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○菓子の製造・取扱いに関する衛生上の指導について

(昭和五二年一一月一六日)

(環食第二四八号)

(各都道府県知事・各政令市市長・各特別区区長あて厚生省環境衛生局長通達)

油脂を含む食品については、油脂の変敗に伴う衛生上の危害発生が、従来から問題とされており、これに対する対策をかねてより検討してきたところであるが、今般、油脂で処理した菓子で油脂分を多く含む菓子について、左記のとおりその製造、取扱いに関する指導要領を定めたので御了知の上貴管下関係者に対し、指導方よろしくお願いする。

菓子指導要領

第一 目的

本要領は、菓子に含まれる油脂の変敗に伴う衛生上の危害の発生を防止し、もつて公衆衛生の向上及び増進に寄与することを目的とする。

第二 適用の範囲

本要領は、油脂で処理した菓子で油脂分を粗脂肪として一○%(重量%)以上含むもの(以下「油脂で処理した菓子」という。)並びにこれらに係る製造・販売施設及びこれらの営業者の指導について適用する。

この場合の油脂分の測定は、別紙一「含まれる油脂(エーテルエキス)の測定法」により行うものとする。

第三 指導の事項

一 製造施設

油脂で処理した菓子の製造のための設備及びその管理運営については、特に次の事項に留意して指導を行うこと。

(一) 機械及び器具(菓子を油脂で処理する際に使用するものに限る。以下本要領において同じ。)

ア 機械及び器具の油脂に直接接触する部分は、油脂の酸化促進に影響の少ない材質のものであること。

イ 機械及び器具は、油脂と空気の接触面積を少なくするような措置が施された構造のものであること。

ウ 機械及び器具は、付着物が除去できる等容易に洗浄できる構造のものであること。

エ 機械及び器具は、処理に用いる油脂の温度を適正に管理するための温度調節装置及び温度計が備えられているものであること。

(二) 機械及び器具の管理運営

ア 機械及び器具は、定期的に洗浄し、常に清潔で衛生的に保つこと。

イ 温度調節装置は、常に正常に作動するようにするため、点検管理を適宜行うこと。

二 製造管理

油脂で処理した菓子の製造に当たつては、次の事項に留意して製造するよう指導を行うこと。

(一) 原材料等の品質

ア 豆類等の原料は、品質が良好なものであること。

イ 製造に用いる油脂は、品質が良好であつて、かつ、当該菓子の製造及び販売の要件を考慮し、製品特性に応じたものを使用すること。

(二) 原材料等の管理

ア 原材料等は、直射日光及び高温多湿を避けて保管すること。

イ 豆類等油脂を含む原料は、可能な限り低温で保管すること。

ウ 製造に用いる油脂は、空気による影響が少なくなるような方法で保管すること。

エ 原材料等は、必要に応じ自主検査を行い、その衛生状況を常に把握しておくこと。

(三) 製造

ア 油脂による処理は、当該製品の特性に応じ、適正な温度及び時間をもつて行い、不必要な加熱を避けること。

イ 揚げ処理中の油脂は、浮遊物及び沈澱物を取り除くとともに、油脂の補充を適正に行うこと。

ウ 揚げ処理中の油脂は、粘度及びあわ立ち等の性状を目安に品質の劣化の程度を常に把握し、明らかに劣化が認められた場合にあつては、油脂の交換を行うこと。

エ 揚げ処理後の菓子は、速やかに放冷を行うこと。

ただし、当該菓子が短期間で販売消費されるものにあつては、この限りでない。

オ 揚げ処理に使用した油脂(再使用するものに限る。)は、速かにろ過する等浮遊物及び沈澱物を除去した後、冷却すること。

三 容器包装及び表示

油脂で処理した菓子の容器包装及び表示については、次の事項に留意して指導を行うこと。

ア 長期に流通する菓子にあつては、しや光性を有し、かつ、気体透過性の少ない容器包装を用い密封する等油脂の変敗を抑制するための措置が講ぜられたものであること。

イ 消費期限又は品質保持期限を表示すること。

ウ 直射日光及び高温多湿を避けて保存する等製品の取扱い上必要な事項の表示をすること。

四 製品の管理

油脂で処理した菓子の管理については、次の事項に留意して指導を行うこと。

ア 菓子は、直射日光及び高温多湿を避けて保存すること、その他必要な管理を行い、次の(a)及び(b)に適合するものを販売するようにすること。

(a) 菓子は、その製品中に含まれる油脂の酸価が三を超え、かつ、過酸化物価が三○を超えるものであつてはならない。

(b) 菓子は、その製品中に含まれる油脂の酸価が五を超え、又は過酸化物価が五○を超えるものであつてはならない。

この場合の酸価及び過酸化物価の測定は、別紙二「酸価及び過酸化物価の測定法」により行う。

イ 製造業者は、定期的に製品の検査を行い、その記録を菓子の販売期間を考慮した適当な期間保存すること。

ウ 製造業者は、菓子の販売期間を考慮し、計画的な製造及び販売を行うこと。

エ 販売業者は、菓子の表示、説明書等の記載内容に従い、菓子の適切な管理を行うこと。

オ 販売業者は、菓子の在庫管理を適切に行い、先入れ先出しの徹底を図ること。

五 営業者及び従事者

油脂で処理した菓子の製造業者に対しては、次の事項に留意して指導を行うこと。

ア 当該施設又はその部門ごとに、当該従事者の中で製菓衛生師等菓子の衛生的管理について、知識経験を有する者の中から食品衛生責任者を選任すること。

イ 菓子の衛生的な取扱いに関する説明書等を作成し、販売業者に対し、その旨の周知徹底を図ること。

別紙1

含まれる油脂(エーテルエキス)の測定法

1 装 置

(1) ソツクスレー脂肪浸出器:次の図に示すような浸出部(B)と冷却部(C)および受器(A)の部分からなる。浸出部(D)に試料を入れ冷却管(・)Cに上部を接続し、下部に受器(A)を接続する。側管(E)はサイフオンになつている。

(2) 円筒ロ紙

(3) 水浴:電気定温水浴

2 試薬・試液

(1) 硫酸銅試液:特級硫酸銅(Cu SO^4・5H^2O)69.3gを水に溶かして1,000mlとする。

(2) エーテル:市販品をそのまま用いてよい。ただし、回収したもの等不純物を含むもの及び水の混入しているおそれのあるものは、あらかじめ120°で2時間以上加熱脱水した無水硫酸ナトリウム(Na^2SO^4)を加えて2~3日放置した後ろ過し、再蒸留する。

3 試料の調製

菓子を粉砕又は細切し、その2~10gを正確に採り、円筒ロ紙に入れる、ただし、以下の場合にあつてはそれぞれその定めた方法により行うこととする。

(1) 水分が多くタンパク質に富む菓子の場合は、検体3~8gを正確に採り、この8~10倍量の無水硫酸ナトリウムを加えて乳針中でよく混和して粉末とし、これを円筒ロ紙内に入れる。なお、乳鉢等に付着している残さは、エーテルを含ませた脱脂綿で十分にぬぐい取り上記試料と合わせる。

(2) あめ状やゼリー状で粉末になりにくく、かつ多量の糖を含む菓子の場合は、その5~10gを正確に採り、これをビーカーに移した後、温湯200mlを加えて溶解し、冷却した後、硫酸銅試液10mlを加えて混和し、かき混ぜながら0.25N水酸化ナトリウム溶液をリトマス紙で液性を検しつ、中性ないし微アルカリ性になるまで加えて沈澱を生ぜしめ、ロ紙上にこの沈澱を集める。これを98~100°の定温乾燥器に入れて2時間乾燥した後、試料としてロ紙とともに円筒ロ紙に入れる。なお、ビーカーに沈澱物が残つている場合は、同様に乾燥した後エーテルを加えて内部をよく洗い、これを円筒ロ紙に注ぐ。

(3) 脂肪が多く粉末にならない菓子の場合は、あらく砕きエーテルで脂肪を抽出した後、粉末とし、これを試料とする。また、このエーテル中の脂肪を換算して加える。

4 油脂の測定法

受器中にあらかじめ沸騰石を入れて、90~100°の定温乾燥器で1~2時間乾燥したのち、デシケーター内で冷却して秤量する。再び30分乾燥し、冷却して秤量する。これを繰り返して恒量を求める。円筒ロ紙内に入れられた試料の上にかるくおさえるように脱脂綿を入れ、これを95~100°の乾燥中に置き、よく乾燥した後脂肪浸出部に入れる。ついで受器にエーテルを1/2~2/3容入れ、ただちに冷却管、浸出管、受器を接続して50~70°の湯浴上で加熱還流させる。8~16時間を経て資質が全部油出されたのち、浸出管から取りはずしてロ紙を抜き出す。再び冷却管を連結して湯浴上で加熱し受器中のエーテルを全部浸出管に移した後、受器をはずし受器を湯浴上さらに加温し、エーテルを完全に蒸発させる。外部をガーゼでふいて90~100°の定温乾燥器に入れる。約1時間後デシケーターに移して冷却後秤量する。恒量あるいは減少しつつあつた受器の重量が増加に転じるまで乾燥、秤量を繰返し、最少重量を求める。

脂質含量%=(W-Wo)/S×100

ただし、S:試料の採取量(g)

Wo:受器の重量(g)

W:脂質を抽出し、乾燥したのち受器の重量(g)

5 ここで得られた油脂分は、酸価、過酸化物価を測定するための試料として使用してはならない。

別紙2

酸価及び過酸化物価の測定法

1 試薬・試液

次に示すもの以外は、食品、添加物等の規格基準第2、添加物の部E、試薬、試液、容量分析用標準溶液、標準溶液、標準品、ロ紙、ガラスロ過器、フルイ及び付表の項に示すものを用いる。以下同じ。

精製エーテル:適量のエーテルを分液ロートに採り、これに用時調製した2%硫酸第一鉄溶液をエーテルの約5分の1容量加え、よく振り混ぜた後、水層を捨てる。この操作を2%硫酸第一鉄溶液の水層が黄かつ色を呈しなくなるまで数回繰り返す。次いで、エーテルの約5分の1容量の水で2~3回洗つた後、エーテル層を分取し、無水硫酸ナトリウムを加えて脱水する。脱水後、エーテルを蒸留フラスコに移し、分留管を付けて蒸留する。初留液約1.0%を捨てた後、フラスコ内のエーテルが約10%残存するよう留液を集め、密せんできるしや光容器に入れ、これに硫酸第一鉄(結晶)及び水酸化ナトリウム(粒状)をそれぞれ少量加えて、冷暗所に保存する。

アルコール・エーテル混液(1:2):使用直前にフエノールフタレイン試液を指示薬として、30秒間持続する淡紅色を呈するに至るまで0.1Nアルコール製水酸化カリウム溶液を加える。

2 試料の調製

菓子の必要量(酸価及び過酸化物価の試験を行うに必要な試料が得られるに適当な量)を採り、これを粉砕又は細切して共栓三角フラスコに入れ、菓子が浸る程度に精製エーテルを加える。これをときどき振り混ぜながら約2時間放置した後、検体の固形物が流出しないようにロ紙を用いてろ過し、更にフラスコ中の検体に精製エーテルを先の約半量を加えて振り混ぜた後、同じロ紙を用いてろ過する。このろ過した両液を分液ロートに移しろ過した液の約2分の1ないし3分の1溶液の水を加えてよく振り混ぜて洗い、水層を捨てる。この操作を2回繰り返した後、エーテル層を分取する。分取したエーテル層を無水硫酸ナトリウムで脱水した後、窒素ガス又は二酸化炭素を通しながら水温40°以下の水浴上で減圧下にエーテルを完全に除去し、残留物を試料とする。この試料は密栓できる容器に入れ窒素ガスで置換後、水室中で保存する。

3 酸価の測定法

試料約10gを精密に量り採り、共栓三角フラスコに入れてアルコール・エーテル混液(1:2)100mlを加えて溶解する。これに、フエノールフタレイン試液を指示薬として、30秒間持続する淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール製水酸カリウム溶液で測定する。

酸価は次式により求める。

酸価=(5.611×a×F)/S

ただし、S:試料の採取量(g)

a:0.1Nアルコール製水酸化カリウム溶液の消費量(ml)

F:0.1Nアルコール製水酸化カリウム溶液の力価

4 過酸化物価の測定法

試料約5gを精密に量り採り、共栓三角フラスコに入れてクロロホルム・氷酢酸混液(2:3)35mlを加えて溶解する。

均一に溶解しないときは、更にクロロホルム・氷酢酸混液(2:3)を適当に加える。次いで、フラスコ内の空気を窒素ガス又は二酸化炭素で置換し、窒素ガス又は二酸化炭素を通じながら飽和ヨウ化カリウム溶液1mlを加え、直ちに共せんをして約1分間振り混ぜた後、暗所に常温で約5分間放置する。これに水75mlを加え、激しく振り混ぜた後、デンプン試液を指示薬として、0.01Nチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定する。別に同様に操作して空試験を行い補正する。

過酸化物価は次式により求める。

過酸化物価(meg/kg)=(a×F)/S×10

ただし、S:試料の採取量(g)

a:0.01Nチオ硫酸ナトリウム溶液の消費量(ml)

F:0.01Nチオ硫酸ナトリウム溶液の力価