添付一覧
○いわゆる「露店飲食店営業者」に対する措置について
(昭和三〇年八月二五日)
(発衛第二九二号)
(各都道府県知事あて厚生事務次官通知)
標記に関しては従来より露店飲食店の漸減の方針のもとにその無許可営業者の取扱につきかねてから種々御尽力を願っていたところであるが、従来の経過を見るに必ずしも所期の成果を挙げて来たとはいい難く、近時この種業者の漸増的傾向も見受けられるので、かねてから従来の方針について検討中であったところ、今後、露店飲食店営業者の取扱については左記によって行うこととしたので、貴職においても本措置の徹底方につき格別の御配慮を致されたく通知する。
なお、昭和二四年六月一五日衛発第六三五号通知「所謂「露店飲食営業者」の取扱について」は廃止する。
記
1 方針
従来の露店飲食店の漸減方針については現実の露店営業の実態に即応しない憾もあり、無許可営業者が却って漸次増加する傾向にかんがみ、都道府県知事は、現在の規則、許可の方法等につき再検討を加えて公衆衛生上支障のない限度において所要の措置を講じることにより、この際、すべての無許可営業者の解消を期して露店営業者を食品衛生行政の対象として完全に把握し、合理的な行政の運営を図るものとすること。
2 措置方法
イ 現在各都道府県において設定されている施設基準を見るに、概ね標準的な固定施設を有する営業を基準として定められているので、これらの基準及びその運用方法等について再検討を加えて、露店のような特殊な業態を有する営業にとって現実的な観点から適当な措置の講じられていないものがあれば、これらの業態についても衛生的な基準を維持しつつ営業が営めるよう所要の措置を講ずること。
ロ 法第二一条第二項の規定に基いて許可を行う場合、公衆衛生上合理的な必要性が認められる限り、同条第三項の規定に基いて営業上取り扱う食品の品目の制限その他の条件を附するようにすること。
右の条件を附することについては、別紙(2)昭和三○年六月二四日法制局一発第一八号厚生省環境衛生部長あて内閣法制局第一部長回答を参照のこと。
なお、生食食品その他特に衛生上の配慮を必要とする食品を取り扱う営業の許可を行う際は、特に慎重な態度で臨むこと。
ハ 以上の措置又は運用により公衆衛生上支障を来さないと認められる露店については、すみやかに営業許可を与え、昭和三○年一二月三一日を目途としてすべての無許可露店営業を解消するようにすること。
ニ 営業許可を与えた露店営業者に対しては、いわゆる「固定店舗」に比して一層厳重な監視と十分な指導を行うこと。
ホ 今回の措置を講じた後も、なお、無許可営業者がある場合は、それらの無許可営業者に対しては、特に峻厳な態度で臨むこと。
ヘ 本措置の実施に当っては、警察その他の関係当局の協力を得るように努め、その徹底を期すること。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(別紙(1))
食品衛生法第二一条第三項に関する疑義について
(内閣法制局第一部長あて厚生省環境衛生部長照会)
左記については、差し迫った疑義があるので、御繁忙中恐縮ながら、折り返し貴見を承りたい。
記
食品衛生法第二一条第三項においては、都道府県知事は、同条第一項の許可に必要な条件を附けることができる旨規定しているが、いわゆる露店形態で飲食店営業を営もうとする者に対し、都道府県知事が食品衛生法施行令第五条第一号に規定する飲食店営業の許可を与える場合に、必要な条件として営業品目の制限をすること(例えば、「中華そば供食のみ」、「おでん供食のみ」又は「加熱して調理し、又は飲食させる食品の提供に限る」などの条件を附けること)ができるか。
即ち、露店飲食店は、その形態に物理的制約があり、都道府県知事が飲食店について定めた公衆衛生上必要な施設基準の適用に当っても、建物の構造、食品取扱設備、給水などで、しんしゃくせざるをえない面がでてくるので、食品衛生法の目的たる「飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止」し、食品衛生上万全を期するためには、露店形態の飲食店にすし、さしみなど生のまま食する食品を提供することは、原則として望ましくなく、従って、個々の許可を与える際に、公衆衛生上必要なものとして、前述の如き条件は原則としてこれを附けうるものと考えられるが、一面その与えられる営業許可は「飲食店営業」の許可であり、一般に飲食店営業の許可は、その施設がすし屋、一般食堂など、その業態の如何を問わずいやしくも飲食店一般を営む上に必要なものとして公衆衛生上の見地から定められた基準に適合するものとして与えられるものであり、このような性質のもので営業許可を与えるのに、更にこれに条件を附して、特殊なもののみしか取り扱うことのできない飲食店とすることはできないのではないか、ということも考えられる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(別紙(2))
食品衛生法第二一条第三項に関する疑義について
(厚生省環境衛生部長あて内閣法制局第一部長回答)
五月一六日附衛環発第一五号をもって照会にかかる標記の件に関し、左のとおり当局の意見を回答する。
1 問題
食品衛生法施行令第五条第一号にいう飲食店営業のうち、いわゆる露店形態による営業を営もうとする者に対して、都道府県知事は、食品衛生法(以下単に「法」という。)第二一条第一項の許可を与えるに当り、同条第三項の規定に基いて、一定の営業品目の取扱を制限する旨の条件を付けることができるか。
2 意見及び理由
法は、その第二一条第一項で法第二○条に規定する営業、すなわち「飲食店営業その他公衆衛生に与える影響が著しい営業であって政令で定めるもの」については、都道府県知事の許可を要する旨を規定するとともに、法第二○条の規定による基準、すなわち都道府県知事が営業の施設につき、業種別に、公衆衛生の見地から定める基準に違反した者を法第三一条第二号の規定により処罰することとして、この基準をみたさないものについて、法第二一条第一項の許可を与えない趣旨を明らかにし、他方、同条第二項で、この基準に合うものについては、都道府県知事は、許可を与えなければならないことと定めている。従って、お尋ねのような疑問は、施設は一応この基準には合っているものの、この基準がいわゆる露店形態の飲食店営業につきその取扱品目との関係で別段の規制を加えていない場合においてのみ生じるものと考えるほかはないから、以下このような場合を前提として、お示しの問題を検討することとする。
法第二一条第三項は、都道府県知事は、飲食店営業の許可について必要な条件を附けることができる旨を明らかにしているから、お示しのような露店形態による飲食店営業について、飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止するために合理的必要があると認められる限り(法第一条参照)、都道府県知事がその許可に際して一定の条件を附けることができることは、いうまでもない。ところで、露店設備による飲食店は、建物の構造、食品取扱設備、給水等の点で、一般の飲食店営業にくらべて、食品衛生上著しく劣る場合のあることは、容易に想像し得られるところであり、その故に、都道府県知事が、当該営業の許可に当つて、法第二○条第三項の規定に基き、食品衛生を維持するために、一定の条件を付けることを合理的に必要と考える余地があろうことは、あえて否認し去ることができないところである。営業品目の問題についてこれを考えてみると、たとえば腐敗又は変敗の度合の高いような食品については、露店設備にともないがちな衛生上の欠陥を考慮するとき、飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止しようとする本法の目的に照らして、その取扱を制限し、又は禁止する以外に食品衛生の維持を期待し得ない場合のあることを認めざるを得ないであろう。
かようなわけで、都道府県知事は、露店形態による飲食店営業について、食品衛生上危害の発生を防止する必要があると合理的に認められる場合には、法第二一条第三項の規定に基き腐敗又は変敗の度合の高いような食品についてその取扱を制限し、又は禁止する旨の条件を付けることができるものと解して妨げあるまい。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(参考)
営業施設の基準(例)
一―二飲食店及び喫茶店営業の施設の基準
① 専用の調理場を設け、来客予定数若しくは計画製造量に応じ十分な広さとすること。
② 調理場及び客室、客席は、便所、汚水だめ、畜舎その他不潔な場所と完全に隔離すること。
③ 調理場の天井及び内壁は、すき間がなく、平滑で、清掃に便利な構造とし、なるべく明るい色で塗装すること。
④ 床面は、耐水性の材料を用い、清掃洗じように便利な構造とし、適当なこう配をつけ、十分な排水設備をすること。
⑤ 内壁は、床面から少くとも高さ一メートルまでを耐水性の材料で築造又は腰張すること。
⑥ 採光、換気を十分にするため、窓をできるだけ大きくとる等必要な設備をすること。採光が十分でない場合及び夜間の照明は、床面において少くとも一五ルクス以上の明るさとすること。
⑦ 煮焼、揚げもの等をする箇所の上部には、金属板製ろうと型天がい又は有効な排気装置をすること。
⑧ 窓その他必要な箇所には、金網を張る等防そ防虫の設備をすること。
⑨ 流水式の器具洗じよう設備及び食器具の水切り設備をすること。
⑩ 調理場には、十分に給水できる従業員専用の流水式手洗設備をすること。
⑪ 移動することの困難な器具の配列は、作業に便利な位置にあり、かつ、清掃、洗じようが容易であること。
⑫ 調理用及び供食器具は、よく補修せられ、完全に使用できる状態にあり、かつ、来客予定数若しくは計画製造量に応じ、それぞれ必要数をそなえること。
⑬ 必要に応じ防そ、防虫、防じんの装置のある飲食物専用運搬具をそなえること。
⑭ 調理用及び供食器具を衛生的に保管する戸棚、保存箱等の設備をすること。
⑮ 冷蔵庫をそなえ、冷蔵温度を正確に計ることができる温度計を装置すること。
⑯ 食品に直接接触する器具類を、熱湯、蒸気又は無害な殺菌剤で消毒することのできる設備をすること。
⑰ 上水その他飲用に適する業務用水を豊富に供給できる設備をすること。
⑱ 適当な容積で、ふたのある不しん透性の廃棄物容器をそなえること。
⑲ 便所には、防そ、防虫、防臭の設備及び十分に給水できる流水式手洗設備をすること。
⑳ 従業員が常に着用するよう、必要数の清潔な作業衣、作業帽をそなえること。
((21)) 従業員の数に応じ、適当な広さの更衣室を設けること。
((22)) 業態が特殊なものであつて、知事が公衆衛生上支障がないと認めた事項については、しんしやくすることがある。
―――――――――――――――――――――
三 菓子製造業(パン製造業を含む。)の施設の基準
① 専用の製造場を設け、計画製造量に応じ十分な広さとすること。必要に応じ、はつこう室、包装室を設けること。
② 製造場、はつこう室及び包装室は、便所、汚水だめ、畜舎その他不潔な場所と完全に隔離すること。
③ 製造場、包装室の天井及び内壁は、すき間がなく、平滑で、清掃に便利な構造とし、なるべく明るい色で塗装すること。
④ 床面は、耐水性の材料を用い、清掃洗じように便利な構造とし、適当なこう配をつけ、十分な排水設備をすること。
⑤ 内壁は、床面から少くとも高さ一メートルまでを耐水性の材料で築造又は腰張すること。
⑥ 採光、換気を十分にするため、窓をできるだけ大きくとる等必要な設備をすること。採光が十分でない場合及び夜間の照明は、床面において少くとも一五ルクス以上の明るさとすること。
⑦ ばい煙、蒸気等が発散する箇所には有効な排気装置をすること。
⑧ 窓その他必要な箇所には、金網を張る等防そ防虫の設備をすること。
⑨ 製造場及び包装室には、十分に給水できる従業員専用の流水式手洗設備をすること。
⑩ 製造場の一部に又は附属して、適当な大きさの原材料及び製品置場を設け、防そ、防虫、防じん、必要に応じ防湿の設備をすること。
⑪ 必要に応じ清掃、洗じようが容易で、かつ、防そ、防虫、防じんの装置がある専用の運搬容器をそなえること。
⑫ 適当な器具洗じよう設備及び衛生的な器具保管設備をすること。
⑬ 移動することの困難な器具の配列は、作業に便利な位置にあり、かつ、清掃、洗じょうが容易であること。
⑭ 製造及び取扱器具は、よく補修せられ、完全に使用できる状態にあり、かつ、計画製造量に応じ、それぞれ必要数をそなえること。
⑮ 加熱し、冷却し、又は保管するための設備については、必要に応じ、温度又は圧力を正確に計ることができる計器を装置すること。
⑯ 食品に直接接触する器具類を、熱湯、蒸気又は無害な殺菌剤で消毒することのできる設備をすること。
⑰ 上水その他飲用に適する業務用水を豊富に供給できる設備をすること。
⑱ 適当な容積で、ふたのある不しん透性の廃棄物容器をそなえること。
⑲ 便所には、防そ、防虫、防臭の設備及び十分に給水のできる流水式手洗設備をすること。
⑳ 従業員が常に着用するよう、必要数の清潔な作業衣、作業帽をそなえること。
((21)) 従業員の数に応じ、適当な広さの更衣室を設けること。
((22)) 業態が特殊なものであって、知事が公衆衛生上支障がないと認めた事項については、しんしゃくすることがある。
〔以下略〕