呈した胚の数/試験した胚の数12)〕×100

2.1.2.2.2.結果の判定

検体が遺伝子組換えパパイヤ(55―1)の場合、理論的には75%(9胚/12胚)の割合で胚が青色を呈する。しかし、当該試験法においては、試験に供する胚を無作為に選出するため、必ずしも上記理論値には合致しない。一方、非遺伝子組換えパパイヤでは、青色を呈する胚は観察されない。従って、GUS発現率が30%以上(青色を呈した胚の数が4以上)の場合を陽性と判定し、GUS発現率が30%未満(青色を呈した胚の数が4未満)の場合を陰性と判定する。

判定例:試料1は、試験に供した12個の胚のうち青色を呈した胚はみられない(GUS発現率0%)ため、陰性と判定される。また、試料2は、12個の胚のうち、9個が青色を呈した(GUS発現率75%)ため、陽性と判定される。)