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○食品添加物の指定及び使用基準改正に関する指針について

(平成八年三月二二日)

(衛化第二九号)

(各都道府県知事・各政令市市長・各特別区区長あて厚生省生活衛生局長通知)

食品衛生法(昭和二二年法律第二三三号)第六条の規定により人の健康を損なうおそれのない化学的合成品たる添加物を定める場合及び同法第七条第一項の規定により添加物の使用の方法につき基準を改正する場合の要請について、別添のとおり当該要請の手続、要請書に添付すべき安全性に関する試験成績等必要な資料の範囲及び資料を作成するために必要な試験の標準的な実施方法等に関する指針を作成したので、貴管下関係業者に対し周知徹底方よろしく御指導願いたい。

なお、昭和四〇年七月二九日環食化第五、〇三四号環境衛生局長通知「化学的合成品たる食品添加物の指定並びに使用基準の設定及び改正に関してよるべき基準について」は廃止する。

(別添)

食品添加物の指定及び使用基準改正に関する指針

(平成8年3月22日付け衛化第29号別添)

(一部改正 令和4年9月29日生食発0929第3号)

Ⅰ 目的

本指針は、食品衛生法(昭和22年法律第233号)第12条の規定に基づく人の健康を損なうおそれのない食品添加物の指定及び同法第13条第1項の規定に基づく食品添加物の使用の方法に関する基準(以下「使用基準」という)改正に関する要請手続、要請書に添付すべき資料の範囲等を規定するものである。

Ⅱ 食品添加物の指定及び使用基準改正に関する基本的考え方

食品添加物は、人の健康を損なうおそれがなくかつその使用が消費者に何らかの利点を与えるものでなければならない。

したがって、食品添加物の指定及び使用基準改正に当たっては、次の点が科学的に評価されることが必要である。このため、コーデックス委員会(FAO/WHO 合同食品規格委員会)の基準、JECFA(FAO/WHO 合同食品添加物専門家会議)の規格等を参考にするとともに、わが国の食品摂取の状況等を勘案し、公衆衛生の観点から、科学的見地に基づき、厚生労働省薬事・食品衛生審議会において審議される必要がある。また、内閣府食品安全委員会において食品健康影響評価が行われる。

1.安全性

食品添加物の安全性が、要請された使用方法において、確認されること。

2.有効性

食品添加物の使用が、次のいずれかに該当することが確認されること。なお、対象となる食品の製造又は加工の方法を比較的安価に改善・変更することが可能であって、その結果、当該食品添加物の使用が不要となる場合を除く。

(1) 食品の栄養価を保持するもの。

ただし、(2)に該当する場合又は対象となる食品が通常の食事の中で重要なものでない場合には、食品中の栄養価を意図的に低下させることも、正当と認められる場合がある。

(2) 特定の食事を必要とする消費者のための食品の製造に必要な原料又は成分を供給するもの。

ただし、疾病の治療その他医療効果を目的とする場合を除く。

(3) 食品の品質を保持し若しくはその安定性を向上させるもの又は味覚、視覚等の感覚刺激特性を改善するもの。

ただし、その食品の特性、本質又は品質を変化させ、消費者を誤認させるおそれがある場合を除く。

(4) 食品の製造、加工、調理、処理、包装、運搬又は貯蔵の過程で補助的役割を果たすもの。

ただし、劣悪な原料又は上記のいずれかの過程における好ましからざる手段若しくは技術(非衛生的なものを含む。)の使用による影響を隠ぺいする目的で使用される場合を除く。

Ⅲ 食品添加物の指定又は使用基準改正に係る手続

1.要請

食品添加物の指定又は使用基準改正(以下「指定等」という。)を要請する者は、厚生労働大臣宛て、それぞれ別添1又は別添2により要請書を提出することができる(提出先:厚生労働省医薬・生活衛生局食品基準審査課)。要請書には、Ⅳに規定するとおり、当該食品添加物の成分規格案、及び使用基準案、安全性に関する資料等を添付しなければならない。また、成分規格を適切に設定し、成分規格に係る試験を実施するため、食品基準審査課から適切な時期に当該食品添加物の試料提出の依頼があることに留意すること。

なお、要請者が外国に在住する場合には、当該要請に関する事項について責任をもって日本語で対応できる者(国内連絡先)を明記すること。

2.指定等手続き

食品安全基本法(平成15年法律第48号)第24条の規定に基づき、厚生労働省から内閣府食品安全委員会に対して、食品健康影響評価を依頼し、内閣府食品安全委員会では安全性に関する資料等に基づき、食品健康影響評価が行われる。

食品健康影響評価を踏まえて、厚生労働省では、薬事・食品衛生審議会において審議を行う。

薬事・食品衛生審議会は諮問事項について審議を終了した後、当該事項に関して厚生労働大臣宛てに答申を行う。厚生労働省は、薬事・食品衛生審議会の答申を踏まえ、食品衛生法施行規則(昭和23年厚生省令第23号)の改正等必要な措置を行う。

なお、内閣府食品安全委員会における食品健康影響評価、厚生労働省薬事・食品衛生審議会における審議の過程等において、必要とされる場合には、要請者に資料の追加提出等を求めることがある。

Ⅳ 食品添加物の指定等の要請書に添付すべき資料

1.添付資料の範囲

(1) 食品添加物の指定等を要請する場合には、原則として、別表に示された資料を添付する。

(2) (1)にかかわらず、既に指定されている食品添加物(以下「既指定添加物」という。)と塩基部分のみが異なる場合、その異性体である場合その他合理的な理由がある場合は、その理由を説明した上で、適宜資料の添付を省略することができる。

ただし、毒性メカニズム等から既指定添加物と相加的な毒性があると考えられる場合には、省略することなく資料を添付しなければならない。

2.添付資料作成上の一般的注意

(1) 添付資料は、要請者がその責任において提出するものであり、資料の信頼性は要請者が確保しなくてはならない。

(2) 当該食品添加物の概要、有効性、安全性等を簡潔にまとめた資料(以下「概要書」という。)は邦文で記載されていなければならない。ただし、概要書以外の添付資料については英文で記載されたものであっても差し支えない。なお、概要書以外の添付資料として日本語又は英語以外の言語で記載されているものを添付する場合は、邦文に訳した資料を添付すること。

(3) 添付資料を作成するために必要とされる試験は、試験成績の信頼性を確保するために必要な施設、機器、職員等を有し、かつ、適正に運営管理されていると認められる試験施設において実施されなければならない。

(4) 添付資料として提出される文献等は、科学的に信頼できる文献等でなければならない。

(5) (1)、(3)、(4)にかかわらず、要請に係る食品添加物がその要請に係る品質、安全性又は有効性を有することを疑わせる資料については、当該資料の信頼性等にかかわらず、提出しなければならない。

3.添付資料の作成上の留意事項

添付資料のうち(3)概要書には、(4)から(11)の概要を記載すること。概要書以外の添付資料として、(4)から(11)それぞれの内容の根拠としたものを添付すること。また、添付資料の作成に当たっては、「食品添加物の指定及び使用基準改正要請資料作成に関する手引について」(平成26年9月9日付け食安基発0909第2号厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課長通知)の別添を考慮して作成すること。

(1) 成分規格案

食品添加物の指定を要請する場合には、原則として、成分規格案を要請書に添付すること。

(2) 使用基準案

①食品添加物の指定を要請する場合

使用基準案は当該食品添加物の使用対象食品、使用量、使用方法等を限定する必要がある場合に添付する。

②使用基準の改正を要請する場合

当該食品添加物の使用基準と要請する使用基準改正案の対照表を要請書に添付する。

(3) 概要書

項目ごとに簡潔にまとめ、通しで頁をつけること。

(4) 名称及び用途に関する資料

① 名称

一般名(和名及び英名)、化学名(IUPAC名に準拠する。)等を示す。

② 用途

国内及び諸外国での使用状況、コーデックス委員会で規定された用途等を示す。

(5) 起源又は発見の経緯に関する資料

要請された品目がいつ、どの国で開発され、その後どの国で食品添加物として使用されるようになったか等の要請に至る経緯を示す。

(6) 諸外国における使用状況に関する資料

要請された品目の諸外国における許可状況、具体的な使用食品、使用基準、成分規格等を示す。併せて、コーデックス委員会等の国際機関における使用基準、成分規格等も示す。

(7) 国際機関等における安全性評価に関する資料

JECFA等の国際機関、諸外国等における安全性評価の結果の概要を示す。

(8) 物理化学的性質及び成分規格に関する資料

食品添加物公定書の通則、一般試験法等を参考にして、適切な方法により試験した結果に基づき示す。

① 構造式又は示性式

食品添加物公定書を参考に構造式又は示性式を示す。

② 分子式及び分子量

食品添加物公定書の通則に準拠して示す。

③ 製造方法

製造方法によっては、不純物の種類又は量が異なる可能性もあるので、製造工程を簡明に示す。

④ 含量規格

含量規格は、製造過程、定量誤差及び安定性等に基づき、安全性と有効性に関して同等とみなせる一定品質を保証するのに必要な値を設定する。食品添加物としての有効成分の含量を%で示し、有効成分が2種以上存在する場合は、それぞれについて設定する。

⑤ 性状

性状は、使用時の識別及び取扱い上必要となる事項について、通例、味、におい、色、形状等を設定する。

⑥ 確認試験

確認試験は、当該物質が目的の食品添加物であるか否かをその特性に基づいて確認するための試験である。したがって、食品添加物の化学構造上の特徴に基づいた特異性のある試験である必要がある。確認試験以外の項目の試験によっても食品添加物の確認が可能な場合には、それらを考慮に入れることができる。例えば、定量法に特異性の高いクロマトグラフ法を採用する場合には、確認試験を簡略化することができ、重複する内容で設定する必要はない。確認試験を行う方法としては、通例、スペクトル分析に基づく方法及び化学反応による方法が考えられる。なお、化学反応については、化学構造の特徴を確認するのに適切なものがある場合に設定する。

⑦ 示性値

示性値とは、吸光度、旋光度、pH、融点等の物理的又は化学的方法により測定される数値をいい、品質を確保する上で必要な項目を設定する。

⑧ 純度試験

純度試験は、食品添加物中の不純物を試験するために行うもので、定量法とともに食品添加物の純度を規定する試験である。食品添加物中に混在する可能性のある物質(原料、中間体、副生成物、分解生成物、試薬・触媒、重金属・無機塩及び溶媒)のうち必要なものを対象とする。

⑨ 乾燥減量、強熱減量又は水分

乾燥減量試験は、乾燥することによって失われる食品添加物中の水分、結晶水の全部又は一部及び揮発性物質等の量を測定するために行う。強熱減量試験は、強熱することによって、その構成成分の一部又は混在物を失う無機物について行う。水分試験は、食品添加物中に含まれる水分含量を知る目的で行う。

⑩ 強熱残留物(強熱残分)

強熱残留物試験は、通例、有機物中に不純物として含まれる無機物の含量を知るために行うが、場合によっては、有機物中に構成成分として含まれる無機物又は熱時揮発する無機物中に含まれる不純物の量を測定するために行う。

⑪ 定量法

定量法は、有効成分の含量を、物理的、化学的又は生物学的方法により測定する試験である。相対的な試験方法を設定する場合には、定量試験に用いる標準物質について規格を設定する。正確さ、再現性及び特異性を重視して、試験法を設定する。ただし、特異性の低い方法であっても、適切な純度試験により、混在物の限度が規制されている場合には、再現性のよい絶対量を測定しうる試験方法を設定して差し支えない。その場合には、特異性に欠ける部分について、純度試験等に特異性の高い方法を用いることにより、相互に補完し合うことが必要である。なお、定量しようとする成分が2種以上ある場合は、重要なものから設定する。

⑫ 成分規格案の設定根拠

ア) 成分規格案は、国際機関によって設定された成分規格を参考とし、上記(4)①及び(8)①~⑪の資料に基づき、当該食品添加物の安全性及び有効性に関し、一定の品質を担保するために必要なものを設定する。

イ) 国際機関によって設定された成分規格及び諸外国の成分規格と成分規格案との対照表を作成する。

⑬ 食品添加物の安定性

食品添加物の安定性について、分解物の検索を含め、検討を行う。

⑭ 食品中の食品添加物の分析法

原則として、食品添加物を使用する可能性の高い食品につき、当該食品の化学分析等によりその添加を定性的及び定量的に確認できる方法を設定する。なお、同様の目的をもつ他の食品添加物等との分離定量に留意する。ただし、使用基準を設定する必要がない場合又は食品中に残留しない場合にあっては、食品中の食品添加物の分析法のうち、定量法の設定を省略することができる。

(9) 使用基準案に関する資料

① 食品添加物の安全性及び有効性を総合的に検討し、使用対象食品、使用量等を限定するため、使用基準を設定する必要があると判断した場合には、当該使用基準を設定する根拠を他の添付資料に基づき明らかにする。なお、使用基準案は、既に設定されている他の食品添加物の使用基準を参考に作成する。

② 使用基準を設定する必要がないと判断した場合には、他の添付資料に基づき、その根拠を明らかにする。

③ 使用基準改正に当たっては、要請する使用対象食品の追加、使用量の変更等、使用基準を改正する根拠を明らかにする。

(10) 有効性に関する資料

① 有効性に関する試験については、食品添加物の用途ごとに期待する効果があることを裏付ける試験を行う。

例えば、酸化防止剤については、対象食品に関する抗酸化効果が添加量及び時間経過との関係において明らかになるような試験を行うべきであり、保存料については、対象食品に対する保存性向上の効果が明らかとなるような試験を行う必要がある。既に指定されている同様の用途の食品添加物がある場合は、それらの食品添加物と効果を比較することが望ましい。

② 食品添加物の食品中における安定性に関する試験を行う。なお、安定でない場合は、主な分解物の種類及び生成程度について検討すること。

③ 食品添加物の食品中の主要な栄養成分に及ぼす影響についても検討する。

(11) 安全性に関する資料

「添加物に関する食品健康影響評価指針」(令和3年9月食品安全委員会決定)に従い、食品健康影響評価に必要となる情報を示す。

(別表)

食品添加物の指定又は使用基準改正の要請書に添付すべき資料

資料の種類

指定

基準改正

1.成分規格案


2.使用基準案及び対照表

3.概要書

4.名称及び用途に関する資料

5.起源又は発見の経緯に関する資料

6.諸外国における使用状況に関する資料

7.国際機関等における安全性評価に関する資料

8.物理化学的性質及び成分規格に関する資料

9.使用基準案に関する資料

10.有効性に関する資料



(1) 食品添加物としての有効性及び他の同種の添加物との効果の比較

(2) 食品中での安定性

(3) 食品中の主要な栄養成分に及ぼす影響

11.安全性に関する資料

注1) ○印は添付すべき資料、△印は利用可能な知見がある場合、新たな知見がある場合等必要な場合に添付すべき資料を示す。※印については、「添加物に関する食品健康影響評価指針」(令和3年9月食品安全委員会決定)に従い、必要となる資料を添付すること。

注2) 食品安全委員会による食品健康影響評価のなされていない食品添加物については、原則として「指定」の資料を提出すること。また、食品安全委員会による食品健康影響評価が終了している食品添加物の使用基準改正に当たっては、「基準改正」の資料を提出すること。

(別添1)

(別添2)