○食品衛生法施行規則及び食品、添加物等の規格基準の一部改正について
(平成五年三月一七日)
(衛乳第五四号)
(各都道府県知事・各政令市市長・各特別区区長あて厚生省生活衛生局長通知)
食品衛生法施行規則(昭和二三年厚生省令第二三号。以下「省令」という。)及び食品、添加物等の規格基準(昭和三四年一二月厚生省告示第三七〇号。以下「告示」という。)の一部が、それぞれ平成五年三月一七日厚生省令第六号及び厚生省告示第七三号をもって改正されたので、左記の事項に留意の上、その運用に遺憾のないようにされたい。
記
第一 改正の要旨
近時、食肉製品に対する嗜好の多様化、その製造技術の進歩、諸外国における生産及び流通の実態等を勘案し、従来我が国で製造、販売等が認められていなかった食肉製品について新たに規格基準を設けるとともに、従前の規格基準について一部改正を行い、併せて、食肉製品に係る表示事項の改正を行ったこと。
第二 改正の内容
1 省令関係
(1) 非加熱食肉製品(食肉を塩漬けした後、くん煙し、又は乾燥させ、かつ、その中心部の温度を六三度で三〇分間加熱する方法又はこれと同等以上の効力を有する方法による加熱殺菌を行っていない食肉製品であって、非加熱食肉製品として販売するものをいう。ただし、乾燥食肉製品(乾燥させた食肉製品であって、乾燥食肉製品として販売するものをいう。以下同じ。)を除く。以下同じ。)の表示事項に、pH及び水分活性を追加することとしたこと。
(2) 特定加熱食肉製品(その中心部の温度を六三度で三〇分間加熱する方法又はこれと同等以上の効力を有する方法以外の方法による加熱殺菌を行った食肉製品をいう。ただし、乾燥食肉製品及び非加熱食肉製品を除く。以下同じ。)にあっては、特定加熱食肉製品である旨及び水分活性を表示することとしたこと。
(3) 加熱食肉製品(乾燥食肉製品、非加熱食肉製品及び特定加熱食肉製品以外の食肉製品をいう。以下同じ。)にあっては、加熱食肉製品である旨及び容器包装に入れた後加熱殺菌したものか、加熱殺菌した後容器包装に入れたものかの別を表示することとしたこと。
(4) 食肉製品を製造し、又は輸入した後加工したものにあっては、製造所(輸入品にあっては、輸入業者の営業所)及び加工所の所在地並びに製造者(輸入品にあっては、輸入業者)及び加工者の氏名(法人の場合は、その名称)を表示することとしたこと。
2 告示関係
(1) 食肉製品及び鯨肉製品の規格基準を「食肉製品」と「鯨肉製品」に分け、食肉製品について次のように改正したこと。
ア 成分規格
(ア) 微生物規格の全面的見直しを行い、乾燥食肉製品、非加熱食肉製品、特定加熱食肉製品及び加熱食肉製品のうち容器包装に入れた後加熱殺菌したもの並びに加熱食肉製品のうち加熱殺菌したのち容器包装に入れたものそれぞれについて、食肉製品の特性に応じ、大腸菌群、E.coli、クロストリジウム属菌、黄色ブドウ球菌及びサルモネラ属菌による成分規格を設けたこと。
(イ) 大腸菌群の試験法を削除したこと。
(ウ) 非加熱食肉製品の水分活性に係る規格値の上限を削除したこと。
イ 製造基準
(ア) 「耐熱性菌総数(芽胞数)」を「芽胞数」に改め、その試験法を削除したこと。
(イ) 乾燥食肉製品について、新たに基準を設けたこと。
(ウ) 非加熱食肉製品について、豚肉以外の食肉(内臓を除く。)及び肉塊(食肉(内臓を除く。)の塊をいう。以下同じ。)以外の形態の食肉を原料食肉とすることを認めることとし、肉塊のみを原料食肉とする場合以外の場合について、新たに基準を設けたこと。
(エ) 塩漬けについては、食塩と塩化カリウムを組み合わせて使用することを認めることとしたこと。
(オ) 非加熱食肉製品について、肉塊のみを原料食肉とする場合には、亜硝酸ナトリウムを使用しないで塩漬けを行うことを認めることとし、新たに基準を設けたこと。
(カ) 肉塊のみを原料食肉とする場合以外の場合、塩漬けは、食肉(骨及び脂肪を除く。)の重量に対して、三・三%以上の食塩等を使用して行い、くん煙又は乾燥は二〇日間以上行わなければならないこととしたこと。ただし、一定の条件で冷凍した原料食肉及び一定の条件で加熱した原料食肉を使用して製品を製造する場合並びに最終製品の水分活性を〇・九一未満とする場合は、ここに掲げた塩漬けの要件及びくん煙又は乾燥の期間は適用されないものとしたこと。
(キ) 塩抜き又は加熱殺菌後の冷却に水を用いる場合には、飲用適の水で行わなければならないこととしたこと。
(ク) 特定加熱食肉製品について、新たに基準を設けたこと。
(ケ) 今回定めた乾燥食肉製品、非加熱食肉製品、特定加熱食肉製品及び加熱食肉製品それぞれの個別基準に規定した方法以外の方法により食肉製品を製造しようとする者及び当該方法により製造された食肉製品を輸入しようとする者は、厚生大臣の承認を受けなければならないこととしたこと。
ウ 保存基準
(ア) 非加熱食肉製品のうち、水分活性が〇・九五以上のものについて新たに保存基準を設け、四度以下で保存することとしたこと。ただし、肉塊のみを原料食肉とする場合以外の場合で、pHが四・六未満又はpHが五・一未満でかつ水分活性が〇・九三未満のときは保存基準の適用を除外したこと。
(イ) 特定加熱食肉製品について、新たに保存基準を設け、水分活性が○・九五以上のものについては四度以下、水分活性が〇・九五未満のものについては一〇度以下で保存することとしたこと。
(2) 魚肉ねり製品
ア 成分規格
大腸菌群の試験法を削除したこと。
イ 製造基準
「耐熱性菌総数(芽胞数)」を「芽胞数」に改め、その試験法を削除したこと。
第三 運用上の注意
1 省令関係
(1) 「乾燥食肉製品」である旨の表示は、従来、ドライソーセージにあっては「ドライソーセージ」と、サラミソーセージにあっては「サラミソーセージ」と記載することにより代えることができることとしていたところであるが、これに加えて、ビーフジャーキーにあっては「ビーフジャーキー」、ポークジャーキーにあっては「ポークジャーキー」と記載することにより代えることができるものであること。
(2) 「非加熱食肉製品」である旨の表示は、ラックスハムにあっては「ラックスハム」と記載することにより代えることができるものであること。
(3) 「加熱食肉製品」である旨の表示は、プレスハムにあっては「プレスハム」、ウインナーソーセージにあっては「ウインナーソーセージ」、フランクフルトソーセージにあっては「フランクフルトソーセージ」と記載することにより代えることができるものであること。
(4) 非加熱食肉製品についてはpH及び水分活性を、特定加熱食肉製品については水分活性を表示させることによって、当該製品について適正な保存基準が表示されていること及び保存基準が遵守されていることを確認するものであること。
(5) 加熱食肉製品について容器包装に入れた後加熱殺菌したものか、加熱殺菌した後容器包装に入れたものかの別を表示させることとしたのは、適用する成分規格の類別を判断するためのものであること。
(6) 食肉製品を製造し、又は輸入した後、細切等加工を行ったものについて、製造所(輸入品にあっては、輸入業者の営業所)及び加工所の所在地並びに製造者(輸入品にあっては、輸入業者)及び加工者の氏名(法人の場合は、その名称)を表示することとしたのは、食肉製品を製造した後、細切等の加工を行う段階において微生物汚染等食品衛生上の問題を生じた際の原因究明を行うためであること。
2 告示について
(1) 今回の改正において、微生物規格に係る試験法を削除したのは、微生物試験について日々新しい試験方法が開発されていることに鑑み、新たに開発される試験方法に柔軟に対応するためであること。
なお、試験法については、第五に示したので、それにより行われたいこと。
(2) 非加熱食肉製品について
ア 従来、原料食肉は豚肉の肉塊のみを認めていたが、今回の改正において、豚肉以外の食肉及び肉塊以外の形態の食肉を原料食肉とすることを認めることとしたこと。
なお、肉塊以外の形態の食肉を原料食肉とする場合には、製造基準が肉塊のみを原料食肉とする場合と異なるものであること。
イ 塩漬けは、肉塊のみを原料食肉とする場合に限り、亜硝酸ナトリウムを使用しないで行う方法も認められるものであること。
なお、この場合の製造基準は亜硝酸ナトリウムを使用して塩漬けする場合と異なるものであること。
(3) 特定加熱食肉製品について
製造に使用する調味料等には、調味料のほか、香辛料、砂糖、でん粉、発色剤等の添加物等が含まれるものであること。
第四 施行期日
1 省令関係
公布の日から施行することとしたこと。ただし、平成六年三月三一日までに製造され、又は輸入される特定加熱食肉製品以外の食肉製品の表示については、改正後の省令の規定にかかわらず、なお従前の例によることができるものであること。
2 告示関係
公布の日から施行することとしたこと。ただし、平成六年三月三一日までに製造され、又は輸入される食肉製品の成分規格、製造基準及び保存基準については、改正後の告示の規定にかかわらず、なお従前の例によることができるものであること。
第五 試験法
省令及び告示に規定する微生物、亜硝酸根、pH及び水分活性に係る試験については、別紙1に示す方法により行われたいこと。
なお、昭和四九年一二月一二日付け環乳第八二号「水分活性の測定方法について」は、廃止する。
第六 製造及び加工並びに流通及び販売の施設における衛生管理の指導について
製造及び加工並びに流通及び販売の施設における衛生管理については、別紙2の1及び別紙2の2のとおり、微生物数に基づく衛生管理の指導基準を定めたので、これにより次の事項について指導されたい。
1 製造及び加工の施設における衛生管理
(1) 食肉製品の衛生を確保するためには、製造所及び加工所における微生物管理が特に重要であることから、各製造所又は加工所ごとに製造過程における重要管理点及び目標基準、各管理点をモニタリングする方法並びにモニタリング結果に基づく措置等を定め、その活用を通じ、製造所又は加工所における衛生の確保及び向上を図ること(「危害度分析重要管理点監視方式」)により、指導すること。
(2) 衛生管理状態を微生物数により確認するに際して、収去試験を行う場合は、別紙2の1に基づいて判定すること。
(3) 製造所における衛生の確保及び向上を図るため、定期的に自主検査を行わせること。この場合においても別紙2の1に基づいて判定するよう指導すること。
2 流通及び販売の施設における衛生管理
(1) 流通及び販売時における保存基準の遵守は、食肉製品の安全性確保に重要であることから、冷蔵ショーケース又は冷凍ショーケースの温度管理、製品の収納、配列方法等につき指導すること。
(2) 保存基準の遵守の状況の指導に当たっては、食肉製品の保管設備及び製品の温度を測定するほか、適宜、収去試験を行い、衛生管理状態を確認すること。
なお、収去試験は、別紙2の2に基づいて判定すること。
3 微生物指導基準に適合しない場合の改善指導
別紙2の1及び2の微生物指導基準に適合しない食肉製品がある場合には、ア~オに掲げる各微生物の指標としての意義に留意して原因を調査し、関係営業者に対し汚染防止策等につき指導すること。
なお、別紙2の微生物指導基準は、製造、加工、流通及び販売の施設における衛生管理の状態を監視し、必要ある場合は、当該施設の改善指導を行うためのものであるので、この点特に留意されたい。
ア 大腸菌群
六三度で三〇分間又はこれと同等以上の加熱殺菌の指標
イ E.coli
製造時における糞便汚染の指標
ウ クロストリジウム属菌
加熱後の適正冷却の指標
エ 黄色ブドウ球菌
製造時における手指及び器具からの汚染の指標
オ サルモネラ属菌
食肉製品に関連の高い食中毒菌の指標
4 指導基準等の統一
今回、E.coli、クロストリジウム属菌、黄色ブドウ球菌、サルモネラ属菌について新たに微生物規格を定めるとともに、別紙2の微生物指導基準を策定したことから、今後、各施設における衛生管理につき指導を行うに当たっては、各都道府県等とも別紙2の微生物指導基準により行われたいこと。
第七 その他
昭和五四年一一月八日環食第二九九号「食品衛生法に基づく表示指導要領」(以下「指導要領」という。)の一部を次のとおり改める。
次のよう 略
(別紙1)
食肉製品、鯨肉製品及び魚肉ねり製品の試験法
第1 検体の採取、運搬及び試料の調製
1 食肉製品、鯨肉製品及び魚肉ねり製品
(1) 1検体当たり約100gを採取する。検体は、原則として容器包装のまま採取する。ただし、ハム等のように、1包装単位が1kg以上に及ぶものは、切断して採取する。この場合、滅菌した器具及び容器を用い、汚染の起こらぬよう検体を採取すること。また、切断面で微生物が増殖したり、包装内面を伝わって断面部から微生物が内部に侵入しないように保管法にも注意すること。
(2) 採取した検体の運搬は、保冷容器を用い、氷等で4℃以下に検体を保ち、速やかに検査に供することができるよう運搬すること。なお、冷凍状態のものは、ドライアイス等で凍結しつつ運搬すること。
(3) 微生物試験に供する試料の調製は、製品(スライスハム等細切された製品を除く。)の切断すべき表面をアルコール綿でよくふいた後、滅菌した器具を用いて無菌的に切断し、その断面の中央部から25gを無菌的に採り試料とする。試料に滅菌ペプトン加生理食塩水225mLを加えて細砕し、試料液とする。スライスハム等細切された製品にあっては、滅菌した器具を用いて25gを無菌的に切断して採り、試料とする。試料に滅菌ペプトン加生理食塩水225mLを加えて細砕し、試料液とする。
ただし、食肉製品に係る試験のうち、サルモネラ属菌については別添1、黄色ブドウ球菌については別添2によること。
2 砂糖、でん粉及び香辛料
検体の採取に当たっては、検査対象を十分にかき混ぜた後、砂糖又はでん粉にあっては100g以上、香辛料にあっては10g以上を無菌的に滅菌採取ビンに採る。
検体は、よくかき混ぜた後、無菌的に5gを滅菌試料ビンに採取し、滅菌ペプトン加生理食塩水を加えて100mLとし、密栓してよく振り混ぜる。
その液約20mLを無菌的に滅菌中試験管(18mm×180mm)に採り、沸騰水浴中に入れ10分間加熱した後、急冷して試料液とする。
第2 試薬及び培地
1 微生物試験に用いる試薬及び培地
試薬及び培地は、次のとおりとする。なお、(2)から(6)については市販品を用いても差し支えない。
ただし、食肉製品に係る試験のうち、サルモネラ属菌については別添1、黄色ブドウ球菌については別添2によること。
(1) ペプトン加生理食塩水
ペプトン1.0g及び塩化ナトリウム8.5gを精製水1,000mLに溶かし、滅菌する。最終pHは7.0±0.1でなければならない。
(2) ECはっ酵管
標準処方は次のとおりとする。
ペプトン20.0g、乳糖5.0g、胆汁酸塩1.5g、リン酸水素カリウム4.0g、リン酸二水素カリウム1.5g及び食塩5.0gを1,000mLの精製水に溶かす。これをはっ酵管に分注して滅菌した後、速やかに冷却する。最終pHは6.9±0.1でなければならない。
(3) EMB培地
標準処方は次のとおりとする。
ペプトン10.0g、リン酸水素カリウム2.0g、乳糖10.0g、エオシンY0.4g、メチレンブルー0.065g及び寒天15gを精製水1,000mLに加え、加熱溶解し、滅菌し、分注して、平板とする。最終pHは7.0±0.1でなければならない。
(4) 乳糖ブイヨンはっ酵管
標準処方は次のとおりとする。
肉エキス3.0g、ペプトン5.0g、乳糖5.0g及びブロムチモールブルー0.024gを1,000mLの精製水に溶かす。これをはっ酵管に分注して滅菌した後、速やかに冷却する。最終pHは7.2±0.1でなければならない。
(5) クロストリジウム培地
標準処方は次のとおりとする。
混合ペプトン15.0g、大豆ペプトン7.5g、酵母エキス7.5g、肉エキス7.5g、クエン酸鉄アンモニウム1.0g、メタ重亜硫酸ナトリウム1.0g、L―システイン塩酸塩0.75g及び寒天30.0gを精製水1,000mLに加え、加熱溶解し、滅菌する。最終pHは7.6±0.1でなければならない。
(6) 倍濃度BGLBはっ酵管
標準処方は次のとおりとする。
ペプトン10.0g、乳糖10.0g、牛胆汁末20.0g及びブリリアントグリーン0.0133gに精製水を加えて500mLとし、加温溶解し、はっ酵管に約10mLずつ分注した後、滅菌する。最終pHは7.2±0.1でなければならない。
2 亜硝酸根の試験に用いる試薬
試薬は、次のとおりとする。
(1) スルファニルアミド:〔特級〕
(2) スルファニルアミド液:スルファニルアミド0.5gを塩酸(1→10)100mLに加温しながら溶かす。
(3) ナフチルエチレンジアミン溶液:N―1―ナフチルエチレンジアミン二塩酸塩0.12gを水100mLに溶かす。
(4) N―1―ナフチルエチレンジアミン二塩酸塩:〔特級〕
第3 試験法
1 微生物
(1) 非加熱食肉製品及び特定加熱食肉製品のE.coliの試験法
① 試料液1mLずつを接種したECはっ酵管を5本、試料液の10倍希釈液1mLずつを接種したECはっ酵管を5本用意し、44.5℃±0.2℃の温度で24時間±2時間培養した後、ガス発生を認めないものはE.coli陰性とする。
② ガス発生を認めた場合は、直ちに1白金耳量をEMB培地に塗抹培養して、独立した集落を形成させる。35.0℃±1.0℃で24時間±2時間培養後EMB培地から大腸菌群の定型的集落を釣菌して、乳糖ブイヨンはっ酵管及び寒天斜面培地に移植する。
その乳糖ブイヨンはっ酵管で当該集落を48時間培養してガス発生を確認したものと相対する寒天斜面培地上の菌について鏡検し、グラム陰性無芽胞桿菌を認めた場合はE.coli陽性とし、その他の場合はE.coli陰性とする。
③ 試料液について陽性を示すものが3以下であればE.coliがその1gにつき10以下、試験液の10倍希釈液について陽性を示すものが3以下であればE.coliがその1gにつき100以下とする。
(2) 加熱食肉製品及び乾燥食肉製品のE.coliの試験法
① 試料液1mLそれぞれについて5本のECはっ酵管に接種し、44.5℃±0.2℃の温度で24時間±2時間培養した後、ガス発生を認めないものはE.coli陰性とする。
② ガス発生を認めた場合は、直ちに1白金耳量をEMB培地に塗抹培養して、独立した集落を形成させる。35.0℃±1.0℃で24時間±2時間培養後EMB培地から大腸菌群の定型的集落を釣菌して、乳糖ブイヨンはっ酵管及び寒天斜面培地に移植する。
その乳糖ブイヨンはっ酵管で当該集落を48時間培養してガス発生を確認したものと相対する寒天斜面培地上の菌について鏡検し、グラム陰性無芽胞桿菌を認めた場合はE.coli陽性とし、その他の場合はE.coli陰性とする。
(3) サルモネラ属菌試験法
別添1の方法によること。
(4) 黄色ブドウ球菌試験法
別添2の方法によること。
(5) クロストリジウム属菌試験法
試料液10mL及び試料液の10倍希釈液10mLずつをそれぞれについて2枚の滅菌パウチ(ラミネートフィルム製、市販品あり。)に正確に採り、あらかじめ加温して溶かし45℃~50℃の温度に保持したクロストリジウム培地約15mLをこれに加え、よく混合し、熱シールした後、冷却凝固させる。培地が凝固した後、35.0℃±1.0℃で24時間±2時間培養する。この場合、検体の希釈に用いた滅菌ペプトン加生理食塩水10mLを培地に混合し、以下試料の場合と同様に操作して培養したものを対照とし、パウチ、滅菌生理ペプトン加食塩水及び培地が無菌であったこと並びに操作が完全であったことを確かめなければならない。菌数の算定は、黒色の集落につき、食品、添加物等の規格基準中第1 食品の部D 各条の項の〇 氷雪の1 氷雪の成分規格の(2)の2.のaからgまでに準じて行い、クロストリジウム属菌の菌数とする。
(6) 大腸菌群試験法
① 3本の倍濃度BGLBはっ酵管に試料液10mLずつをそれぞれに接種し、35.0℃±1.0℃の温度で48時間±3時間培養した後、ガス発生を認めないものは大腸菌群陰性とする。
② ガス発生を認めた場合は、直ちに1白金耳量をEMB培地に塗抹培養して、独立した集落を形成させる。35.0℃±1.0℃で24時間±2時間培養後EMB培地から大腸菌群の定型的集落を釣菌して、乳糖ブイヨンはっ酵管及び寒天斜面培地に移植する。その乳糖ブイヨンはっ酵管で当該集落を48時間±3時間培養してガス発生を確認したものと相対する寒天斜面培地上の菌について鏡検し、グラム陰性無芽胞桿菌を認めた場合は大腸菌群陽性とし、その他の場合は大腸菌群陰性とする。
(7) 芽胞数の試験法
試料液の10倍希釈液及び100倍希釈液を作成する。
試料液、試料液の10倍希釈液及び100倍希釈液のそれぞれについて滅菌ペトリ皿を2枚用意し、滅菌ピペットを用いて対応する滅菌ペトリ皿に当該試料液1mLずつを正確に採り、あらかじめ加温して溶かし45℃~50℃の温度に保持した標準寒天培地(食品、添加物の規格基準中第1 食品の部D 各条の〇 氷雪の1 氷雪の成分規格の目の(2)の2.細菌数(生菌数)の測定法に規定する標準寒天培養基をいう。)約15mLをこれに加え、静かによく混合し、冷却凝固させる。培地が凝固した後、倒置して35.0℃±1.0℃で48時間±3時間培養する。この場合、検体の希釈に用いた滅菌ペプトン加生理食塩水1mLに培地を混合し、以下試料の場合と同様に操作して培養したものを対照とし、ペトリ皿、滅菌ペプトン加生理食塩水及び培地が無菌であったこと並びに操作が完全であったことを確かめなければならない。
芽胞数の算定は、食品、添加物等の規格基準中第1 食品の部D 各条の項の〇 氷菓の1 氷菓の成分規格の目の(3)の2.細菌数(生菌数)の測定法に規定する細菌数の算定により行う。
2 亜硝酸根
(1) 試料液の調製
試料約10gを正確に量り、約80℃の水80mL及び0.5N水酸化ナトリウム溶液10mLを加え、ホモジナイズした後、容量200mLのフラスコに移す。容器は温水10mLずつで5回洗浄し、洗液はフラスコに加える。これに硫酸亜鉛溶液(3→25)10mLを加えてよく振り混ぜた後、ときどき振り混ぜながら80℃の水浴中で20分間加温する。次に、冷水中で室温まで冷却した後、0.5N水酸化ナトリウム溶液でpH9.5に調整し、水を加えて正確に200mLとする。内容をよく混和し、冷蔵庫中に約30分間放置した後、乾燥ろ紙を用いて共栓フラスコへろ過する。最初のろ液約20mLを捨て、澄明なろ液を試料液とする。
(2) 空試料液の調製
水10mLを容量200mLのフラスコに採り、(1)試料液の調製と同様に操作し、空試料液とする。
(3) 検量線用標準液の調製
亜硝酸ナトリウム0.150gを正確に量り、1,000mLのメスフラスコに入れ、水を加えて溶かして正確に1,000mLとし、標準原液とする。標準原液10mLを正確に量り、100mLのメスフラスコに入れ、水を加えて正確に100mLとし、その2mLを正確に量り、水を加えて正確に100mLとし標準液とする(この液1mLは、亜硝酸根0.2μgを含む。)。標準液2.5mL、5mL、10mL、15mL及び20mLをそれぞれ正確に量り、それぞれ水を加えて正確に20mLとし、それぞれを検量線用標準液とする(これらの液20mL中には、それぞれ亜硝酸根0.5μg、1μg、2μg、3μg及び4μgを含む。)。
(4) 測定法
① 測定条件
分光光度計を用い、波長540nmの吸光度を測定する。
② 測定
試料液及び空試料液それぞれ20mL(注1)を正確に量り、それぞれ25mLのメスフラスコに入れ、それぞれにスルファニルアミド液1mL、塩酸(1→2)1mL、ナフチルエチレンジアミン溶液1mL及び水を加えてそれぞれ正確に25mLとし、よく振り混ぜ、20分間放置し(注2)、測定液及び空測定液とする。水20mLを用いて同様に操作したものを対照として540nmにおける測定液及び空測定液の吸光度を測定し、EA、EBとする。試料液が着色しているときは試料液20mLを正確に量り、塩酸(1→2)1mL及び水を加えて正確に25mLとしたものを、水を対照として吸光度を測定し、ECとする。
吸光度差EA-EB、又は試料液が着色した場合は吸光度差EA-(EB+EC)を求め、ΔEとする(注3)。
③ 検量線
検量線用標準液20mLずつをそれぞれ正確に量り、それぞれ25mLのメスフラスコに入れ、②測定における試料液と同様に操作し、それぞれの吸光度差ΔES1、ΔES2、・・・ΔES5を求め、検量線を作成する。
④ 定量
測定液の吸光度差ΔEと検量線から試料液中の亜硝酸根含有量(μg/tube)を求め、次式によって検体中の亜硝酸根含量(g/kg)を計算する。
亜硝酸根含量(g/kg)
=C×(200/20)×(1/W)×(1/1,000)
=C/(100×W)
C:試料液中の亜硝酸根含量(μg/tube)
W:試料の採取量(g)
(注1) NO2-濃度の高い場合は、検量範囲(0.02μg/mL~0.2μg/mL)に入るよう試料液を希釈する。
(注2) 呈色は反応時間10分間から2時間程度まで安定であるので、約20分間放置してよい。
(注3) 試料中にアスコルビン酸等の還元物質が含まれている場合は定量妨害となり、亜硝酸の測定値は低くなる。その場合、試料量の10gを5g又は2gに減らすか、試料液の20mLを10mL又は5mLに減らすことにより、その測定値の低下を幾分か防止することができる。
3 pH
(1) 食肉製品
次の①又は②の方法により行うこと。
① 直接法
ニードル型電極を検体に直接挿入するか、又はスリーブ型電極を直接検体切断面に当ててpHを測定する。測定部分は、いずれの電極を用いた場合も検体表面から5mm以上の内側とし、最低3か所を測定して、その平均値を検体のpHとする。
② 水抽出法
検体表面から5mm以上の内側の部分を採取し試料とする。試料に、食肉の場合は試料に対して9倍量以内、製品の場合は試料と2~3倍量以内の精製水を加え、均質化し、得られた上澄液についてpHを測定し、検体のpHとする。
(2) 魚肉ねり製品
製品の一部を採取し試料とし、試料に、その10倍量の精製水を加え、細砕し、pHを測定し、検体のpHとする。
4 水分活性
次の(1)又は(2)の方法により行うこと。ただし、(2)により行うことができるのは、アルコール等揮発性物質の影響を受けない場合に限る。
なお、飽和溶液の選定に当たっては測定しようとする(適否の判定基準となる)水分活性を中心に上下同間隔を持つ試薬を用いるよう留意すること。また、飽和溶液の作製に当たっては、25℃における溶解度を予め把握しておくこと。水分活性の測定値は小数点以下2桁までとし、3桁以下は切捨とすること。
(1) 容器包装を取り除き、検体表面から5mm以上内側の部分を速やかに細切するか、表層部分が除去しにくい検体にあってはそのまま輪切りにして試料とする。試料は水分活性測定装置の検出器内空間容積の3%以上の容積となるよう適当量を採取し、アルミ箔皿又は開放型平皿に乗せ、直ちに検出器に入れて上蓋を閉めて密閉し、25℃±2℃の条件下に置く。10分間隔で数値を読み、その間に数値の変動が認められない時点が、検出器内の水蒸気圧が平衡状態になったと見なし、その時の数値を検体の水分活性とする。
なお、水分活性測定装置には電気抵抗式(Change in electrical conductivity of immobilized salt soln)による機器を用い、測定する前に既知飽和溶液を用いて校正すること。
(2) 容器包装を取り除き、無作為に10g~20gを採り、これを検体とする。
検体を速やかに細切し、これより約1gをとり、(又は検体を内径25mmのコルクポーラーで抜き取った後約1gになるようにスライスし、)予め精秤したアルミ箔(内径25mm)に入れて精秤する。これを試料とする。
測定しようとする水分活性より高い値をもつ飽和溶液A及び測定しようとする水分活性より低い値をもつ飽和溶液Bを準備する。
試料は速やかにコンウエイユニット(以下「ユニット」という。)の内室に入れ、外室にはA、Bを別々のユニットに3mL~4mLを入れた後、ユニットのすり合わせ部分にワセリンを塗り蓋をする。クリップして気密を保つようにして25℃±2℃で2時間±0.5時間静置する。
2時間±0.5時間静置後試料の重量を精秤し、予め測定した重量との増減を求め、次式により試料の水分活性を算出する。
水分活性=(bx-ay)/(x-y)
a:飽和溶液Aの水分活性の値
b:飽和溶液Bの水分活性の値
x:Aを使用した際の試料の重量増加量
y:Bを使用した際の試料の重量減少量
(別添1)サルモネラ属菌試験法
1.試験法の概要
試験試料25gをストマッキング袋等に無菌的にとりわけ、緩衝ペプトン水(BPW)225mLを加え、ストマッカー等で均質化し、培養する。その培養液の一部をRV(Rappaport-Vassiliadis)培地とTT(Tetrathionate)培地で選択増菌培養後、2種類の分離寒天培地(硫化水素産生性で検出する培地と硫化水素産生性に関係なくサルモネラ属菌を検出する培地、それぞれ1種類)に塗抹後、培養し、疑わしい集落の形成を観察する。サルモネラ属菌と疑われる集落3個をTSI(Triple Sugar Iron)寒天培地及びLIM(Lysine Indole Motility)培地に接種し、生化学的性状の確認を行う。さらに、抗O血清による凝集反応によりO抗原の血清型別を実施してサルモネラ属菌と確定する。
2.使用器具、装置
(1) 滅菌ハサミ
(2) 滅菌ピンセット
(3) ストマッカー
(4) ストマッキング袋
(5) 三角フラスコ
(6) 自動秤量分注装置又は秤量器
(7) pH計
(8) 滅菌ピペット、マイクロピペット及び滅菌チップ
(9) メスシリンダー
(10) 小試験管
(11) 中試験管
(12) 試験管立て
(13) 白金耳
(14) 高圧蒸気滅菌器(滅菌のインジケーター)
(15) 乾熱滅菌器(滅菌のインジケーター)
(16) 恒温槽、恒温水槽(37℃±1℃及び42.0℃±0.5℃の仕様)
(17) 滅菌シャーレ(直径90mm~100mm)
3.培地、試薬及び抗血清
(1) 前増菌用培地
・緩衝ペプトン水(BPW):加温溶解後、121℃で15分間滅菌する。
(2) 選択増菌用培地
・RV(Rappaport-Vassiliadis)培地:加温溶解後、10mLずつ中試験管に分注し、115℃で15分間滅菌する。作製後は冷蔵庫で数週間保存可能である。
・TT(Tetrathionate)培地:沸騰まで加温混和後、45℃以下に冷却する。ヨウ素溶液20mLを培地1Lに加え、よく攪拌する。さらに攪拌しながら、10mLずつ滅菌中試験管に分注する。TT基礎培地は作製後冷蔵庫で保存可能であるが、ヨウ素溶液添加後には作製当日に使用すること。
(3) 分離寒天培地
・硫化水素の産生により判定する培地:MLCB、DHL又はXLDから1種類。使用説明書に従って作製する。
・硫化水素産生又は非産生によらずサルモネラ属菌と判定する培地:BGS(ブリリアントグリーン+スルファピリジン)、CHS(クロモアガーサルモネラ)、ESII(ESサルモネラ寒天培地II)、SM2から1種類。使用説明書に従って作製する。
(4) 確認用培地
・TSI(Triple Sugar Iron)寒天培地:加温溶解後、小試験管に分注、121℃で15分間滅菌し、高層斜面とする。
・LIM(Lysine Indole Motility)培地:加温溶解後、小試験管に分注、121℃で15分間滅菌し、高層に固める。
(5) O群別確認血清
サルモネラ免疫血清O多価、O1多価及びO群血清
(6) 生化学的性状確認培地、試薬等
・シモンズクエン酸ナトリウム培地:加温溶解後、小試験管に分注し、121℃で15分間滅菌し、斜面とする。
・VP半流動培地:加温溶解後、小試験管に分注し、121℃で15分間滅菌し、高層に固める。
・インドール試薬
・VP用試薬
・チトクロームオキシダーゼ試験用ろ紙
・ONPGディスク
・マロン酸塩培地:加温溶解後、小試験管に分注し、121℃で15分間滅菌する。
4.試験手順
(1) 検体の調整
① 1検体当たり約100gを採取する。検体は、原則として容器包装のまま採取する。ただし、ハム等のように、1包装単位が1kg以上に及ぶものは、切断して採取する。この場合、滅菌した器具及び容器を用い、汚染の起こらぬよう検体を採取すること。また、切断面で微生物が増殖したり、包装内面を伝わって断面部から微生物が内部に侵入しないように保管法にも注意すること。
② 採取した検体の運搬は、保冷容器を用い、氷等で4℃以下に検体を保ち、速やかに検査に供することができるよう運搬すること。なお、冷凍状態のものは、ドライアイス等で凍結しつつ運搬すること。
③ 微生物試験に供する試料の調製は、製品(スライスハム等細切された製品を除く。)の切断すべき表面をアルコール綿でよくふいた後、滅菌した器具を用いて無菌的に切断し、その断面の中央部から25gを無菌的に採り試料とする。
スライスハム等細切された製品にあっては、滅菌した器具を用いて25gを無菌的に切断して採り、試料とする。
(2) 前増菌培養
① BPWを約37℃に温めておく。
② 試料25gにBPW225mLを加え、1分間ストマッカー処理する。
③ 37℃で22時間±2時間前増菌培養する。
(3) 選択増菌培養
① RV培地及びTT培地を約42℃に温めておく。
② BPWで前培養した培養液0.1mLをRV培地10mLに接種する。
③ BPWで前培養した培養液1mLをTT培地10mLに接種する。
④ 接種したRV及びTT培地を42℃で22時間±2時間培養する。
(4) 選択分離培養
① 培養後のRV及びTT培地をよく攪拌する。
② 1白金耳量を以下の(ア)硫化水素の産生により判定する分離用寒天培地及び(イ)硫化水素産生、非産生によらずサルモネラ属菌と判定する分離用寒天培地のグループからそれぞれ1種類を選び、画線塗抹する。
(ア) 硫化水素の産生により判定する分離用寒天培地(1種類選択)
・MLCB
・DHL
・XLD
(イ) 硫化水素産生、非産生によらずサルモネラ属菌と判定する分離用寒天培地(1種類選択)
・BGS(ブリリアントグリーン+スルファピリジン)
・CHS(クロモアガーサルモネラ)
・ESII(ESサルモネラ寒天培地II)
・SM2(chromID Salmonella Agar)
③接種した培地を37℃で22時間±2時間培養する。
注:サルモネラ属菌を釣菌する際、集落の色については、硫化水素により判定する培地では黒色集落をサルモネラ属菌と推定とする。また、硫化水素産生、非産生によらずサルモネラ属菌と判定する培地のうち、BGSでは無色透明(培地色は赤色)、CHSでは藤色並びにESII及びSM2ではピンク色の集落がサルモネラ属菌と推定される定型集落である。分離用寒天培地上でのサルモネラ属菌集落の色についてはあらかじめ既知のサルモネラ属菌株を用いて検証しておくこと。
(5) 確認培養
① 各分離用寒天培地に形成された定型集落(各培地の上記注意を参照)を3個ずつ釣菌して、TSI寒天培地とLIM培地に接種する。
② TSI寒天培地には白金線で高層に穿刺し、斜面に塗抹する。
③ LIM培地は高層に穿刺する。
④ 接種した培地は37℃で22時間±2時間培養する。
⑤ 培養後、以下の結果が得られたものは定型的サルモネラ属菌と判断する。
(ア) TSI寒天培地:高層部黄変・黒変・ガス産生(高層部における気泡又は亀裂の発生)及び斜面部が鮮やかに赤変したもの。
(イ) LIM培地:培地全体が紫変(リジン陽性)、運動性陽性となることを確認後、インドール試薬の重層によりインドール反応を検討する。サルモネラ属菌はインドール反応陰性である(色の変化は無い)。インドール反応陽性の場合は、数分以内に重層試薬の赤変を示す。
⑥ 定型的なサルモネラ属菌と判断された菌株は、(6)に示すO抗原の血清学的試験を行い、サルモネラ属菌であることの確定及びO抗原群について決定する。
⑦ サルモネラ属菌には、硫化水素非産生性、運動性の弱いもの、リジン陰性といった非定型的性状を示すものがあり、また、市販のO血清に凝集の弱いO群型別不能のサルモネラ属菌も知られている。①から⑥の操作により、定型的サルモネラ属菌の判断は可能であると考えるが、定型的性状を示さない場合は(7)に示す生化学的性状試験を実施し、サルモネラ属菌の確認をする。
(6) O血清群別
サルモネラ属菌と疑われ、釣菌された菌株について、サルモネラ免疫血清を用いたスライド凝集法によるO血清群別試験をTSI寒天培地斜面上から菌を採取して実施する。
① O多価血清及びO1多価血清を用いて凝集試験を行い、凝集が見られたO群血清を用いて当該菌のO群を決定する。
② サルモネラ属菌の定型的な生化学的性状を示したにもかかわらず、いずれの血清にも凝集が認められないときはO群型別不能とし、(6)に示す生化学的性状試験を実施する。
(7) 生化学的性状
非定型的サルモネラ属菌が疑われる場合に(ア)から(オ)までに示した生化学的性状試験を実施する。市販の同定用キットの使用も可能である。
(ア) オキシダーゼ試験:チトクロームオキシダーゼ試験用ろ紙に菌を塗布して1分間以内に深青色になれば陽性とする。
(イ) クエン酸利用能試験:シモンズクエン酸ナトリウム培地に菌を塗抹後、37℃で22時間±2時間培養する。培地が深青色になれば陽性とする。
(ウ) VP試験:VP半流動培地に菌を穿刺し、37℃で22時間±2時間培養後、VP用試薬A及びBを滴下する。陽性の時は数分後に試薬が赤色となる。1時間後も赤色とならなければ陰性とする。
(エ) ONPG試験:ONPGディスク1枚を小試験管にとり、滅菌精製水1mLを加える。新鮮培養菌を1白金耳接種し、混和後37℃で18時間~24時間培養し、液色で判定する(早いものは1時間~2時間で判定可能)。液色が黄色となったものを陽性とする。液色が変化しないものは陰性である。
(オ) マロン酸利用能試験:マロン酸塩培地に新鮮培養菌を白金線で接種し、37℃で24時間~48時間培養して判定する。液色が明らかに青色となったものを陽性とし、緑色に留まるものを陰性と判定する。
注:サルモネラ属菌はオキシダーゼ陰性、クエン酸利用能陽性、VP陰性、ONPG陰性である。マロン酸利用能では、ほとんどのサルモネラ属菌は陰性であるが、subspecies salamae,arizonae及びdiarizonaeでは陽性であるので注意を要する。非定型的サルモネラ属菌が疑われ、生化学的性状試験を実施してもなお判断が難しい場合は、国立医薬品食品衛生研究所又は国立感染症研究所に照会すること。
(8) 記載
① サルモネラ属菌陽性の際は陽性/25gとし、O群又はO群型別不能まで記載する。
② 非定型的サルモネラ属菌の際も同様にO群まで記載するとともに、どの性状が異なっていたかを記入する。
5.フローチャート
6.培地組成(参考例)及び作製方法
(1) 緩衝ペプトン水(Buffered peptone water:BPW)
組成:1,000mL当たり
カゼイン酵素分解産物 10.0g
塩化ナトリウム 5.0g
リン酸二水素カリウム 1.5g
リン酸水素二ナトリウム(12水和物) 9.0g
精製水 1,000mL
※ オートクレーブ滅菌 121℃、15分間、pH7.0±0.2
※ リン酸塩は、無水物や複数の水和物が存在するため、異なった水和物等を用いる場合はその分子量に合わせて、必ず重量補正を行うこと
(2) ラパポート―バシリアディス液体培地(Rappaport-Vassiliadis:RV)
組成:1,000mL当たり
ソイペプトン 5.0g
塩化ナトリウム 8.0g
リン酸二水素カリウム(KH2PO4) 1.4g
リン酸水素二カリウム(K2HPO4) 0.2g
塩化マグネシウム六水和物(MgCl2・6H2O) 40.0g
マラカイトグリーン 0.04g
精製水 1,000mL
※ オートクレーブ 115℃、15分間、pH5.2±0.2
(3) テトラチオネート液体培地(Tetrathionate USA:TT)
組成:1,000mL当たり
カゼイン酵素分解産物 2.5g
肉酵素分解産物 2.5g
胆汁酸塩 1.0g
炭酸カルシウム 10.0g
チオ硫酸ナトリウム 30.0g
精製水 1,000mL
pH8.0±0.2
※ 沸騰するまで混和加熱する。この基礎培地は4℃で数週間保存可能である。この溶液を45℃以下に冷却後、1,000mLに対して下記に示すヨウ素溶液20mLを添加した後、混和する。よく混和しながら、10mLずつ滅菌した試験管に分注する。ヨウ素溶液を添加した後は直ちに使用する。
ヨウ素溶液組成
ヨウ素 6.0g
ヨウ化カリウム 5.0g
精製水 20mL
硫化水素産生により判定する分離寒天平板培地
(4) MLCB
組成:1,000mL当たり
酵母エキス 5.0g
ペプトン 10.0g
ハートエキス末 2.0g
塩化ナトリウム 4.0g
マンニット 3.0g
L-リジン塩酸塩 5.0g
チオ硫酸ナトリウム 4.0g
クエン酸鉄アンモニウム 1.0g
ブリリアントグリーン 0.0125g
クリスタルバイオレット 0.01g
寒天 15.0g
精製水 1,000mL
pH6.8±0.2
※ 加温溶解後、シャーレに約20mLずつ分注し平板とする。
(5) DHL
組成:1,000mL当たり
肉エキス 3.0g
ペプトン 20.0g
乳糖 10.0g
白糖 10.0g
デオキシコール酸ナトリウム 1.0g
チオ硫酸ナトリウム 2.3g
クエン酸ナトリウム 1.0g
クエン酸鉄アンモニウム 1.0g
中性紅 0.03g
寒天 15.0g
精製水 1,000mL
pH7.4±0.2
※ 加温溶解後、シャーレに約20mLずつ分注し平板とする。
(6) XLD
組成:1,000mL当たり
酵母エキス 3.0g
L-リジン塩酸塩 5.0g
キシロース 3.75g
乳糖 7.5g
白糖 7.5g
デオキシコール酸ナトリウム 1.0g
塩化ナトリウム 5.0g
チオ硫酸ナトリウム 6.8g
クエン酸第二鉄アンモニウム 0.8g
フェノールレッド 0.08g
寒天 12.5g
精製水 1,000mL
pH7.4±0.2
※ 加温溶解後、シャーレに約20mLずつ分注し平板とする。
硫化水素産生によらずサルモネラ属菌を判定する分離寒天平板培地
(7) BGS
BGA(ブリリアントグリーン寒天培地)
組成:1,000mL当たり
プロテオース ペプトン 10.0g
酵母エキス 3.0g
乳糖 10.0g
白糖 10.0g
塩化ナトリウム 5.0g
フェノールレッド 0.08g
ブリリアントグリーン 0.0125g
寒天 12.0g
精製水 1,000mL
pH6.9±0.2
※ 上記BGAをオートクレーブ滅菌 121℃で15分間後、液温を約70℃に下げ、その温度に保って、下記のスルファピリジン溶液を添加し、混和する。培地の温度が60℃以下の場合では、結晶が析出するので注意する。混和後、溶液温度を60℃前後に冷却し、シャーレに約20mLずつ分注し平板とする。
スルファピリジン溶液の作製方法
ジメチルホルムアミド2mLにスルファピリジン1gを加えて溶解する。
(8) CHS(クロモアガーサルモネラ)
組成:1,000mL当たり
ペプトン 5.0g
酵母エキス 2.0g
塩化ナトリウム 0.8g
その他塩類 7.2g
選択剤と色素混合物 4.9g
寒天 15.0g
精製水 1,000mL
pH7.6±0.2
※ 加温溶解後、シャーレに約20mLずつ分注し平板とする。
(9) ESII(ESサルモネラ寒天培地II)
組成:1,000mL当たり
ペプトン 10.0g
酵母エキス 1.0g
塩化ナトリウム 5.0g
リン酸水素二ナトリウム 1.0g
チオ硫酸ナトリウム 1.0g
デオキシコール酸ナトリウム 1.0g
マンニット 15.0g
中性紅 0.03g
合成酵素基質 0.45g
ノボビオシン 0.02g
寒天 15.0g
精製水 1,000mL
pH7.4±0.2
※ オートクレーブ滅菌 121℃で15分間滅菌後、シャーレに約20mLずつ分注し平板とする。
(10) SM2(chromID Salmonella Agar)
組成:1,000mL当たり
ペプトン 6.25g
トリス 0.16g
乳糖 6.0g
胆汁酸塩 1.5g
発色基質混合物 0.03g
塩化ナトリウム 5.0g
選択剤混合物 0.03g
寒天 14.0g
精製水 1,000mL
pH7.3
※ 組成は上記のとおりだが、生培地以外では販売していない。
(11) TSI、LIM、インドール試薬や生化学的性状試験に使用する試薬についてはサルモネラ属菌確認にのみ用いるものではないので、製品情報に従って作製し、用いること。
(別添2)黄色ブドウ球菌試験法
1.試験の概要
試験試料25gを秤量し、緩衝ペプトン水(BPW)225mLを加えて均質化し、BPWを用い10倍階段希釈液を作製する。その0.1mLをそれぞれ2枚の選択分離平板培地に塗抹、培養し、黄色ブドウ球菌と疑われる典型的な集落を計数する。試料1g当たりの菌数を選択分離培地上の集落数と希釈値から算出する。試験法は選択分離培地としてISO6888-1にあるベアード・パーカー(Baird-Parker)寒天培地を用いる。なお、わが国で従来から広く行われている3%卵黄加マンニット食塩寒天培地による試験法は実績、信頼性の上から否定されるものではなく同等に扱われるべきものとし、Baird-Parker寒天培地の代替培地として用いることができる。黄色ブドウ球菌と疑われる集落は、純培養を行った後、コアグラーゼ試験等で性状を確認し同定する。本試験法は、ISO6888-1:1999と妥当性確認を行った試験法である。
2.使用機器、装置
(1) 乾熱滅菌器、オートクレーブ
(2) ふらん器(37℃±1℃)
(3) 寒天平板用乾燥器又はふらん器(25℃~50℃)
(4) 恒温水槽(37℃±1℃)
(5) pH計
(6) 秤量器
(7) メスシリンダー
(8) 除菌フィルター(0.22μm)
(9) ストマッカー、ストマッキング袋
(10) 滅菌ハサミ、ピンセット
(11) 試験管(小、中)、試験管立て
(12) 三角フラスコ
(13) 滅菌シャーレ(直径90mm~100mm)
(14) 白金耳、パスツールピペット
(15) 滅菌ピペット(1mL、2mL、10mL)
(16) 滅菌コンラージ棒(スプレッダー)
3.希釈液、培地及び試薬
(1) 希釈液
緩衝ペプトン水Buffered peptone water(BPW)
市販のBPWを使用する。
(2) Baird-Parker寒天培地
① 基礎培地
市販品を使用する。
② 亜テルル酸カリウム溶液 Potassium tellurite solution
自家調製又は市販品3.5%溶液を使用する。
③ 卵黄液 Egg yolk emulsion
自家調製20%溶液又は市販品30%溶液を使用する。
④ 培地調製
基礎培地を121℃で15分間オートクレーブした後、約50℃に保温する。亜テルル酸カリウム溶液及び卵黄液を加え、培地の厚さが4mmより厚くなるように滅菌シャーレに分注する(市販の90mmシャーレでは約20mL分注する。)。
4℃で24時間まで保存が可能である。使用前に平板表面を乾燥させる(25℃~50℃、培地表面の水滴が消えるまで)。
(3) 3%卵黄加マンニット食塩寒天培地
① 基礎培地
本試験では市販品を使用する。基礎培地量は1,000mL分を900mLに調整する。
② 培地調製
基礎培地を121℃で15分間オートクレーブした後、30%卵黄液を100mL加えて混合し、滅菌シャーレに分注し、固めた後乾燥して用いる。卵黄液の濃度が異なる場合は、終濃度が3%となるよう調製する。
(4) 非選択平板培地
本試験では市販のトリプトケースソイ寒天(TSA)培地を用いる。
(5) コアグラーゼ試験用ブレインハートインヒュージョンブイヨン(BHI)
市販品を用いる。
(6) コアグラーゼ試験用ウサギ血漿
市販品を用いる。
4.試験手順(図1)
(1) 検体の調製
① 1検体当たり約100gを採取する。検体は、原則として容器包装のまま採取する。ただし、ハム等のように、1包装単位が1kg以上に及ぶものは、切断して採取する。この場合、滅菌した器具及び容器を用い、汚染の起こらぬよう検体を採取すること。また、切断面で微生物が増殖したり、包装内面を伝わって断面部から微生物が内部に侵入しないように保管法にも注意すること。
② 採取した検体の運搬は、保冷容器を用い、氷等で4℃以下に検体を保ち、速やかに検査に供することができるよう運搬すること。なお、冷凍状態のものは、ドライアイス等で凍結しつつ運搬すること。
③ 微生物試験に供する試料の調製は、製品(スライスハム等細切された製品を除く。)の切断すべき表面をアルコール綿でよくふいた後、滅菌した器具を用いて無菌的に切断し、その断面の中央部から25gを無菌的に採り試料とする。
スライスハム等細切された製品にあっては、滅菌した器具を用いて25gを無菌的に切断して採り、試料とする。
④ 試料をストマッカー袋に入れ、BPW225mLを加え、1分間ストマッキング処理を行う。得られた懸濁液を10倍乳剤として菌分離に用いる。基準適合性を判定する場合は、10倍乳剤で行う。なお、10倍乳剤の10倍階段希釈液(100倍、1,000倍)を作製し、計数を行うことにより更に高い菌数を測定することができる。
(2) 菌選択分離試験
① Baird-Parker寒天培地法
検体各希釈につき0.1mLずつ、それぞれ2枚のBaird-Parker寒天培地に接種し、コンラージ棒を用いてシャーレ側面には触れないよう塗抹する。15分間乾燥させた後、平板を逆さにして培養する。37℃で48時間±2時間培養する。途中37℃で22時間±2時間にて観察、定型集落があればシャーレ裏面にマークしておく。
※ 定型集落とは、周囲に透明帯が存在する、黒又は灰色で、光沢のある隆起した円形集落を指す。集落の大きさは22時間±2時間培養では約1mm~1.5mm、48時間±2時間培養では約1.5mm~2.5mmである。培養22時間±2時間以降では透明帯の内側で集落の周囲に直に白濁帯が観察される。
※ 非定型集落は透明帯や白濁帯がきわめて小さいか確認し難いもので、乳製品、エビ類、内臓肉の試験では注意が必要である。
② 3%卵黄加マンニット食塩寒天培地法(Baird-Parker寒天培地の代替培地として用いることができる。)
Baird-Parker寒天培地法と同様、検体各希釈につき0.1mLずつそれぞれ2枚の平板に接種、塗抹し、37℃で48時間±2時間培養する。途中37℃で22時間±2時間にて観察、黄色ブドウ球菌と疑われる集落があればシャーレ裏面にマークしておく。
※ 黄色ブドウ球菌と疑われる集落とは、黄色で、集落周囲に卵黄反応による白濁帯がみられる光沢のある隆起した直径約1mm~2mmの集落を指す。卵黄反応の弱い集落についてもコアグラーゼ試験で確認する。
(3) 確認試験
① 純培養
選択分離培地上に発育した黄色ブドウ球菌と疑われる集落を1平板につき2個~5個釣菌し、非選択性のトリプトケースソイ寒天(TSA)培地に塗抹、純培養を行う。37℃で22時間±2時間培養する。
② 同定
・グラム染色
単離した集落でグラム染色を実施する。グラム陽性の球菌である。
・コアグラーゼ試験
試験管法によるコアグラーゼ試験(図2)は、純培養した集落を釣菌し、2mL~3mLのブレインハートインヒュージョンブイヨン(BHI)の入った小試験管に懸濁し、37℃で22時間±2時間培養する。同時に懸濁液の一部を非選択平板培地に培養し、コアグラーゼ再試験用および菌株保存用とする。
次に、BHI培養液が0.2mL~0.3mL入った試験管にウサギ血漿0.5mLを加え、軽く混和して、37℃の恒温水槽(ふらん器でも代替可能である。)で22時間±2時間まで観察しながら培養する。
観察は、培養後1時間間隔で4時間~6時間まで血漿凝固の有無を調べ、完全凝固(全体がゼリー状となる。)又は部分凝固(一部がゼリー状となる。)した時点で陽性と判定する。なお、観察時に試験管を強く振らないことに注意すること。陰性のものは22時間±2時間まで培養して判定する。疑わしい反応が出た場合は、非選択平板培地に増殖させた菌を用いて再試験を行う。
Baird-Parker寒天培地上で、定型集落を形成し、グラム陽性球菌で、コアグラーゼ陽性であれば、黄色ブドウ球菌と同定する。3%卵黄加マンニット食塩寒天培地についても同様に、黄色ブドウ球菌と疑われる集落を形成し、グラム陽性球菌で、コアグラーゼ陽性であれば、黄色ブドウ球菌と同定する。
※ 市販の乾燥ウサギ血漿用いる場合は、添付の仕様書に従ってコアグラーゼ試験を行っても良い。ウサギ血漿を自家調製する場合は、黄色ブドウ球菌株を用いて、凝集を確認したものを用いること。
(4) 菌数測定
平板上に形成された集落数から、希釈倍数を考慮して、黄色ブドウ球菌菌数を算出する。基準適合性は、10倍乳剤を接種した2枚の寒天平板上に得られた黄色ブドウ球菌の全集落数により判定する。
図1 黄色ブドウ球菌の試験法・直接平板培養法
図2 試験管法によるコアグラーゼ試験
希釈液、培地及び試薬の組成と調製
1.希釈液
緩衝ペプトン水 Buffered peptone water(BPW)
組成
カゼイン酵素分解産物 10.0g
塩化ナトリウム 5.0g
リン酸二水素カリウム 1.5g
リン酸水素二ナトリウム(12水和物) 9.0g
精製水 1,000mL
※ オートクレーブ滅菌 121℃、15分間、pH7.0±0.2
※ リン酸塩は、無水物や複数の水和物が存在するため、異なった水和物等を用いる場合はその分子量に合わせて、必ず重量補正を行うこと
2.Baird-Parker寒天培地
(1) 基礎培地
組成
カゼイン膵消化物(Tryptone) 10.0g
酵母エキス 1.0g
肉エキス 5.0g
ピルビン酸ナトリウム 10.0g
L-グリシン 12.0g
塩化リチウム 5.0g