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○食品衛生法施行規則及び乳及び乳製品の成分規格等に関する省令の一部を改正する省令の施行について

(平成13年3月21日)

(/食企発第4号/食監発第48号/)

(農林水産省総合食料局品質課長あて厚生労働省医薬局食品保健部企画課長・監視安全課長通知)

食品衛生法施行規則及び乳及び乳製品の成分規格等に関する省令の一部を改正する省令(平成13年厚生労働省令第23号)については、平成13年3月15日付けをもって公布され、別添1のとおり食発第79号をもって食品保健部長から、別添2のとおり本日付け食企発第2号・食監発第46号及び別添3のとおり本日付け食企発第3号・食監発第47号をもって食品保健部企画課長及び食品保健部監視安全課長から、各都道府県、政令市及び特別区あて通知したところですので、御了知の上、関係事業者に対し周知いただくとともに、その運用に当たって宜しく御配慮いただきますよう、お願いいたします。

また、アレルギー物質を含む食品に関する表示に係る改正については、平成14年3月末までに製造、輸入又は加工されるものについて経過措置が設けられていますが、制度の円滑な導入に向けて、下記事項につき御留意いただくとともに、関係者等に対し周知、指導方宜しくお願いいたします。

第1 アレルギー物質を含む食品に係る表示制度の概要

1 アレルギー物質を含む食品については、特定のアレルギー体質を持つ方の健康危害の発生を防止する観点から、食物アレルギーを引き起こすことが明らかになった食品のうち、特に発症数、重篤度から勘案して表示する必要性の高い小麦、そば、卵、乳及び落花生の5品目(以下「特定原材料」という。)を食品衛生法施行規則(昭和23年厚生省令第23号。以下「規則」という。)別表第5の2に掲げ、これらを含む加工食品については、規則第5条に定めるところにより当該特定原材料を含む旨を記載しなければならないこと。

2 従って、アレルギー物質を含む食品に係る表示について、表示義務(規則第5条)違反となるのは、特定原材料を原材料としているにもかかわらず、当該特定原材料を含んでいる旨を適切に記載していない場合であること。

3 アレルギー物質を含む食品として、規則では5品目が列挙されているところであるが、食物アレルギーの実態及びアレルギー誘発物質の解明に関する研究から、あわび、いか、いくら、えび、オレンジ、かに、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、さけ、さば、大豆、鶏肉、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチンの19品目(以下「特定原材料に準ずるもの」という。)についても、特定のアレルギー体質を持つ方に、過去に一定の頻度で重篤な健康危害が見られていることから、これらを原材料として含む加工食品については、当該食品を原材料として含む旨を可能な限り表示するよう努めるものであること。

第2 製造記録等の保管に関する留意事項

1 特定原材料を原材料として含むか否かの検証は、書面により行うこととなるので、製造記録等を適切に保管する必要があること。

2 省令により表示を義務づけられた5品目については、キャリーオーバー及び加工助剤についても最終製品まで表示する必要があることから、製品に微量に含まれる特定原材料についても確認し、記録を保管する必要があること。

第3 食物アレルギーに関する情報提供について留意すべき事項

アレルギー表示を必要とする特定原材料及び特定原材料に準ずるものについてのみでなく、これら以外の原材料についても、以下に掲げる例により、電話等による問い合わせへの対応やインターネット等による情報提供を行うことが望ましいこと。

1 各食品に原材料の内容を出来る限り詳細に記載し、省令で定められている5品目については、特に別枠を設けるなどして、消費者に対し、次に掲げるような注意喚起を行うこと。

① 食品名欄には個別の分かりやすい表記を行い、販売している多くの類似商品のうち具体的にどの商品に関する原材料表示であるかが容易に判別できるようにすること。

② 記載面積の制約により、実際の食品には省略規定や特定加工食品(規則第5条第13項に規定する特定加工食品をいう。)の表記を採用している場合は、別途の情報提供において、正確に全ての特定原材料を記載すること。

③ 特定原材料及び特定原材料に準ずるものについて、これが微量でも含まれる可能性のあるものも含めて可能な限り把握し、情報提供すること。

④ 情報提供をインターネットのホームページ等において行う場合は、各ページの分かりやすい部分に、記載内容についての問い合わせに対応できる部署又は担当者の名前、住所、電話番号、Eメールアドレス等を記載すること。

⑤ 企業秘密に該当する場合であっても、特定原材料を含む旨は表示する必要があること。しかしながら、他の原材料の詳細について情報提供ができない場合は、記載を行っている他にも原材料を用いている旨を記載し、アレルギーに関する問い合わせ先等を記載することにより、個別に情報提供に応じることとすること。

2 その他、併せて、消費者等から特定原材料及びその他の、製品に使用した原材料について問い合わせがあった際は、速やかに回答できるよう体制を整えるよう努めること。

アレルギー物質を含む食品に関する表示Q&A

厚生労働省医薬局食品保健部企画課

アレルギー物質を含む食品に関する表示Q&A

A 表示義務化の必要性(基礎知識編)

A-1 食物の摂取による「アレルギー」とはどのようなものですか。

A-2 アレルギー物質を含む食品にはどのようなものがありますか。

A-3 なぜアレルギー物質を含む食品に関して表示を義務付けたのですか。

A-4 食品衛生法における表示に関する考え方を教えてください。

A-5 ほかの法律で表示が義務付けられている事項について、矛盾のないように表示するにはどうすればよいでしょうか。

B アレルギー表示の対象について

B-1 表示の対象範囲について教えてください。

B-2 流通(卸売)段階では、どのような方法で特定原材料等を含む旨を確認し、表示するのでしょうか。

B-3 特定原材料等はどのように決められたのですか。

B-4 特定原材料等による表示で省令によるものと通知によるものがあるそうですが、その違いは何ですか。

B-5 含有量がごく微量の場合にも表示する必要がありますか。

B-6 食品を生産する際に、原材料としては使用していないにも関わらず、特定原材料等がごく微量混入(コンタミネーション)してしまう場合にも表示が必要ですか。

B-7 警告表示としてコンタミネーションの注意喚起を、原材料欄の外に記載することは可能ですか。

B-8 コンタミネーションを防止するための対策はありますか。

B-9 蒸留等の精製過程を経る食品についても表示は必要なのでしょうか。

C 禁止される表示事例について

C-1 特定原材料等が「入っているかもしれません。」「入っている恐れがあります。」などの可能性表示(入っているかもしれません)について、何か規制がありますか。

C-2 特定原材料等の名称以外に代替できる表記方法はありますか。また、禁止されている代替表記はありますか。

C-3 高級食材(あわび、いくら、まつたけ等)がごく微量にしか含まれていない加工食品の場合、アレルギー表示によって、これらの食材があたかも多く含まれているかのように強調されるなど、消費者に誤解を与えかねない事例があるかと思いますが、このことについての規制はありますか。

C-4 アレルギー表示が適切にされていない場合、どのような措置が取られるのですか。

C-5 アレルギー表示に関する質問、相談はどのような機関で行えばよいのですか。

D 食品添加物のアレルギー表示について

D-1 特定原材料等より製造された「食品添加物」を食品の製造に使用した場合も同様な表示が必要となるのでしょうか。

D-2 特定原材料等より製造される食品添加物であっても、アレルギーに関する表示が免除される場合があると聞きましたが、どういった場合に免除となるのでしょうか。

D-3 加工助剤やキャリーオーバー等、食品添加物のごく微量の残存についても表示は必要となるのでしょうか。

D-4 食品添加物の安定化のために、特定原材料等から製造される食品を使用した場合は、特定原材料等の表示も必要になるのでしょうか。

D-5 カゼインのように「一般に食品として飲食に供される物であって食品添加物として使用されるもの(一般飲食物添加物)」については、食品添加物における表示と同様に(乳由来)と表示するのでしょうか。

E 香料、アルコール等のアレルギー表示について

E-1 香料の原材料として、特定原材料等を用いることがありますが、これらについても表示は必要なのでしょうか。

E-2 アルコール類は原材料に麦や果実を使用する場合がありますが、これらについても表示は必要ですか。

E-3 発酵食品を製造するときに、発酵を開始させるため用いられる乳酸菌の培養物(スターター)を培養するときに用いる培地の構成成分に特定原材料等を用いている場合も表示の対象となるのでしょうか。

F 特定原材料等の範囲について

F-1 特定原材料の「卵」の範囲を教えて下さい。

F-2 特定原材料の「小麦」の範囲を教えて下さい。

F-3 特定原材料の「乳」の範囲を教えて下さい。

F-4 特定原材料の「そば」の範囲を教えて下さい。

F-5 特定原材料の「落花生」の範囲を教えて下さい。

F-6 特定原材料に準ずるものの「あわび」の範囲を教えて下さい。

F-7 特定原材料に準ずるものの「いか」の範囲を教えて下さい。

F-8 特定原材料に準ずるものの「いくら」の範囲を教えて下さい。

F-9 特定原材料に準ずるものの「えび」の範囲を教えて下さい。

F-10 特定原材料に準ずるものの「オレンジ」の範囲を教えて下さい。

F-11 特定原材料に準ずるものの「かに」の範囲を教えて下さい。

F-12 特定原材料に準ずるものの「牛肉」、「豚肉」、「鶏肉」の範囲を教えて下さい。

F-13 特定原材料に準ずるものの「さけ」の範囲を教えて下さい。

F-14 特定原材料に準ずるものの「大豆」の範囲を教えて下さい。

F-15 特定原材料に準ずるものの「やまいも」の範囲を教えて下さい。

F-16 特定原材料に準ずるものの「ゼラチン」の範囲を教えて下さい。

G 代替表記、特定加工食品について

G-1 特定原材料等の表示は必ず今回定められた表記方法で表示しなければならないのですか。

G-2 加工食品に使用した特定原材料等について、全てを詳細に記載すると表示欄に書ききれなくなってしまうのですが。

G-3 表示の省略方法でJAS法上、省略の難しいものはありますか。

G-4 表示内容が多くなることも考え、別に詳細を記入した用紙を付けて情報提供することは可能でしょうか。

H 特定原材料「乳」について

H-1 乳製品は沢山の種類があり、既に一般食品とは別の表示方法が定められていますが、アレルギー表示についてはどのような表記をすればよいのでしょうか。

H-2 乳成分を含む食品の特定原材料表示はどのようにおこなうのでしょうか。

H-3 乳等省令で定められている「乳」を原材料として使用している場合の特定原材料表示は、どのようになるのでしょうか。

H-4 乳等省令で定められている「乳製品」を原材料として使用している場合の特定原材料表示は、どのようになるのでしょうか。

H-5 「乳又は乳製品を原料とする食品」を原材料として使用している場合の特定原材料表示は、どのようになるのでしょうか。

H-6 ある食品に、特定原材料「乳」を含む食品を複合原材料として使用した場合の表示は、具体的にどのようになるのでしょうか。

I 行政の取り組み、その他

I-1 実際にアレルギー表示はいつから施行されるのでしょうか。

I-2 特定原材料等24品目は見直しを行い、変更されることはあるのでしょうか。

I-3 行政は安全性確保のためにモニタリング検査(抜き取り調査)をすべきではないでしょうか。

I-4 アレルゲンの検出検査はできるのですか。

I-5 国として、新たなアレルギー物質を含む食品の検索のためにどのような研究を行っているのですか。

I-6 諸外国での規制の状況はどのようになっているのでしょうか。

I-7 事業者が行うべき情報提供とは、どのような方法で行うべきでしょうか。

A 表示義務化の必要性(基礎知識編)

A-1 食物の摂取による「アレルギー」とはどのようなものですか。

食物の摂取により生体に障害を引き起こす反応のうち、食物抗原に対する免疫学的反応によるものを食物アレルギー(Food Allergy)とよんでいます。この免疫学的な防御反応とは、私たちの体の中で異物(抗原)が入ってくるとこれに対して防衛しようとする働きにより、抗体がつくられるというものです。その後の抗原の侵入に対して、この抗体がよい方に働けば、病気の発症を抑えて免疫ができます。ところが、アレルギー体質をもっている人の場合、その後の抗原の侵入に対して過敏な反応をし、血圧低下、呼吸困難又は意識障害等、様々なアレルギー症状が引き起こされます。このアレルギーの原因となる抗原を特にアレルゲンといいます。

食物が原因となって生体に障害を引き起こす反応には、食物アレルギーの他に毒素による中毒、消化酵素欠損による不耐症などがあり、これらとの鑑別が必要です。

A-2 アレルギー物質を含む食品にはどのようなものがありますか。

厚生労働省では、食物アレルギーの実態及び誘発物質の解明に関する研究を免疫・アレルギー研究事業において進めています。これまでの研究成果をもとに、過去に一定の頻度で血圧低下、呼吸困難又は意識障害等の重篤な健康危害が見られた症例から、その際に食した食品の中で明らかに特定された原材料をアレルギー物質を含む「特定原材料等」として指定しています。今回指定された特定原材料等は24品目あり、小麦、そば、卵、乳、落花生、あわび、いか、いくら、えび、オレンジ、かに、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、さけ、さば、大豆、鶏肉、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチンが挙げられています。

アレルギー患者にとっては、自分の食するものの中に、自分が反応するアレルギー物質を含むのかどうかを判断し、選別できるように情報提供が行われていることが重要です。今回食品中に特定原材料を含む旨の情報提供を「アレルギー物質を含む食品の原材料表示」(以下「アレルギー表示」という)によって行うにあたっては、実際のアレルギー発症数、重篤度等に差異があるため、省令で法令上表示を義務付けるものと、通知で表示を奨励するものとに分けることとなりました。

省令で定められる品目に、小麦、そば、卵、乳、落花生の5品目(以下「特定原材料」という)が挙げられ、通知で表示を奨励する品目に、あわび、いか、いくら、えび、オレンジ、かに、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、さけ、さば、大豆、鶏肉、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチンの19品目(以下「特定原材料に準ずるもの」という)が挙げられています。

現在指定されている24品目(以下、「特定原材料等」という)は、時代の変化とともに改訂されるものであり、平成12年度から発足した「食物アレルギーの実態及び誘発物質の解明に関する研究班」(以下「食物アレルギー研究班」という。)でもさらに実態調査・科学的研究を行い、新たな知見や報告により適宜、見直しを行っていきます。

A-3 なぜアレルギー物質を含む食品に関して表示を義務付けたのですか。

近年、アレルギー物質を含む食品に起因する健康危害が多く見られ、こうした危害を未然に防ぐため、表示を通じた消費者への情報提供の必要性が高まっています。しかし、現行の食品に関する表示制度では、その原材料について表示義務が課されない場合などがあり、消費者が食品中のアレルギー物質の有無を知るには不十分でした。そのため、平成11年3月5日の食品衛生調査会表示特別部会における「食品の表示のあり方に関する検討報告書(平成10年度)」により、食品中のアレルギー物質についての表示を義務付ける必要があるとされました。その後、食品衛生調査会表示特別部会は、平成12年7月13日に「遺伝子組換え食品及びアレルギー物質を含む食品に関する表示について」の報告書を公表しました。報告書では、表示の方法を過去の健康危害などの程度、頻度を考慮して重篤なアレルギー症状を惹起する実績のあった食品について、その原材料を表示させる「特定原材料等の名称による表示」方式とし、実状調査をもとに24品目の特定原材料等を示しています。

また、平成11年6月には、FAO/WHO合同食品規格委員会(コーデックス委員会)総会において、アレルギー物質として知られる8種の原材料を含む食品にあっては、それを含む旨を表示することで合意され、現在、加盟国で各国の制度に適した表示方法が検討されています。

このような国際的な動向も踏まえて、消費者の健康危害の発生を防止する観点から、食品衛生法(昭和22年法律第233号)においても、アレルギー物質を含む食品にあっては、それを含む旨の表示を義務付けることが必要であると考えられました。

A-4 食品衛生法における表示に関する考え方を教えてください。

食品衛生法第11条においては、公衆衛生の見地から表示につき必要な基準を定めることができるとされています。食品に関する適正な表示は、消費者や関係事業者に対し、的確な情報を与え、合理的な認識や選択に資するものであり、さらには、行政機関による迅速かつ効果的な取締りのためにも不可欠のものです。食品の表示については、次のように整理できます。

○消費者への情報伝達機能

① 表示事項に留意しなければ健康危害が生じる恐れがある場合の表示(例:品質保持期限、保存方法等)

② 公衆衛生の見地から、消費者が食品の内容を理解し、選択するための表示(例:添加物)

○流通事業者等への情報伝達機能

① 販売し、又は営業上使用する際に留意すべき情報(例:品質保持期限、保存方法)

② 製造者が付けた表示により、販売者が容易に消費者に情報提供できるようにする機能

○基準遵守促進機能

① 表示させることによる事業者に対する心理的効果(例:使用した食品添加物をすべて表示させることにより、規格基準外の添加物を使用することに心理的な障壁となる。)

② 行政当局等が規格基準遵守の確認の際に利用する情報(例:表示されている食品添加物について、その使用量を試験して、規格基準への適合を確認する。)

A-5 ほかの法律で表示が義務付けられている事項について、矛盾のないように表示するにはどうすればよいでしょうか。

食品衛生法の表示と農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(以下JAS法という。)の表示との関係については、JAS法が消費者の選択に資するための表示であるのに対し、食品衛生法は公衆衛生の見地における表示であり(例:表示事項に留意しなければ、健康被害が生じるおそれがある場合の表示、公衆衛生の見地から消費者が食品の内容を理解し、選択するための表示等)、法目的が異なります。そのため、どちらを優先するという性格のものではないので、他法令で表示が義務付けられている事項については、その法令に従って表示することが必要です。

この他に、不正表示を規制するものとして、不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)があります。景品表示法は、虚偽・誇大などの不当表示を規制しますが、アレルギー表示に関しては、微量表示を行わなければならない関係上、消費者が誤認するような表示にならないように注意が必要です。(C-3参照)

B アレルギー表示の対象について

B-1 表示の対象範囲について教えてください。

アレルギー表示の対象範囲は、食品衛生法第11条〔表示の基準〕の規定に基づく食品衛生法施行規則別表第3に定める食品又は添加物であって販売の用に供するものであり、具体的には容器包装された加工食品及び添加物です。このため、食品衛生法においては、JAS法では規定されていない流通過程の食品にも表示が義務づけられ、アレルギー表示についてもこの原則に準じて表示がされます。しかしながら、例外的に、運搬容器への表示(B-2参照)や、容器包装の面積が30cm2以下のものについての表示等については省略できることとされています。

B-2 流通(卸売)段階では、どのような方法で特定原材料等を含む旨を確認し、表示するのでしょうか。

仕入れ時に容器包装に特定原材料等Aを含む旨の表示がされた原材料Bを使って加工食品Cを製造する場合は、加工食品Cにも特定原材料等Aを含む旨についてアレルギー表示を行います。

ただし、上記の場合、商品の輸送、運搬のために、原材料Bの製造者が卸、小売業者を通じてそのまま加工食品Cの製造・販売業者に商品ごと販売するものには表示が必要ですが、その外装容器を卸、小売業者がその都度持ち帰りする場合(通い箱等)は表示が省略できることとなっています。同様に、食品を製造、加工して、一般消費者に直接販売する場合は表示をする必要はありません。したがって、店頭計り売りの加工食品については、持ち帰りの便宜のために、販売の都度、箱に入れたり包んだりする場合及び混雑時を見込んで当日販売数に限って包装してある場合は、単なる運搬容器とみなされ、表示を省略することができます。また、小売業者及び販売業者が購入者の要望によって便宜上、仮箱又は箱に詰めたものあるいは包んだものも同様に表示を省略することができます。

しかしながら、表示が省略されている原材料を使用する場合も同様に、消費者からの情報提供を行えるよう、原材料を仕入れる際は、(卸売)納入業者に特定原材料等の含有の有無を問い合わせ、あるいは、送り状又は納品書に併せて原材料に関する詳細を入手するなどして確認し、製造記録として残しておくことは、最終製品に正確な表示をするためにも有用です。このように、様々な方法で情報収集を行い、アレルギー表示が正確に行われ、消費者への情報提供を十分に行えるように心がけるべきです。

B-3 特定原材料等はどのように決められたのですか。

アレルギー物質を含む食品に起因する健康危害を未然に防止するため、表示による情報提供の要望が高まってきたことなどから、厚生科学研究においてアナフィラキシー等、重篤な健康影響を起こしたアレルギー物質が何かを明らかにするための調査研究が行われました。平成8年度および9年度は即時型反応を惹起する食物アレルギーの頻度調査を全国規模で年齢別に行い、また、平成10年度および11年度は食物アレルギーの診断を直接行う医師が関与した即時型アレルギーを引き起こした患者について、全国の医療機関を通じて実態調査を行っています。

全ての食品はアレルギーを引き起こす可能性がありますが、この調査に基づきその中で特に症状が重篤となるためアレルギー表示を行い、情報提供の必要があるものについて検討することとなりました。そこで、研究成果をもとに、過去に一定の頻度で血圧低下、呼吸困難又は意識障害等の重篤な健康危害が見られた症例から、その際に食した食品の中で、アレルギーを引き起こすことが明らかにされた原材料24品目を特定原材料等として指定しました。

食物アレルギーの原因物質については時代の変化とともに変わっていくと考えられるので、今後も食物アレルギー研究班などでさらに実態調査・科学的研究を行い、新たな知見や報告により適宜、見直しを行っていきます。

B-4 特定原材料等による表示で省令によるものと通知によるものがあるそうですが、その違いは何ですか。

特定原材料等24品目中でも実際のアレルギー発症数、重篤度等に差異があるため、法令で表示を義務付けるものと、通知で表示を奨励するものとに規定を分けることが現実的であると考え、以下のように分類することとしました。

(1) 表示制度導入につき、まず24品目の中でも特に重篤度・症例数の多い5品目(小麦、そば、卵、乳、落花生)の表示については省令で規定し、法令で表示を義務付けることとしました。

(2) 24品目の中で、アレルギー疾患を引き起こすアレルギー物質を含むことが知られていますが、症例数が少ないか、あるいは、多くても重篤な例が少なく、現段階では科学的知見が必ずしも十分ではない19品目(ゼラチンを含む)に関しては、特定原材料に準ずるものとして通知により表示を行うことを奨励することとしました。

(3) 「ゼラチン」に関しては、牛肉・豚肉由来であることが多く、これらは特定原材料に準ずるものであるため、元々表示をすべきものですが、ゼラチンそのものによりアレルギー疾患が起こることと、パブリックコメントにおいて単独表示(「ゼラチン」としての表示)の要望も多かったことから、1品目として項目を立てることとしました。

なお、これらは時代の変化とともに改訂されるものであり、食物アレルギー研究班でもさらに実態調査・科学的研究を行い、新たな知見や報告による検討を行っていきます。

<省令/通知による規定>

規定

特定原材料等の名称

理由

省令

卵、乳、小麦

症例数が多いもの。

なお、牛乳およびチーズは、「乳」を原料とする食品(乳及び乳製品等)を一括りとした分類に含まれるものとする。

そば、落花生

症状が重篤であり生命に関わるため、特に留意が必要なもの。

通知

あわび、いか、いくら、えび、オレンジ、かに、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、さけ、さば、大豆、鶏肉、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご

症例数が少なく、省令で定めるには今後の調査を必要とするもの。

ゼラチン

牛肉・豚肉由来であることが多く、これらは特定原材料に準ずるものであるため、既に牛肉、豚肉としての表示が必要であるが、パブリックコメントにおいて「ゼラチン」としての単独の表示を行うことへの要望が多く、専門家からの指摘も多いため、独立の項目を立てることとする。

B-5 含有量がごく微量の場合にも表示する必要がありますか。

食物アレルギーは、人によっては舐める程度でアナフィラキシー症状が惹起されるなど、ごく微量のアレルギー物質によって発症することがあります。よってアレルギー物質を含む食品にあっては、その含有量にかかわらず当該原材料を含む旨を表示する必要があります。

B-6 食品を生産する際に、原材料としては使用していないにも関わらず、特定原材料等がごく微量混入(コンタミネーション)してしまう場合にも表示が必要ですか。

ある特定原材料等Aを用いて食品Bを製造した製造ライン(機械、器具等)で、次に特定原材料等Aを使用しない別の食品Cを製造する場合、製造ラインを洗浄したにもかかわらず、その特定原材料等Aが混入してしまう場合があります。

この場合、特定原材料等Aは食品Cに必ず混入するということであれば、食品Cは特定原材料等Aを原材料として用いていると考えられますので表示が必要です。一方、混入する可能性が完全に否定できない場合であっても、この混入物質は原材料ではないと判断される場合には、特定原材料等Aは食品Cの原材料とはなりませんので、表示の義務はありません。しかしながら、食物アレルギーはごく微量のアレルギー物質によっても発症することがありますので、このようなコンタミネーションがないよう、生産ラインを十分洗浄することが大切です。

さらに、その生産ラインでどのような原材料を用いた食品を製造しているかを管理し、必要に応じて消費者に情報提供することが望ましいでしょう。

B-7 警告表示としてコンタミネーションの注意喚起を、原材料欄の外に記載することは可能ですか。

原材料表示欄外であっても、特定原材料等に関して「入っているかもしれない」表示は認められません(C-1参照)。しかしながら、同一製造ラインを使用することで、ときにある特定原材料等が入ってしまうことが想定できる場合、「本品製造工場では○○(特定原材料等の名称)を含む製品を生産しています。」、「○○(特定原材料等の名称)を使用した設備で製造しています。」等表記することにより注意喚起をすることは可能です。

B-8 コンタミネーションを防止するための対策はありますか。

基本的にある製品の製造時に他の製品に用いた原材料中のアレルギー物質がライン上で混入することは望ましいものではなく、混入が無いよう、十分な対策が必要です。製造ラインを複数の製品の製造に用いるとき(共有するとき)、コンタミネーションの防止対策として、製造ラインを十分洗浄した上で、特定原材料等を含まないものから製造することが考えられます。また、可能な限り専用器具を使用することも有効です。

B-9 蒸留等の精製過程を経る食品についても表示は必要なのでしょうか。

一般に加工食品は、加熱・濃縮・ろ過・蒸留等、様々な製造・精製過程を経て最終製品となりますので、その過程においてアレルギー物質が変性することにより、抗原性が減少、若しくは消滅する可能性が考えられます。

しかし、現在、全てのアレルギー物質を特定できているわけではなく、その物質のどの部分に抗原性があるかの知見も少ないことから、どの製造・精製過程を経ればアレルギーを引き起こす危険性が無くなるのかは分かっていません。また、様々な製造過程を経て完成した食品自体に抗原性がないとはいえない場合もあります。

従って、特定原材料等を加工する際の製造過程によって、表示の必要があるか否かの判断は難しく、加工製品に抗原性が認められないか、食物アレルギー研究班の報告による抗原性の低い物質等に当たらない限りは、原則表示する必要があります。今後、個々の食品についてさらに調査を行い、抗原性の有無を科学的に検討していく必要があります。このことにより、過去の症例からみて、アレルギーを起こすことが知られている加工食品(乳清、大豆油等)については、表示により判別できるようにするべきです。

また、乳糖は精製が完全であり、蛋白質の残存がなければ、抗原性がないとの知見があるため、特定原材料表示は必要ありません。ただし、今後新たな知見が得られた場合は再検討されることとなっています。

C 禁止される表示事例について

C-1 特定原材料等が「入っているかもしれません。」「入っている恐れがあります。」などの可能性表示(入っているかもしれません)について、何か規制がありますか。

「可能性表示」(入っているかもしれません)は原則として認められません。「可能性表示」を認めると、PL法対策としての企業防衛、あるいは製造者による原材料調査の負担を回避するため、製造者によっては十分な調査を行わずに安易に「可能性表示」を実施することにもなりかねません。こうした安易な可能性表示を認めると、アレルギー患者にとって症状の出ない商品についても「可能性表示」により特定原材料等を含む旨の表示が行われ、かえって患者の選択の幅を狭めてしまう恐れがあります。

C-2 特定原材料等の名称以外に代替できる表記方法はありますか。また、禁止されている代替表記はありますか。

原則として省令や通知で定める特定原材料等の名称(特定原材料等の表記方法代替リスト参照)に則り、記載するようにしましょう。以下のように特定原材料を複合化した表記方法は認められていません。

<大項目分類名使用の禁止例>

正しい表示

禁止される複合化表示

「穀類(小麦、大豆)」又は「小麦、大豆」

「穀類」

「牛肉、豚肉、鶏肉」

「肉類」、「動物性○○」

「りんご、キウイフルーツ、もも」

「果物類」、「果汁」

注)これはアレルギー物質を含まない「穀類」等の表示まで禁止するものではありません。

但し、製造工程上の理由などから次の食品に限って下記のように表示することができます。

例外規定表示

理由

「たん白加水分解物(魚介類)」

「魚醤(魚介類)」

「魚肉すり身(魚介類)」

網で無分別に捕獲したものをそのまま原材料として用いるため、どの種類の魚介類が入っているか把握できない。

C-3 高級食材(あわび、いくら、まつたけ等)がごく微量にしか含まれていない加工食品の場合、アレルギー表示によって、これらの食材があたかも多く含まれているかのように強調されるなど、消費者に誤解を与えかねない事例があるかと思いますが、このことについての規制はありますか。

特定原材料等のうち、高価なもの(あわび、いくら、まつたけ等)が含まれる加工食品については、ごく微量しか含有されていないにもかかわらず、あたかも多く含まれるかのような表示が行われると、消費者に誤認を生じさせるおそれがあります。このため、表示に当たっては、例えば「エキス含有」など、それらの含有量、形態に着目した表示も併せて記載するようにしましょう。表示は消費者への正しい情報提供の場となりますので、それが主要原材料であるかのような誤解を与えないように表示しましょう。

<表示例>

特定原材料等の名称

表示例

あわび

粉末状のあわびを少量使用する場合

→「あわび粉末」

まつたけ

まつたけから抽出したエキスを使用する場合

→「まつたけエキス」

C-4 アレルギー表示が適切にされていない場合、どのような措置が取られるのですか。

食品衛生法第11条第2項の規定によると、厚生労働大臣により表示の基準が定められた食品、添加物、器具又は容器包装は、その基準に合う表示がなければ、これを販売し、販売の用に供するために陳列し、又は営業上使用してはならないこととなっています。この規定に違反した場合、都道府県知事は、

① 営業者に対して、表示事項を表示し、又は遵守すべき事項を遵守すべき旨を指示

② 営業者が①に違反した場合、営業許可を取り消し、又は営業の全部若しくは一部を禁止し、期間を定めて停止することができる

こととなり、その命令に従わない場合は、6ヶ月以下の懲役又は3万円以下の罰金に処せられることとなります。

C-5 アレルギー表示に関する質問、相談はどのような機関に行えばよいのですか。

最寄りの保健所等において質問、相談を受け付けています。このほか、厚生労働省医薬局食品保健部企画課調査表示係においても質問等をお受けします。

D 食品添加物のアレルギー表示について

D-1 特定原材料等より製造された「食品添加物」を食品の製造に使用した場合も同様な表示が必要となるのでしょうか。

食品添加物のうち、抗原性が認められない物以外は、使用された特定原材料等が判別できるように表示する必要があります。表示方法は、次の通りです。

1) 原則として「物質名(~由来)」と記載します。

2) 乳化剤、調味料等の一括名で表示する食品添加物の場合は、一般的に「一括名(~由来)」と記載します。

3) 別名又は簡略名で、「卵」「大豆」「乳」等を意味する表現が認められている食品添加物の場合は、その名称をもって「(~由来)」の表示を省略することができます。

考え方としては、従来からの食品添加物の記載内容や表記法は変更せずに、従来の表記法では特定原材料等に由来することが分からないものについては(~由来)の記載をすることになります。

→別添1 特定原材料等由来の食品添加物についての表示例

D-2 特定原材料等より製造される食品添加物であっても、アレルギーに関する表示が免除される場合があると聞きましたが、どういった場合に免除となるのでしょうか。

特定原材料等由来の食品添加物であっても、抗原性試験等により抗原性が認められないと判断できる場合には、表示義務が免除されます。

ここでいう抗原性試験とは、現在、食品添加物の審査に用いられている「食品添加物の指定及び使用基準改正に関する指針」に基づくものです。抗原性の有無が不明である場合は表示が必要です。

また、食物アレルギー研究班より抗原性が低い旨の報告がなされた場合も表示は免除となります。よって、卵殻カルシウムについては焼成した物は抗原性が知られていないこと、また、大豆から抽出したトコフェロール等、純粋な特定成分のみを抽出し、他の物質の混在が認められない物についての特定原材料等に関する表示は免除となります。

アレルゲンであるか否か、抗原性が高いか低いか等については、未検討である部分も多く、症例やアレルギー発症機序から検証し、低分子物質の抗原提示性も含め今後の検討課題となります。

D-3 加工助剤やキャリーオーバー等、食品添加物のごく微量の残存についても表示は必要となるのでしょうか。

キャリーオーバー※1及び加工助剤※2など、一般には食品添加物を含む旨の表示が免除されているものであっても、特定原材料等に由来する食品添加物に係る表示では次のとおり表示することとされています。

① 省令により表示を義務づけられる5品目については、キャリーオーバー及び加工助剤についても最終製品まで表示する必要があります。

② 通知により表示が奨励される他の19品目については、可能な限り表示するようにしてください。

※1キャリーオーバー:食品の原材料の製造又は加工の過程において使用され、かつ、当該食品の製造又は加工の過程において使用されない物であって、当該食品中には当該物が効果を発揮することができる量より少ない量しか含まれていないものをいう。

※2加工助剤:食品の加工の際に添加される物であつて、当該食品の完成前に除去されるもの、当該食品の原材料に起因してその食品中に通常含まれる成分と同じ成分に変えられ、かつ、その成分の量を明らかに増加させるものではないもの又は当該食品中に含まれる量が少なく、かつ、その成分による影響を当該食品に及ぼさないものをいう。

D-4 食品添加物の安定化のために、特定原材料等から製造される食品を使用した場合は、特定原材料等に関する表示も必要になるのでしょうか。

食品添加物の安定化のため、特定原材料等から製造される食品を使用する場合(例:食品添加物である抽出トコフェロールの安定化等のため大豆油で希釈する場合)は特定原材料等を使用していることが分かるように「トコフェロール、(原材料の一部に大豆を含む)」等、表示をする必要があります。

香料にあわせて使用される副剤の表示も上記と同様です。

D-5 カゼインのように「一般に食品として飲食に供されるものであって食品添加物として使用されるもの(一般飲食物添加物)」については、食品添加物における表示と同様に(乳由来)と表示するのでしょうか。

食品添加物としてではなく、原材料として使用する場合(そのものを食材として使用する場合)でも、「カゼイン(乳由来)」と表記しても差し支えありません。

なお、「乳」に関する特定原材料表示についての詳細は問Hを参照ください。

 

従来の表記

特定原材料表記

食品

カゼイン

カゼイン(乳由来)

一般飲食物添加物

カゼイン

カゼイン(乳由来)

食品添加物

カゼインナトリウム

カゼインナトリウム(乳由来)

E 香料、アルコール等のアレルギー表示について