添付一覧
○組換えDNA技術応用食品・食品添加物の製造指針及び組換えDNA技術応用食品・食品添加物の安全性評価指針について
(平成三年一二月二六日)
(衛食第一五三号)
(各都道府県知事・各政令市市長・各特別区区長あて厚生省生活衛生局長通知)
近年、新技術としてのいわゆるバイオテクノロジーの実用化が進んでいる。食品分野においてもバイオテクノロジーの応用により食品の高品質化、生産性の向上などが期待され、既にその利用は、世界的に実用化の段階に入りつつある。
バイオテクノロジーは、従来、食品、食品添加物の製造に応用された経験が少ないものであり、この技術を用いて製造される食品、食品添加物については、その安全性について十分配慮がされなければならない。
そのため、今般別添の「組換えDNA技術応用食品・食品添加物の製造指針」(以下「製造指針」という。)及び「組換えDNA技術応用食品・食品添加物の安全性評価指針」(以下「安全性評価指針」という。)を作成し、左記のとおり取り扱うこととしたので、貴管下関係業者に対し周知徹底方よろしく御指導願いたい。
なお、本通知における用語については、製造指針及び安全性評価指針に定めるところによる。
おって、輸入業者に対する指導については、別添写しのとおり、各検疫所長あて通知し、また、本指針の周知方につき業界団体に対して依頼したところであるので申し添える。
記
第一 運用
製造指針及び安全性評価指針については、組換えDNA技術の急速な発展に対応するため、平成四年四月一日から、当分の間、ガイドラインとして運用すること。
第二 食品・食品添加物の製造業者が確認申請を行う場合の手続き等
一 報告及び申請の手続き
(一) 食品、食品添加物の製造工程において組換えDNA技術を利用する者(以下「製造業者」という。)は、製造しようとする組換えDNA技術応用食品、食品添加物について、アからウにより、製造所ごとに、製造所の所在地を管轄する都道府県知事、政令市市長又は特別区区長(以下「都道府県知事等」という。)を経由して厚生大臣あて報告又は申請すること。
また、製造業者は、製造指針に基づく確認の申請と安全性評価指針に基づく確認の申請を行う場合、特段の事情のある場合を除き、同時に申請すること。
なお、製造業者は、都道府県、政令市又は特別区(以下「都道府県等」という。)保存用と厚生省進達用に、報告書類又は申請書類を各二部(ただし、保健所が報告又は申請窓口となる場合は各三部)提出すること。
おって、申請された食品、食品添加物については、食品衛生調査会に諮問されることとなるが、食品衛生調査会において確認に必要な資料の追加を求めることがある。その場合は、当該業者に通知するので、通知を受けた当該業者は、必要な資料を提出すること。
ア 製造指針第四章第一(四)に規定する報告は、別紙様式一により行うものとすること。
イ 製造指針第五章に規定する確認の申請を行う場合は、別紙様式二により行うものとすること。
ウ 安全性評価指針第四章に規定する確認の申請を行う場合は、別紙様式三により行うものとすること。この場合、当該申請に必要な資料の範囲は安全性評価指針第二章及び第三章第一によるものとすること。このため、都道府県等は、当該申請を受け付けるに当たり、安全性評価指針第二章及び第三章第一に規定されている資料が添付されていることを確認されたいこと。
(二) 挿入DNAの供与体である生物が宿主として用いられる生物と分類学上同一の種に属する場合又は組換え体と同等の遺伝子構成をもつ生細胞が自然界に存在する場合については、製造指針及び安全性評価指針の対象としないが、当面、製造指針第四章第一(四)に規定する報告又は製造指針第五章若しくは安全性評価指針第四章に規定する確認の申請を行っても差し支えないこと。
二 進達の手続き
製造業者から製造指針に規定する報告若しくは確認の申請又は安全性評価指針に規定する確認の申請を受けた都道府県知事等は、各都道府県等の衛生主管部局長の名をもって進達されたいこと。その場合において、乳肉その他の動物性食品にあっては乳肉衛生課、食品添加物にあっては食品化学課、体調調節機能を有する食品にあっては新開発食品保健対策室、その他一般食品にあっては食品保健課あて進達されたいこと。特に、製造指針に基づく確認の申請については、その内容を十分審査し、必要に応じて現地調査を実施し、副申を添えられたいこと(別紙様式四参照)。
三 製造実施状況報告等
(一) 製造業者は、組換え体に係る製造実施状況を、製造所ごとに、製造開始時及び終了時並びに毎年度末に、別紙様式五により、都道府県等を経由して、厚生大臣あて報告すること。
(二) 製造業者は、次に掲げる事項に変更のあるときは、別紙様式六により、速やかに変更届を都道府県等を経由して、厚生大臣あて報告すること。
ア 製造業者の所在地及び名称並びに代表者の職名及び氏名
イ 製造所の所在地及び名称
ウ 製造管理者の職名及び氏名
四 確認後の取扱い
(一) 製造指針第五章に規定する確認を受けた製造業者は、製造指針に係る施設、設備又は装置の軽微な変更を行う場合には、あらかじめ変更届を都道府県知事等を経由して厚生大臣あて提出すること。
(二) 次の場合は製造指針第五章又は安全性評価指針第四章に規定する確認は失効するものであること。
ア 確認を受けた者が死亡したとき又は法人の場合は解散したとき。
イ 製造方法等の変更((一)に規定する場合を除く。)が行われたとき。
五 その他
(一) 都道府県知事等は、製造指針第五章又は安全性評価指針第四章に規定する確認を受けた製造業者に対し、当該確認を受けた内容どおりに製造等が行われるよう指導されたいこと。
(二) 製造指針第五章に規定する確認の申請について、次に定める指針と同時に適合確認を求める場合又は過去にこれらの指針の適合確認を受けた計画について厚生大臣に対しても確認を申請する場合にあっては、これらの指針に基づく様式を用いても差し支えないこと。ただし、不足している内容については書類の追加を行うこととすること。
ア 厚生省「組換えDNA技術応用医薬品等の製造のための指針」(昭和六一年厚生省薬務局長通知 薬発第一、〇五一号)
イ 農林水産省「農林水産分野等における組換え体の利用のための指針」(平成元年農林水産省事務次官通達 農会第七四七号)
ウ 通商産業省「組換えDNA技術工業化指針」(昭和六一年通商産業省告示第二二三号、改正平成七年通商産業省告示第四九八号)
第三 食品・食品添加物の開発者等が安全性評価指針への適合性確認申請を行う場合の手続き等
製造業者以外の食品・食品添加物の開発者等が安全性評価指針第四章に規定する確認の申請を行おうとする場合は、別紙様式三により厚生大臣あて申請すること。この場合においては、乳肉その他の動物性食品にあっては乳肉衛生課、食品添加物にあっては食品化学課、体調調節機能を有する食品にあっては新開発食品保健対策室、その他一般食品にあっては食品保健課に、申請書を一部、当該申請に必要な資料(日本語又は英語)を一部及び要旨(日本語)を八部提出すること。なお、要旨の文章部分(図表等の説明文は含まない。)については磁気媒体(二DDフロッピィディスクをMS―DOSフォーマット(七二〇kB)したもの。)上のテキストファイルとして添付すること。
様式1
様式2
様式3
様式4
様式5
様式6
(別添)
組換えDNA技術応用食品・食品添加物の製造指針
第一章 総則
第一 目的
本指針は、組換えDNA技術を応用して、食品、食品添加物が製造される段階での必要な基本的要件を定め、もってその製造段階及び製品の衛生を確保することを目的とする。
第二 定義
一 組換えDNA技術
酵素などを用いた切断、再結合の操作によって、DNAをつなぎ合わせた組換えDNAを作製し、それを生細胞(宿主)に移入し、増殖させる技術
二 宿主
組換えDNA技術において、DNAが移入される生細胞
三 ベクター
目的とする遺伝子を宿主に移入し、増殖、発現させるための運搬体DNA
四 挿入DNA
ベクターに挿入される異種のDNA
五 組換え体
組換えDNAを含む宿主細胞
六 作業区域
組換え体を直接取り扱って製造作業を行う区域
七 マスターセルバンク
すべての製造用細胞シードの元になる種株であり、一般的には、研究段階で作成しクローン化した組換え体を培養、分注し、その遺伝的性質が一定の継代培養の範囲内で十分に安定であることを確認したものであって、安定性が確認された条件で保存しているもの
八 GILSP(優良工業製造規範:Good Industrial Large―Scale Practice)
別表一の性質基準を満たす組換え体等を安全に取り扱うことのできる作業レベル
九 カテゴリー一
別表二の「カテゴリー一」欄の性質基準を満たす組換え体を安全に取り扱うことのできる作業レベル
第三 適用範囲
本指針は、組換え体そのものを摂食することのない食品、食品添加物で、生産物が既存のものと同一又は同一とみなし得るものを組換えDNA技術を用いて製造する場合に適用する。
第四 組換え体の安全性評価
一 組換え体の安全性評価は、組換え体それ自身の評価に基づくことを基本とし、宿主、ベクター及び挿入DNAの性質の検討、組換え体と宿主との比較等により行う。
二 食品、食品添加物の製造においては、別表一のGILSPの性質基準を満たすことが確認できる宿主、ベクター、挿入DNA及び組換え体又は別表二のカテゴリー一の性質基準を満たすことが確認できる組換え体を使用することを原則とする。
第二章 施設、設備及び装置
組換えDNA技術を食品、食品添加物の製造に応用する場合は、使用される組換え体の安全性評価に従い、次に示す施設、設備及び装置のもとで行うものとする。
第一 GILSPの施設、設備及び装置
別表一のGILSPにおいて示される性質基準を満たす組換え体等によって食品、食品添加物を製造する作業は、食品、食品添加物の製造を行うために十分な施設、設備及び装置であって、かつ、次の条件を満たすGILSPの施設、設備及び装置において行うものとする。
一 作業区域を有すること。
二 作業区域は、他の区域と区分され、組換え体を利用して食品、食品添加物を製造するための培養・発酵装置を有すること。
三 組換え体の生物学的性状及び製品の管理規格を試験検査するための設備を有すること。
四 次に掲げる設備を有すること。
(一) 組換え体の保管設備
(二) 培地等を調製するための設備
(三) 製造又は試験検査に使用する器具機械、容器等を洗浄し滅菌することのできる設備
五 その他必要と認められる設備・装置を有すること。
第二 カテゴリー一の施設、設備及び装置
別表二のカテゴリー一において示される性質基準を満たす組換え体によって食品、食品添加物を製造する作業は、前記のGILSPの施設、設備及び装置の要件、かつ、別表三のカテゴリー一の要件を満たす施設、設備及び装置において行うものとする。
第三章 運営上の遵守事項
第一 設備、装置の管理
一 製造作業終了後、使用した設備、装置を十分に洗浄、消毒すること。
二 培養装置、除菌装置等は、設置直後及び定期的に、密閉度又は性能の検査を行うこと。
三 設備、装置の機能に係る部分の改造又は交換を行った場合は、その都度、当該設備、装置の密閉度又は性能の検査を行うこと。
四 除菌装置は、交換時、定期検査時及び製造内容の変更時に、あらかじめ有効性を確認した方法で滅菌すること。
五 別表二のカテゴリー一において示される性質基準を満たす組換え体による製造に係る設備、装置の管理に当たっては、別表三のカテゴリー一の管理の要件を満たすこと。
第二 汚染の防止
一 作業区域で作業を行うに当たっては、組換え体による汚染に注意を払うこと。
二 組換え体を含む培養液の大量流出事故に対する対策及び緊急時の作業手順を確立しておくこと。
三 カテゴリー一の作業区域における作業に当たっては、特に、次の点に注意を払うこと。
(一) 設備、装置からのエアロゾルの漏出を最小限にすること。
(二) 培養装置に組換え体を移植する場合及び培養装置から試料を採取する場合は、培養装置の外壁等の汚染を最小限にすること。
(三) 培養装置から組換え体を他の培養装置又は他の設備・装置に移す場合は、組換え体の漏出による汚染を最小限にすること。
(四) 廃液及び廃棄物の処理は、あらかじめ有効であることが確認されている手段により、不活性化してから行うこと。
第三 組換え体の取扱い
一 保管
(一) 組換え体を含む材料は、組換え体を含む旨を明示すること。
(二) 組換え体を保管中の保管設備には、組換え体の性質に応じて「GILSP組換え体保管中」、「カテゴリー一組換え体保管中」の表示を見やすいところに掲げること。
二 運搬
(一) 組換え体を含む材料を作業区域外へ運搬する場合には、十分な強度を有する容器に納め密閉する等により、内容物が漏出しないようにすること。
(二) 組換え体を含む材料を納めた箱には、その表面の見やすいところに「取扱い注意」の朱文字を明記すること。
三 生物学的性状の試験検査
(一) マスターセルバンクの作製時及び保存中に、次の試験検査を行い、その安定性を確認すること。
a 目的の機能の保持に関する項目
b 組換え体の保持しているベクター、挿入DNAの基本的構造の維持に関する項目
c その他組換え体の同定及び均一性に関する項目
(二) マスターセルバンクの保存中の試験検査により、製品の衛生に影響を与えるおそれのある変異が生じた場合には、直ちに製造を中止し、必要な措置を講ずること。
(三) その他必要な事項について行うこと。
第四 製品の取扱い
一 製品の安全性評価に基づき、製品の管理規格を設定すること。
二 定期的に製品の試験検査を行い、製品の管理規格に適合していることを確認すること。
三 製品の試験検査により、製品の管理規格に不適合であった場合には、直ちに製造を中止し、必要な措置を講ずること。
第四章 職員及び組織
第一 製造業者
食品、食品添加物の製造工程において組換えDNA技術を利用する者(以下「製造業者」という。)は、次の任務を果たすこと。
(一) 製造所ごとに製造管理者及び製造衛生責任者を任命すること。
(二) 製造上の衛生を確保するため製造安全委員会を設置し、その委員を任命すること。また、製造安全委員会に、製造業務の衛生確保について、調査審議を求めること。
(三) 製造従事者に対し、定期健康診断を行うとともに、食品、食品添加物を取り扱うのに不適当な者を製造作業に従事させないこと。
(四) 組換えDNA技術に関する情報を収集するとともに、当該組換え体の評価又は製品の安全性評価に影響を及ぼす知見を発見した場合には、速やかに厚生大臣に報告すること。
(五) 製造管理者が業務を遂行するに当たって支障を生じることがないよう配慮すること。
第二 製造管理者
製造管理者は、本指針を熟知し、次の任務を果たすこと。
(一) 製造計画を立案するとともに、その実施に際し、組換え体の取扱い等に関する製造作業マニュアル(以下「製造作業マニュアル」という。)を作成し、製造衛生責任者との緊密な連絡の下に、本指針等を十分に遵守し、製造作業全体の適切な管理・監督に当たること。
(二) 製造作業の開始前に製造従事者に対し、本指針等及び製造作業マニュアルを熟知させるとともに、次の事項に関する教育訓練を行うこと。
a 組換え体の安全性に関する知識
b 製造に用いる組換え体の安全な取扱いに関する技術
c 設備、装置に関する知識及び技術
d 製造過程の衛生に関する知識
e 事故発生時の措置に関する知識
(三) 次の事項を記録し、その記録は、当該食品、食品添加物の製造終了の日から五年間保存すること。
a 組換え体の名称及びその容器に付された番号
b 組換え体の保管及び継代の状況
c 組換え体の生物学的性状及びその試験検査の年月日
d 組換え体の譲受けの相手方の氏名及び住所
e 健康診断の結果
f 製造安全委員会の審議記録(製造作業マニュアルが本指針に適合していることを確認する根拠となった資料を含む。)
g 設備・装置の定期点検記録及び製造記録
h 製品の試験検査の記録
(四) 組換え体を含む保管物の明細目録を作成し、保存すること。
(五) 作業区域及び組換え体の保管設備の目につきやすい所に組換え体の取り扱いに関する必要な事項を掲示すること。
(六) 製造従事者以外の者の作業区域への立入りは、作業内容に応じ制限することとし、製造従事者以外の者が立ち入るときには、製造従事者の指示に従わせること。
(七) 製造安全委員会と十分連絡を取るとともに、必要な事項について製造安全委員会に報告すること。
(八) その他食品、食品添加物の製造段階及び製品の衛生の確保に必要な事項を実施すること。
第三 製造衛生責任者
一 製造衛生責任者は、組換えDNA技術に関し、製造管理者を補佐するものであり、製造段階及び製品の衛生の確保に必要な知識及び技術に高度に習熟した者であること。
二 製造衛生責任者は、本指針を熟知し、次の任務を果たすこと。
(一) 製造が本指針等に従って適正に遂行されていることを確認すること。
(二) 製造管理者に対し助言、報告を行うこと。
(三) その他食品、食品添加物の製造段階及び製品の衛生の確保に関し、必要な事項を実施すること。
第四 製造従事者
一 製造従事者は、製造管理者の行う教育訓練をあらかじめ受けた者であること。
二 製造従事者は、次の事項を遵守すること。
(一) 製造作業を行うに当たって製造段階及び製品の衛生の確保の必要性について十分に自覚し、製造作業マニュアルに従って作業すること。
(二) 作業区域内では、作業内容に応じた作業衣を着用すること。
(三) GILSP又はカテゴリー一の作業レベルで製造作業を行っている間は、それぞれの作業区域にその旨を表示すること。
第五 製造安全委員会
一 製造安全委員会は、高度に専門的な知識及び技術並びに広い視野に立った判断が要求されることを十分に考慮し、適切な分野の者により構成されること。
二 製造安全委員会は、製造業者の求めに応じて次の事項について調査審議し、製造業者に報告すること。
(一) 製造作業マニュアルの本指針に対する適合性
(二) 製造従事者に対する衛生教育訓練及び健康管理の状況
(三) 事故発生の際の必要な処置及び改善策
(四) その他食品、食品添加物の製造段階及び製品の衛生の確保に関し、必要な事項
三 製造安全委員会は、必要に応じて製造管理者又は製造衛生責任者から報告を求めることができること。
第五章 その他
製造業者は、組換えDNA技術を利用するに当たって、食品、食品添加物の製造段階及び製品の衛生の確保を期するため、組換え体の安全性評価、使用する施設、設備及び装置等が本指針に適合していることの確認を厚生大臣に求めることができる。
別表1
GILSPの製造に用い得る組換え体等の備えるべき性質基準
宿主 |
ベクター/挿入DNA |
組換え体 |
① 非病原性であること。 ② 病原性に関係のある外来因子(ウイルス等)により汚染されていないこと。 ③ 長期にわたり、工業的利用が安全になされているものであるか、又は工業的利用の場では最適の増殖が可能であるが、外界においては、限られた増殖能力しか示さず環境に悪い影響を及ぼさないもの。 |
① 性質が十分に明らかにされているものであること。また、既知の有害な塩基配列を含まないこと。 ② 意図した機能を果たすために挿入DNAの大きさを出来るだけ小さく制限すること。目的の機能に必要な場合を除き、組換え体の外界での安定性が増大するようなものであってはならないこと。 ③ 伝達性に乏しいものでなければならないこと。 ④ 本来耐性を獲得することが知られていない生細胞に耐性マーカーを伝達してはならないこと。 |
① 非病原性であること。 ② 工業的利用の場においては、宿主と同程度に安全であり、外界においては、限られた増殖能力しか示さず環境に悪い影響を及ぼさないもの。 |
別表2
カテゴリー1、2及び3の製造に用い得る組換え体の備えるべき性質基準
|
組換え体 |
カテゴリー1 |
非病原性であること。 ただし、GILSPに該当するものは、除く。 |
カテゴリー2 |
ヒトに感染性はあるが発症の可能性は少なく、予防対策及び有効な治療法があるもの。 |
カテゴリー3 |
ヒトに対し病原性があり、直接取扱う際にかなりの注意を必要とするが、感染・発症してもその危険度は、比較的低く、予防対策及び有効な治療法があるもの。 |
なお、カテゴリー2及び3の製造に用い得る組換え体の備えるべき性質基準については、参考として掲げたものである。
(注) 上記別表1及び別表2はOECD「工業、農業及び環境で組換え体を利用する際の安全性の考察に関する勧告」(1986年)を基礎とした。
別表3
施設、設備及び管理レベル
|
カテゴリー1 |
カテゴリー2 |
カテゴリー3 |
|
1 組換え体を取り扱う工程 |
閉鎖系 |
閉鎖系 |
閉鎖系 |
|
2 閉鎖系からの排気ガス |
組換え体の漏出を最小限に抑制 |
組換え体の漏出を防止 |
組換え体の漏出を防止 |
|
3 サンプリング、閉鎖系への物質の添加及び他の閉鎖系への組換え体の移動の場合 |
組換え体の漏出を最小限に抑制 |
組換え体の漏出を防止 |
組換え体の漏出を防止 |
|
4 培養液を閉鎖系から開放系に移す場合 |
あらかじめ有効であることが確認されている手段により、組換え体を不活性化してから行う。 |
あらかじめ有効であることが確認されている化学的又は物理的手段により、組換え体を不活性化してから行う。 |
あらかじめ有効であることが確認されている化学的又は物理的手段により、組換え体を不活性化してから行う。 |
|
5 閉鎖系の密閉のための設計 |
組換え体の漏出を最小限に抑制 |
組換え体の漏出を防止 |
組換え体の漏出を防止 |
|
6 閉鎖系を設置する作業区域の条件 |
|
|
|
|
|
a)バイオハザードの標識 |
場合による |
必要 |
必要 |
b)指定された製造従事者以外の立入り |
できる限り制限 |
制限 |
制限。製造従事者は、エアロックを経由して入ること。 |
|
c)製造従事者の着衣 |
専用の作業衣 |
専用の作業衣 |
専用の作業衣に完全に交換 |
|
d)製造従事者のための汚染除去設備及び洗浄設備 |
必要 |
必要 |
必要 |
|
e)製造従事者が作業区域から退出する際のシャワー設備 |
不要 |
場合による |
必要 |
|
f)洗浄設備及びシャワー室からの排水処理設備 |
不要 |
場合による |
必要 |
|
g)空気の汚染を最小限にするための換気設備 |
場合による |
場合による |
必要 |
|
h)作業区域が陰圧に保たれていること。 |
不要 |
場合による |
必要 |
|
i)作業区域において、流入・流出する空気が高性能除塵フィルターを通されていること。 |
不要 |
場合による |
必要 |
|
j)作業区域は、閉鎖系内のすべての内容物が漏出してもこれを外部に漏らさないように設計されていること。 |
不要 |
場合による |
必要 |
|
k)作業区域は、燻蒸消毒ができるように設計されていること。 |
不要 |
場合による |
必要 |
|
7 廃液及び廃棄物の処理 |
あらかじめ有効であることが確認されている手段により、不活性化してから行う。 |
あらかじめ有効であることが確認されている化学的又は物理的手段により、不活性化してから行う。 |
あらかじめ有効であることが確認されている化学的又は物理的手段により、不活性化してから行う。 |
|
なお、カテゴリー2及び3については、更に高度の封じ込めのための施設、設備及び管理レベルの基準の参考として掲げたものである。
(注) 上記別表1、別表2及び別表3は、OECD「工業、農業及び環境で組換え体を利用する際の安全性の考察に関する勧告」(1986年)を基礎とした。
(別添)
組換えDNA技術応用食品・食品添加物の安全性評価指針
〔目次〕
第一章 総則
第一 目的
第二 用語の定義
第三 適用範囲
第二章 製造過程に関する安全性評価
第一 組換え体等の製造方法(作成方法及び施設設備を含む)
第二 組換え体以外の製造原料及び製造器材
第三 生産物の精製
第三章 生産物に関する安全性評価
第一 組換え体を食さない場合の安全性評価
第二 組換え体を食する場合の安全性評価
第四章 厚生大臣の確認
(別表一)組換え体を食さない場合における組換え体等の安全性評価に必要な資料
(別表二)組換え体を食する場合における組換え体等の安全性評価に必要な資料
・付表一 抗生物質耐性マーカー遺伝子の安全性評価に必要な資料
・付表二 アレルギー誘発性に関する安全性評価に必要な資料
(別表三)
第一章 総則
第一 目的
本指針は、組換えDNA技術を応用して生産された食品・食品添加物の安全性評価に必要な基本的要件を定め、もってその安全性の確保を図ることを目的とする。
第二 用語の定義
本指針で用いられる用語を以下のように定義する。
一 組換えDNA技術
酵素等を用いた切断、再結合の操作によって、DNAをつなぎ合わせた組換えDNAを作製し、それを生細胞に移入し、増殖させる技術
二 宿主
組換えDNA技術において、DNAが移入される生細胞
三 ベクター
目的とする遺伝子を宿主に移入し、増殖、発現させるための運搬体DNA
四 挿入DNA(又は遺伝子)
ベクターに挿入される異種のDNA(又は遺伝子)
五 組換え体
組換えDNAを含む宿主細胞
六 遺伝子産物
挿入遺伝子に由来するすべての物質
七 生産物
組換えDNA技術を応用して生産されるすべての物質
第三 適用範囲
本指針は、既存のものと同等とみなし得る生産物を、食品・食品添加物として利用する場合に適用する。ただし、組換え体そのものを食する生産物にあっては、組換え体が種子植物の場合に適用することとし、生産物が既存のものと同等とみなし得るかについて、次の(一)~(四)の資料により判定を行う。
(一) 遺伝的素材に関する資料
(二) 広範囲なヒトの安全な食経験に関する資料
(三) 食品の構成成分等に関する資料
(四) 既存種と新品種の使用方法の相違に関する資料
第二章 製造過程に関する安全性評価
組換え体を食さない場合には、生産物の安全性確保のため、製造過程等における安全性の評価を、組換え体の製造方法(作成方法及び施設設備を含む)、製造原料及び製造器材等について行う。
第一 組換え体等の製造方法(作成方法及び施設設備を含む)
GILSP(good industrial large scale practice)又はカテゴリー一の製造に用い得る非病原性の組換え体を用いることを原則とする。具体的には別表一に規定する組換え体等の安全性評価項目に関する資料により安全性の評価を行う。
第二 組換え体以外の製造原料及び製造器材
次の(一)及び(二)の資料により安全性の評価を行う。
(一) 食品・食品添加物の製造原料又は製造器材としての使用実績に関する資料
(二) 食品・食品添加物の製造原料又は製造器材としての安全性に関する資料、又は別表三に規定する試験の成績
第三 生産物の精製
生産物の精製方法及びその効果により評価を行う。
第三章 生産物に関する安全性評価
生産物の安全性は、組換えDNA技術により生産物に付加されたすべての因子について評価を行う。
第一 組換え体を食さない場合の安全性評価
一 次の(一)~(四)の資料により安全性の評価を行う。
(一) 組換え体の混入を否定する資料
(二) 製造に由来する不純物の安全性に関する資料
(三) 生産物の精製について第二章の第三に関する資料
(四) 含有量の変動により有害性が示唆される常成分の変動に関する資料
二 一により安全性の知見が得られていない場合は、別表三に規定する試験の成績により安全性の評価を行う。
第二 組換え体を食する場合の安全性評価
一 別表二(付表一、二を含む)に規定する組換え体等の安全性評価項目に関する資料により安全性の評価を行う。
二 一により安全性の知見が得られていない場合は、別表三に規定する試験の成績により安全性の評価を行う。必要に応じ栄養試験を行うことがある。
第四章 厚生大臣の確認
組換えDNA技術応用食品・食品添加物を製造又は輸入しようとする者又は必要と認められる者は、その安全性の確保を期するため、当該生産物が本指針に適合していることの確認を厚生大臣に求めることができる。
(別表1)
組換え体を食さない場合における組換え体等の安全性評価に必要な資料
① 組換え体の利用目的及び利用方法
② 宿主
a 分類学上の位置付け(学名及び株名)に関する資料
b 病原性、有害生理活性物質の生産に関する資料(非病原性であること。)
c 寄生性・定着性に関する資料
d 外来因子(ウイルス等)に関する資料(病原性の外来因子に汚染されていないこと。)
e 自然環境を反映する実験条件下での生存・増殖能力に関する資料
f 有性又は無性生殖周期と交雑性に関する資料
g 食品に利用された歴史に関する資料
h 生存・増殖能力を制限する条件に関する資料
i 宿主の類縁株の病原性、有害生理活性物質の生産に関する資料
③ ベクター
a 名称
b 由来に関する資料
c 性質に関する資料
ア DNAの分子量
イ 制限酵素による切断地図
ウ 有害塩基配列等の有無(既知の有害塩基配列を含まないこと。)
d 薬剤耐性に関する資料
e 伝達性に関する資料
f 宿主依存性に関する資料
g 発現ベクターの作成方法に関する資料
h 発現ベクターの宿主への挿入方法・位置に関する資料
④ 挿入遺伝子関連
1) 供与体
a 名称、分類に関する資料
2) 挿入遺伝子
a 構造に関する資料
ア 有害塩基配列等の有無(既知の有害塩基配列を含まないこと。)
b 性質に関する資料
ア 挿入DNAの機能に関する資料
イ 制限酵素による切断地図
ウ 分子量
⑤ 組換え体
a 組換えDNA操作により新たに獲得された性質に関する資料(非病原性であること。)
b 外界における生存・増殖性に関する資料
c 組換え体の生存・増殖能力の制限に関する資料*1
d 組換え体の不活化法に関する資料
e 宿主との差異に関する資料*2
注
1 「組換えDNA実験指針」の表2又は表3に掲げられているものにあっては上記項目のうち既知のものは省略することができる。
2 GILSP又はカテゴリー1の製造に用い得る組換え体の備えるべき性質基準についてはOECD「工業、農業及び環境で組換え体を利用する際の安全性の考察に関する勧告」(1986年)を基礎とする。
*1:工業的利用の場においては、宿主と同程度に安全であり、外界においては限られた増殖能力しか示さず環境に悪い影響を及ぼさないこと。
*2:宿主との比較による組換え体の非病原性、有害生理活性物質の非生産に関する資料を添付すること。
(別表2)
組換え体を食する場合における組換え体等の安全性評価に必要な資料
① 組換え体の利用目的及び利用方法
② 宿主
a 分類学上の位置付け(学名、品種、系統名等)に関する資料
b 遺伝的先祖に関する資料
c 有害生理活性物質の生産に関する資料
d アレルギー誘発性に関する資料
e 寄生性・定着性に関する資料
f 外来因子(ウイルス等)に関する資料(病原性の外来因子に汚染されていないこと。)
g 自然環境を反映する実験条件下での生存・増殖能力に関する資料
h 有性生殖周期と交雑性に関する資料
i 食品に利用された歴史に関する資料
j 安全な摂取に関する資料
k 生存・増殖能力を制限する条件に関する資料
l 宿主の近縁種の有害生理活性物質の生産に関する資料
③ ベクター
a 名称
b 由来に関する資料
c 性質に関する資料
ア DNAの分子量
イ 制限酵素による切断地図
ウ 有害塩基配列等の有無(既知の有害塩基配列を含まないこと。)
d 薬剤耐性に関する資料
e 伝達性に関する資料
f 宿主依存性に関する資料
g 発現ベクターの作成方法に関する資料
h 発現ベクターの宿主への挿入方法・位置に関する資料
④ 挿入遺伝子関連
1) 供与体
a 名称、由来及び分類に関する資料
b 安全な摂取に関する資料
2) 挿入遺伝子
a 構造に関する資料
ア プロモーター
イ ターミネーター
ウ 有害塩基配列の有無(既知の有害塩基配列を含まないこと。)
b 性質に関する資料
ア 挿入DNAの機能に関する資料
イ 制限酵素による切断地図
ウ 分子量
c 純度に関する資料
d 安定性に関する資料*1
e コピー数に関する資料*1
f 発現部位、発現時期、発現量に関する資料*1
g 抗生物質耐性マーカーの安全性に関する資料*1*2
h 外来のオープンリーディングフレームの有無とその転写や発現の可能性に関する資料*1
⑤ 組換え体
a 組換えDNA操作により新たに獲得された性質に関する資料
b 遺伝子産物のアレルギー誘発性に関する資料*3
c 遺伝子産物の毒性影響に関する資料(アレルギー誘発性に関する資料を除く。)
d 遺伝子産物の代謝経路への影響に関する資料*4
e 宿主との差異に関する資料*5
f 外界における生存・増殖能力に関する資料
g 組換え体の生存・増殖能力の制限に関する資料
h 組換え体の不活化法に関する資料
i 諸外国における認可・食用等に関する資料
j 作出・育種・栽培方法に関する資料
k 種子の製法及び管理方法
*1:組換え体内における変化等に関する考察も行うこと。
*2:付表1に従い資料を準備すること。
*3:付表2に従い資料を準備すること。
*4:在来種中の基質と反応する可能性に関する資料を準備すること。
*5:栄養・抗栄養素に関する資料及び、含有量の変動により有害性が示唆される成分の変動に関する資料は必ず含むこと。
(別表2 付表1)
抗生物質耐性マーカー遺伝子の安全性評価に必要な資料
抗生物質耐性マーカー遺伝子に関する安全性は、次の(1)~(2)の資料により評価する。
(1) 遺伝子及び遺伝子産物の特性に関する資料
・構造及び機能
・耐性発現のメカニズムと使用方法、関連代謝産物
・同定及び定量方法
・調理又は加工による変化(熱や物理的圧力に対する安定性)
・消化管内環境における変化(酸や消化酵素に体する安定性)
(2) 遺伝子及び遺伝子産物の摂取に関する資料
・予想摂取量
・耐性の対象となる抗生物質の使用状況
・通常存在する抗生物質耐性菌との比較
・経口投与した抗生物質の不活化推定量とそれに伴って問題が生ずる可能性
(別表2 付表2)
アレルギー誘発性に関する安全性評価に必要な資料
アレルギー誘発性に関する安全性は、次の(1)~(6)の資料により評価する。
(1) 供与体の生物の食経験に関する資料
(2) 遺伝子産物がアレルゲンとして知られているかに関する資料
(3) 遺伝子産物の物理化学処理に対する感受性に関する資料*1
(4) 遺伝子産物の摂取量を有意に変えるかに関する資料
(5) 遺伝子産物と既知の食物アレルゲンとの構造相同性に関する資料
(6) 遺伝子産物が一日蛋白摂取量の有意な量を占めるかに関する資料
1 合理的な理由があれば、一部を省略することができる。
2 (1)~(6)により安全性が確認されない場合は、
・構造相同性が認められたアレルゲンに対する患者IgE抗体と遺伝子産物との結合能に関する資料*2
・主要アレルゲンに対する患者IgE抗体と遺伝子産物との結合能に関する資料*2*3を提出し、厚生省と協議を行う。
*1:人工胃液、人工腸液による処理および加熱処理に対する感受性を蛋白質電気泳動法及びウエスタンブロット法により調べる。
