アクセシビリティ閲覧支援ツール

添付一覧

添付画像はありません

○食品中に残留するPCBの規制について

(昭和四七年八月二四日)

(環食第四四二号)

(各都道府県知事・各政令市市長あて厚生省環境衛生局長通知)

食品中に残留するPCBの規制については、かねて食品衛生調査会にPCB特別部会が設けられて検討されていたが、このたび別添のとおり答申された。

厚生省は、この答申内容について検討した結果、答申の規制値が暫定的規制値であることを考慮し、当面、これを行政的指導指針として、左記のとおり運用することとしたので、この旨ご了知のうえ、遺憾のないようご配意願いたく通知する。

1 暫定的規制値設定の趣旨

(1) PCB汚染防止対策の一つとして、すでに産業界においてはPCBの製造停止使用規制等の措置がとられてはいるが、過去に使用されたPCBによる環境汚染が今後早急に消退するとは考え難く、一方、人体汚染に関する報告がなされるなど、人の健康に及ぼす影響については重大な関心が払われなければならない。

したがって、PCBによる危害防止の観点から汚染源として、もっとも重要なものと考えられる食品について、その暫定的規制値を定めることとしたものである。

(2) 本来、規制値を定めるにあたっては、長期毒性研究の結果から、人体の一日摂取許容量(ADI)を算出し、これを基として食品ごとの規制値を定めるのが一般的である。しかし、昭和四六年度に開始されたPCBの長期毒性研究は、今後も一年以上にわたつて継続されなければ、その研究の完成がみられない実情にあり、一方、PCBの食品汚染と、これを取りまく社会情勢は放置できない現状にある。このため、食品衛生調査会では現時点において入手し得る限りの内外の研究成果を基礎として暫定的に人体の一日摂取許容量五μg/kg/dayを算出し、これに現在までに得られた調査結果による食品のPCB汚染の実態を勘案して当面の基準として決めたのが今回の暫定的規制値である。

(3) したがつて、この暫定的規制値は、現時点における当面のものではあるが、十分に安全性を考慮してあるので、この暫定的規制値が、守られ、かつ食生活指導等の保健指導対策をすすめられることによつて汚染地域においてもPCBによる危害の発生は防止し得るものと考えられる。

(4) この暫定的規制値は、その設定の趣旨からしても、食品の汚染がこの水準まで許されてよいと解してはならないものであり、あくまでもPCBは食品に含まれてはならないものであることには変りがない。

このような観点から暫定的規制値がこの水準まで汚染が許されるものとして取り扱われないよう十分指導されるとともに、少しでも汚染の水準を下げるための努力が必要である。

2 暫定的規制値

食品中に残留するPCBの暫定的規制値は次のとおりとする。

魚介類

遠洋沖合魚介類(可食部)                    ○・五ppm

内海内湾(内水面を含む。)魚介類(可食部)            三ppm

牛 乳(全乳中)                        ○・一ppm

乳製品(全量中)                        一ppm

育児用粉乳(全量中)                      ○・二ppm

肉 類(全量中)                        ○・五ppm

卵 類(全量中)                        ○・二ppm

容器包装                           五ppm

3 暫定的規制値の運用上の注意

(1) 本規制値はPCBによる食品の汚染を防止し、かつ低下せしめるための行政上の指標として、その上限を定めたものである。

したがつて、流通経路の末端における個々の食品の適否を判断するためのものよりも、むしろ生産地(水)域における当該食品の汚染を低下させ、または汚染食品が流通しないようにするためのものとして、効果的に運用されたい。

(2) 検査にあたつては、生産地(水)域にもつとも接近した段階において実施するよう配慮されるとともに、あわせて生産地(水)域のは握を行なうなど、その結果が直ちに生産地(水)域における対策に資するような配慮が必要である。

(3) 検査の結果、暫定的規制値を超えるものを発見した場合は、直ちに当該食品の供給者に対する生産行政にも十分反映させ得るよう関係部局と密接な連携を保つとともに、当該食品の販売の自主規制等を指導するほか、当該食品を摂食しないような措置ならびに廃棄物処理に際しては環境等の再汚染を防止する措置を行なう必要がある。

(4) なお、検査にあたつての分析法については、昭和四七年一月二九日付け環食第四六号通知の「分析方法に関する研究」によるが、当面PCBのみ検査することとし、その方法は、アルカリ分解法および十塩化法によるものとされたい。

(5) この規制値の正しい運用によつて一般的には安全性が確保されるものであるが、妊産婦、および乳幼児については、その生理的特性から食品衛生調査会ではさらに検討を続けることとされている。しかし妊産婦および乳幼児をはじめ、日常専ら内海内湾魚介類を食する者に対しては、食生活の保健指導をあわせて行なう必要があるので、水産庁において実施される調査の結果を活用のうえ、保健指導の徹底に努められたい。

(6) その他、遠洋沖合魚介類と内海内湾魚介類の範囲については、別紙資料を参考にされたい。

〔別添〕略

(別紙)略