添付一覧
○液卵の製造等に係る衛生確保について
(平成五年八月二七日)
(衛食第一一六号・衛乳第一九〇号)
(厚生省生活衛生局食品保健課長・生活衛生局乳肉衛生課長から各都道府県各政令市・各特別区衛生主幹部(局)長あて通知)
卵及びその加工品の衛生対策については、平成三年一一月より「動物性食品に関する病原微生物汚染防止対策検討会」において、検討が進められてきたところであり、また、平成四年七月八日付け衛乳第一二八号をもってご尽力を願っているところであります。
今般、同検討会の報告をもとに、別添のとおり「液卵製造施設等の衛生指導要領」を作成したので、貴管下液卵製造施設、液卵使用者等の関係者に対し、指導方よろしくお願いします。
液卵製造施設等の衛生指導要領
第一 目的
本要領は、液卵に係る衛生上の危害の発生を防止するため、サルモネラの制御を中心に、その原料の受入れから、製造、販売、液卵を用いた調理等の各過程全般における取扱い等の指針を示し、液卵に関する衛生の確保及び向上を図ることを目的とする。
第二 用語の定義
本要領において使用する用語の定義は、次のとおりとする。
一 液卵
卵を割って、卵殻を取り除いただけのもの、卵黄又は卵白を分離して取り出したもの、卵黄及び卵白を混合したもの、並びにこれらに加塩又は加糖したものをいう。
二 正常卵
肉眼で卵殻にヒビ様のものが見えず、かつ、糞便、血液、卵内容物、羽毛等により汚染されていない卵をいう。
三 破卵
肉眼で卵殻にヒビ様のものが見える卵をいう。
四 汚卵
糞便、血液、卵内容物、羽毛等により汚染されている卵をいう。
五 軟卵
卵殻膜は健全であるが、卵殻が欠損しているか、又は希薄である卵をいう。
六 食用不適卵
腐敗卵、カビ卵、異物混入卵、血玉卵、重度破卵(卵殻膜が破れ、液漏れをしている卵をいう。)、みだれ卵(卵黄が潰れた卵をいう。ただし、物理的な理由で卵黄が潰れたものを除く。)及び孵化中止卵をいう。
七 凍結液卵
液卵を凍結したものをいう。
第三 原料卵
一 原料卵の受入れ
(一) 原料卵は、食用不適卵を含まない新鮮なものであること。
(二) 原料卵は、正常卵、破卵、汚卵及び軟卵に選別されていること。
(三) 原料卵の受入れにあたっては、次に掲げる事項を記録し、六カ月間保存すること。
① 搬入年月日
② 納入業者名
③ 搬入量(個数又は重量)
④ 集卵日(鶏卵選別・包装施設から搬入される場合は、当該施設で処理を行った日でも可)
二 原料卵運搬用器具
(一) 原料卵の運搬には、洗浄し、消毒し、乾燥させた清潔な原料卵運搬用器具を使用すること。
(二) 洗浄し、消毒した原料卵運搬用器具は、再汚染を防止するため、未洗浄のものと区別して保管すること。
三 原料卵の保存
原料卵を保存する場合は、次の点に留意すること。
(一) 保管場は、直射日光を避けた清潔な冷暗所で、ネズミ、昆虫等の侵入を防止できる構造であること。
(二) 原料卵保管庫及び冷蔵庫は、清潔な場所に位置し、他の設備と区画して設置されていること。
(三) 原料卵は、搬入年月日、納入業者等により区別し、整理して保存すること。
(四) 破卵、汚卵及び軟卵は、搬入後二四時間以内に割卵するか、又は八℃以下で保存し、七二時間以内に割卵して、加熱殺菌すること。
(五) 正常卵を長時間保存する場合は、八℃以下で保存し、できるだけ速やかに割卵すること。
(六) 原料卵は、先入れ先出しにして処理すること。
第四 製造
一 洗卵工程
(一) 汚卵は、必ず洗浄すること。
(二) 原料卵を洗浄する場合は、次の点に留意すること。
① 洗卵工程は、清潔であること。また、洗卵は、割卵直前に行うこと。
② 洗卵は、飲用適の流水で行うことを原則とするが、やむを得ず、水を循環使用する場合は、洗浄水の透視度を一〇(cm)以上に保つとともに、四時間ごとにすべて新しい水と交換すること。
なお、透視度の測定法は、別紙一の一の測定法によること。
③ 洗浄水の温度は、三〇℃以上かつ原料卵の温度より五℃以上(八℃以下で保存された原料卵については、原料卵の温度より五℃以上)高くすること。
④ 汚卵は、専用の洗卵機で洗浄するか、又はブラシを用いて手作業で洗浄した後、一五〇ppm以上の次亜塩素酸ナトリウム溶液に浸すか、又は当該溶液を噴霧して乾燥させること。ただし、ブラシを用いて手作業で洗浄する場合は、汚卵の洗浄は、正常卵の洗浄が終了した後に行うこと。
⑤ 洗卵後のすすぎを行う場合は、一五〇ppm以上の次亜塩素酸ナトリウム溶液を用いること。また、すすぎを行った原料卵は、乾燥させた後割卵すること。
⑥ 原料卵は、丁寧に取扱うこと。また、作業中に破卵、汚卵及び食用不適卵を発見した場合は、それぞれの区分に選別すること。
⑦ 洗卵槽内壁及びブラシは、洗卵作業終了後洗浄し、消毒し、乾燥させること。
二 割卵及びろ過工程
(一) 割卵から充てんまでの工程は、一貫して行うこと。
(二) 作業にあたっては、液卵の汚染を防止するため、原料卵及び液卵の取扱いに十分注意すること。
(三) 割卵及びろ過を行う施設は、清潔な場所に位置し、他の施設と区画された専用のものであること。
(四) 割卵及びろ過に用いる設備は、作業の前後及び作業中に定期的に清掃し、消毒すること。
(五) 割卵は、洗浄し、消毒し、乾燥させた清潔な容器及び器具類を用いて行うこと。
(六) 従事者は、作業中は、清潔な外衣及び帽子を着用し、作業前に十分手指の洗浄及び消毒を行うこと。
(七) 割卵は、液卵に殻が混入しないよう注意しながら、機械又は手で行うこと。ただし、破卵及び軟卵は、手割りすること。
(八) 機械割りする場合は、以下のことを遵守すること。
① 割卵は、正常卵、汚卵の順に行うこと。
② 誤って食用不適卵を割卵した場合は、直ちに、当該卵を除去するとともに、割卵カップ及びナイフを洗浄し、消毒し、乾燥させること。
③ 割卵専用の機械を用い、洗濯機、脱水機又は圧砕機を使用しないこと。
(九) 手割りする場合は、以下のことを遵守すること。
① 原則として、原料卵を1個ずつ小型容器の中に割り、異常の無いことを確認した後、大型の容器に移すこと。
② 誤って食用不適卵を割卵した場合は、当該卵を除去するとともに、小型容器を洗浄し、消毒し、乾燥させること。
(一○) 液卵は、速やかに八℃以下に冷却すること。
(一一) 液卵は、集合タンク、ろ過機(ストレーナー)等の設備においては滞ることなく一貫して処理すること。
(一二) ろ過機の網は、適正な網目のものを用い、作業の前後及び作業中に定期的に取り外して、洗浄し、熱湯等により消毒し、乾燥させること。また、ろ過機の残渣は廃棄すること。
三 殺菌前液卵の貯蔵
(一) ろ過した卵液は、速やかに冷却装置のある貯蔵タンクへ移すこと。
(二) 殺菌前の液卵を二時間以上貯蔵する場合は、その貯蔵温度及び貯蔵時間は、別紙二の基準を遵守すること。
(三) 貯蔵タンク内における液卵のpHは、左記の範囲内であること。
全卵:七・〇~八・〇
卵黄:六・〇~七・〇
卵白:八・三~九・八
四 殺菌、冷却及び充てん
(一) 液卵は、原則として、次の条件又はこれと同等以上の効力を有する方法により加熱殺菌すること。
① 液卵(加糖又は加塩したものを除く。)
ア 連続式により加熱殺菌する場合
全卵:六〇℃、三・五分間
卵黄:六〇℃、三・五分間
卵白:五五~五六℃、三・五分間
イ バッチ式により加熱殺菌する場合
全卵:五八℃、一〇分間
卵黄:五八℃、一〇分間
卵白:五四℃、一〇分間
② 加糖又は加塩した液卵
連続式により加熱殺菌すること
一〇%加塩卵黄:六三・五℃、三・五分間
一〇%加糖卵黄:六三・〇℃、三・五分間
二〇%加糖卵黄:六五・〇℃、三・五分間
三〇%加糖卵黄:六八・〇℃、三・五分間
二〇%加糖全卵:六四・〇℃、三・五分間
(二) 液卵は、加熱殺菌後直ちに八℃以下に冷却すること。
(三) 冷却後液卵を容器包装に充てんする場合は、微生物汚染が起こらない方法により、殺菌済の容器包装に充てんし、直ちに密封すること。
(四) 加熱殺菌後の液卵は、次の微生物基準に適合することを目標とすること。
なお、この場合の試験法は、別紙一の二の試験法によること。
n c m M
細菌数(生菌数) 5 2 10^4 10^5
大腸菌群 5 1 10^1 10^2
(注 n=検体(製品)数 c=合格判定個数 m=合格判定値(菌数限度)
M=条件付き合格と判定する基準となる微生物の菌数限度)
五 無殺菌液卵について
液卵は、加熱殺菌することを原則とするが、やむを得ず、液卵を殺菌しない場合は、次の点に留意すること。
(一) 原料卵は、新鮮な正常卵であること。
(二) 割卵から充てんまでの工程は、専用の設備を用いるか、又は加熱殺菌する液卵の製造前に行うこと。
(三) 割卵から充てんまでの工程に用いる設備は、作業の前後及び一ロットの原料卵を処理するごと、又は二時間ごとに清掃し、消毒すること。
(四) 割卵から充てんまでの工程は、他から微生物に汚染されないように注意して行うこと。
(五) 割卵から充てんまでの工程で、液卵の温度が上昇しないよう適切に温度管理を行うこと。
(六) 液卵は、割卵後直ちに八℃以下に冷却すること。
(七) 冷却後液卵を容器包装に充てんする場合は、微生物汚染が起こらない方法により、殺菌済の容器包装に充てんし、直ちに密封すること。
(八) 液卵の一日の製造量は、あらかじめ工場に登録された特定の使用者から注文があった数量のみとすること。
(九) 無殺菌液卵は、次の微生物基準に適合することを目標とすること。
なお、この場合の試験法は、別紙一の二の試験法によるこ と。
n c m M
細菌数(生菌数) 5 3 10^4 10^5
大腸菌群 5 2 10^1 10^2
(注 n=検体(製品)数 c=合格判定個数 m=合格判定値(菌数限度)
M=条件付き合格と判定する基準となる微生物の菌数限度)
第五 製品
一 保存
(一) 製品を保存する冷蔵庫又は冷凍庫は、常に清潔にし、庫内を整理、整頓しておくこと。また、庫内全体が均一に冷却される構造であること。
(二) 液卵は、八℃以下で保存すること。
(三) 凍結液卵は、-一八℃以下で保存すること。
(四) 製品の搬出は、先入れ先出しを遵守して迅速に行い、輸送中は、製品の温度を八℃以下(凍結液卵にあっては-一八℃以下)に保つこと。
(五) 製品の輸送は、洗浄し、消毒し、乾燥させた器具及び容器包装を用いること。
(六) 製品の輸送にタンクローリーを用いる場合にあっては、当該タンクローリーは、洗浄の容易なステンレス製のタンク及び定置洗浄装置を備えたものであること。
二 表示
(一) 液卵は、次の事項を表示すること。
① 名称
② 製造所所在地(住居表示に関する法律に基づく住居表示に従って、住居番号まで記載すること。)
③ 製造者の氏名(法人の場合は、法人名を記載すること。)
④ 原材料名 (主要原材料名を記載すること。)
⑤ 食品添加物 (使用した場合は、記載すること。)
⑥ 保存の方法 (例‥八℃以下で保存すること。)
⑦ 消費期限又は品質保持期限(以下「期限表示」という。)である旨の文字を冠したその年月日
⑧ 殺菌方法 (例‥六八℃で三・五分間。ただし、無殺菌液卵にあっては、無殺菌である旨を記載すること。)
⑨ 使用方法 (無殺菌液卵の場合は、記載すること。例‥製造又は調理しようとする食品の中心部を六八℃で三・五分間以上加熱殺菌すること。)
ただし、②製造所所在地及び③製造者の氏名の表示については、食品衛生法施行規則第五条第四項に準ずることができる。
(二) (一)の⑦の液卵の期限表示は、保存試験等科学的データに基づき設定し、当該期限表示を記載すること。
第六 液卵使用上の注意
液卵を使用して食品の製造、調理等を行う場合は、無殺菌液卵の加熱殺菌、液卵の取扱いに係る二次汚染防止及び従業員の健康管理の徹底を図るため、管理運営基準及び各衛生規範を遵守するとともに、特に下記の事項に留意すること。
一 食品等の取扱い
(一) 液卵及び凍結液卵を仕入れるにあたっては、衛生上の観点から品質、鮮度、表示等について検収し、殺菌又は未殺菌の別、納入業者、製造者、搬入日時、搬入数量等を点検状況とともに記録すること。
(二) 液卵は、八℃以下(凍結液卵においては、-一八℃以下)で保存すること。
(三) 凍結液卵の解凍は、飲用適の流水中で行うか、又は一〇℃以下の低温の室内で行うこと。ただし、一〇%以上加塩した凍結液卵及び五〇%以上加糖した凍結液卵については、この限りでない。また、使用量に応じた必要量のみを解凍し、解凍後は、速やかに製造に用いること。
(四) 液卵を原材料として食品を製造する場合は、十分な加熱を行うことを原則とするが、製品の特性により、製造又は調理の過程で加熱を行わない場合にあっては、加熱殺菌済の液卵を用いること。
(五) 卵焼き等の加熱調理を行った卵加工製品については、次の微生物基準に適合すること。
なお、E.coliについては、冷凍食品の規格基準に定められた方法により試験を行うこと。
細菌数(生菌数) 検体1gあたり105以下
E.coli 陰性
サルモネラ 陰性
(六) 液卵及び凍結液卵を原材料として製造した製品は、製造ロットごとに製品一個を検食として、予想される販売期間等を考慮し、一〇℃以下で保存すること。
二 営業者の留意事項
(一) 従事者にサルモネラ保菌者が発見された場合は、保菌していないことが判明するまで食品の取扱い作業に従事させないこと。
(二) 営業者は、製造し、又は加工した製品について定期的にサルモネラ等の衛生検査を行ない、その記録を保存しておくこと。
(別紙一)
一 洗卵における洗浄水の透視度測定法
(一) 検体採取法
排水口付近又は水槽の中心部付近より洗浄水を採取する。
(二) 器具(透視度計)
外径三・三~三・五cm、高さ五二cmの無色透明な平底ガラス円筒であって、低部から〇・五cmごとに目盛りがあり、下部に流出口を有するものである(市販の透視度計がある)。これは低部を透視度〇とし、低部から各一cmを透視度一としたものであり、かつ観測用標識として、白板上に幅〇・五cmの黒線二本を、一cmの間隔で描き、これと十字をなすように同様の黒線を二本描いたものをガラス円筒の低部に置いたものである。
(三) 測定法
試料を透視度計に満たし、照度約一、〇〇〇ルックスの明るさの場所において、上方から管口に眼を接して低部の標識を観察する。液面の動揺を避けながら、流出口から試料を流し出し、標識の合い接する二本の黒線の間隔を認識し得たとき、その水位の高さ(cm)をもって透視度とする。
二 液卵の微生物基準における試験法
(一) 検体採取法及び試料調整法
一ロットにつき五検体(一検体一〇〇g以上採取)を採取し、それぞれよく撹拌する。次に検体二五gずつをストマッカー袋に入れEEM培地(組成は、平成五年三月一七日付け衛乳第五四号を参照)二二五mlをそれぞれ加えてストマッカーで三〇秒間処理したものを試料原液とする。
(二) 細菌数(生菌数)の測定法
氷雪の規格基準に定められた測定法により行うこと。
(三) 大腸菌群数の測定法
試料原液及び一〇倍段階希釈液をデソキシコーレート培地で混釈培養(三五℃で二〇時間)する。培養後一cm2又は一mlあたりの菌数を算出する。
なお、スパイラル法による測定も可能であるが、菌数が少ない場合には、混釈法を併用すること。
(別紙2)
殺菌前の液卵を2時間以上貯蔵する場合に遵守すべき保存温度
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│ 殺菌前の液卵を割卵後2時間以内に冷やすべき温度
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│8時間未満貯│8時間以上貯│30時間未満貯│30時間以上貯
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│蔵する場合 │蔵する場合 │蔵する場合 │蔵する場合
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卵白(無脱糖用)│ 12.8℃以下│ 7.2 ℃以下│ │
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卵白(脱糖用) │ 21.1℃以下│ 12.8℃以下│ │
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その他の液卵 │ 7.2℃以下│ 4.4℃以下│ │
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(10%以上加塩し│ │ │ │
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た液卵を除く) │ │ │ │
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10%以上加塩した│ │ │ 18.3℃以下│ 7.2℃以下
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液卵 │ │ │ │
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