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○と畜場及び食肉処理場の衛生管理について(抄)
(平成八年七月二六日)
(衛乳第一八二号)
(各都道府県知事・各政令市長・各特別区長あて厚生省生活衛生局長通知)
病原性大腸菌O―一五七による食中毒事件は、本年五月に岡山県で発生して以来、全国に広がり、既に患者数は八〇〇〇人以上、死者数は七名にのぼっている。
このような状況のなかで、病原性大腸菌O―一五七による食中毒の発生を予防し、これ以上の拡大を防止するためには、食品の処理、加工、製造、流通、販売の各過程及び消費の段階における衛生管理のより一層の徹底が必要不可欠である。
このため、種々対策を講じているところでありますが、今般、総合的な衛生対策の一環として、左記によりと畜場及び食肉処理場における衛生管理の徹底を緊急に図ることとしたので、関係事業者に対する指導方について、よろしくお取り計らい願いたい。
なお、施設構造等の管理については、平成六年六月衛乳第九七号「と畜場の施設及び設備に関するガイドラインについて」に基づき、実施方指導されたい。
また、輸入牛肉についても、同様に自主検査の実施について指導していることを御了知願いたい。
記
一 と畜場及び食肉処理場の施設・設備及び処理工程の通常の衛生管理に加え、別添一の衛生管理に関する重要事項について確実に実施するよう、事業者に対し、指導すること。
また、その実施状況について、別添二の衛生管理点検表により、事業者自ら点検し、その実施状況について、食肉衛生検査所又は保健所に提出させ、当該内容の適否を判断し、問題がある場合は改善等指導すること。
二 また、と畜場及び食肉処理場で処理される食肉等については、別添三により、自主検査を指導するとともに、検査結果については、検査結果が判明次第、食肉衛生検査所等に提出させ、検出された場合にあっては、その写しを生活衛生局乳肉衛生課に送付すること。
なお、検査結果については、各都道府県等において取りまとめ、と畜場については週報として、食肉処理場については検査結果が判明次第、報告すること。
(別添一)
一 と蓄場における牛等の衛生管理に関する重要事項
第一 作業に関する事項
一 清潔な生体の受け入れ
① 体表に糞便等が付着した生体は、と畜場に搬入する前にこれらを落としてから搬入するよう、関係業者を十分指導すること。
② 出荷時に下痢をしている動物は、と畜場に搬入しないよう関係営業者を十分指導すること。なお、やむを得ず受け入れた際は、病畜と室又は健康畜の作業が終了した後に処理すること。
③ と殺解体処理室に搬入する前に生体を十分洗浄すること。特に腹側面及び肛門周囲に留意すること。
二 外皮、腸管内容物からの枝肉の汚染防止
① 剥皮の際の第一刀目は、約三センチ切皮し、刀を消毒する。二刀目以降は、刃を手前に向け、内側から外側に切開し、獣毛、付着物が枝肉に接触しないように剥皮すること。
② 食道及び直腸を結紮すること。その際、食道は、放血直後に、直腸は、肛門周囲を切開直後腹腔に押し込む前に結紮し、胃腸内容物により枝肉を汚染しないようにすること。
三 と殺・解体に関わる従事者による衛生的処理
① 軍手は、使用しないこと。洗浄消毒ができるよう素手か又はゴム手袋を着用すること。
② 一頭毎に、手、刀、エアナイフ、ゴム手袋等は、洗浄すること。作業中に獣毛、腸管内容物等でこれらが汚染された場合には、直ちにこれらを洗浄・消毒すること。
③ と体は、相互に接触しないように間隔をもって移動すること。
四 枝肉の衛生的取り扱い
① 枝肉は、相互に接触しないように間隔をもって移動すること。
② 背割りした後の枝肉は、十分な水圧の飲用適の水をもって十分に洗浄すること。
③ 洗浄後の枝肉について獣毛、腸管内容物の付着がないか十分に検査し、付着が認められた場合には、付着物の周囲を含めてトリミングすること。
第二 その他の事項
一 前記の事項のチェックのため、食肉衛生管理者を配置すること。各セクションにおいても作業者の中から衛生責任者を選出し、衛生保持に努めること。
二 食肉衛生管理者は、上記の事項を留意の上、衛生管理についてのチェック表を作成し、定期的にチェックすること。また、衛生上の不備事項については、衛生責任者に指示するとともに改善計画書を作成し、改善の進捗状況の把握に努めること。
三 なお、作業工程上第一の事項に拠り難い場合は、と蓄検査員等の指導の下、適切な衛生処理が行われるよう措置すること。
(別添二)
一 と畜場における衛生管理に関する重要事項点検表
第一 作業に関する事項
一 清潔な生体の受け入れ
糞等の付着はないか
下痢はしていないか
二 外皮、腸管内容物からの枝肉の汚染防止
切皮の方法は適切か
刀の洗浄消毒は行われているか
食道結紮の方法は適切か
直腸結紮の方法は適切か
腸管内容物等による汚染はないか
三 と殺解体に関わる従事者による衛生的処理
軍手を使っていないか
手指、ゴム手袋の洗浄消毒は行われているか
と体は、相互に接触していないか
四 枝肉の衛生的取扱
枝肉は相互に接触していないか
枝肉の洗浄水の水圧は十分か
枝肉に獣毛、腸管内容物の付着はないか
トリミングを適切に行っているか
第二 その他の事項
一 食肉衛生管理者を設置しているか
衛生責任者を適正に配置しているか
衛生責任者による衛生保持が適切に行われているか
二 衛生管理のためのチェック表は整備されているか
改善計画書は整備されているか
チェック表及び改善計画書は適正に記入されているか
計画どおりに改善されているか
(別添三)
と畜場及び食肉処理業の許可を有する施設(食肉処理場)における腸管出血性大腸菌の自主検査について
一 自主検査対象品目
(一) と畜場 牛枝肉及び牛肝臓
(二) 食肉処理場 牛の部分肉又は細切肉
二 検査項目
腸管出血性大腸菌
三 検査頻度及び検体数
(一) と畜場
と畜場の設置者が、自主検査対象品目毎について、それぞれ五〇頭毎に一頭を検体とし、一週間に一度、検査を実施すること。
(二) 食肉処理場
食肉処理場の経営者が、自主検査対象品目一検体の検査を実施すること。
四 検査機関
(一) 地方衛生研究所、保健所又は食肉衛生検査所の地方自治体の検査機関
(二) 厚生大臣の指定検査機関
(三) その他の公的検査機関
五 検査期間
衛生管理が適切に実施されていると厚生省が判断するまでの期間
六 検査結果
検査の結果、腸管出血性大腸菌が検出された場合は、食肉衛生検査所等の指導を受け処理工程を点検し、改善を図ったうえで、再度、枝肉等について腸管出血性大腸菌の検査を実施し、検出されないことを確認すること。
なお、検査を行った枝肉等は、検査結果がでるまで販売しないこと。
七 検査方法
検査法については、検査対象食品表面のふきとりにより、可能な限り平成八年七月一八日付衛食第一九五号、衛乳第一七四号「病原性大腸菌O―一五七に係る食品等の汚染実態調査の実施について」の別添(二)及び(三)に基づき実施すること。