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○組換えDNA技術応用食品の検査方法について

(平成一三年三月二七日)

(食発第一一〇号)

(各都道府県知事・政令市長・特別区長あて厚生労働省医薬局食品保健部長通知)

組換えDNA技術応用食品に関しては、安全性審査の手続を経ていないものが国内で流通しないよう、本年四月から食品衛生法に基づく安全性審査を義務付けることとし、あわせて表示についても法的に義務化することとしている。

これに関連して、今般、別添のとおり組換えDNA技術応用食品の検査方法を定めたので、検査を行う場合には、これらの方法により実施されたい。

なお、組換えDNA技術は、科学技術分野の中でも最も進歩が早い分野の一つであることから、技術の進歩に対応し、検査方法については順次見直しを行っていくこととしているので、御留意願いたい。

(別添)

組換えDNA技術応用食品の検査方法

1. 検体採取方法

1.1. 組換えDNA技術応用食品の検体採取

1.1.1. トウモロコシ及び大豆の穀粒の検体採取

組換えDNA技術応用食品が不均一に分布しているということを前提として、ロットを代表するような検体採取を行うため、対象となるロットの大きさ、荷姿、包装形態に応じて、以下に掲げる検体採取を行う。検体採取に際しては、他ロットの穀粒が混入しないよう十分配慮し、使用する器具・容器包装等は使い捨てのものを使用するか、その都度、十分に洗浄等を行い使用すること。

次に、検体採取した穀粒が均質になるよう十分に混合した後、この中から検査に必要な一定量を採り、粉砕器等を用いて均質に粉砕する。

安全性未審査の組換えDNA技術応用食品のうち、該当するトウモロコシ系統の検査を目的とした定性PCR用試料又は安全性審査済みの組換えDNA技術応用食品を対象とした定量検査用試料として用いるには、500g必要である。

1.1.1.1. 袋積みの場合

以下の表に従って検体採取を行う。

ロットの大きさ

検体採取のための開梱数

検体採取量(kg)

検体数

≦15

2

1

1

16~25

3

1

1

26~90

5

1

1

91~150

8

1

1

151~280

13

1

1

281~500

20

1

1

501~1,200

32

1

1

1,201~3,200

50

1

1

3,201~10,000

80

1

1

10,001~35,000

125

1

1

35,001~150,000

200

1

1

150,001~500,000

315

1

1

≧500,001

500

1

1

1.1.1.2. ばら積みの場合

1.1.1.2.1. サイロ搬入時

サイロに搬入する際に1サイロを1ロットとして、ロット全体を代表する検体となるようオートサンプラー等を用いて検体採取を行うものとし、適正な時間的間隔をもって15回、計10kg以上を検体採取したものを縮分してサイロ毎に1検体(1kg以上)とする。

既にサイロに搬入したものについては、他のサイロに移動させる時点で同様に検体採取を行う。

1.1.1.2.2. はしけ搬入時

はしけ(内航船を含む。)に搬入する際に1はしけを1ロットとして、ロット全体を代表する検体となるようオートサンプラー等を用いて検体採取を行うものとし、適正な時間的間隔をもって15回計10kg以上を検体採取したものを縮分してはしけ毎に1検体(1kg以上)とする。

1.1.1.2.3. はしけにおける検体採取

すでにはしけに搬入したものについて検体採取を行う場合、1はしけを1ロットとして、ロット全体を代表する検体となるよう上層、中層、下層毎に各5カ所、計15カ所から、計10kg以上を検体採取したものを縮分してはしけ毎に1検体(1kg以上)とする。

1.1.2. パパイヤの検体採取

パパイヤの検体採取については、対象となるロットの大きさに応じて以下の表に従い検体採取を行うこと。

ロットの大きさ

検体採取のための開梱数

検体採取量(個)

≦50

2

2

51~500

3

3

501~35,000

5

5

≧35,001

8

8

1.2. 加工食品の検体採取

加工食品の検体採取については、対象となるロットの大きさに応じて以下の表に従い検体採取を行うこと。

1.2.1. トウモロコシ及び大豆の粉砕加工品(コーングリッツ、コーンフラワー、コーンミール等、穀粒を粉砕したもの)

検体採取については、1.1.1.1.袋積みの場合に従う。なお、安全性未審査の組換えDNA技術応用食品のうち、該当するトウモロコシ系統の検査を目的とした定性PCR用試料には、採取した検体のうち、500gを均質に粉砕した試料を用いる。

1.2.2. それ以外の加工食品

以下の表に従って検体採取を行う。

ロットの大きさ

検体採取のための開梱数

検体採取量(g)

検体数

≦15

2

120

1

16~50

3

120

1

51~150

5

120

1

151~500

8

120

1

501~3,200

13

120

1

3,201~35,000

20

120

1

35,001~500,000

32

120

1

≧500,001

50

120

1

2. 安全性未審査の組換えDNA技術応用食品の検査方法

2.1. 検査方法

2.1.1. トウモロコシ(CBH351)の検査

トウモロコシの穀粒については、ラテラルフロー法で行う。また、コーングリッツ、コーンフラワー、コーンミール等、遺伝子組換えにより新たに発現されるタンパク質が物理化学的な変化を受けていない粉砕加工品(以下、「トウモロコシ半製品」という。)についても、ラテラルフロー法で行う。

その他のトウモロコシ加工品については定性PCR法で行う。

なお、トウモロコシ半製品については、ラテラルフロー法で行った後、定性PCR法による確認試験を行う。

2.1.1.1. トウモロコシ穀粒からのCBH351トウモロコシの検知

2.1.1.1.1. ラテラルフロー法

市販のTest Kitは、Strategic Diagnostics社(SDI)製Trait・Bt9 Corn Grain 5―Minute Test Kit(Part# 7000012)を用いる方法である。以下に記述する方法は、キットの説明書に記載の方法と基本的に同一である。なお、実験室で実験を行う場合には、水は、特に断り書きがない限りすべて逆浸透膜精製したRO水又は蒸留水を用いることを推奨する。

2.1.1.1.1.1. 実験操作

採取したトウモロコシ穀粒から無作為に800粒を採取し粉砕した後、粉砕物を500mL容程度の口の広い蓋付きの容器に採り、水288mLを加えた後、10―20秒間、試料が全て濡れるまでよく振とうする。もしこの段階で上澄み液が生じなければ、少量の水を加え、試料をよく振とうし、振とう後上澄み液が生じたかどうか観察する。振とう後、数mL程度の上澄み液が生じるまで水を加える。次に、試料の上澄み液0.5mLをキット付属の1.5mL容試料管に移し、その試料管にTrait・Bt9テストストリップを垂直に立てる。

通常230gを量り採り粉砕したもの(230gで800粒に満たないときは800粒の粉砕物)。

2.1.1.1.1.2. 結果の判定

テストストリップを試料管に立て、5分経過した時点で、テストストリップの表示部を観察する。赤色のラインがテストストリップ表示部に2本現れれば陽性、コントロールラインだけが現れれば陰性と判定する。また、1本も現れなければ、その試験は無効と判定する。

5分間以上経過すると赤色のラインが濃くなる場合があり、正しく判定することができないので注意が必要。

2.1.1.2. トウモロコシ加工品からのCBH351トウモロコシの検知

加工食品からのDNAの抽出精製法(2.2.3.)に従って、一試料につき2回並行で抽出を行い、得られたDNA溶液を用い、以下の条件で定性PCRを行う。

2.1.1.2.1. 定性PCR

定性PCRは、抽出されたDNAの一部をプライマー対を用いてPCR増幅し、電気泳動法により、その増幅DNAを検知する方法である。

PCRでは、鋳型DNAが微量存在しても増幅される。したがって、目的外のDNA(特にPCR増幅産物)の混入に特に注意を払う必要がある。また、DNAは、人間の皮膚表面から分泌されているDNA分解酵素により分解されるので、本酵素の混入を防止しなければならない。これらの点を考慮し、使い捨てのチューブ、チップ等を使用し、DNA、DNase等がコンタミネーションしないよう注意して用いること。また、定性PCRの際に用いる水は、特に断り書きがない限りすべて逆浸透膜精製したRO水又は蒸留水をMilli―Q等で17MΩ/cmまで精製した超純水など、DNA、DNase等がコンタミネーションしていないものを用いること。

また、独立行政法人農林水産消費技術センター作成のJAS分析試験ハンドブック「遺伝子組換え食品検査・分析マニュアルコンタミネーション防止編」も参考にし、コンタミネーション防止に細心の注意を払うこと。

2.1.1.2.1.1. PCR増幅

PCR用反応試料管に反応液を以下のように調製する。反応液は、PCR緩衝液*1、0.20mmol/LdNTP、3mmol/L塩化マグネシウム、0.2μmol/L5'及び3'プライマー*2並びに0.625units TaqDNAポリメラーゼ*3を含む液に、10ng/μLに調製したDNA試料液2.5μL(DNAとして25ng)を氷中で加え、全量を25μLにする。次に、その反応試料管をPCR増幅装置*4にセットする。反応条件は次の通りである。95℃に10分間保ち反応を開始させた後、95℃0.5分間、60℃0.5分間、72℃0.5分間を1サイクルとして、40サイクルのPCR増幅を行う。次に終了反応として72℃で7分間保った後、4℃で保存し、得られた反応液をPCR増幅反応液とする。PCR反応のブランク反応液として、必ずプライマー対を加えないもの及びDNA試料液を加えないものについても同時に調製する。また、試料からDNAが抽出されていることの確認として、DNA試料液ごとに、CBH351検出用プライマー対の代わりに陽性対照用プライマー対*5を用い、同様にPCR増幅を行う。

1 PCR緩衝液

PCRbufferII(アプライドバイオシステムズ社製)又は同等の結果が得られるものを用いる。

2 CBH351検出用プライマー対は以下の通りである。

F―primer(CaM03―5'):5'―CCT TCG CAA GAC CCT TCC TCT ATA―3'

R―primer(CBH02―3'):5'―GTA GCT GTC GGT GTA GTC CTC GT―3'

3 TaqDNAポリメラーゼ

AmpliTaq GoldDNAポリメラーゼ(アプライドバイオシステムズ社製)又は同等の結果が得られるものを用いる。

4 PCR増幅装置

GeneAmp PCR System 7900(アプライドバイオシステムズ社製)又は同等の結果が得られるものを用いる。

5 陽性対照用のプライマー対は以下の通りである。

F―primer(Zein n―5'):5'―CCT ATA GCT TCC CTT CTT CC―3'

R―primer(Zein n―3'):5'―TGC TGT AAT AGG GCT GAT GA―3'

2.1.1.2.1.2. アガロースゲル電気泳動

PCR増幅反応液をアガロースゲル電気泳動により分離し、DNA増幅バンドを確認する。

2.1.1.2.1.2.1. アガロースゲルの作成

必要量のアガロースを秤量し、TAE緩衝液*1を加え、加熱してアガロースを溶解する。次に100mL当たり5μLのエチジウムブロミド溶液*2(10mg/mL)を加え、ゲルが50℃前後まで冷やした後、ゲルメーカーにゲルを流し込み、室温で十分に冷やし固めてゲルを作製する*3。ゲルはすぐに使用するのが望ましいが、緩衝液に浸して数日間保存することもできる。ゲルの濃度は泳動するDNAの長さに応じて決める必要があるので、泳動する目的産物のバンド長にあわせてゲル濃度(1.0~4.0%)を決める。

1 TAE緩衝液

各最終濃度が40mmol/L Tris―酢酸、1mmol/L EDTAとなるように蒸留水を用いて調製したものをTAE緩衝液とする。

2 エチジウムブロミド

2本鎖DNAの鎖の間に入り込む蛍光試薬であり、強力な発ガン作用と毒性がある。取扱いには必ず手袋をはめ、マスクを着用すること。

3 前染色

ここでは、前染色法を述べる。この段階でエチジウムブロミド溶液を加えず、電気泳動終了後、2.1.1.2.1.2.3.に従って、ゲルを後染色しても良い。

2.1.1.2.1.2.2. 電気泳動

TAE緩衝液を満たした電気泳動漕にゲルをセットする。PCR増幅反応液7.5μLと適当量のゲルローディング緩衝液を混ぜ合わせた後、ゲルのウェルに注入する。ゲルへの試料注入に時間がかかりすぎると、DNAが拡散し鮮明な結果が得られにくくなるので注意する。次に、100V定電圧で電気泳動を行い、ゲルローディング緩衝液に含まれるBPBがゲルの1/2から2/3まで進んだところで電気泳動を終了する。

2.1.1.2.1.2.3. ゲルの染色(後染色)

前染色を行った場合は本項の操作は必要ない。

ゲルが浸る量のTAE緩衝液が入った容器に、泳動後のゲルを移し入れる。次に緩衝液100mL当たり、5μLのエチジウムブロミド溶液(10mg/mL)を加え、容器を振とう器に乗せて軽く振とうしながら30分程度染色する。その後、TAE緩衝液のみの入った容器に染色済みのゲルを移し、30分程度軽く浸透しながら脱染色を行う。

2.1.1.2.1.3. ゲルイメージ解析

ゲルイメージ解析装置内のステージに食品包装用ラップを置き、その上に電気泳動と染色が終了したゲルをのせて紫外線(312nm)を照射する。ゲルイメージ解析装置の画面で電気泳動パターンを確認する。DNA分子量標準と比較して目的のバンドの有無を判定する。ブランク反応液で対応するPCR増幅バンドが検知された場合は、DNA抽出操作以降の結果を無効として、改めて実験をやり直す。泳動結果は画像データとして保存しておく。

食品包装用ラップ

ポリ塩化ビニリデン製のフィルムでないと紫外線は吸収されてしまい、像が得られない場合があるので注意を要する。

2.1.1.2.1.4. 結果の判定

陽性対照プライマー対を用いたレーンで157bpのPCR増幅バンドが検出され、CBH351検出用プライマー対を用いたレーンで170bpのPCR増幅バンドがされた場合、新たに同一のDNA試料液を用いPCR反応液を調製し、確認用プライマー対を用いPCR増幅を行う。得られたPCR増幅反応液についてアガロースゲル電気泳動、ゲルイメージ解析を行い、171bpの増幅バンドが検知された場合、本検体はCBH351陽性と判定する。なお、2つのDNA抽出液での結果が異なった場合は陽性と判定する。また、どちらか一方の抽出液において対照プライマー対で予定長の増幅バンドが検出されない場合には、再度電気泳動以降の操作を行い、それでも予定長の増幅バンドが検出されない場合には、その抽出液での結果を無効とし、もう一方の抽出液の結果だけで判定する。2つのDNA抽出液とも対照プライマー対を用いたレーンで対応する増幅バンドが検出できない場合には、改めて3回目の抽出を行い、さらにPCR以降の操作を実施して、判定を行う。3回目のDNA抽出液を用いた場合でも対照プライマー対でPCR増幅バンドが検出されないときは、本試料からの未承認食品の検知は不能とする。以下に判定例を示す。

判定例

 

試料番号

1

2

3

4

5

6

7

8

9

抽出1

対照プライマー

 

検出用プライマー

 

確認用プライマー

抽出2

対照プライマー

 

検出用プライマー

 

確認用プライマー

判定

陽性

陽性

陽性

陽性

陰性

陰性

陰性

陰性

試料番号9の例の場合には、3回目の抽出を行う。

+は陽性、-は陰性、/は検査不要を表す。

CBH351確認用プライマー対は以下の通りである。

F―primer(Cry9C―5'):5'―TAC TAC ATC GAC CGC ATC GA―3'

R―primer(35Ster―3'):5'―CCT AAT TCC CTT ATC TGG GA―3'

2.1.1.3. トウモロコシ半製品(コーングリッツ、コーンフラワー、コーンミール等)からのCBH351トウモロコシの検知

試料について粉砕せず、そのまま230g採る他は2.1.1.1.1.ラテラルフロー法に従って行い、陽性の結果が得られたものについては、2.2.1.に従い2回並行でDNAを抽出し、DNA試料液を用いて更に2.1.1.2.1.の定性PCRを実施し、どちらかの抽出液由来のPCR増幅液において、陽性対照プライマー対を用いたレーンで157bpのPCR増幅バンドが検出され、CBH351検出用プライマー対を用いたレーンで170bpのPCR増幅バンドが検出された場合、陽性と判定する。

2.1.2. パパイヤ(55―1)の検知

2.1.2.1. 定性PCR法

生食用パパイヤ及び加工食品については、検出用として207bpの増幅バンドが検出される55―1検出用プライマー対(NosC―5'、CaMVN―3')及び陽性対照用として211bpの増幅バンドが検出されるPapainプライマー対(papain―5'、papain―3')を用いること。なお、250bpの増幅バンドが検出される55―1確認用プライマー対(CaM3―5'、GUSn―3')が異なる他は2.1.1.2.1.と同様の方法で、定性PCRを行う。

55―1検出用プライマー対

F―primer(NosC―5'):5'―TTA CGG CGA GTT CTG TTA GG―3'

R―primer(CaMVN―3'):5'―CAT GTG CCT GAG AAA TAG GC―3'

Papain遺伝子検出用プライマー対

F―primer(papain―5'):5'―GGG CAT TCT CAG CTG TTG TA―3'

R―primer(papain―3'):5'―CGA CAA TAA CGT TGC ACT CC―3'

55―1確認用プライマー対

F―primer(CaM3―5'):5'―CCT TCG CAA GAC CCT TCC TCT ATA―3'

R―primer(GUSn―3'):5'―TCG TTA AAA CTG CCT GGC AC―3'

2.1.2.2. GUS試験法

遺伝子組換え体作出の際、組換えの指標とするためβ―glucuronidase(GUS)遺伝子を目的とする外来遺伝子に加えて導入する場合がある。この手法を用いて作出された遺伝子組換え体は、外来遺伝子に加えGUS遺伝子も同時に発現するため、GUS活性を検出することにより遺伝子組換え体であることの判定を行うことが可能となる。GUSは5―bromo―4―chloro―3―indolyl―β―D―glucuronide(X―Gluc)を基質とする。当該基質はGUS活性により脱エステル化されインドキシル誘導体モノマーを生じる。生じたモノマーは空気により酸化されることで重合し、青色の水不溶性インジゴチン色素を生成する。遺伝子組換えパパイヤ(55―1)においてもGUS遺伝子が導入されているため、上記原理に従い、青色を呈することを指標にその活性を検出し、遺伝子組換えパパイヤであることの判定を行うことが可能である。なお、本試験法における試料検体は、呈色反応の識別しやすいことを考慮し、胚を対象とする。

2.1.2.2.1. 実験操作

あらかじめ、200mMリン酸緩衝液(pH7.0)*1を1ウェル当たり50μLずつ96ウェルプレートのうち必要数のウェルに分注しておく。試験には、パパイヤ1個体につき12個の胚を用いるため、必要となるウェル数は(パパイヤの個体数×12)である。

採取したパパイヤ果実を縦半分に切り、種子を無作為に1粒選出する。以下の手順に従い胚を取り出す。まず、ガラス板上で、粘性のある外皮をピンセットまたはメスの先端を利用し取り除く。次に、メスで種子の縦中央に切れ目を入れる*2。深く突き刺さないよう留意しながら切れ目にメスの先端を入れ、種皮を完全に取り除き、淡白色の胚珠を採取する。次に、胚珠の縦中央に観察される白線に沿ってメスを入れ、胚珠を縦半分に切断する*3。切断後、切断面に露出する胚をピンセットで注意深く取り出し*4、あらかじめ96ウェルプレートに分注しておいた200mMリン酸緩衝液(pH7.0)に速やかに浸す。この操作を繰り返し、1検体当たり12個の胚を取り出す。胚を採取する過程において、種皮が白色の種子や胚珠が含まれない種子が観察される場合があるが、それらは試験に用いない。ウェルに検査に用いる全ての胚を採取し終えた後、各ウェルよりリン酸緩衝液を除去する。続いて、基質溶液*5を1ウェル当たり50μLずつ加える。基質溶液を添加した後、その浸透を促すためアスピレーターを用いて15分間の脱気処理を行う。脱気処理後、96ウェルプレート全体をパラフィルムで密封し、37℃、10~15時間*7の条件で保温する。保温後、各ウェルに70%エタノールを50μLずつ加え反応を停止する。それぞれの検体について、青色を呈した胚の数を数え、GUS発現率*8を算出する。

1 200mMリン酸緩衝液(pH7.0)

200mM NaH2PO4と200mM Na2HPO4を3.3:6.7(v/v)の割合で混合した溶液を200mMリン酸緩衝液(pH7.0)とする。調製時には、ボルテックスミキサーを用いて十分に混合し、混合後、必ずpHが7.0であることを確認する。なお、当緩衝液は、必ず試験を開始する直前に作製し、一試験毎に使い切ること(用時調製)。

2 パパイヤの種子は縦方向に長く、これに比して横方向に短い。このことを基準に、種子を実験者に対して横向きになるよう配置させ、メスを左端に入れ、右端に向かって横方向に切り進めることで切れ目を入れるとよい。メスを深く差し込むと胚を切断してしまうこともあるので注意する。

3 胚珠はその中心部に位置する胚とその周りを覆う胚乳で構成されている。また、全体としては胚乳の示す淡白色をしている。しかし、胚珠表面を注意深く観察することで、淡白色とは明らかに異なる白色の線が中央部を上端から下端にかけて走っていることが観察される。この白色の線は胚によって示されるものである。胚珠を切断する際には、刃がこの線に対して平行となるようにメスを入れ、胚を傷つけないよう注意しながら二分する。

4 胚が露出しなかった場合、切断面において胚を覆っている胚乳をメスで削り取り、胚を露出させる。その後、ピンセットを用いて注意深く取り出す。この際、胚を傷つけないよう充分注意しながら操作を進める。傷のついた胚は非特異的に青色を呈する場合がある。

5 基質溶液

X―Gluc溶液*6が最終濃度1mMとなるように、200mMリン酸緩衝液(pH7.0)で調製した溶液を基質溶液とする。基質溶液調製時には、ボルテックスミキサーを用いて十分に混合し、均一な溶液として調製する。なお、基質溶液は、必ず試験に供する胚すべてを採取し終えた後に調製し、一試験毎に使い切るものとする。

6 X―Gluc溶液

X―Gluc粉末20mgをマイクロ遠沈管(1.5mL)に量り取り、1mLのジメチルホルムアミドを加え溶解したものをX―Gluc溶液とする。-20℃で保存すること。

7 恒温器を使用して保温する。また、15時間を超えて保温した場合、非遺伝子組換えパパイヤの胚が非特異的に染色される可能性が考えられる。この場合、正確な判定を下すことができなくなるため、保温時間については記載された時間を厳守すること。

8 GUS発現率(%)=〔(青色を呈した胚の数)/(試験した胚の数12)〕×100

2.1.2.2.2. 結果の判定

検体が遺伝子組換えパパイヤ(55―1)の場合、理論的には75%(9胚/12胚)の割合で胚が青色を呈する。しかし、当該試験法においては、試験に供する胚を無作為に選出するため、必ずしも上記理論値には合致しない。一方、非遺伝子組換えパパイヤでは、青色を呈する胚は観察されない。したがって、GUS発現率が30%以上(青色を呈した胚の数が4以上)の場合を陽性と判定し、GUS発現率が30%未満(青色を呈した胚の数が4未満)の場合を陰性と判定する。

判定例:試料1は、試験に供した12個の胚のうち青色を呈した胚はみられない(GUS発現率0%)ため、陰性と判定される。また、試料2は、12個の胚のうち、9個が青色を呈した(GUS発現率75%)ため、陽性と判定される。)

試料番号

1

2

3

陰性対照

調査した胚の数

12

12

12

12

青色を示した胚の数

0

9

4

0

GUS発現率

0

75

33

0

判定

陰性

陽性

陽性

陰性

2.1.3. トウモロコシ(Bt10)の検査

2.1.3.1. 定性PCR法

トウモロコシ穀粒又はトウモロコシ半製品について、PCR増幅及び結果の判定を除き、2.1.1.2.1.と同様の方法で定性PCRを行う。なお、DNA抽出精製は、2.2.1.2.に示すシリカゲル膜タイプキット法を用いる。

2.1.3.1.1. PCR増幅

PCR用反応試料管に反応液を以下のように調製する。反応液は、PCR緩衝液*1、0.16mmol/L dNTP、1.5mmol/L塩化マグネシウム、0.6μmol/L5’及び3’プライマー*2並びに0.8units Taq DNAポリメラーゼ*3を含む液に、10ng/μLに調製したDNA試料液5.0μL(DNAとして50ng)を氷中で加え、全量を25μLにする。次に、その反応試料管をPCR増幅装置*4にセットする。反応条件は次の通りである。94℃に10分間保ち反応を開始させた後、94℃25秒間、62℃30秒間、72℃45秒間を1サイクルとして、40サイクルのPCR増幅を行う。次に終了反応として72℃で7分間保った後、4℃で保存し、得られた反応液をPCR増幅反応液とする。PCR反応のブランク反応液として、必ずプライマー対を加えないもの及びDNA試料液を加えないものについても同時に調製する。また、試料からDNAが抽出されていることの確認として、DNA試料液ごとに、Bt10検出用プライマー対の代わりに陽性対照用プライマー対*5を用い、同様にPCR増幅を行う。

1 PCR緩衝液

PCR buffer Ⅱ(アプライドバイオシステムズ社製、塩化マグネシウムを含まないもの)又は同等の結果が得られるものを用いる。

2 Bt10検出用プライマー対は以下の通りである。

F―primer(JSF3):5’―CAC ACA GGA GAT TAT TAT AGG G―3’

R―primer(JSR3):5’―GGG AAT AAG GGC GAC ACG G―3’

3 Taq DNAポリメラーゼ

AmpliTaq Gold DNAポリメラーゼ(アプライドバイオシステムズ社製)又は同等の結果が得られるものを用いる。

4 PCR増幅装置

GeneAmp PCR System 9700(アプライドバイオシステムズ社製)又は同等の結果が得られるものを用いる。

5 陽性対照用のプライマー対は以下の通りである。

F―primer(Zein n―5’):5’―CCT ATA GCT TCC CTT CTT CC―3’

R―primer(Zein n―3’):5’―TGC TGT AAT AGG GCT GAT GA―3

2.1.3.1.2. 結果の判定

陽性対照プライマー対を用いたレーンで157bpのPCR増幅バンドが検出され*1、Bt10検出用プライマー対を用いたレーンで130bpのPCR増幅バンドが検出された場合、新たに同一のDNA試料液を用いPCR反応液を調製し、Bt10確認用プライマー対*2を用いPCR増幅を行う。得られたPCR増幅反応液についてアガロースゲル電気泳動、ゲルイメージ解析を行い、127bpのPCR増幅バンドが検出された場合、本検体はBt10系統陽性と判定する*3。なお、2つのDNA抽出液での結果が異なった場合は陽性と判定する。また、どちらか一方の抽出液において、陽性対照プライマー対で予定長のPCR増幅バンドが検出されない場合には、再度電気泳動以降の操作を行い、それでも予定長のPCR増幅バンドが検出されない場合には、その抽出液での結果を無効とし、もう一方の抽出液の結果だけで判定する。2つのDNA抽出液とも陽性対照プライマー対を用いたレーンで対応するPCR増幅バンドが検出できない場合には、改めて3回目の抽出を行い、さらにPCR以降の操作を実施して、判定を行う。3回目のDNA抽出液を用いた場合でも陽性対照プライマー対でPCR増幅バンドが検出されないときは、本試料からの安全性未審査の食品の検知は不能とする。判定例は2.1.1.2.1.4.を参照のこと。

1 Bt10検出用プライマー対を用いた試験においては、特異的PCR増幅バンドとは異なる位置に非特異的PCR増幅バンドが検知される場合があるため、PCR増幅バンド長の確認は正確に行うこと。

2 Bt10確認用プライマー対は以下の通りである。

F―primer(Bt11 3―5’):5’―AAA AGA CCA CAA CAA GCC GC―3’

R―primer(Bt11 3―3’):5’―CAA TGC GTT CTC CAC CAA GTA CT―3’

3 Bt10確認用プライマー対を用いて増幅するDNA配列は、既に安全性審査を終了しているBt11トウモロコシにも導入されている。本試験法は、Bt10検出のための反応液組成及び反応条件を示しているが、Bt11が混入している場合にも確認試験の結果は陽性となる可能性が考えられるため、必ずBt10検出用プライマー対を用いた結果と併せて結果の判定を行うこと。

2.2. DNA抽出精製法

DNAの抽出精製の際用いる水は、特に断り書きがない限りすべて逆浸透膜精製したRO水又は蒸留水をMilli―Q等で17MΩ/cmまで精製した超純水など、DNA、DNase等がコンタミネーションしていないものを用いること。

2.2.1. トウモロコシ及び大豆穀粒からのDNA抽出精製

界面活性剤セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)とフェノール/クロロホルム混合液を用いて抽出精製するCTAB法は、応用範囲が広い上、PCR阻害物質が残存しにくく、純度の高いDNAを得ることができる非常に優れた方法であるが、フェノール、クロロホルムという有害試薬を用いること及び煩雑な精製操作が必要という欠点がある。市販のDNA抽出キットを用いるとこれらの欠点を解消することができる。市販のDNA抽出キットには、シリカゲル膜タイプのもの、シリカベースのレジンタイプのもの、イオン交換樹脂タイプのもの、マグネット吸着ビーズタイプのものがあるが、いずれの方法を利用しても、トウモロコシ、大豆等の穀粒からPCRに利用可能なDNAを抽出精製することができる。以上の点を考慮して、本項では、CTAB法とシリカゲル膜タイプのキット(QIAGEN DNeasy Plant Mini Kit)、シリカベースのレジンタイプのキット(Promega Wizard DNA Clean―up System)を用いた精製を記す。なお、シリカゲル膜タイプのキット(QIAGEN DNeasy Plant Mini Kit)を用いたDNA抽出はトウモロコシのみに適用可能であるため注意する。

2.2.1.1. CTAB法

均質に粉砕された試料2gをポリプロピレン製遠沈管(50mL容)に量り採り、CTAB緩衝液*115mLを入れ、ホモゲナイザーで組織が見えなくなるまで均一化する。遠沈管の縁とホモゲナイザーの先を洗浄するようにCTAB緩衝液30mLを加え、転倒混和後55℃で30分間放置する*2。次いで放置液を攪拌し、均質化した溶液600μLをマイクロ遠沈管(1.5mL容)に量り採る。次いで500μLのフェノール/クロロホルム混合液*3を加え、転倒混和後ミキサーで軽く懸濁し、7,500×gで15分間室温遠心後、水層(上層)を新しいマイクロ遠沈管に移す。この時中間層に触れないように注意する。クロロホルム/イソアミルアルコール混合液*4500μLを加え、転倒混和後ミキサーで軽く懸濁し、7,500×gで15分間室温で遠心後、水層(上層)を新しいマイクロ遠沈管に移す。等容量のイソプロピルアルコール(室温)を加え、転倒混和後7,500×gで10分間室温遠心し、デカンテーションで上澄み液を捨てる。500μLの70%エタノールを壁面から静かに加え、7,500×gで1分間室温遠心し、沈殿に触れないようにできる限りエタノールを吸い取り捨てる。その後、2~3分間真空乾燥する。このとき完全に乾燥しないように注意する。50μLのTE緩衝液*5を加えてよく混和後、室温に15分間放置して、時々転倒混和して完全に溶かす。RNase A 5μLを加え、37℃で30分間放置する。200μLのCTAB緩衝液を加えた後、250μLのクロロホルム/イソアミルアルコール混合液を加え、転倒混和後ミキサーで軽く懸濁し、7,500×gで15分間室温遠心後、水層(上層)を新しいマイクロ遠沈管に移す。このとき、中間層に触れないように採取する。200μLのイソプロピルアルコールを加え、転倒混和してから、7,500×gで10分間、室温で遠心し、デカンテーションで上澄み液を捨てる。次いで、200μLの70%エタノールを壁面から静かに加え、7,500×gで1分間室温遠心し、沈殿に触れないようにできる限りエタノールを吸い取り捨てる。その後、2~3分間真空乾燥する。このとき、完全に乾燥しないよう注意する。50μLの水を加えて混合した後、15分間室温に放置して、時々転倒混和して完全に溶解したものをDNA試料原液*6とする。

1 CTAB緩衝液

ビーカーに、0.5mol/L EDTA(pH8.0)8mL、1mol/L Tris―塩酸(pH8.0)20mL、5mol/L食塩水56mLを入れ、約150mLとなるように水を加え、攪拌しながらCTAB 4gを加えて完全に溶解する。さらに水を加え全量を200mLとし、オートクレーブで滅菌したものをCTAB緩衝液とする。

2 ホモゲナイザーを使用しない場合には、ボルテックスミキサーを用いて試料塊がないように激しく混合する。その際には、まず15mLのCTAB緩衝液を加え十分に混合した後、さらにCTAB緩衝液30mLを加え混合する。混合後は、加温処理以降の操作に従う。

3 フェノール/クロロホルム混合液

1mol/L Tris―塩酸(pH8.0)飽和フェノールとクロロホルム/イソアミルアルコール混合液*3を1:1(v/v)で混合したものをフェノール/クロロホルム混合液とする。

4 クロロホルム/イソアミルアルコール混合液

クロロホルムとイソアミルアルコールを24:1(v/v)で混合したものをクロロホルム/イソアミルアルコール混合液とする。

5 TE緩衝液

各最終濃度が10mmol/L Tris―塩酸(pH8.0)、1mmol/L EDTA(pH8.0)となるように水を用いて調製したものをTE緩衝液とする。

6 定量PCRに供する際にのみ、DNA試料液はTE緩衝液を用いてDNAを溶解し、濃度を調製したものとする。そのため、定量PCR法を実施することを目的としてDNA抽出を行う場合には、真空乾燥させた沈殿に50μLのTE緩衝液を加えて混合した後、4℃で一晩保存することで完全に溶解し、DNA試料原液とする。

2.2.1.2. シリカゲル膜タイプキット法(トウモロコシのみ適用可能)

均質に粉砕した試料2gをポリプロピレン製遠沈管(50mL容)に量り採り、あらかじめ65℃に温めておいたAPI緩衝液*110mLとRNase A 20μLを加え、試料塊がないようにボルテックスミキサーで激しく混合し、65℃で15分間加温する。その間2、3回、遠沈管を反転させて試料を攪拌する。AP2緩衝液*23,250μLを加え、氷上に10分間静置した後、4,000×g以上、4℃の条件で20分間遠心する*3。次いでその上清500μLをQIAshredder spin columnに負荷し、10,000×g以上で4分間遠心後、溶出液を遠沈管(15mL容)に移す。この操作を再度繰り返した後、その溶出液の1.5倍量のAP3緩衝液*4・エタノール混液*5を加える。その混合液500μLをmini spin columnに負荷し、10,000×g以上で1分間*6遠心する。残りの混合液のうち、さらに500μLを同じmini spin columnに負荷し、同条件で遠心し溶出液を捨てる。最終的に混合液がすべてなくなるまで同様の操作を繰り返す。次いでAW緩衝液*7500μLを負荷し、10,000×g以上で1分間*6遠心し、溶出液を捨てる。同様の操作を計3回繰り返す。溶出液を捨て、mini spin columnを乾燥させるため、10,000×g以上で20分間遠心する。mini spin columnをキットの遠沈管に移し、あらかじめ65℃に温めておいた水70μLを加え、5分間静置した後、10,000×g以上で1分間遠心しDNAを溶出する。もう一度水を加え、同じ操作を行い、得られた溶出液を合わせ、DNA試料原液*8とする。

1 AP1緩衝液

シリカゲル膜タイプのキット(QIAGEN DNeasy Plant Mini Kit)付属のもの、あるいは別途購入したものを用いる。

2 AP2緩衝液

シリカゲル膜タイプのキット(QIAGEN DNeasy Plant Mini Kit)付属のもの、あるいは別途購入したものを用いる。

3 遠心後の上清

上清を確認し、澄明でない場合には、同条件での遠心操作を再度繰り返し、以降の操作を行う。

4 AP3緩衝液

シリカゲル膜タイプのキット(QIAGEN DNeasy Plant Mini Kit)付属のもの、あるいは別途購入したものを用いる。

5 AP3緩衝液・エタノール混液

AP3緩衝液*4とエタノール(96―100%)を1:2で混合したものをAP3緩衝液・エタノール混液とする。

6 遠心時間

mini spin columnに負荷する液の性状により、カラムの通過に時間がかかることがある。すべての液がカラムを通過するのに必要な遠心時間を適宜、調整する。

7 AW緩衝液

使用する直前に、容器ラベルに記載された適量のエタノール(96―100%)を混合したものをAW緩衝液とする。

8 定量PCRに供する際にのみ、spin columnの乾燥以降の操作を下記のとおり変更し行う。「mini spin columnをキットの遠沈管に移し、あらかじめ65℃に温めておいたTE緩衝液70μLを加え、5分間静置した後、10,000×g以上で1分間遠心しDNAを溶出する。もう一度TE緩衝液を加え、同じ操作を行い、得られた溶出液を合わせ、DNA試料原液とする。」

2.2.1.3. シリカベースレジンタイプキット法

均質に粉砕した試料2gをポリプロピレン製遠沈管(50mL容)に量り採り、抽出用緩衝液*117.2mL、5mol/Lグアニジン―塩酸2mL及び20mg/mL Proteinase Kを0.8mL加え、激しくボルテックスミキサーで撹拌後、55~60℃で振とうしながら3時間保温する。次いで、室温まで温度を下げ、3,000×gで10分間遠心する。上清が濁っている場合、上清の一部をマイクロ遠沈管(1.5mL容)に移し、さらに14,000×gで10分間遠心する。得られた澄明な上清500μLと、DNA Clean―up Resin1mLをマイクロ遠沈管(1.5mL容)に採り、転倒混和し、混合液とする。次にmini columnの上部に注射筒を付け、マニホールド(吸引装置)に装着する。マニホールドのコックを閉じ、吸引装置内部が十分に減圧になっていることを確認した後、混合液を注射筒からmini columnに負荷する。直ちにコックを開け、最速で減圧吸引して溶液を完全に除去し、次いで2mLの80%イソプロピルアルコールを注射筒から加えカラムを洗浄する。注射筒を外したmini columnをマイクロ遠沈管(1.5mL容)に装着し、室温下10,000×gで2分間遠心し、カラムを乾燥する。次にmini columnを新しいマイクロ遠沈管(1.5mL容)に移し、あらかじめ65~70℃に温めておいた水100μLを滴下する*2。1分間放置後、室温下10,000×g以上で1分間遠心し、DNAを溶出し、得られた溶出液をDNA試料原液とする。

1 抽出用緩衝液

150mM 塩化ナトリウム、2mmol/L EDTA及び1% SDSを含む10mmol/L Tris―塩酸緩衝液(pH7.5)

2 定量PCR法に供する際は、水の代わりにあらかじめ65~70℃に温めておいたTE緩衝液100μLを滴下する。

2.2.2. パパイヤからのDNA抽出精製

採取したパパイヤから種子を除いた果肉部分をおよそ10mm角に切り出し、凍結乾燥を行う。次にミキサーミル等でこれらを混合し、粉砕する。粉砕試料を用い、以下のCTAB法または、シリカゲル膜タイプのキット(QIAGEN DNeasy Plant Mini Kit)を用いた方法に従ってDNAを抽出精製する。

2.2.2.1. CTAB法

粉砕試料20mgをマイクロ遠沈管(1.5mL容)に量り採り、CTAB緩衝液150μLを入れ、マイクロミキサーで組織が見えなくなるまで均一化する。遠沈管の先を洗浄するようにCTAB緩衝液450μLを加え、転倒混和してから55℃で30分間放置する。500μLのフェノール/クロロホルム混合液を加え、転倒混和後ミキサーで軽く懸濁し、7,500×gで15分間室温遠心後、水層(上層)を新しいマイクロ遠沈管に移す。このとき、中間層に触れないように注意する。500μLクロロホルム/イソアミルアルコール混合液を加え、転倒混和後ミキサーで軽く懸濁し、7,500×gで15分間室温遠心後、水層(上層)を新しいマイクロ遠沈管に移す。等容量のイソプロピルアルコール(室温)を加え、転倒混和後7,500×gで10分間室温遠心し、デカンテーションで上澄み液を捨てる。500μLの70%エタノールを壁面から静かに加え、7,500×gで1分間室温遠心し、沈殿に触れないようにできる限りエタノールを吸い取り捨てる。その後、2~3分間真空乾燥する。このとき完全に乾燥しないように注意する。50μLのTE緩衝液を加えてよく混和後、室温に15分間放置して、時々転倒混和して完全に溶かす。RNase A 5μLを加え、37℃で30分間放置する。200μLのCTAB緩衝液を加えた後に、250μLのクロロホルム/イソアミルアルコール混合液を加え、転倒混和後ミキサーで軽く懸濁し、7,500×gで15分間室温遠心後、水層(上層)を新しいマイクロ遠沈管に移す。この時、中間層に触れないように採取する。200μLのイソプロピルアルコールを加え、転倒混和してから、7,500×gで10分間室温で遠心し、デカンテーションで上澄み液を捨て、ピペットでイソプロピルアルコールを捨てる。次いで、200μLの70%エタノールを壁面から静かに加え、7,500×gで1分間室温遠心し、沈殿に触れないようにできる限りエタノールを吸い取り捨てる。その後、2~3分間真空乾燥する。このとき、完全に乾燥しないよう注意する。50μLの水を加えて混合した後、15分間室温に放置して、時々転倒混和して完全に溶解したものをDNA試料原液とする。

マイクロミキサーを使用しない場合には、ボルテックスミキサーを用いて試料塊がないように激しく混合する。その際には、まず300μLのCTAB緩衝液を加え十分に混合した後、さらにCTAB緩衝液300μLを加え混合する。混合後は、加温処理以降の操作に従う。

2.2.2.2. シリカゲル膜タイプキット法

粉砕試料80mgをマイクロ遠沈管(2mL容)に量り採り、シリカゲル膜タイプのキット(QIAGEN DNeasy Plant Mini Kit)を用い、以下の方法に従ってDNAを抽出精製する。

試料にあらかじめ65℃に温めておいたAPI緩衝液600μLとキット付属のRNase A 4μLを加え、試料塊がないようホモジナイザーを用いて混合し、65℃で15分間放置する。その間数回遠沈管を反転させ試料を攪拌する。その後AP2緩衝液195μLを加え、氷上に5分放置後、室温下10,000×gで5分間遠心する。上清をQIAshredder spin columnに負荷し、室温下10,000×gで2分間遠心し、溶出液をマイクロ遠沈管(2mL容)に移す。遠沈管に1.5倍量のAP3緩衝液・エタノール混液を加え、10秒間ボルテックスミキサーで攪拌した後、得られた混合液のうち500μLをmini spin columnに負荷し、室温下10,000×gで5分間遠心し、溶出液を捨てる。次いで、残りの混合液のうち、さらに500μLを同じmini spin columnに負荷し、同条件で遠心し溶出液を捨てる。最終的に混合液がすべてなくなるまで同様の操作を繰り返す。次いで、columnにAW緩衝液500μLを加え、室温下10,000×gで5分間遠心し、溶出液を捨てもう一度AW緩衝液を加え、同じ操作を繰り返す。溶出液を捨て、mini spin columnを乾燥させるため、10,000×g以上で15分間遠心する。mini spin columnをキットの遠沈管に移し、あらかじめ温めておいた水50μLを加え、5分間放置した後、10,000×gで1分間遠心しDNAを溶出する。もう一度水を加え、同様の操作を行い、得られた溶出液を合わせ、DNA試料原液とする。

混合液中に析出物が有る場合columnが詰まりやすくなる。その場合、完全に溶出させるため遠心時間を10分程度まで延ばす。

2.2.3. 加工食品からのDNAの抽出精製

平成12年農林水産省告示第517号第3条に規定する別表2の加工食品からのDNAの抽出精製は、独立行政法人農林水産消費技術センター作成のJAS分析試験ハンドブック「遺伝子組換え食品検査・分析マニュアル 個別品目編」に記載されている方法を準用する。タコス、トルティーヤ、コーンチップ及びコーンフレーク(加熱加工されているものに限る。)、ジャガイモ(加工品を含む。)並びに缶詰のパパイヤからのDNAの抽出精製は以下の手法で行う。

2.2.3.1. タコス、トルティーヤ、コーンチップ及びコーンフレーク(加熱加工されているものに限る)からのDNAの抽出精製

試料を凍結乾燥した後、ミキサーミル等で粉砕する。次いで粉砕試料1gをポリプロピレン製遠沈管(50mL容)に量り採り、イオン交換樹脂タイプのDNA抽出精製キット(QIAGEN Genomic―tip)を用い以下のようにDNAを抽出精製する。

試料にG2緩衝液*14mLを加えて、ボルテックスミキサー等で激しく混合し、さらにG2緩衝液4mL、ProteinaseK*2100μLとRNaseA10μLを加えて、よく振って混合した後、50℃で2時間放置する。その間2~3回遠沈管を反転させて試料を転倒混和する。次いで、3,000×g以上で、低温下(4℃)15分遠心し、得られた上清をポリプロピレン製遠沈管(15mL容)に移し、さらに軽く遠心する。次いで、QBT緩衝液*11mLを用い平衡化したQIAGEN Genomic―tip20/Gに2mLずつ数回に分けて負荷する。次いで、チップをQC緩衝液*1で2mLずつ3回洗浄した後、チップを新しい遠沈管に移し、あらかじめ50℃に温めておいたQF緩衝液*2を1mLずつ2回加え、DNAを溶出する。溶出液を遠沈管に移し、0.7倍量のイソプロピルアルコールを加えよく混合し、10,000×g以上で、低温下(4℃)15分間遠心し、上清を捨てた後、70%エタノール1mLを加え、さらに10,000×g以上で、低温下(4℃)5分間遠心する。さらに上清を捨て、残った沈殿をアスピレーターを用い乾燥した後、水100μLを加え、65℃で5分間放置し、ピペッティングによりDNAを溶解させ、DNA試料原液とする。

1 G2緩衝液、QBT緩衝液、QC緩衝液及びQF緩衝液はキットに付属しているが、足りない場合にはキットの説明書に従って調製可能である。

2 QIAGEN社のもの又は同等の効力を持つものを用いる。

2.2.3.2. ジャガイモ(加工品を含む)からのDNAの抽出精製

試料をミキサーミル等により粉砕した後、粉砕試料200mgをポリプロピレン製遠沈管(15mL容)に量り採る。試料中に水分が多い場合は8,000×gで15分間遠心し、上清を捨てる。次いでシリカゲル膜タイプのキット(QIAGEN DNeasy Plant Mini Kit)を用い、以下の様にDNAを抽出精製する。

試料にあらかじめ65℃に温めておいたAP1緩衝液1.5mLとRNase A 10μLを加え、試料塊がないようボルテックスミキサーで激しく混合し、65℃で15分間放置する。その間数回遠沈管を反転させサンプルを攪拌する。その後AP2緩衝液400μLを加え、氷上に5分放置後、室温下10,000×gで5分間遠心する。上清を別の遠沈管に移し、その内500μLをQIAshredder spin columnに負荷し、10,000×gで2分間、室温で遠心し、溶出液をキットの遠沈管に移す。これを全量終えるまで数回繰り返す。得られた溶出液のうち半量を別のマイクロ遠沈管(2mL容)に移し、それぞれの遠沈管に1.5倍量のAP3緩衝液・エタノール混液を加え、10秒間ボルテックスミキサーで攪拌し、溶解液を得る。得られた溶解液のうち500μLを、mini spin columnに負荷し、室温下10,000×gで1分間遠心し、溶出液を捨てる。次いで残りの溶解液のうち、さらに500μLを同じmini spin columnに負荷し、同条件で遠心し溶出液を捨てる。最終的に溶解液がすべてなくなるまで同様の操作を繰り返す。

次いで、columnにAW緩衝液500μLを加え、室温下10,000×gで1分間遠心し、溶出液を捨てもう一度AW緩衝液を加え、同じ操作を繰り返す。溶出液を捨てた後、mini spin columnを乾燥するため、10,000×g以上で15分間遠心する。mini spin columnをキットの遠沈管に移し、あらかじめ温めておいた水50μLを加え、5分間放置した後、室温下10,000×gで1分間遠心しDNAを溶出する。もう一度水を加え、同じ操作を行い、得られた溶出液を合わせ、DNA試料原液とする。

2.2.3.3. 缶詰のパパイヤからのDNAの抽出精製

試料を水でよく洗浄し、凍結乾燥した後、ミキサーミル等で粉砕する。次いで粉砕試料2gをポリプロピレン製遠沈管(50mL容)に量り採り、イオン交換樹脂タイプのDNA抽出精製キット(QIAGEN Genomic―tip)を用い以下のようにDNAを抽出精製する。

試料にG2緩衝液7.5mLを加え、ボルテックスミキサー等で激しく混合し、さらにG2緩衝液7.5mL、QIAGEN ProteinaseK200μLとRNaseA20μLを加えて、よく振って混合した後、50℃で2時間放置する。その間2~3回遠沈管を反転させて試料を転倒混和する。次いで、3,000×g以上で、低温下(4℃)15分間遠心し、得られた上清をポリプロピレン製遠沈管(15mL容)に移し、さらに軽く遠心する。次いで、QBT緩衝液1mLを用い平衡化したQIAGEN Genomic―tip20/Gに2mLずつ数回に分けて負荷する。次いで、tipをQC緩衝液で2mLずつ3回洗浄した後、チップを新しい遠沈管に移し、あらかじめ50℃に温めておいたQF緩衝液を1mLずつ2回加え、DNAを溶出する。溶出液を遠沈管に移し、0.7倍量のイソプロピルアルコールを加えよく混合し、10,000×g以上で、低温下(4℃)15分間遠心し、上清を捨てた後、70%エタノール2mLを加え、さらに10,000×g以上で、低温下(4℃)5分間遠心する。さらに上清を捨て、残った沈殿をアスピレーターを用い乾燥した後、水100μLを加え、65℃で5分間放置し、ピペッティングによりDNAを溶解させ、DNA試料原液とする。

2.2.4. DNA試料原液中のDNAの純度の確認並びにDNA試料液の調製と保存

DNA試料の適当量を取りTE緩衝液で10倍希釈して200~320nmの範囲で紫外部吸収スペクトルを測定し、260nm及び280nmの吸光度(O.D.260及びO.D.280*1)を記録する。次いでO.D.260の値を50ng/μLDNAとしてDNA濃度を算出する。またO.D.260/O.D.280を計算する。この比が1.7~2.0になれば、DNAが十分に精製されていることを示す。得られたDNA濃度から、DNA試料原液を以後のPCRに必要な濃度に水で希釈し*2DNA試料液とし、20μLごとにマイクロ試料管に分注し、-20℃以下で冷凍保存する。分注したDNA試料液は、融解後直ちに使用し、残った溶液は再度保存せず廃棄する。なお、DNA試料原液の濃度がPCRで規定された濃度に達しないときは、そのままDNA試料液として用いる。

1 O.D.260がDNA由来の吸光度、O.D.280がタンパク質等不純物由来の吸光度と考える。

2 定量PCR法に供する際は、TE緩衝液を用いて希釈する。

3. 安全性審査済みの組換えDNA技術応用食品の検査方法

3.1. 大豆

3.1.1. ELISA法

試料中のCP4EPSPSタンパク質を検知する手法である。100mesh(編み目の一目の長さ150μm)のふるいを通過した粉末試料0.5gを用いて、SDI社製GMO Soya Test Kit Ver.2.0の説明書に記載された手法に従って試験する。以下に方法について記述する。

試料又は標準品0.5gをポリプロピレン製遠沈管(15mL容)に正確に量り採り、Soya Extraction緩衝液4.5mLを加え、ボルテックスミキサーを用い10秒間混合した後、2,500×gで15分間遠心し、上清を抽出液とする。Soya Assay緩衝液280μLに抽出液20μLを加え攪拌し希釈液とする。さらに、Soya Assay緩衝液380μLに希釈液20μLを加え攪拌し、試料液とする。このキットで作成できる検量線の範囲は0~2.5%であるので、未知検体の抽出液について検量線の範囲内で定量値が内挿できるよう、別に10倍希釈した試料液も準備しておく。ウェルに試料液を100μLずつ加え、37℃で1時間保温する。その後、Wash緩衝液で3回洗浄し、Reconstituted and Diluted Soya Conjugate Mix100μLを加え、37℃で1時間保温する。さらにWash緩衝液で3回洗浄する。次に、Color Reagent100μLを加え、室温で10分間放置した後、Stop Solution100μLを加えて反応を停止する。反応停止後、マイクロプレートリーダーを用い、450nmの波長でウェルの吸光度を測定し、別途購入した標準試料を用い作成した検量線より組換え体の含有量を求める。なお、同一の実験を2ウェルで行い、得られた値を平均する。

3.1.2. 定量PCR法

TaqMan Chemistryを応用した定量PCR法を行う。同法では、定性PCR法に通常使用するプライマー対に加え、蛍光オリゴヌクレオチドプローブを使用する。当プローブはプライマー対により増幅される塩基配列中に相補鎖を形成するよう設計されている。また、同プローブにはリポーター、クエンチャー両色素が結合しており、DNAポリメラーゼによる増幅産物の伸長反応に伴い加水分解を受けると、蛍光を放射する。蛍光強度は、PCRサイクル数に対し指数関数的に増強し、また一定の蛍光強度に達するまでのサイクル数は、鋳型DNA量に依存する。したがって、一定の蛍光強度に達したPCRサイクル数を比較することで、鋳型DNA量が求められる。

組換えDNA技術応用食品の定量は、非組換え体、組換え体を問わず普遍的に存在する遺伝子(内在性遺伝子)を内標として用い、内在性遺伝子のコピー数に対する組換え遺伝子のコピー数を求めることで行う。本法においては、標準物質として標準プラスミドDNA溶液*1を使用する。標準プラスミドDNA溶液に含まれるDNAの量はコピー数として規定されており、そのため、定量PCRの結果はコピー数として求められる。

大豆を対象とした定量PCR法においては、大豆に普遍的に存在するレクチン遺伝子を内在性遺伝子としている。検査の際には、まずレクチン遺伝子を標的とするプライマー対(Le1―n02)とプローブ(Le1―Taq)を使用し定量PCRを行い、DNA試料液中のレクチン遺伝子のコピー数を求める。また、同時に、同一DNA試料液について、組換え遺伝子を標的とするプライマー対(RRS―01)とプローブ(RRS―Taq)を使用し別に定量PCRを行い、組換え遺伝子のコピー数を求める。組換え遺伝子のコピー数をレクチン遺伝子のコピー数で除し、その値をあらかじめ求められている係数(内標比*2)でさらに除して得られた値に100を乗したものが、試料中に含まれる遺伝子組換え作物の%含量となる。以下に定量PCR法の実際を述べる。定量PCRはABI PRISMTM7700、ABI PRISMTM5700、ABI PRISMTM7900HT(96well及び384well)、ABI PRISMTM7000並びにRoche Light Cycler System、若しくは同等の性能を有する装置を用いて行う。また、使用する機種により、試薬、反応液組成、反応条件、手技並びに解析手法が異なるため、検査に際しては、以下機種ごとに記載された各項に従い、必ず使用する機種に適した方法を用いること。なお、3.1.2.及び3.2.1.記載の定量PCR法で用いる水は、特に断り書きがない限りすべて逆浸透膜精製したRO水又は蒸留水をMilli―Q等で17MΩ/cmまで精製した超純水とする。

1 標準準プラスミドDNA溶液

内在性遺伝子及び組換え遺伝子を標的とした特異的プライマー対により増幅された増幅産物をプラスミド上に連結したもの(標準プラスミドDNA)を、ColE1/TE溶液(5ng/μL)で規定のコピー数となるように希釈した溶液。本分析法においては20、125、1,500、20,000、250,000コピーの5段階希釈液に加え、標準プラスミドDNAの含まれていないColE1/TE溶液(5ng/μL)をブランク試料液(NTC:no template control)とした、計6点の検量線を作成する。なお、ColE1/TE溶液とは、大腸菌由来の配列確認のされているプラスミド(ColE1プラスミド)をTE緩衝液で5ng/μLの濃度に調製した溶液である。

2 内標比

純粋な遺伝子組換え体の種子を対象に定量PCRを実施し、得られる組換え遺伝子のコピー数と内在性遺伝子(大豆の場合レクチン遺伝子)のコピー数との比を求めたもの。この内標比は各組換え作物系統に固有であり、常に一定の値を示すと考えられる。各プライマー対及びプローブを用いて測定を行った組換え作物系統ごとの内標比は別紙に規定する。なお、内標比は定量PCR法に使用する機種によって異なるため、混入率の算出時には必ず使用した機種につき規定されている内標比を用いること。また、使用する試薬によっても影響を受ける可能性が考えられるため、参考にも記載のある機種に適した試薬類を確認の上、使用すること。

3.1.2.1. ABI PRISMTM7700及びABI PRISMTM5700を用いた定量PCR

3.1.2.1.1. PCR用反応液の調製(ABI PRISMTM7700及びABI PRISMTM5700)

PCR用反応液は25μL/wellとして調製する。その組成は以下のとおりである。Universal PCR Master Mix*112.5μL、対象プライマー対溶液(各プライマー、25μmol/L)0.5μL、対象プローブ溶液(10μmol/L)0.5μL、水9μL、20ng/μLDNA試料液2.5μL(50ng)又は検量線用標準プラスミドDNA溶液2.5μL、あるいは5ng/μLColE1/TE溶液(ブランク試料液:NTC)2.5μL。試験は、1DNA試料液あたり3ウェル並行で行うものとし、PCR用反応液は3ウェル分を同時に調製する*2

調製の実際は、反応液の調製及びPCR反応で生じる誤差を減少させるため、以下の手順に従って行う。まず、あらかじめUniversal PCR Master Mixに対象プライマー対、対象プローブを加えた溶液(マスターミックス)を調製する。この際、対象プライマー対と対象プローブの混合溶液*3を先に調製しておき、これとUniversal PCR Master Mixを1:1.25の比率で混合させると良い。マスターミックスの調製液量は余剰分を考慮し、1DNA試料液(3ウェル分)当たり81μLが適当である。混合時にはボルテックスミキサーを用いて十分に撹拌し、撹拌後には軽く遠心する。次いで、マスターミックスを必要数*4の微量遠沈管に78.75μLずつ分注する。分注後、各微量遠沈管に対応するDNA溶液を8.75μL加え、ボルテックスミキサーを用いて十分に混合した後、軽く遠心する。このようにして調製した混合溶液を25μL/wellとして96ウェルプレート上のウェルに分注する。分注操作終了後、真上からプレートの蓋*5をする。このとき、片側にゆがみがたまらないよう両側のウェルから交互に閉める。次いで専用ローラーを用いて完全にウェルを密閉する。最後にウェルの底を観察し、底に気泡がある場合は、プレートの縁を軽く叩いて気泡を抜いておく。

1 Universal PCR Master Mix

本試薬は粘性が高いため、混合操作を行う際には、混合が確実に行われるように注意する。不十分な場合には、PCR反応がうまくいかない場合がある。使う直前には必ずボルテックスミキサーを用いて3秒程度混合した後、軽く遠心し、溶液を試料管の底に集めておいてから使用する。また、ウェルに分注する際は、以後攪拌、遠心が困難なことを考慮し、ウェルの底に確実に入れる。

2 定量PCR反応液の調製

冷凍庫から出した試薬類は、必要なものにつき室温で融解後、氷上で保存する。氷上で保存した試薬につき、同一のチップを用い連続分注すると、ピペット内の空気が冷却されるため、2回目以降、通常のピペット操作では正確に分注されないので注意する。ピペットの説明書に書かれた、低温試料を扱う場合の操作法(通常、ふきとめと呼ばれる操作)を理解して使用すること。

3 対象プライマー対と対象プローブの混合溶液

対象プライマー対濃度が1.25μmol/L、対象プローブ濃度が0.5μmol/Lとなるよう水で希釈し、ボルテックスミキサーを用いて十分に混合し、調製する。また、本混合液は凍結保存が可能であるが、凍結融解を繰り返すことは避ける。

4 分注必要数

検量線用標準プラスミド溶液(5点)及びブランク試料液(1点)、この計6点にDNA試料液の数を加えた数。

5 96ウェルプレートおよびプレートの蓋

MicroAmp Optical 96―Well Reaction Plate(Applied Biosystems社)及びMicroAmp Optical Caps、8caps/strips(Flat)(Applied Biosystems社)を使用する。