添付一覧
○と畜場法施行規則、食品衛生法施行規則及び食品、添加物等の規格基準の一部改正について
(昭和六〇年一月一八日)
(衛乳第五号)
(各都道府県知事・各政令市市長、各特別区区長あて厚生省生活衛生局長通知)
と畜場法施行規則(昭和二八年九月厚生省令第四四号)、食品衛生法施行規則(昭和二三年七月厚生省令第二三号)及び食品、添加物等の規格基準(昭和三四年一二月厚生省告示第三七○号)の一部がそれぞれ昭和五九年一二月一九日厚生省令第五八号及び厚生省告示第二二一号をもつて改正されたので、左記の事項に留意の上、その運用に遺憾のないようにされたい。
記
第一 改正の趣旨
食品の加工技術の進展に伴い、近年、獣畜の血液が加工食品の原材料として大量に利用されだしてきたことに鑑み、獣畜の血液についてと畜検査に基づく措置を明確にするとともに、血液、血球及び血漿に係る規格基準を定めたこと。
第二 改正の内容
一 と畜場法施行規則関係
別表三の上欄に掲げる疾病のうち別表第二に掲げる疾病以外のヨーネ病、馬伝染性貧血、結核病、ブルセラ病、黄疸、水腫、腫瘍、住肉胞子虫症、放線菌病、ブドウ菌腫及び多発性化膿性の炎症について、当該疾病り患獣畜の血液も廃棄その他食用に供されることを防止するために必要な措置を執ることとしたこと。
二 食品衛生法施行規則関係
と畜場法施行規則別表第二及び第三の改正に伴い、これらと別表第一の整合を図つたこと。
三 食品、添加物等の規格基準関係
(一) 食品一般の製造、加工および調理基準に次の基準を設けたこと。
獣畜の血液、血球及び血漿を使用して食品を製造、加工又は調理する場合は、その食品の製造、加工又は調理の工程中において、血液、血球若しくは血漿を六三℃で三○分間加熱するか、又はこれと同等以上の殺菌効果を有する方法で加熱殺菌をすること。
(二) 血液、血球及び血漿の規格基準を次のように定めたこと。
ア 血球及び血漿の加工基準
(ア) 加工に使用する血液は次の要件を満たすものを使用することとしたこと。
a 採血後直ちに四℃以下に冷却したものであつて、冷却後四℃以下に保持したものであること。
b 鮮度が良好で性状が正常であること。
(イ) 加工は、次により行うこととしたこと。
a 適切な方法で洗浄殺菌した器具を用いること。
b 連続一貫して行うこと。
c 加熱殺菌する場合を除き血液、血球又は血漿が一○℃を超えることがないようにして行うこと。
(ウ) 凍結を行う場合は、分離後速やかに-一八℃以下になるように行うこととしたこと。
イ 血液、血球及び血漿の保存基準
(ア) 血液、血球及び血漿は、四℃以下で保存することとしたこと。
(イ) 冷凍した血液、血球及び血漿は、-一八℃以下で保存することとしたこと。
(ウ) 血液、血球及び血奨は、清潔で衛生的な容器包装に収めて保存することとしたこと。
第三 運用上の注意
(一) 改正後のと畜場法施行規則、食品衛生法施行規則及び食品、添加物等の規格基準は、昭和六○年二月一日からそれぞれ施行又は適用されること。
(二) 食用に供する目的で獣畜の血液を採取しようとする場合のと畜場の構造設備については、別紙一「食用に供する目的で獣畜の血液を採取すると畜場の血液採取に係る構造設備の基準」に合致するよう指導されたいこと。
(三) 食品として販売の用に供するため獣畜の血液を加工する営業を営もうとする者は、食品衛生法第二一条の規定に基づく食肉処理業の許可を要するものであること。
なお、食肉処理業のうち獣畜の血液の加工を行う施設の施設基準の設定にあたつては、別紙二「血液の加工を行う食肉処理業の施設設備の基準(案)」を参考とされたいこと。
(四) 食用と畜血液の採取、運搬及び加工における衛生を確保するため、別紙三のとおり「食用と畜血液の採取、運搬及び加工に関する指導事項」を定めたので関係営業者を十分指導されたいこと。
別紙一
食用に供する目的で獣畜の血液を採取すると畜場の血液採取に係る構造設備の基準
一 と室においては、次の要件を満していること。
(一) 採血する場所には、採血のためのナイフ及びパイプを有する採血器具を二組以上備えること。
(二) 血液凝固防止剤注入器、血液の一時貯留槽(採取した血液をポンプで冷却機又は検査前貯留槽に送り出すために血液を一時的に貯留する槽。以下同じ。)、ポンプ等の機械器具は、作業に便利で、かつ、清掃及び洗浄をしやすい位置に配列してあること。
(三) 血液凝固防止剤注入器は、自動的に注入できる構造のものであること。
(四) 採血器具、血液の一時貯留槽等機械器具の直接血液に接触する部分は、ステンレス、合成樹脂等耐水性の材料で作られ、洗浄及び殺菌しやすい構造のものであること。
(五) 採血のためのナイフ及びパイプ等を衛生的に保管できる保管設備を有すること。
(六) 採血器具は、血液の一時貯留槽及びポンプを使用する場合にあつては、パイプが血液の一時貯留槽に、血液の一時貯留槽及びポンプを使用しない場合にあつては、パイプが冷却機若しくは検査前貯留槽(採取した血液をと畜検査の結果が出るまで貯留しておく槽。以下同じ。)に直結する構造のものであること。
二 次の要件を備えた血液貯留室が設けられていること。
(一) 他の部屋と区画されていること。
(二) 血液が検査前貯留槽に流入以前に冷却機を設けていない構造のものにあつては、検査前貯留槽を配置する室を冷蔵室とすること。ただし、検査前貯留槽に冷蔵装置を備え、当該槽を冷却する構造のものにあつてはこの限りでないこと。
(三) 計画取扱数量に応じた広さを有していること。
(四) 床、壁、及び天井は平滑で清掃し易い構造であること。
(五) 内壁はすき間がなく、かつ、床面から一・二メートル以上の高さまで不浸透性材料で腰張りされていること。
(六) 床は、不浸透性材料で作られ、ひび割れや凹凸がなく、排水が良好となる構造であること。
(七) 採光又は照明が良く、換気が十分であること。
(八) 窓、出入口、その他開閉する場所は、そ族、昆虫等の侵入を防ぐ設備が設けられていること。
(九) 排水溝は、内面が平滑で適当な勾配があり、排水が良好で、汚水浄化設備又は公共下水道に接続していること。
(10) 冷却機、ろ過器(毛、肉塊等を除去する機器。以下同じ。)検査前貯留槽及び検査後貯留槽(と畜検査の結果食用に供することが認められた血液を貯留する槽。以下同じ。)を有すること。
なお、血液処理室を併設している施設にあつては、検査後貯留槽は原料貯留槽(加工するための原料血液を貯留する槽。以下同じ。)をもつて替えても差し支えないこと。
(11) 計画取扱量に応じた数及び大きさの機械、器具を有すること。
(12) 固定した機械、器具及び移動し難い器具は、作業に便利でかつ、洗浄及び清掃しやすい位置に配列してあること。
(13) 検査前貯留槽及び検査後貯留槽は、有蓋で密閉できる構造のものであること。
(14) 検査前貯留槽は、貯留槽内の血液と採血した獣畜の個体が確認できる構造を有し、かつ、と畜検査の結果食用に供してはならないとされた血液が検査後貯留槽に流入することのない構造のものであること。
(15) ろ過器、冷却機、検査前貯留槽及び検査後貯留槽の各接続は、サニタリーパイプで連結し、血液が露出しない構造で、かつ、十分な能力のある定置洗浄設備(CIP)を有すること。
(16) 機械器具は、直接血液に接触する部分がステンレス等耐水性の材料で作られ、洗浄及び殺菌しやすい構造のものであること。
(17) 器具等を衛生的に保管できる保管設備を有すること。
(18) 冷却又は冷蔵するための設備には、温度を正確に調節する装置を有すること。
(19) 器具等の洗浄設備及び流水式洗浄設備を有すること。
(20) 飲用に適する水を十分に供給することのできる給水設備を有すること。
(21) 温水又は蒸気を豊富に供給することのできる設備を有すること。
(22) 廃棄物容器は、不浸透性材料で作られ、ふたがあり、清掃しやすく汚液汚臭のもれない構造のものであること。
別紙二
血液加工を行う食肉処理業の施設設備の基準(案)
(建物の構造)
一 施設は、汚染のおそれがない位置に設けられていること。
二 施設は、他の施設としや断されており、運搬器具の洗浄殺菌室、原料血液貯蔵室、処理室及び冷蔵室(冷凍室)並びに必要に応じて包装室を設け、それぞれの室が区画されていること。
ただし、採血から加工まで一貫して行われる施設で他施設より原料血液を運搬してくることがない施設にあつては、運搬器具の洗浄殺菌室及び原料血液貯蔵室を省略しても差し支えないこと。
三 施設は、計画処理量に応じた広さを有すること。
四 施設外に、従事者の数に応じた更衣室を設けること。
五 床、壁及び天井は、平滑で清掃し易い構造であること。
六 内壁はすき間がなく、かつ、床面積から一メートル以上の高さまで不浸透性材料で腰張りされていること。
七 床は、不浸透性材料で作られ、ひび割れや凹凸がなく、排水が良好であること。
八 採光又は照明が良く、換気が十分であること。
九 窓、出入口その他開閉する箇所は、そ族、昆虫等の侵入を防ぐ設備が設けられていること。
一○ 排水溝は、内面が平滑で適当な勾配があり、排水が良好で汚水浄化設備又は公共下水道に接続していること。
(食品取扱設備)
一一 計画処理量に応じた数及び大きさの原料貯留槽、分離機等必要な機械器具を有すること。
一二 固定した機械器具及び移動し難い器具は、作業に便利で、かつ、清掃及び洗浄し易い位置に配列してあること。
一三 原料血液受入れ設備から充填設備までの工程における各設備の接続は、サニタリーパイプで連結してあること。
一四 原料貯留槽から充填設備までの工程における各設備は、設備ごとに洗浄殺菌設備を有すること。
一五 機械器具の直接食品に接触する部分は、ステンレス、合成樹脂等耐水性の材料で作られ、洗浄及び殺菌しやすい構造のものであること。
一六 器具、容器包装等を衛生的に保管できる保管設備を有すること。
一七 冷却、冷蔵又は加熱をするための設備には、温度を正確に調節する装置並びに加熱殺菌する場合にあつては、その温度を記録する装置を有すること。
(給水及び汚物処理)
一八 従業員の手洗いのための流水式手洗設備並びに機械器具の洗浄のため豊富に飲用適の水を供給できる設備を有すること。
一九 温水又は蒸気が豊富に供給することのできる設備を有すること。
二○ 汚水だめ及び汚物だめは、コンクリートその他不浸透性材料で作られ、密閉できるおおいがあり、かつ、血液及び汚水の処理設備を有すること。
ただし、浄化施設又は公共下水道に接続している場合はこの限りでないこと。
二一 廃棄物容器(置場)は、不浸透性材料で作られ、ふたがあり、清掃しやすく、汚臭及び汚液がもれない構造であること。
二二 便所は、施設に影響のない位置にあり、防虫設備を設け、かつ、流水式手洗設備を有すること。
別紙三
食用と畜血液の採取、運搬及び加工に関する指導事項
第一 と畜場における取扱い
(獣畜)
一 と畜場法に基づき血液を食用に供することが認められない場合のほか、次の獣畜から血液を採取しないこと。
(一) 汚れの著しい獣畜
(二) 未成熟、発育不良及び老齢の獣畜
(三) 病畜と室においてと殺解体する獣畜
二 血液を採取するに当たつては、採血部位を清潔に保ち採血すること。
三 生体検査において血液を採取しないこととされた獣畜は、当該獣畜が採血してはならない旨を容易に識別できるようにするとともに、これらの獣畜は別ライン又は血液採取終了後処理する等誤つて採血されることのないようにすること。
四 採取した血液とその血液を採取した獣畜との同一性を確保するため、と体及び内臓に記号を付す等確実に識別できるようにすること。
(血液採取)
五 採血は一頭ごとに洗浄した採血用ナイフを用い、衛生的に行うこと。
六 採血は、食道又は気管を傷つけないように行うこと。
なお、食道又は気管を傷つけた場合は、採血を停止し当該血液が流入した検査前貯留槽の血液を廃棄すること。
(血液凝固防止)
七 採取した血液の凝固防止は、機械的脱線維方法又はクエン酸ナトリウム溶液(食品添加物の規格基準に適合するクエン酸ナトリウムを飲用に適する水に溶解したもの。以下同じ。)を用いる方法によること。
八 クエン酸ナトリウム溶液を用い血液の凝固を防止する場合は、自動的に必要量のクエン酸ナトリウム溶液を添加すること。
(採取した血液)
九 採取した血液は、直ちに四℃以下に冷却すること。
一○ と畜検査の結果食用に供してはならないとされた血液及び当該血液が流入した検査前貯留槽の血液は確実に排除し、検査後貯留槽に流入していないことを確認すること。
一一 検査後貯留槽内の血液は、四℃以下で保存すること。
(洗浄及び殺菌)
一二 採血器具、冷却機、貯留槽等の器具類は、作業開始直前及び終了直後定置洗浄(CIP)を行うこと。
ただし、作業終了直後の定置洗浄を行つた後汚染されることのないよう衛生的に管理されたものにあつては、作業開始前の定置洗浄を省略しても差し支えないこと。
なお、検査後貯留槽を運搬器具として用いる場合にあつては、当該貯留槽は運搬終了直後及び検査後貯留槽として使用直前に定置洗浄を行うこと。ただし、運搬終了直後定置洗浄を行い検査後貯留槽として使用するまで汚染されることのないよう衛生的に管理されたものにあつては、使用直前の定置洗浄は省略しても差し支えないこと。
一三 採血器具から検査前貯留槽までの器具類は、検査前貯留槽の内容物が変るごとに定置洗浄を行うこと。
第二 運搬時における取扱い
(運搬器具)
一 運搬器具は、直接血液に接触する部分がステンレス、合成樹脂等耐水性の材料で作られ、洗浄及び殺菌しやすい構造のものであること。
二 運搬器具は、流出入口から汚染されることのないよう流出入口を密栓又は密封し、流出入口が露出しない構造のものであること。
三 計画取扱量に応じた数及び大きさの運搬器具を有し、当該運搬器具は食用に供する血液以外のものの運搬に使用しないこと。
(運搬)
四 運搬中の血液は四℃以下に保存し運搬すること。
五 運搬器具は、使用する直前及び使用した直後速やかに洗浄殺菌すること。
ただし、使用直後の洗浄殺菌を行つた後汚染されることのないよう衛生的に管理されたものにあつては、使用直前の洗浄殺菌を省略しても差し支えないこと。
第三 血液加工施設における取扱い
(洗浄及び殺菌)
一 加工に用いる器具の洗浄殺菌は、原則として定置洗浄設備を用いて行い、洗浄殺菌方法については、あらかじめ都道府県知事又は保健所設置市長に届出、適当と認められた方法により行うこと。
(自主検査)
二 営業者は血球及び血漿について、次を参考として自主規格を設定し定期的に検査を行い、その記録は少くとも一年間保存すること。
(一) 殺菌工程のないもの
ア 細菌数(生菌数) 105/g以下
イ 耐熱性菌総数(芽胞数) 3000/g以下
(二) 殺菌工程のあるもの
ア 細菌数(生菌数) 104/g以下
イ 耐熱性菌総数(芽胞数) 3000/g以下
ウ 大腸菌群 陰性