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○アレルギー物質を含む食品の検査方法について

(平成14年11月6日)

(食発第1106001号)

(各都道府県知事・各政令市市長・各特別区区長あて厚生労働省医薬局食品保健部長通知)

アレルギー物質を含む食品については、特定のアレルギー体質を持つ方の健康危害の発生を防止する観点から、平成13年4月からその表示について法的に義務化しているところである。

これに関連して、今般、別添のとおりアレルギー物質を含む食品の検査方法を定めたので、検査を行う場合には、これらの方法により実施されたい。

なお、アレルギー物質を含む食品の検査方法については、その検査技術の進歩に対応し、順次見直しを行っていくこととしているので、ご留意願いたい。

(別添1)

アレルギー物質を含む食品の検査方法

序文

本検査法は、特定原材料等の表示制度を科学的に検証する目的で、現時点で最も信頼性の高いと考えられる方法によって構成されたものである。該当する検査対象検体は流通する食品原料、添加物及び加工食品であるが、本検査法を全ての食品へ適用することは、実際上不可能である。さらに応用例を蓄積し、問題点を改訂していくこととしているので、御留意願いたい。

なお加工による特定原材料成分の変化・分解や食品からの特定原材料成分の抽出効率の変動により、本検査法による特定原材料総タンパク質含有量の測定結果は実際の含有量と必ずしも正確に一致しない。

1.検査原則及び試料調製法

1.1.検査原則

当検査は、あらゆる加工食品が検査対象検体として想定されるため、その性状により測定結果は変動する。これらを縮小するための原則について記す。

・ 検査対象検体は、一包装を一単位とする。

・ 検査対象検体の食さない部分を廃棄した可食部を試料とする。

・ 試料中の特定原材料成分は、不均一に分布すると考えられるため、検査に供する前に均質化操作を行う。

・ 均質化した試料を調製試料とする。

・ 検査に供する調製試料は固体や液体の性状に関わらず、重量測定にて一定量を採取する。

・ 試料調製を含む検査全般は、空気の動きがなく温度・湿度の変動が少ない場所で実施する。

・ 微量測定のため、粉砕器、フードカッター、秤量用器具は中性洗剤等で洗浄後、アルカリ洗剤に一晩浸け置きする。あるいは超音波洗浄機を用い、30分間の超音波処理を行う。

・ 試料の調製場所と検査場所は、区切られた空間で行い、コンタミネーションを防ぐ。

1.2.試料調製法

食品一包装単位に含まれる可食部全体を試料とする。その後、試料の全量を粉砕器あるいはフードカッター等で十分に破砕し、均質混和して調製試料とする。

*エースホモジナイザーAM―11(日本精機製作所社製)、レッチェGM200(レッチェ社製)及び同等の結果が得られるものを用いる。

注)

①インスタント食品(カップ麺、カップスープ等)には、スープ、かやく及び麺などに小分けされ包装されているものが含まれる。そのような包装形態を持つインスタント食品については全体を一包装単位として考え、小分け包装されたもののすべてを混合し、次いで均質化操作を行った後に調製試料とする。

②幕の内弁当などの組み合わせ食品では弁当全体を一包装単位として考え、ご飯、おかず及び小分け包装された調味料等のすべてを混合し、次いで均質化操作を行った後に調製試料とする。

2.特定原材料等の検査方法

特定原材料等の検査方法は、以下を満たすものを用いること。

・ 定量検査法においては、試験室数8以上、試料数5以上(ただし、試料に含まれる特定原材料タンパク質濃度レベルには、10μg/gを含むこと)で実施した試験室間バリデーションで、50%以上、150%以下の回収率及び25%以下の室間精度であること。

・ 定性検査法においては、試験室数6以上、試料数5以上(ただし、試料に含まれる特定原材料タンパク質濃度レベルには、ブランク及び10μg/gを含むこと)で実施した試験室間バリデーションで、特定原材料タンパク質を含む試料についての陽性率は90%以上、ブランク試料における陰性率は90%以上とする。

・ これら試験室間バリデーションの結果及び偽陽性、偽陰性のデータについて、説明書等に添付し、公表していること。

・ これらの検査方法の評価にあたって、参考として添付した「アレルギー物資を含む食品の検査方法を評価するガイドライン」に準拠していること。

2.1.定量検査法

2.1.1.定量検査法の概要

食品中の特定原材料等由来のタンパク質を定量的に検出する手法である。一般的には、抗原抗体反応を利用したELISA法が用いられる。

なお、ELISA法以外の定量検査法を用いることは妨げないが、この場合には、この検査法と同等あるいは同等以上の性能をもっていること。

操作にあたっては、試薬、注意事項を含め各検査の説明書に記載された手技に従って検査する。

2.1.2.定量検査法の結果の判定

食品採取重量1gあたりの特定原材料等由来のタンパク質含量が10μg以上の試料については、微量を超える特定原材料が混入している可能性があるものと判断する。

なお、1度目の測定を行った結果、得られた数値が8―12μg/gの範囲内にある場合には、再度、同じ調製試料からの操作をあらためて行い、2度目の測定を行う。測定結果の判定は、1度目に得られた値と2度目に得られた値とを平均した値で行う。調製試料から2度目の採取が不可能である場合には、別の同検査対象検体を入手し検査を行う。

また、ELISA法を用いる場合にあっては、以下の点に注意すること。

・ ELISA法を用いて得られた測定結果において、3ウェル間のCV値が20%以上を示した場合には、再度ELISA操作以降の操作を行う。

・ 各濃度の標準液から得られた測定値に4係数logistic曲線をフィッティングして得られた検量線から各ウェルの特定原材料等由来のタンパク質濃度を算出し、得られた値に各検査毎に定められた希釈倍率を乗じて食品採取重量あたりの特定原材料等由来のタンパク質量を算出する。

2.2.定性検査法

2.2.1.定性検査法の概要

定性検査法には、ウエスタンブロット法やPCR法がある。一般に、卵、乳については、ウエスタンブロット法が用いられる。一方、小麦、そば、落花生については、一般にPCR法が用いられる。

なお、ウェスタンブロット法、PCR法以外の定性検査法を用いることは妨げないが、この場合には、これらの検査法と同等あるいは同等以上の性能をもっていること。

操作にあたっては、試薬、注意事項を含め各検査の説明書に記載された手技に従って検査する。

2.2.2.ウエスタンブロット法

ウエスタンブロット法においては、各特定原材料等由来のタンパク質の分子量(SDS-PAGEにおける見かけ上の分子量:卵白アルブミンM.W.50,000、オボムコイド M.W.38,000、カゼイン M.W.33,000―35,000、β―ラクトグロブリン M.W.18,400)付近に明瞭なバンドが検出されたものを陽性と判定する。適宜、標準液のバンド位置を参照して判定する。なお、陽性対照として検査対象の卵あるいは乳の標準液(1μg/mL)が検出されているかどうか確認する。標準液(1μg/mL)が検出されない場合は、検査が不適であると考え、再度試料の調製から行う。卵タンパク質測定の際は、卵白アルブミンあるいはオボムコイド、乳タンパク質測定の際はカゼインあるいはβ―ラクトグロブリンのどちらか一方の抗体を用いて陽性の場合、各特定原材料(卵、乳)が微量を超える混入があると判断する。

2.2.3.PCR法

食品からのDNA抽出精製法(2.2.3.2.)に従いDNA抽出を行い、得られたDNA試料液を用いて以下に示す定性PCRを行う。なお、DNA抽出は1調製試料につき2点並行で行い、それ以降、PCR増幅産物の確認に至るまでの全操作は、この2点に対し独立並行で行う。

2.2.3.1.試料調製法

1.1.及び1.2.に従って、試料を調製する。

ただし、試料中、ミキサーミル等を用いた単純な粉砕により均質化が困難なものについては、均質化処理過程において、試料と同重量の水を加え、充分に均質化操作を行う。その後、凍結乾燥処理を行い、再度粉砕操作を行ったものを調製試料とする。また、試料が液体の場合には、ミキサーミル等を用いた均質化を行った後、凍結乾燥処理に供し、処理後、再びミキサーミル等を用いた粉砕処理を経たものを調製試料とする。

2.2.3.2.DNA抽出精製法

界面活性剤セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)とフェノール/クロロホルム混合液を用いてDNAを抽出精製するCTAB法は、応用範囲が広い上、PCR阻害物質が残存しにくく、純度の高いDNAを得ることが出来る非常に優れた方法であるが、クロロホルム等の有害試薬、及び煩雑な精製操作が必要である。これに対し、市販のDNA抽出キットを用いることで比較的簡易にDNAの抽出精製を行うことが可能である。市販のDNA抽出キットには、シリカゲル膜タイプキット、イオン交換樹脂タイプキット等がある。これらのキットはそれぞれに特徴を有するため、各検査対象検体に適した方法にてDNAの抽出を行う。本項では、CTAB法とシリカゲル膜タイプのキット(QIAGEN DNeasy Plant Mini)、イオン交換樹脂タイプのキット(QIAGEN Genomic-Tip 20/G)を用いた精製法を記す。なおDNAの抽出精製の際に用いる水は、特に断り書きがないかぎり全て逆浸透膜精製したRO水または蒸留水をMilli―Q等で17MΩ/cmまで精製した超純水を121℃、20分以上の条件でオートクレーブ滅菌したものとする。

2.2.3.2.1.シリカゲル膜タイプキット法*1

調製試料2gをポリプロピレン製遠沈管(50mL容)に量り採り*2、同遠沈管に予め65℃に温めておいたAP1緩衝液10mLとRNase A 10μLを加える。その後、試料塊が残らないようボルテックスミキサーで激しく混合し、65℃で15分間加温する。その間、数回遠沈管を反転させ試料を撹拌する。加温処理後、AP2緩衝液3,250μLを加え室温で5分間静置し、その後、室温下、3,000xgの条件で5分間遠心する。遠心終了後、速やかに上清を別の遠沈管に移す。次いで分取した上清をQIAshredder spin columnに負荷し、室温下、10,000xg、の条件で2分間遠心する。得られた溶出液は新しいポリプロピレン製遠沈管(15mL容)に移しておく。この際、1回あたりの負荷量は500μLとし、得られた上清のうち3mLを負荷し終えるまで数回繰り返す。最終的に得られた溶出液に、溶出液量の1.5倍量のAP3緩衝液・エタノール混液*3を加え、10秒間ボルテックスミキサーで撹拌し、溶解液を得る。得られた溶解液のうち500μLをmini spin columnに負荷し、室温下、10,000xgの条件で1分間遠心し溶出液を捨てる。次いで残りの溶解液のうち、さらに500μLを同じmini spin co1umnに負荷し、同条件で遠心し溶出液を捨てる。最終的に溶解液がすべてなくなるまで同様の操作を繰り返す。次いで、columnにAW緩衝液500μLを負荷し、室温下、10,000xgの条件で1分間遠心する。得られた溶出液を捨て、同じ操作をもう1度繰り返す。溶出液を捨てた後、mini spin columnを乾燥させるため、室温下、10,000xg以上の条件で15分間遠心する。乾燥処理後、mini spin columnをキット付属の遠沈管に移し、予め65℃に温めておいた水50μLを加え、5分間静置した後、室温下、10,000xgの条件で1分間遠心しDNAを溶出する。もう1度同様の溶出操作を行い、得られた溶出液を合わせ、DNA試料原液(計100μL)とする。

*1 本法は主に加工程度の低い検査対象検体(小麦粉、そば粉、落花生粉砕物、並びにそれらに準ずる加工食品)に適用が可能である。加工程度が高く、糖、並びに油脂成分含量の高い検査対象検体ではDNAの精製度が低く、DNA量としても十分な量が抽出されないことがあるため留意する。また、本法によりDNAが抽出されない調製試料については、2.2.3.2.2.に示すイオン交換樹脂タイプキット法を用いたDNA抽出を試みる。

*2 試料の調製、採取は2.2.3.1.に記載の方法に従う。

*3 AP3緩衝液・エタノール混液

AP3緩衝液とエタノール(96―100%)を1:2(V/V)の割合で混合したものをAP3緩衝液・エタノール混液とする。

2.2.3.2.2.イオン交換樹脂タイプキット法*1

調製試料2gをポリプロピレン製遠沈管(50mL容)に量り採る*2。同遠沈管にG2緩衝液*37.5mLを加えてボルテックスミキサーで激しく混合し、混合後さらにG2緩衝液7.5mL、並びにα―アミラーゼ*4(1mg/mL)200μLを加え再びボルテックスミキサーで混合する。混合処理後、37℃で1時間加温する。この間、数回遠沈管を反転させ試料を撹拌する。加温処理後、Proteinase K*5100μLならびにRNase A 20μLを加えボルテックスミキサーで混合し、その後、50℃で2時間加温する。この間、数回遠沈管を反転させ試料を撹拌する。次いで、低温下(4℃)、3,000xg以上の条件で15分間遠心する。遠心終了後得られる上清をポリプロピレン製遠沈管(15mL容)に移す。移し終えた後、溶液中に浮遊する残存物を除くためさらに軽く遠心する。この遠心操作の間にQIAGEN Genomic-Tip 20/GをQBT緩衝液*31mLを用いて平衡化しておく。遠心操作終了後の上清を平衡化済みQIAGEN Genomic-Tip 20/Gに2mLずつ数回に分けて負荷する。上清全量の負荷操作を終了した後、tipにQC緩衝液*32mLを負荷し、洗浄する。同様の洗浄操作を合計3回繰り返した後、tipを新しいポリプロピレン製遠沈管(15mL容)に移し変える。洗浄操作終了後のtipに予め50℃に温めておいたQF緩衝液*31mLを加えDNAを溶出する。同tipに対し、もう1度同様の溶出操作を行う。得られた計2mLの溶出液に対し、0.7倍量のイソプロピルアルコールを加えよく混合し、低温下(4℃)、10,000xg以上の条件で15分間遠心し、沈殿*6を除かないよう注意を払いつつ上清のみを除く。上清を除いた後の遠沈管に70%エタノール1mLを加え、低温下(4℃)、10,000xg以上の条件で5分間遠心する。上清を捨て、残った沈殿を乾燥させるため、アスピレーターを用いて5分間程度の真空乾燥処理を行う。このとき完全に乾燥しないように注意する。沈殿が乾燥したことを確認した後、水100μLを加え、65℃、5分間の条件での加温処理、ならびにピペッティングによりDNAを溶解させ、DNA試料原液とする。

*1 本法は主に加糖、油脂処理、加熱混合、発酵などの処理が施された加工程度の高い検査対象検体に適用が可能である。また、本法によりDNAが抽出されない調製試料については、2.2.3.2.1.に示したシリカゲル膜タイプキット法を用いたDNA抽出を試みる。

*2 試料の調製、採取は2.2.3.1.に記載の方法に従う。

*3 G2緩衝液、QBT緩衝液、QC緩衝液、及びQF緩衝液はキットに付属しているが、足りない場合にはキットの説明書に従って調製可能である。

*4 SIGMA社製(Cat.No.A―6380)、または、同等の効力を持つものを用いる。

*5 QIAGEN社製(Cat.No.19133)、または、同等の効力を持つものを用いる。

*6 この沈殿が抽出されたDNAである。検査対象検体によってはDNAが極微量しか抽出されないため、目視する事が不可能な場合もあるが、遠沈管の底には沈殿があるということに注意を払いながら操作を行う。

2.2.3.2.3.CTAB法*1

調製試料2gをポリプロピレン製遠沈管(50mL容)に量り採り、同遠沈管にCTAB緩衝液*215mLを加え、ホモジナイザーを用いて混合する。遠沈管の縁ならびにホモジナイザーの先端部を洗浄するようにCTAB緩衝液30mLを加え、転倒混和後55℃で30分間加温する。加温処理後、溶液を撹拌し、均質となった溶液600μLをマイクロ遠沈管(1.5mL容)に量り採る。次いで量り採った溶液に対し500μLのフェノール/クロロホルム混合液*3を加え、転倒混和後ボルテックスミキサーで軽く懸濁する。懸濁後、7,500xg、室温条件下で15分間遠心し、分離した水層(上層)を新しいマイクロ遠沈管に移す。この際、中間層にさわらないように注意する。分取した水層に対し、再び500μLのクロロホルム/イソアミルアルコール混合液*4を加え、転倒混和後ボルテックスミキサーで軽く懸濁する。懸濁後、7,500xg、室温条件下で15分間遠心し、分離した水層(上層)を新しいマイクロ遠沈管に移す。分取した溶液に等容量のイソプロピルアルコール(室温)を加え、転倒混和後、7,500xg、室温条件下で15分間遠心し、沈殿に留意しながらデカンテーションで上澄み液を捨てる。次いで、500μLの70%エタノールを壁面から静かに加え、その後、7,500xg、室温条件下で1分間遠心する。遠心後、沈殿にさわらないようにできる限りエタノールを吸い取り捨てる。遠沈管に残った沈殿を乾燥させるため、アスピレーターを用いて2~3分間の真空乾燥処理を行う。この時、完全に乾燥しないように注意する。50μLのTE緩衝液*5を加えてよく混和し、その後、室温で15分間静置する。この間、数回転倒混和し、沈殿が完全に溶解する事を促す。得られた溶解液にRNase A 5μLを加え、37℃で30分間加温する。加温処理後の溶液に200μLのCTAB緩衝液、次いで250μLのクロロホルム/イソアミルアルコール混合液を加え、転倒混和後ボルテックスミキサーで軽く懸濁する。懸濁処理後、7,500xg、室温条件下で15分間遠心し、分離した水層(上層)を新しいマイクロ遠沈管に移す。この時、中間層にさわらないように分取する。分取した溶液に200μLのイソプロピルアルコールを加え、転倒混和する。転倒混和後、7,500xg、室温条件下で10分間遠心し、沈殿に留意しながらデカンテーションで上澄み液を捨てる。次いで、200μLの70%エタノールを壁面から静かに加え、その後、7,500xg、室温条件下で1分間遠心する。遠心後、沈殿にさわらないようにできる限りエタノールを吸い取り捨てる。遠沈管に残った沈殿を乾燥させるため、アスピレーターを用いて2~3分間の真空乾燥処理を行う。この時、完全に乾燥しないよう注意する。50μLの水を加えて混合した後、室温下に15分間静置する。この間、数回転倒混和する事で沈殿が溶解することを促す。完全に溶解したものをDNA試料原液とする。

*1 シリカゲル膜タイプキット法ならびにイオン交換樹脂タイプキット法を実施し、その結果、2.2.3.2.4.に記載の方法にて定量を行い、充分量のDNAが抽出できない場合に実施する。

*2 CTAB緩衝液

ビーカーに、8mLの0.5mM EDTA(pH8.0)、20mLの1M Tris/塩酸(pH8.0)及び56mLの5M NaCl水溶液を量り採り、混合した後、約150mLとなるように水を加える。この溶液に対してセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)4gを撹拌しながら加え、完全に溶解する。さらに水を加え全量を200mLとし、オートクレーブで滅菌したものをCTAB緩衝液とする。

*3 フェノール/クロロホルム混合液

1M Tris/塩酸(pH8.0)飽和フェノールとクロロホルム/イソアミルアルコールを1:1(v/v)の割合で混合したものをフェノール/クロロホルム混合液とする。

*4 クロロホルム/イソアミルアルコール混合液

クロロホルムとイソアミルアルコールを24:1(v/v)の割合で混合したものをクロロホルム/イソアミルアルコール混合液とする。

*5 TE緩衝液

各最終濃度が10mM Tris/塩酸(pH8.0)、1mM EDTA(pH8.0)となるように水を用いて調製したものをTE緩衝液とする。

2.2.3.2.4.DNAの精製度の確認と定量

DNA試料原液5μLを取り、TE緩衝液45μLを加えて50μLとし、200―320nmの範囲で紫外吸収スペクトルを測定する。この際230nm、260nm及び280nmの吸光度(O.D.230、O.D.260及びO.D.280)を記録する。次いでO.D.260の値の1を50ng/μL DNAとしてDNA濃度を算出する。またO.D.260/O.D.280を計算し、この比が1.2―2.5であることを確認する。吸光度比が1.2に達しない場合は抽出をやり直す。

2.2.3.2.に記載のある3種のDNA抽出法のうち、いずれかの抽出法を用いてDNA抽出を行い、吸光度測定を行った結果、O.D.260の値として相当量のDNAの抽出が確認されない場合、また、上記条件を満たすDNA試料原液の品質が確認されない場合には、他の抽出法を用いて抽出操作を行う。

なお、2.2.3.3.2.項に示すように、原則としてDNA試料液は20ng/μLの濃度で調製するが、検査対象検体によってはDNAの抽出効率が悪く、20ng/μLの濃度で調製することができない場合が考えられる。そのような場合には、最も20ng/μLに近い濃度で調製し、DNA試料液とする。また、O.D.260/O.D.280の吸光度比に関しては、1.2―2.5の範囲であることを原則とするが、3種の抽出法を行っても、上記条件を満たしたDNAが抽出されない場合には、原則のO.D.260/O.D.280の吸光度比の範囲である1.2―2.5に最も近い値を示したDNA試料原液を用いてDNA試料溶液を調製し、PCR増幅を行う。

*O.D.230値は糖、フェノール等の低分子化合物由来の吸光度であり、O.D.260/O.D.230を計算する。この比が2.0を下回る場合には、上記夾雑物の影響によりPCR反応がうまく行われない場合がある。O.D.260がDNA由来の吸光度、O.D.280がタンパク質等不純物由来の吸光度と考える。

2.2.3.3.定性PCR法

定性PCR法においては、抽出されたDNAに含まれる目的塩基配列領域を、プライマーと呼ばれるオリゴヌクレオチドを用いてpolymerase chain reaction(PCR)を行うことにより増幅し、その増幅産物を電気泳動法により分離、染色することで検出する。本法により、対象とする特定原材料を特異的に検知する事が可能であり、増幅産物の有無によって、検査対象検体中における特定原材料の有無を判定する。

*PCRでは、鋳型DNAが極微量でも存在していれば目的塩基配列領域が増幅され得る。従って、実際の実験操作、ならびに日頃の実験環境の保全にあたり、DNA(特にPCR増幅産物)の混入に充分注意を払う必要がある。また、DNAは、人間の皮膚表面から分泌されているDNA分解酵素により分解されるため、本酵素の混入を防止しなければならない。これらの点を考慮し、使用するチューブ、チップは使用する直前に121℃、20分以上の条件でオートクレーブ滅菌したものを用い、使い捨てとする。またチップに関しては、滅菌済みフィルター付きチップを使い捨てで使用することも意図せざるDNAの混入防止に有効である。

さらに、定性PCR法において用いる水は、特に断り書きがないかぎり全て逆浸透膜精製したRO水または蒸留水をMilli―Q等で17MΩ/cmまで精製した超純水を121℃、20分以上の条件でオートクレーブ滅菌したものとする。

2.2.3.3.1.PCR増幅

定性PCR法により検知が可能な特定原材料は落花生、小麦、そばの3種である。その各につきPCR増幅の条件が異なる。2.2.3.3.2.から2.2.3.3.4.に記載するPCR増幅条件のうち、検知対象とする特定原材料種に即したPCR条件を用いて検査を行う。また、各検査とも、1調製試料より2点並行で抽出されたDNAの各を規定濃度に調製した後、PCR法の鋳型DNAとして供する。PCR増幅は、まず、植物DNA検出用プライマー対を用いて行い、その結果を2.2.3.5.項に記載のある判定例に照らして判じ、判定に準じた2度目のPCR増幅を各特定原材料検出用プライマー対を用いて行う。

* 植物DNA検出用のプライマー対及び増幅バンド長は以下のとおりである。

植物DNA検出用プライマー対

F―primer(CP03―5’):5’―CGG ACG AGA ATA AAG ATA GAG T―3’

R―primer(CP03―3’):5’―TTT TGG GGA TAG AGG GAC TTG A―3’

増幅バンド長

124bp

*植物DNA検出用プライマー対は、広く植物DNAを検知することを目的として設計されている。そのため、標的遺伝子には植物界に広く分布し、高度に保存されている遺伝子を選定しているが、完全に保存されているものではなく、植物間で塩基配列の挿入や欠失が認められるものがある。このため、検査対象検体によっては、得られる増幅バンド長に若干の違いが認められる場合があるので注意する。

2.2.3.3.2.落花生の検知を目的としたPCR増幅

PCR用反応試料管に反応液を以下のように調製する。反応液は、1 x PCR緩衝液*1、0.20mM dNTP、1.5mM 塩化マグネシウム、0.2μM5’及び3’プライマー*2、及び0.625units Taq DNAポリメラーゼ*3を含む液に、20ng/μLに調製したDNA試料液*42.5μL(DNAとして50ng)を加え、全量を25μLにする。次に、その反応試料管をPCR増幅装置*5にセットする。反応条件は次の通りである。95℃に10分間保ち反応を開始させた後、95℃0.5分間、60℃0.5分間、72℃0.5分間を1サイクルとして、40サイクルのPCR増幅を行う。次に終了反応として72℃で7分間保った後、4℃で保存し、得られた反応液をPCR増幅反応液とする。PCR反応のブランク反応液として、必ずプライマー対を加えないもの並びにDNA試料液を加えないものについても同時に調製する。検査手順としては、まず、植物DNA検出用プライマー対を用いたPCR増幅を行い、その結果からPCR増幅に必要とされる品質を備えたDNAが抽出されていることの確認を行う。次いで、2.2.3.5.に記載のある判定例に従い、落花生検出用プライマー対を用いたPCR増幅を行う。

*1 PCR緩衝液

PCR buffer II(アプライドバイオシステムズ社製)及び同等の結果が得られるものを用いる。

*2 落花生検出用プライマー対及び増幅バンド長は以下のとおりである。

検出用プライマー対

F―primer(agg04―5’):5’―CGA AGG AAA CCC CGC AAT AAA T―3’

R―primer(agg05―3’):5’―CGA CGC TAT TTA CCT TGT TGA G―3’

増幅バンド長

95bp

*3 Taq DNAポリメラーゼ

AmpliTaq Gold DNAポリメラーゼ(アプライドバイオシステムズ社製)及び同等の結果が得られるものを用いる。

*4 原則としてDNA試料液は20ng/μLの濃度で調製することとするが、検査対象検体によってはDNAの抽出効率が悪く、それ以下の濃度でしか調製することができない場合が考えられる。そのような場合には、原則に最も近い最大の濃度で調製し、DNA試料液とする。

*5 PCR増幅装置

GeneAmp PCR System 9600、9700(アプライドバイオシステムズ社製)及び同等の結果が得られるものを用いる。

2.2.3.3.3.そばの検知を目的としたPCR増幅

使用機器、反応液の調製法、ならびにPCR反応条件ともに2.2.3.3.2.記載の落花生の検知を目的としたPCR増幅に同じ。また、5’及び3’プライマー、をそば検出用プライマー対に変更する点を除いて、反応液組成も同一。

*そば検出用プライマー対及び増幅バンド長は以下のとおりである。

検出用プライマー対

F―primer(FAG19―5’):5’―AAC GCC ATA ACC AGC CCG ATT―3’

R―primer(FAG22―3’):5’―CCT CCT GCC TCC CAT TCT TC―3’

増幅バンド長

127bp

本プライマーについては(株)日清製粉グループ本社が特許出願中である。保健所、衛生試験所など官公庁分析機関を除く分析機関において、本プライマーを使用した受託試験を業として実施する場合は、別途協議が必要であり、下記に連絡すること。但し、本プライマーを試験研究のために製造、使用することについては一切制限はない。

(連絡先:(株)日清製粉グループ本社 研究推進グループ、Te1.049―267―3916、Fax.049―266―5166)

2.2.3.3.4.小麦の検知を目的としたPCR増幅

使用機器、反応液の調製法及びPCR反応条件ともに2.2.3.3.2.記載の落花生の検知を目的としたPCR増幅に同じ。また、5’及び3’プライマー、を小麦検出用プライマー対に変更する点を除いて、反応液組成も同一。

*小麦検出用プライマー対及び増幅バンド長は以下のとおりである。

検出用プライマー対

F―primer(Wtr01―5’):5’―CAT CAC AAT CAA CTT ATG GTG G―3’

R―primer(Wtr10―3’):5’―TTT GGG AGT TGA GAC GGG TTA―3’

増幅バンド長

141bp

本プライマーについては(株)日清製粉グループ本社が特許出願中である。保健所、衛生試験所など官公庁分析機関を除く分析機関において、本プライマーを使用した受託試験を業として実施する場合は、別途協議が必要であり、下記に連絡すること。但し、本プライマーを試験研究のために製造、使用することについては一切制限はない。

(連絡先:(株)日清製粉グループ本社 研究推進グループ、Tel.049―267―3916、Fax.049―266―5166)

2.2.3.4.アガロースゲル電気泳動

PCR増幅反応液をアガロースゲル電気泳動により分離し、DNA増幅バンドを確認する。

2.2.3.4.1.アガロースゲルの作成

必要量のアガロースを秤量し、TAE緩衝液*1を加え、加熱してアガースを溶解する。次に100mL当たり5μLのエチジウムブロミド溶液(10mg/mL)*2を加え、ゲルが50℃前後まで冷えたらゲルメーカーにゲルを流し込み、十分に室温で冷やし固めてゲルを作製する*3。ゲルはすぐに使用する事が望ましいが、緩衝液に浸して数日間は保存することが可能である。ゲルの濃度は泳動するDNAの長さに応じて決める必要があるので、泳動する目的産物のバンド長にあわせてゲル濃度(2.0―4.0%)を決める。(特定原材料の検知においては2.5―4.0%濃度のアガロースゲルを使用するのが適当である)

*1 TAE緩衝液

各最終濃度が40mM Tris―酢酸、1mM EDTAとなるように蒸留水を用いて調製したものをTAE緩衝液とする。

*2 エチジウムブロミド

2本鎖DNAの鎖の間に入り込む蛍光試薬であり、強力な発ガン作用と毒性がある。取扱いの際には必ず手袋をはめ、マスクを着用すること。

*3 前染色

ここでは、前染色法について述べる。この段階でエチジウムブロミド溶液を加えず、電気泳動終了後、2.2.3.4.3.に述べる後染色法に従って、染色を行っても良い。(予想増幅バンド長の短い場合には、可視化を容易にするためにも後染色をすることが望ましい)

2.2.3.4.2.電気泳動

TAE緩衝液を満たした電気泳動漕にゲルをセットする。PCR増幅反応液7.5μLと適当量のゲルローディング緩衝液を混ぜ合わせた後、ゲルのウェルに注入する。ウェルヘの注入に時間がかかりすぎると、DNAが拡散し鮮明な結果が得られにくくなるので注意する。次に、100V定電圧で電気泳動を行い、ゲルローディング緩衝液に含まれるBPBがゲルの2/3程度まで進んだところで電気泳動を終了する。

2.2.3.4.3.ゲルの染色(後染色)

前染色を行った場合は本項の操作は必要ない。

ゲルが十分に浸る量のTAE緩衝液が入った容器に、泳動後のゲルを移し入れる。次に緩衝液100mL当たり、5μLのエチジウムブロミド溶液(10mg/mL)を加え、容器を振とう器に乗せて軽く振とうしながら20分程度染色する。その後、TAE緩衝液のみの入った容器に染色済みのゲルを移し、20分程度軽く振とうしながら脱染色を行う。

2.2.3.4.4.ゲルイメージ解析

ゲルイメージ解析装置内のステージに食品包装用ラップを置き、その上に電気泳動及び染色操作を完了したゲルをのせて紫外線(312nm)を照射する。ゲルイメージ解析装置の画面で電気泳動パターンを確認する。DNA分子量標準マーカーと比較して目的のバンドの有無を判定する。ブランク反応液で対応するPCR増幅バンドが検出された場合は、DNA抽出操作以降の結果を無効として、改めて実験をやり直す。泳動結果は画像データとして保存しておく。

*食品包装用ラップ

ポリ塩化ビニリデン製のフィルムでないと紫外線は吸収されてしまい、像が得られない場合があるので注意を要する。

2.2.3.5.結果の判定

2.2.3.5.1.落花生を対象とした検査結果の判定

1調製試料より2点並行で抽出したDNAを規定濃度に調製した後、鋳型DNAとして用い、PCR法を実施する。まず1度目のPCR増幅は植物DNA検出用プライマー対を用いて実施し、その結果、DNA試料液2点のいずれを用いた場合も共に124bpのPCR増幅バンドが検出された場合には(下記植物DNA検出用プライマー対判定例試料番号1)、両試料液においてPCR増幅に必要な品質を有するDNAが抽出されたと判断し、次いで、落花生検出用プライマー対を用いたPCR増幅を各試料液に対し実施する。落花生検出用プライマー対を用いた2度目のPCR増幅の結果、DNA試料液2点の両方あるいは、そのいずれかにおいて95bpのPCR増幅バンドが検出された場合、本検査対象検体は落花生陽性と判定する(下記検出用プライマー対判定例試料番号1ならびに2)。また、1度目の植物DNA検出用プライマー対を用いたPCR増幅の結果、DNA試料液2点のうちいずれかにおいてPCR増幅バンドが検出されなかった場合(下記植物DNA検出用プライマー対判定例試料番号2及び3)には、当該試料液を用いた検査を中止し、PCR増幅バンドが得られた試料液のみを鋳型として、検出用プライマー対を用いた2度目のPCR増幅を実施する。その結果、95bpのPCR増幅バンドが検出された場合、本検査対象検体は落花生陽性と判定する。なお、下記植物DNA検出用プライマー対判定例試料番号4にあるように、植物DNA検出用プライマー対を用いた1度目のPCR増幅の結果において、DNA試料液2点ともにPCR増幅バンドが得られなかった場合には、PCR増幅に必要な品質を有するDNAが抽出されていなかったと判断し、2.2.3.2.に示されている先に用いたDNA抽出法以外の抽出法を試みる。2.2.3.2.に示されている3種のDNA抽出法を用いても、同様の結果が得られる場合には、当該検査対象検体からのDNA抽出が不可能であり、PCR法による検知不能と判断する。以下に判定例を示す。

植物DNA検出用プライマー対判定例

 

試料番号

1

2

3

4

抽出1

 

抽出2

 

 

事例1

事例2

事例3

+:増幅バンド検出、-:増幅バンド非検出

事例1:検出用プライマー対を用いたPCR増幅をDNA試料液2点に対し行う。

事例2:増幅バンドの得られたDNA試料液のみに対して、検出用プライマー対を用いたPCR増幅を行う。

事例3:本法によるDNA抽出は困難であると判断し、DNA抽出法の最適化を図る。3種のDNA抽出法を試みてなお、同じ結果のみ得られる場合には、当該検査対象検体からのDNA抽出は不可能であり、PCR法による検知不能と判断する。

検出用プライマー対判定例

 

試料番号

1

2

3

抽出1

 

抽出2

 

判定

陽性

陽性

陰性

+:増幅バンド検出、-:増幅バンド非検出

2.2.3.2.に記したとおり、検査対象検体に最適な抽出法を選択しなかった場合、量、質ともにPCRの鋳型となりうるDNAを抽出することが難しい。PCR法に供するDNA試料液は最適な抽出法にて抽出、精製され、原則として2.2.3.2.4.に示す基準を満たしているものとする。

2.2.3.5.2.そばを対象とした検査結果の判定

植物DNA検出用プライマー対を用いたレーンで124bpのPCR増幅バンドが検出され、そば検出用プライマー対を用いたレーンで127bpのPCR増幅バンドが検出された場合、本検査対象検体はそば陽性と判定する。なお、結果判定の手順、判定例、ならびに注意事項は2.2.3.5.1.記載の落花生を対象とした検査結果の判定に同じ。

2.2.3.5.3.小麦を対象とした検査結果の判定

植物DNA検出用プライマー対を用いたレーンで124bpのPCR増幅バンドが検出され、小麦検出用プライマー対を用いたレーンで141bpのPCR増幅バンドが検出された場合、本検査対象検体は小麦陽性と判定する。なお、結果判定の手順、判定例、ならびに注意事項は2.2.3.5.1.記載の落花生を対象とした検査結果の判定に同じ。

3.留意点

食品中の特定原材料等に係る検査は、原則として別添2の「判断樹」に従って実施する。別添3の「判断樹について」も必ず参照すること。

なお、本検査方法において使用する標準品の規格を別添4に示すので、検査を行う場合の参考にされたい。

移行措置として、従来指定していた下記の検査キットについては、平成21年6月30日まで引き続き使用して差し支えないものとする。ただし、本通知に示す条件を満たす旨のデータが提示された検査キットについては、本移行措置にかかわらず、使用して差し支えないものとする。

定量検査法

日本ハム(株)

FASTKITエライザシリーズ(卵、牛乳、小麦、そば、落花生)

FASTKITエライザVer.Ⅱシリーズ(卵、牛乳、小麦、そば、落花生)

(株)森永生科学研究所

モリナガ特定原材料測定キット(卵白アルブミン、カゼイン、小麦グリアジン、そば、落花生)

モリナガ FASPEK 特定原材料測定キット(卵白アルブミン、カゼイン、小麦グリアジン、そば、落花生)

定性検査法

(株)森永生科学研究所

モリナガウエスタンブロットキット

(別添2)

(別添3)

判断樹について

1 基本的注意事項

(1) この判断樹は、健康被害防止の観点に立ち、現在の科学的知見に基づき、アレルギー症状を誘発する可能性のある食品の誤表示による危害をできる限り回避することを目的とし、構成されている。

(2) 食品中の特定原材料の監視は、原則としてこの判断樹に基づいて行う。

(3) 検査には偽陽性又は偽陰性を示す食品が存在するので、その判断には十分注意する。すべての検査において、偽陽性又は偽陰性の情報を参照して偽陽性又は偽陰性の確認を必ず行う。

(4) すべての検査において、製造記録の確認を必ず行う。(ただし、判断樹枝①の場合のみ省略可能。)

2 スクリーニング検査について

(1) スクリーニング検査は定量検査法を用いて行う。なお、ELISA法以外の定量検査法を用いることは妨げないが、この場合には、この検査法と同等あるいは同等以上の性能をもっていること。

(2) スクリーニング検査は、検査特性の異なる2種の検査を組み合わせて実施する1

(3) スクリーニング検査で陽性とは、食品採取重量1gあたりの特定原材料由来のタンパク質含量が10μg以上のものをいう2

3 製造記録の確認について

(1) ここでいう「製造記録」とは、製造レシピ(配合表を含む。)、作業手順書、作業日報、検査成績書、ガントチャート(ライン毎の製造予定表)、品質(成分)保証書、商品カルテ(成分情報を含む。)、特定原材料を含まない旨の証明書等をいう。

(2) 製造記録に記載があるにもかかわらず、表示がないものについては、その根拠を必ず確認する。また、製造記録に記載がないにもかかわらず、表示があるものについては、その根拠を必ず確認する。

(3) ここでいう「根拠」とは、実測値もしくは製造記録からの推計値をいう。

(4) 製造記録が不明なものは、「記載なし」と同様に扱う。

4 確認検査について

(1) 確認検査は定性検査法を用いて行う。なお、ウェスタンブロット法、PCR法以外の定性検査法を用いることは妨げないが、この場合には、これらの検査法と同等あるいは同等以上の性能をもっていること。

(2) 卵、乳の確認検査は、一般的にウェスタンブロット法が使用されている。この場合、使用する抗体は、卵はオボアルブミン抗体及びオボムコイド抗体、乳はα―カゼイン抗体及びβ―ラクトグロブリン抗体を使用する。

(3) 小麦、そば、落花生の確認検査は、一般的にPCR法が使用されている。PCR法で特異的遺伝子増幅バンドが検出されたものを陽性とする。

(4) 確認検査の際には、スクリーニング検査で用いたものと同じ調製試料から採取して用いる。2度目の採取が不可能である場合には、別の同検査対象検体を入手し検査を行う。

5 違反発見時の措置

(1) 特定原材料が含まれる食品に係る表示が訂正されるまでの間(判断樹枝⑧においては、製造記録に「表示なし」の根拠の記載がされるまでの間)は、当該食品等の販売を行わないよう指導する。

(2) さらに、必要に応じて食品衛生法第54条若しくは第55条に基づく措置等を検討する。

6 枝①から⑨までの考え方

特定原材料の表示があり、2種の検査によるスクリーニング検査結果のうち少なくとも1つが「+(プラス)」の場合。

・ この場合でも製造記録の確認を行うことは望ましく、この判断樹がこれを妨げるものではないが、省略は可能。

・ 確認検査は不要。

・ 適正表示と考えられ、行政措置は不要。

特定原材料の表示があり、2種の検査によるスクリーニング検査結果がどちらも「-(マイナス)」で、製造記録に特定原材料の記載がある場合。

・ 製造記録の確認は必須。

・ 確認検査は不要。

・ 表示することは可能であり、行政措置は不要。

・ 食品中に含まれる特定原材料等の総タンパク量が、数μg/ml濃度レベル又は数μg/g含有レベルに満たない場合は、表示の必要性はないが、この場合に表示をするかしないかの判断は、製造者もしくは販売者によるものである。

・ スクリーニング検査結果の「-(マイナス)」が、特定原材料の総タンパク量が0(ゼロ)を意味しないことにご留意願いたい。

特定原材料の表示があり、2種の検査によるスクリーニング検査結果がどちらも「-(マイナス)」で、製造記録に特定原材料の記載がない場合。

・ 製造記録の確認は必須。

・ 確認検査は不要。

・ 表示してはならず、表示を訂正させる。

・ 製造記録に記載がないにもかかわらず、表示した根拠があれば、今後、その根拠を製造記録に記載するように指導する。

特定原材料の表示がなく、2種の検査によるスクリーニング検査のうち少なくともどちらか1つが「+(プラス)」で、製造記録に特定原材料の記載がある場合。

・ 製造記録の確認は必須。

・ 確認検査は不要。

・ 表示は必要であり、表示を訂正させる。

特定原材料の表示がなく、2種の検査によるスクリーニング検査結果のうち少なくともどちらか1つが「+(プラス)」で、製造記録に特定原材料の記載がなく、確認検査結果が「+(プラス)」の場合。

・ 製造記録の確認は必須。

・ 確認検査は必須。

・ 確認検査結果によってスクリーニング検査結果が偽陽性でないことを確認できており、表示が必要であり、表示を訂正させる。

・ ただし、通常、原材料として扱われないものによるコンタミネーションが考えられる場合(例:「ソバをゆでた湯でうどんをゆでた場合のゆで湯」、「天ぷらやカツなどの揚げ油」等)は、欄外記載による注意喚起が望ましい。

特定原材料の表示がなく、2種の検査によるスクリーニング検査結果のうち少なくともどちらか1つが「+(プラス)」で、製造記録に特定原材料の記載がなく、確認検査結果が「-(マイナス)」の場合。

・ 製造記録の確認は必須。

・ 確認検査は必須。

・ 確認検査結果によってスクリーニング検査結果が偽陽性でないことを確認できておらず、表示を訂正させることはしない。

・ しかし、確認検査結果が「-(マイナス)」がスクリーニング検査結果の「+(プラス)」を完全に否定するものではないことに留意する必要がある。

・ 原材料欄の外に注意喚起をすることは可能である。

特定原材料の表示がなく、2種の検査によるスクリーニング検査結果のどちらも「-(マイナス)」で、製造記録に特定原材料の記載があり、表示しなかった根拠がある場合。

・ 製造記録の確認は必須。

・ 確認検査は不要。

・ 製造記録に記載があるにもかかわらず、表示しなかった根拠の確認が必要。

・ 表示する義務はなく、適正表示である。

特定原材料の表示がなく、2種の検査によるスクリーニング検査結果のどちらも「-(マイナス)」で、製造記録に特定原材料の記載があり、表示しなかった根拠がない場合。

・ 製造記録の確認は必須。

・ 確認検査は不要。

・ 製造記録に記載があるにもかかわらず、表示しなかった根拠の確認が必要。

・ 表示することが望ましい。スクリーニング検査結果でどちらも「-(マイナス)」であるため、表示を訂正させることはしないが、表示を勧奨する。

・ しかし、製造記録に特定原材料の記載があるにもかかわらず、表示しなかった根拠については製造記録等へ必ず記載するように指導する。なお、スクリーニング検査の検査結果をもって表示しない根拠とする場合でも、自主的な検査結果は根拠として認めるが、行政検査における結果は表示をしない根拠として認めない。

特定原材料の表示がなく、2種の検査によるスクリーニング検査結果のどちらも「-(マイナス)」で、製造記録に特定原材料の記載がない場合。

・ 製造記録の確認は必須。

・ 確認検査は不要。

・ 適正表示と考え、表示がなくても問題ない。

1 2種の検査ともELISA法を用いる場合であっては、抗体の特性の異なる検査(対象食品に含まれる多くのタンパク質に対する抗体を用いる方法と、特定のタンパク質に対する抗体を用いる方法など)を組み合わせること。

2 平成13年10月29日に取りまとめられた厚生労働科学研究費補助金による食品表示が与える社会的影響とその対策及び国際比較に関する研究班アレルギー表示検討会中間報告書において、「数μg/ml濃度レベル又は数μg/g含有レベル以上の特定原材料等の総タンパク質を含有する食品については表示が必要と考えられる。」とされたこと等による。

(別添4)

標準品規格

1.卵検知用標準液

1.1.調製法

以下に示す方法に従い、卵一次標準粉末、卵標準品原液、卵一次希釈液及び卵高濃度標準液を調製する。卵標準品原液から卵高濃度標準液調製までの操作は、1日の内に行う。

卵一次標準粉末調製方法

白色レグホン種(産卵鶏)の新鮮卵1kgの卵殻を外し、均一にホモジナイズした後に凍結乾燥する。乾燥物を微粉砕し、卵一次標準粉末とする。

卵標準品原液調製方法

卵一次標準粉末0.2gを50mLPP製チューブに採取し、抽出用緩衝液20mLを加え、よくふり混ぜて混合し、固形物を分散させた後、振とう機(90~110rpm)で一晩抽出する。抽出液を10,000xgで30分間遠心分離した後、上澄液を孔径0.8μmのミクロフィルターでろ過し、卵標準品原液とする。

抽出に際しては、振とう機に遠心管を横にして置き、振とう幅は3cm程度とし、振とうにより液が両端に打ち付けるようになるくらいの振とう回数とする。時々チューブの上下を入れ替えるなどの操作をして、液面に沿って付着するサンプルを分散させる。

* 抽出用緩衝液 0.5%SDS及び2%メルカプトエタノールを含有するPBS(pH7.4)。

卵一次希釈液調製方法

卵標準品原液をpH7.4のPBSで10倍に希釈し、卵一次希釈液とする。

卵高濃度標準液調製方法

卵一次希釈液を0.2%BSAを含むpH7.4のPBSで2倍に希釈し、卵高濃度標準液とする。卵標準品原液から卵高濃度標準液調製までの操作は、1日の内に行う。

1.2.規格

卵標準品原液規格

電気泳動像

SDS-PAGEによる電気泳動を行うとき、200,130,90,50k付近にそれぞれ明瞭なバンドを認める。

タンパク量

2―D Quant kit(アマシャムバイオサイエンス製)により、タンパク質を定量するとき、その濃度は3.8~5.6mg/mLである。

参考 以下に示す値は参考値とする。

卵一次希釈液のタンパク質を、2―D Quant kit(アマシャムバイオサイエンス製)により定量するとき、その濃度は卵標準品原液のタンパク質濃度の0.08倍~0.12倍である。卵標準品原液についてSDS-PAGEを行うとき、6.に示すような泳動像が得られる。

2.牛乳検知用標準液

2.1.調製法

以下に示す方法に従い、牛乳一次標準粉末、牛乳標準品原液、牛乳一次希釈液及び牛乳高濃度標準液を調製する。牛乳標準品原液から牛乳高濃度標準液調製までの操作は、1日の内に行う。

牛乳一次標準粉末調製方法

ホルスタイン種(乳用牛)の新鮮乳1Lを氷で冷却しながら撹拌し、乳脂肪が凝固して生じる乳脂塊を脱脂綿で濾過する。この操作を3回繰り返し脂肪を除去した後、濾液を凍結乾燥し、乾燥物を微粉砕して牛乳一次標準粉末とする。

牛乳標準品原液調製方法

牛乳一次標準粉末0.2gを50mLPP製チューブに採取し、抽出用緩衝液20mLを加え、よくふり混ぜて混合し、固形物を分散させた後、振とう機(90~110rpm)で一晩抽出する。抽出液を10,000xgで30分間遠心分離した後、上澄液を孔径0.8μmのミクロフィルターでろ過し、牛乳標準品原液とする。

抽出に際しては、振とう機に遠心管を横にして置く。振とう幅は3cm程度とし、振とうにより液が両端に打ち付けるようになるくらいの振とう回数とする。時々チューブの上下を入れ替えるなどの操作をして、液面に沿って付着するサンプルを分散させる。

* 抽出用緩衝液 0.5%SDS及び2%メルカプトエタノールを含有するPBS(pH7.4)。

牛乳一次希釈液調製方法

牛乳標準品原液をpH7.4のPBSで10倍に希釈し、牛乳一次希釈液とする。

牛乳高濃度標準液調製方法

牛乳一次希釈液を0.2%BSAを含むpH7.4のPBSで2倍に希釈し、牛乳高濃度標準液とする。牛乳標準品原液から牛乳高濃度標準液調製までの操作は、1日の内に行う。

2.2.規格

牛乳標準品原液規格

電気泳動像

SDS-PAGEによる電気泳動を行うとき、40~25kの範囲に3本、20k付近に1本の明瞭なバンドを認める。

タンパク量

2―D Quant kit(アマシャムバイオサイエンス製)により、タンパク質を定量するとき、その濃度は2.1~3.1mg/mLである。

参考 以下に示す値は参考値とする。

牛乳一次希釈液のタンパク質を、2―D Quant kit(アマシャムバイオサイエンス製)により定量するとき、その濃度は牛乳標準品原液のタンパク質濃度の0.08倍~0.12倍である。牛乳標準品原液についてSDS-PAGEを行うとき、6.に示すような泳動像が得られる。

3.小麦検知用標準液

3.1.調製法

以下に示す方法に従い、小麦一次標準粉末、小麦標準品原液、小麦一次希釈液及び小麦高濃度標準液を調製する。小麦標準品原液から小麦高濃度標準液調製までの操作は、1日の内に行う。

小麦一次標準粉末調製方法

以下に示す14銘柄の小麦混合物を粉砕し、14メッシュの篩(aperture=1.18mm)を通過したものを、小麦一次標準粉末とする。

混合物に含まれる銘柄

No.1 Canada Western Red Spring 7.14%

US No.2 or better (Dark) Northen Spring 7.14%

US Hard Red Winter ― High Protein 7.14%

US Hard Red Winter ― Semi Hard 7.14%

Canada Western Amber Durum ― Triticum durum 7.14%

US Western White (White Club + Soft White) 7.14%(Club 1.6%)

Australian Premium White for Japan 7.14%

Australian Prime Hard 7.14%

ホクシン 7.14%

ハルユタカ 7.14%

農林61号 7.14%

チクゴイズミ 7.14%

バンドウワセ 7.14%

シロガネ 7.14%

小麦標準品原液調製方法

小麦一次標準粉末1gを50mLPP製チューブに採取し、抽出用緩衝液20mLを加え、よくふり混ぜて混合し、固形物を分散させた後、振とう機(90~110rpm)で一晩抽出する。抽出液を10,000xgで30分間遠心分離した後、上澄液を孔径0.8μmのミクロフィルターでろ過し、小麦標準品原液とする。

抽出に際しては、振とう機に遠心管を横にして置く。振とう幅は3cm程度とし、振とうにより液が両端に打ち付けるようになるくらいの振とう回数とする。時々チューブの上下を入れ替えるなどの操作をして、液面に沿って付着するサンプルを分散させる。

* 抽出用緩衝液 0.5%SDS及び2%メルカプトエタノールを含有する0.1M Tris―HCl(pH8.6)

小麦一次希釈液調製方法

小麦標準品原液をpH7.4のPBSで10倍に希釈し、小麦一次希釈液とする。

小麦高濃度標準液調製方法

小麦一次希釈液を0.2%BSAを含むpH7.4のPBSで2倍に希釈し、小麦高濃度標準液とする。小麦標準品原液から小麦高濃度標準液調製までの操作は、1日の内に行う。

3.2.規格

小麦標準品原液規格

電気泳動像

SDS-PAGEによる電気泳動を行うとき、32k~120kの範囲に4本以上のバンドを認める。

タンパク量

2―D Quant kit(アマシャムバイオサイエンス製)により、タンパク質を定量するとき、その濃度は4.0~6.0mg/mLである。

参考 以下に示す値は参考値とする。

小麦一次希釈液のタンパク質を、2―D Quant kit(アマシャムバイオサイエンス製)により定量するとき、その濃度は小麦標準品原液のタンパク質濃度の0.08倍~0.12倍である。小麦標準品原液についてSDS-PAGEを行うとき、6.に示すような泳動像が得られる。

4.そば検知用標準液

4.1.調製法

以下に示す方法に従い、そば一次標準粉末、そば標準品原液、そば一次希釈液、そば高濃度標準液を調製する。そば標準品原液からそば高濃度標準液調製までの操作は、1日の内に行う。

そば一次標準粉末調製方法

茨城県産及び中国産(中国北方)産のそばを等量混合した後粉砕し、14メッシュの篩(aperture=1.18mm)を通過したものを、そば一次標準粉末とする。

そば標準品原液調製方法

そば一次標準粉末1gを50mLPP製チューブに採取し、抽出用緩衝液20mLを加え、よくふり混ぜて混合し、固形物を分散させた後、振とう機(90~110rpm)で一晩抽出する。抽出液を10,000xgで30分間遠心分離した後、上澄液を孔径0.8μmのミクロフィルターでろ過し、そば標準品原液とする。

抽出に際しては、振とう機に遠心管を横にして置く。振とう幅は3cm程度とし、振とうにより液が両端に打ち付けるようになるくらいの振とう回数とする。時々チューブの上下を入れ替えるなどの操作をして、液面に沿って付着するサンプルを分散させる。

* 抽出用緩衝液 0.5%SDS、2%メルカプトエタノール及び0.5M塩化ナトリウムを含有する20mM Tris―HCl(pH7.5)

そば一次希釈液調製方法

そば標準品原液をpH7.4のPBSで10倍に希釈し、そば一次希釈液とする。

そば高濃度標準液調製方法

そば一次希釈液を0.2%BSAを含むpH7.4のPBSで2倍に希釈し、そば高濃度標準液とする。そば標準品原液からそば高濃度標準液調製までの操作は、1日の内に行う。

4.2.規格

そば標準品原液規格

電気泳動像

SDS-PAGEによる電気泳動を行うとき、28k付近に1本の明瞭なバンドと32k~83kの範囲に4本以上のバンドを認める。

タンパク量

2―D Quant kit(アマシャムバイオサイエンス製)により、タンパク質を定量するとき、その濃度は2.8~4.2mg/mLである。

参考 以下に示す値は参考値とする。

そば一次希釈液のタンパク質を、2―D Quant kit(アマシャムバイオサイエンス製)により定量するとき、その濃度はそば標準品原液のタンパク質濃度の0.08倍~0.12倍である。そば標準品原液についてSDS-PAGEを行うとき、6.に示すような泳動像が得られる。

5.落花生検知用標準液

5.1.調製法

以下に示す方法に従い、落花生一次標準粉末、落花生標準品原液、落花生一次希釈液、落花生高濃度標準液を調製する。落花生標準品原液から落花生高濃度標準液調製までの操作は、1日の内に行う。

落花生一次標準粉末調製方法

千葉県産バージニア種落花生を乳鉢で粉砕しペースト状としたもの1gを50mLPP製チューブに採取し、アセトン10mLを加え、ボルテックスミキサーを用いて1分間撹拌した後、10,000xgで30分間遠心分離し、上清を除く。この操作を3回くり返す。チューブを45℃のアルミバス上に置き、約7h乾燥し、落花生一次標準粉末とする。

落花生標準品原液調製方法

落花生一次標準粉末0.4gに抽出用緩衝液20mLを加え、よくふり混ぜて混合し、固形物を分散させた後、振とう機(90~11Orpm)で一晩抽出する。抽出液を10,000xgで30分間遠心分離した後、上澄液を孔径0.8μmのミクロフィルターでろ過し、落花生標準品原液とする。

抽出に際しては、振とう機に遠心管を横にして置く。振とう幅は3cm程度とし、振とうにより液が両端に打ち付けるようになるくらいの振とう回数とする。時々チューブの上下を入れ替えるなどの操作をして、液面に沿って付着するサンプルを分散させる。

* 抽出用緩衝液 0.5%SDS、2%メルカプトエタノール及び0.5M塩化ナトリウムを含有する20mM Tris―HCl(pH7.5)

落花生一次希釈液調製方法

落花生標準品原液をpH7.4のPBSで10倍に希釈し、落花生一次希釈液とする。

落花生高濃度標準液調製方法

落花生一次希釈液を0.2%BSAを含むpH7.4のPBSで2倍に希釈し、落花生高濃度標準液とする。落花生標準品原液から落花生高濃度標準液調製までの操作は、1日の内に行う。

5.2.規格

落花生標準品原液規格

電気泳動像

SDS-PAGEによる電気泳動を行うとき、70k付近に1本の明瞭なバンドと15k~30kの範囲に3~4本の明瞭なバンドを認める。

タンパク量

2―D Quant kit(アマシャムバイオサイエンス製)により、タンパク質を定量するとき、その濃度は3.6~5.3mg/mLである。

参考 以下に示す値は参考値とする。

落花生一次希釈液のタンパク質を、2―D Quant kit(アマシャムバイオサイエンス製)により定量するとき、その濃度は落花生標準品原液のタンパク質濃度の0.08倍~0.12倍である。落花生標準品原液についてSDS-PAGEを行うとき、6.に示すような泳動像が得られる。

6.各標準品原液のSDS-PAGE電気泳動像

原末:卵・牛乳・小麦・そば標準粉末

原末1:落花生脱脂前粉末

原末2:落花生脱脂後粉末

E001―003,M001―003,1,2,3:ロット番号

(参考)

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