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畜場法の施行に関する件

(昭和二八年一〇月六日)

(発衛第二五〇号)

(各都道府県知事あて厚生事務次官通達)

畜場及び食用の目的で行う獣畜の処理に関しては、明治三九年に制定された屠場法によつて今日まで必要な規制がされて来たのであるが、この間屠場法の部分的な改正はあつても本質的な改正を見ていないので現在の社会情勢に適合しない点が多く又新憲法の施行に伴つて当然法律に規定すべき事項が省令に規定されている等法的にも幾多の欠陥があつた。

今般、このような欠陥を是正するため、第一六特別国会において従来の屠場法が廃止され新たに畜場法が制定され、八月一日法律第一一四号として公布され、同法施行令(昭和二八年政令第二一六号)同法施行規則(昭和二八年厚生省令第四四号)もそれぞれ公布されたのであるがこの法律の施行に当つては、特に左記事項につき留意の上、遺憾なきを期せられたく、命によつて通知する。

第一 運用に関する一般的事項

一 最近の農村における家畜の増産に伴つて、農村の食肉利用を促進するため畜場の適正な普及を図ることが必要である事情に鑑み、畜場法において新たに簡易畜場の制限が設けられるとともに、現在の社会情勢に即応するため公営の畜場を優先的に取り扱う従来の建前が廃止されたものであるから、右の趣旨を十分理解して畜場の設置の許可を行うこと。

二 食肉の衛生を確保することは、公衆衛生上極めて重要なことであるので、獣畜の殺又は解体について厳格な検査を実施するとともに、密殺防止の徹底を期し、食肉による危害事故の発生を来さないようにすること。

第二 畜場に関すること

一 法第四条第一項の規定による一般畜場又は簡易畜場の設置の許可は、設置の場所及び構造設備を基準として行うものであつて、設置の場所が公衆衛生上適当なものであり、且つ、構造設備が施行令第一条又は第二条の基準に合致するものであれば、当然許可を与えなければならないものであること。なお、旧屠場法により設置された畜場は、本法附則第三項の規定により、一般畜場又は簡易畜場の設置の許可を受けたものとみなされることとなつているので、新たな許可を必要としないものであること。

二 畜場において処理することができる獣畜の種類及び頭数は、畜場の構造設備の規模により異なるべきものであるから、各畜場の規模に応じ、法第四条第二項の規定により処理することができる獣畜の種類及び一日当りの頭数を制限するよう措置されたいこと。但し、簡易畜場については、法第二条第四項及び第一四条第一項第三号に規定する如く法定制限がされているので、この規定以上の制限が特に必要な場合にのみ制限を行うこと。

処理する獣畜の種類及び頭数の制限に関する規定は、既存の畜場についても適用されるものであるが、当分の間は従前の実績及び施設の規模を勘案の上妥当な制限を行い、漸次実際の処理頭数等に適した施設の改善が行われるよう指導すること。

第三 畜場使用料及び殺解体料に関すること

法第八条の規定により、新たに畜場使用料及び殺解体料は、都道府県知事の認可を要することになつたのですみやかに、料金の認可措置をとるようにされたいこと。認可基準については、畜場使用料金は諸経費の原価(原価償却費水道料、修繕費、人件費、光熱費、消耗品費及びその他の経費)、税金並びに一カ月平均(又は年間)収入額、新設畜場については推定収入額を勘案し、適正な料金を決定されたいこと。

殺解体料については、畜業者の諸経費の原価(人件費、消耗品費及びその他の経費)、税金並びに一日平均(又は一カ月平均)の収入額を勘案し、適正な料金を決定されたいこと。

第四 畜業者に関すること。

一 今回新たに、殺解体料の認可、衛生措置を講ずべき義務、殺解体の業務の停止命令等畜業者に関する規定が設けられたので、畜業者の実態を把握し十分な指導監督を行うこと。

二 畜業者とは、獣畜の殺又は解体の業を営む者をいうが、畜場の従業員、夫等単なる殺又は解体の行為を行う者は、畜業者には該当せず、独立営業主体として殺解体を行うものが畜業者と解せられるものであること。

三 畜業は、許可制度とされていないので、畜業者以外のものが、殺又は解体を行うことを禁止したものではないこと。

第五 殺又は解体に関すること

一 法第九条第一項第一号の規定による畜場外殺(自家用殺)は、主として自己及びその同居者の食用に供することを目的とする場合に限られるが、この場合自己とは、同号の規定により届出を行つた者のみをいうものであること。また、数名の者が共同して殺を行う場合のその共同した数名のものがそれぞれ主として自己及びその同居者の食用に供する目的で行う場合をも含むものであること。但し、その数名の人数の範囲は、社会通念上一頭の獣畜を共同して殺するのに通常予想される程度の人数とすること。

本号の自家用殺が認められる場合は、自然人に限り、学校、病院、団体等については適用されないものであること。

二 自家用殺の場合であつても、でき得る限り畜場において殺するよう指導するとともに、同号の規定による届出を受けたときは、同条第三項により衛生上の指示を行うようにされたいこと。

三 畜場が普及されていない離島、へき地等がある場合は、施行令第三条第二号により地域指定を行われたいこと。

第六 殺又は解体の検査に関すること

一 畜検査の厳正且つ科学的な実施は、食肉の安全性の保障とともに廃棄その他の処分による経済的負担をできるだけ最少限度にとどめるための基礎をなすものであるから、細菌学的精密検査の強化等による適正な検査を行われたいこと。

なお畜検査員の技術の進歩向上を図るため、講習会その他必要な手段を講じられたいこと。

二 簡易畜場における検査、畜場以外の場所における検査を確実且つ能率的に実施するため、必要な携帯用検査器具薬品等の整備を図られたいこと。

三 施行令第三条に規定する場合には、畜場以外の場所で殺及び解体を行うことができるのであるが、この場合においても都道府県知事が特に検査を要しないものと認めた場合を除いては検査を必要とするので、遠隔地であることその他やむを得ない事情の場合以外は、検査を実施するようにされたいこと。

四 法第九条第一項第二号又は第三号による切迫殺の場合には、生体検査が行われず、またこれから往々危険な疾病が発見されている実情に鑑み、特に慎重且つ厳格な検査を実施すること。

五 畜検査の技術的方法については、畜検査規程(昭和二八年厚生省訓令第一一号)によられたいこと。

第七 畜検査員に関すること

一 畜検査員は、畜検査の事務に従事する外、畜検査の結果に基き必要な措置を講じること、衛生措置の実施状況を検査すること。殺解体を行う者に対して警告すること等の職権の行使するものであるが、これらの事務は極めて高度の技術を必要とするものであるから、その任命に当つては、十分注意されたいこと。

二 畜検査員の設置に当つては、施行令第八条の基準に従い、できるだけ専任の畜検査員を配置されたいこと。

専任の畜検査員を配置することが困難な場合には最寄りの畜場の畜検査員を併任させること。

右の措置も困難な場合には、獣医師たる吏員を併任して行わせることも考慮すること。なお、法第一五条第二項の職員には、地方公務員法の特別職の職員も含まれるものであるが、畜検査員の職務性質上特別職の職員を畜検査員に任命することは、やむを得ない場合に限られたいこと。

三 畜検査員がその職務を行うに当つて涜職その他不正の行為がないよう十分指導監督されたいこと。

第八 行政処分に関すること

この法律においては、殺解体に伴う衛生措置の確保を図るため、行政処分に関する規定が従来より著しく強化されたが、法第一二条及び法第一四条の処分を行うに当つては、公衆衛生の見地から必要な場合に限り、必要最少限度の範囲で行うよう特に注意すること。

第九 その他

一 法第一一条の規定により、密殺肉の譲受が禁止されることになつたので、警察当局と十分連絡の上密殺防止に努められたいこと。

二 この法律の実施に当つては、家畜伝染病予防、食肉の消費流通等とも密接な関係があるので、常に関係部局間の十分な連絡協調をはかること。

三 輸入する獣畜の肉及び内臓については、昭和二八年八月一五日厚生省発衛第二○○号「食品衛生法の一部を改正する法律の施行について」により取り扱うこと。