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○魚介類中のビストリブチルスズオキシド(TBTO)について

(昭和六〇年四月二六日)

(衛乳第一八号)

(各都道府県・各政令市・各特別区食品衛生主管部(局)長あて厚生省生活衛生局乳肉衛生課長通知)

養殖漁業において使用される魚網防汚剤中のビストリブチルスズオキシド(TBTO)の養殖魚への移行残留がかねてより問題視されていたところであり、水産庁が行つた調査結果においても一部の魚体から低いレベルではあるがTBTOの残留していることが明らかにされたことから、厚生省は「食品中のビストリブチルスズオキシド(TBTO)の安全性評価検討委員会」を設置し、これらTBTOの残留している魚介類の食品としての安全性について検討を重ねてきたところ、今般当該委員会から別添1のとおり検討結果の報告があつたのでお知らせする。

なお、当該物質は、本来食品中に含まれるべき物質ではないため、水産庁に対し別添2のとおり残留防止対策を講ずるよう通知しているので、貴職におかれてもこれが趣旨を十分御理解のうえ、水産担当部局とも連携を密にし、TBTOの魚介類への残留防止に特段の御配慮をお願いする。

また、市場流通する魚介類を対象に検査を行うなど汚染実態の把握に努めるとともに、当該結果を速やかに当課あて御連絡願いたい。

この場合の検査法は別添3によられたい。

別添1 略

別添2

魚介類中のビストリブチルスズオキシド(TBTO)について

(昭和六○年四月二六日衛乳第一八号)

(水産庁研究部漁場保全課長あて厚生省生活衛生局乳肉衛生課長通知)

養殖漁業において使用される魚網防汚剤中のビストリブチルスズオキシド(TBTO)の養殖魚への移行残留がかねてより問題視されてきたことから「食品中のビストリブチルスズオキシド(TBTO)の安全性評価検討委員会」を設置し、これらTBTOの残留している魚介類の食品としての安全性について検討を重ねてきたところ、今般別添のとおり当該委員会から検討結果の報告があつた。(別添略)

同報告の内容からみて、現状において直ちに食品衛生上問題が生じるものとは考えられないものの、TBTOは本来食品中に含まれるべき物質ではないので、養殖漁業におけるTBTOの魚介類への残留防止及び環境中の汚染の拡大防止対策を早急に講ぜられるようお願いする。

別添3

食品中のTBTO(ビストリブチルスズオキシド)の試験法

本試験法は、TBTOをトリブチルスズクロリドとして分析し、その測定値をTBTOに換算する方法である。従つて検体中のTBTOを換算する際、既存のトリブチルスズ化合物もTBTOとして算出される。

なお、本法は食品に限らず、海水、底質、藻類の試料に対しても応用できる。

1 装置

電子捕獲型検出器付ガスクロマトグラフを用いる。

2 試薬・試液

次に示すもの以外は、食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)の第2添加物の部、E試薬、試液、定量分析用標準溶液、標準溶液、ロ紙、ガラスロ過器、フルイ及び付表の項に示すものを用いる。

純水(イオン交換樹脂を通して精製した水を純水とする。)

純水に1/5当量のn―ヘキサンを加え、十分に洗浄を繰り返す。このn―ヘキサン洗液は、ガスクロマトグラム上でn―ヘキサンのピーク以外のピークを示してはならない。

酢酸エチル

酢酸エチル300mlをすり合わせ減圧濃縮器を用いて5mlに減圧濃縮し、その5μlを5のaに準じて試験するとき、ガスクロマトグラム上の酢酸エチル以外のピークの高さは3×10-10g1)のトリブチルスズクロリドが示すピークの高さ以下でなければならない。

n―ヘキサン

n―ヘキサン300mlをすり合わせ減圧濃縮器を用いて5mlに減圧濃縮し、その5μlを5のaに準じて試験するとき、ガスクロマトグラム上のn―ヘキサン以外のピークの高さは3×10-10gのトリブチルスズクロリドが示すピークの高さ以下でなければならない。

メチルアルコール

メチルアルコール300mlを減圧下5mlに濃縮し、その5μlを5のaに準じて試験するとき、ガスクロマトグラム上のメチルアルコール以外のピークの高さは3×10-10gのトリブチルスズクロリドが示すピークの高さ以下でなければならない。

エチルアルコール

エチルアルコール300mlを減圧下5mlに濃縮し、その5μlを5のaに準じて試験するとき、ガスクロマトグラム上のエチルアルコール以外のピークの高さは3×10-10gのトリブチルスズクロリドが示すピークの高さ以下でなければならない。

エーテル

エーテル300mlを減圧下5mlに濃縮し、その5μlを5のaに準じて試験するとき、ガスクロマトグラム上のエーテル以外のピークの高さは3×10-10gのトリブチルスズクロリドが示すピークの高さ以下でなければならない。

塩酸―メチルアルコール混液(MeOH混液)

12規定塩酸5mlを9.7v/w%メチルアルコールで1,000mlに希釈する。

塩化トリブチルスズ標準液

塩化トリブチルスズ10mgを99v/w%エタノールで100mlに溶解する。

カラムクロマトグラフ用アルミナ(塩基性、活性度Ⅰ)2)

カラムクロマトグラフ用アルミナ(標準網フルイ177~250μ)3)に数倍量(v/w)の1規定水酸化ナトリウムを加え、20分間撹拌した後、純水で十分洗浄する。リトマスで中性になつたことを確認した後、180~200℃で2時間以上加熱乾燥後、デシケーターで放冷する。

3 標準品

塩化トリブチルスズ 本品は塩化トリブチルスズ98%以上を含む。

4 試験溶液の調整

a 抽出法

検体5gにMeOH混液50mlを加え、ホモジナイザーで微細均質にした後、遠心分離器にかけ3,000回転/分、5分間分離後、MeOH混液を分取する。この操作をさらに2回繰り返してMeOH液を合わせ、40℃で減圧下10~20mlに濃縮する。これを分液漏斗に移し、アルコール濃度が20v/w%以下になるように飽和塩化ナトリウム水溶液を100ml加えた後、n―ヘキサン30mlで2回抽出する。n―ヘキサン抽出液を0.06規定塩酸25mlを用いて2回洗浄後、無水硫酸ナトリウム10gで脱水し、トリブチルスズクロリド抽出液とする(系統図1)。

b 精製法

内径10mm、長さ50mmの吸着管に、あらかじめn―ヘキサンに懸濁させたカラムクロマトグラフ用アルミナ4gを充填し、カラムの上端に少量のn―ヘキサンが残る程度までn―ヘキサンを流出させる。このカラムに4のaで得たトリブチルスズクロリド抽出液を注入し、滴下速度5ml/mmでn―ヘキサンを流出する。次いでn―ヘキサン―ジエチルエーテル(1+1)50ml、酢酸エチル50mlを通し、これらの流出区分は廃棄する。さらにn―ヘキサン―エチルアルコール(4+1)50mlを通し、この流出区分を分液漏斗にとる。この分液漏斗にn―ヘキサン25mlを加える。さらに塩化ナトリウムで飽和した0.1規定塩酸20mlを加え振とうした後、水層を分離、廃棄する。次いで0.1規定水酸化ナトリウム20ml、0.1規定塩酸20mlを順次加えて振とう、分離操作(クリーンアップ)を行なつた後、n―ヘキサン層を減圧下濃縮後、容量をn―ヘキサンで5mlにし、これを試験溶液とする(系統図2)。

5 操作法

a 定性試験

次の操作条件で試験を行う。試験結果は標準品と一致しなければならない。

操作条件

カラム担体4) ケイソウ土(標準網フルイ177~250μ)を6規定塩酸で2時間還流して洗浄、次いで純水で流出液が中性となるまで洗浄した後乾燥、メチルシラザン処理(ヘキサメチレンジシラザン、トリメチルクロルシラン及びピリジン混液(3+1+5)に浸し、10分間水洗後乾燥する)を施す。

カラム充填剤5) カラム担体に対してサーモン―Hgを10%含ませる。

カラム管 内径3mm、長さ3.000mmのガラス管を用いる。

カラム温度 140℃

試験溶液注入口温度 200℃

検出器 電子捕獲型検出器;検出器温度200℃

キャリヤーガス 高純度窒素ガスを30ml/mm附近の流量で操作する。

b 定量試験

定性試験の操作条件から得られた試験結果をもととして、ピーク高法またはピーク面積法によつて定量を行う。

TBTOへの換算式

TBTO濃度=トリブチルスズクロリド濃度×0.92

6 操作上の注意

脂質を多量に含む検体は、4のbに示した試験溶液のクリーンアップを十分に行わなければならない。

注釈

1) 3×10-10g=0.3ng

0.3ngを検出限界とした。

2) クロマトグラフ用活性アルミナ

Merck社製又は相当品、塩基性、活性度Ⅰ

3) 標準網フルイ

177~250μ~50~80Mesh

4) カラム担体

Chromosorb W

5) カラム充填剤

系統図1 トリブチルスズクロリド抽出法

系統図2 トリブチルスズクロリド精製法