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○添加物たる酢酸ビニル樹脂中の酢酸ビニル単量体の分析法について

(平成九年八月二八日)

(衛化第一〇六号)

(各都道府県、政令市、特別区衛生主管部(局)長あて厚生省生活衛生局食品化学課長通知)

酢酸ビニル樹脂は、食品添加物として指定されており、チューインガム基礎剤の用途等に使用されているところであるが、労働省が日本バイオアッセイ研究センターに委託して実施したラット及びマウスを用いた発がん性試験の結果、酢酸ビニル単量体の投与により発がん性が認められたこと(別添)に鑑み、今般、酢酸ビニル樹脂中の酢酸ビニル単量体の分析法を別紙のとおり作成したので、御了知の上、適切な運用方お願いする。

なお、現在流通している食品添加物たる酢酸ビニル樹脂に特段の問題はないものと承知しているところであるが、仮に当該分析法により検出限界である五μg/g試料以上の酢酸ビニル単量体が検出された場合は、食品衛生法第四条に違反するものとして取り扱って差し支えない。

(別紙)

酢酸ビニル樹脂中の酢酸ビニル単量体分析法

一 試薬

トルエン:残留農薬試験用として市販のものを用いる。

酢酸ビニル単量体:含量九八・〇%以上

酢酸ビニル単量体標準液:酢酸ビニル単量体約五〇mgを正確に量り、トルエンを加えて正確に五〇mlとする。

二 ガスクロマトグラフィーによる酢酸ビニル単量体の測定条件

ガスクロマトグラフ(FID検出器付属)

カラム:内径〇・三二mm、長さ三〇mのケイ酸ガラス製の細管に、ガスクロマトグラフィー用ジメチルポリシロキサンを五μmの厚さでコーティングしたもの。

注入口温度:一五〇℃

検出器温度:二〇〇℃

カラム温度:一〇〇℃で八分間保持した後、その後毎分二〇℃で昇温し、二五〇℃に到達後五分間保持する。

試料注入量:一μl

注入方式:スプリット(八:一)

ガス流量:キャリヤーガスとしてヘリウムを用いる。酢酸ビニル単量体が約四分で流出する流速(注一)に調整する。

三 試験溶液の調整

酢酸ビニル樹脂を薬包紙及びラップフィルムで包み、木槌で叩いて細かく砕き、その約二・五gを正確に量り、トルエンを加えて溶解したのち、正確に二五mlとし、試験溶液とする。

四 酢酸ビニル単量体の定量

試験溶液一μlをガスクロマトグラフに注入する(注二)。別途作成した検量線より、試料中の酢酸ビニル単量体の濃度を求める。

五 検量線の作成

酢酸ビニル単量体標準液を、約〇・二~一〇μg/mlになるようにトルエンで適宜希釈し、その一μlをガスクロマトグラフに注入する。得られたピーク面積から、検量線を作成する。

六 検出限界:酢酸ビニル単量体五μg/g試料

(注一) 流速一・二六ml/minの条件下で、酢酸ビニル単量体は四分付近に出現した。

(注二) 溶解した酢酸ビニル樹脂を除去しないで直接注入する。溶解した酢酸ビニル樹脂の一部がカラムに付着するのを防ぐため、注入口ライナーはガラスウール(シラン処理済)を詰め替えできるタイプを選択する。

(別添)

日本バイオアッセイ研究センターにおける労働省委託の酢酸ビニルのラット及びマウスを用いた経口投与によるがん原性試験結果の概要(抄)

試験は、F344/DuCrj(Fischer)ラット(6週齢)及びCrj:BDF1マウス(6週齢)の、それぞれ雌雄各群50匹の4群、合わせてラット400匹、マウス400匹を用いた。

酢酸ビニルをラット、マウスともに、10,000ppm、2,000ppm、400ppm、0ppm(対照群)の濃度に希釈調製した飲水を、104週間(2年間)自由摂取で投与した。

その結果、F344/DuCrj(Fischer)ラットでは、雄に口腔の扁平上皮癌と扁平上皮乳頭腫、雌に口腔と食道の扁平上皮癌の発生が認められ、酢酸ビニルのがん原性が証明された。

また、Crj:BDF1マウスでは、雌雄の口腔と前胃に扁平上皮癌と扁平上皮乳頭腫、食道と喉頭に扁平上皮癌、雌の食道に扁平上皮乳頭腫が認められ、酢酸ビニルのがん原性が証明された。

表1 腫瘍の発生数(ラット)

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濃度           対照群  400ppm  2000ppm  10000ppm

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雄(検査動物数)     (50)  (50)  (50)  (50)

口腔 扁平上皮癌     0    0    0    5

口腔 扁平上皮乳頭腫   0    0    0    2

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

雌(検査動物数)     (50)  (50)  (50)  (50)

口腔 扁平上皮癌     0    1    1    3

食道 扁平上皮癌     0    0    0    1

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表2 腫瘍の発生数(マウス)

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濃度           対照群  400ppm  2000ppm  10000ppm

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雄(検査動物数)     (50)  (50)  (50)  (50)

口腔 扁平上皮癌     0    0    0    13

口腔 扁平上皮乳頭腫   0    0    0    4

食道 扁平上皮癌     0    0    0    7

前胃 扁平上皮癌     1    0    0    7

前胃 扁平上皮乳頭腫   0    0    0    2

喉頭 扁平上皮癌     0    0    0    2

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雌(検査動物数)     (50)  (50)  (50)  (49)

口腔 扁平上皮癌     0    0    0    15

口腔 扁平上皮乳頭腫   0    0    0    3

食道 扁平上皮癌     0    0    0    1

食道 扁平上皮乳頭腫   0    0    1    0

前胃 扁平上皮癌     0    0    0    3

前胃 扁平上皮乳頭腫   0    0    0    1

喉頭 扁平上皮癌     0    0    1    1

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