添付一覧
○乳処理施設の監視指導の強化について
(平成一二年三月二九日)
(衛乳第六一号)
(各都道府県・政令市・特別区衛生主管部(局)長あて厚生省生活衛生局乳肉衛生課長通知)
乳肉衛生行政の推進につきましては、日頃より種々ご配慮を煩わしているところであります。
さて、標記については、平成八年三月一一日付け衛乳第二九号、平成八年四月二日付け衛乳第六三号、平成八年九月九日付け衛乳第二〇四号、平成一〇年一一月九日付け衛乳第二六六号及び平成一一年四月九日付け衛乳第七五号にて通知しているところですが、今般、食品衛生法第七条の三第一項の規定に基づく総合衛生管理製造過程の承認を取得している乳処理施設が処理した学校給食用の瓶入り牛乳を原因食品とする異味異臭事故が発生しました。この事例においては、瓶入り製品の処理における洗瓶工程で使用される塩素水の管理が、HACCPプランの規定どおりに行われていなかったことが指摘されております(別紙)。
ついては、今後、このような事例を未然に防止し、牛乳に対する消費者の不安を一掃するため、貴管下の瓶入り製品を製造する乳処理施設に対し、下記事項に留意の上、監視指導されたく特段のご配慮をお願いします。
また、総合衛生管理製造過程の承認を取得した乳処理施設等に対しては内部検証の徹底を周知するとともに、監視指導を行う際には、当該施設のHACCPプランに沿った衛生管理が確実に実施されていることを併せて確認し、承認に係る総合衛生管理製造過程を確実に実施していない場合、又は、その一部を変更の承認を受けずに変更したことが判明した場合には、この旨当課まで通報方よろしくお願いします。
記
一 塩素注入装置について、定期的に電気絶縁性等当該装置の保守点検を実施するとともに、その精度を定期的に確認すること。
二 塩素水濃度については、バランスタンクの容量や洗瓶機の運転速度等を考慮し、常時適正に管理されていることが担保できる頻度で確認すること。
三 充填前の瓶の内部に高濃度の塩素水が残留しないよう工程を管理すること。
(別紙)
学校給食用の瓶入り牛乳を原因食品とする異味異臭事故について
一 事故の概要
平成一二年二月二四日、乳処理施設が同月二三日に処理した学校給食用の瓶入り牛乳を原因食品とする異味異臭事故が発生し、同月二五日一五時現在で、苦情者は五〇校一、七二〇名、有症者は三六校四一五名が確認された。原因食品は、いずれも同月二四日に学校給食用に配送された牛乳二〇〇ml(瓶)に限定しており、また、苦情内容は「カルキ臭い」「プールの臭い」「薬品臭」「絵の具のような臭い」「味が薄い」といったものであった。事故の発生原因として、洗瓶工程に使用する塩素水の管理不備が指摘されている。
二 洗瓶工程
当該工場においては、回収された牛乳瓶を洗瓶機で、「洗剤→すすぎ→水ブラシ→すすぎ→塩素水」という工程により洗浄殺菌した後、牛乳が充填されている。
この工程で使用される塩素水は、消毒用塩素水ミックスタンクにおいて工場内使用水と次亜塩素酸ナトリウムを自動的に混合することにより八〇~一二〇ppmとなるよう調製されており、この調製された消毒用塩素水が、消毒用塩素水ミックスタンクから塩素水バランスタンクへ、さらに洗瓶機へと送水され、洗瓶機の噴射ポンプで瓶の内外が消毒されている。なお、消毒用塩素水の濃度が八〇~一二〇ppmに自動的に保たれる機能は有していない。
三 衛生管理の不備事項
① 塩素注入装置の管理不備
洗瓶工程で使用される塩素水は、消毒用塩素水ミックスタンクにおいて、工場内使用水と次亜塩素酸ナトリウムを自動的に混合することにより調整されている。この作動を制御している制御盤内のブレーカー等の内部腐食等による電磁開閉器の接触不良等により、チャタリング(瞬間断続的にON/OFFが繰り返される状態)が発生し、その結果、塩素注入ポンプのみが稼働し、給水電磁弁が作動不良となった時間帯があったため、高濃度の塩素水が洗瓶機に送水されたと推定されている。なお、この塩素注入装置の制御盤内等の電気的な項目に係る点検は未実施であった。
② 塩素水バランスタンク内の塩素水濃度の管理不備
塩素水濃度については、開始時及び一時間おきに塩素水バランスタンク内の塩素水を採取し、比色測定器で測定することと規定されていたが、二三日の瓶入り牛乳製造において、最終の製造時間帯での測定、記録が行われていない。また、比色測定器の精度確認が未実施であった。
③ 洗瓶後の塩素水の脱水不良
塩素水による消毒は、洗瓶機内で瓶を逆さにし、上下からノズルで塩素水を噴射して行われているが、噴射後、瓶内の塩素水が十分除去されるだけの時間を経過せずに瓶が元に戻るため、高濃度の塩素水(〇・五ml程度)が残る瓶があることが確認された。