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○乳及び乳製品の成分規格等に関する省令の一部改正について

(昭和六〇年七月八日)

(衛乳第二八号)

(各都道府県知事・各政令市市長・各特別区区長あて厚生省生活衛生局長通知)

乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(昭和二六年厚生省令第五二号。以下「乳等省令」という。)の一部が昭和六○年七月八日、厚生省令第二九号をもつて別添のとおり改正されたので、左記事項に留意の上、これが運用に遺憾のないようにされたい。

第一 改正の要旨

乳及び乳製品に関する需要の多様化、製造技術の進歩、国際規格の動向等を勘案し、乳及び乳製品に関する規格基準等の設定及び改正を行つたもので、その主な内容は次のとおりである。

(一) 牛乳、部分脱脂乳、脱脂乳、加工乳又は乳飲料のうち、常温保存可能品について保存基準の適用を緩和するとともに成分規格等を設定したこと。

(二) 生めん羊乳を乳等省令上の乳に加え、定義を設定するとともにナチュラルチーズの定義を改正したこと。

(三) れん乳、粉乳類に係る製造基準を改め、添加物の使用に関する基準を設定し、当該基準に適合する添加物の使用については、厚生大臣の承認を要しないこととしたこと。

第二 改正の内容

一 定義、成分規格等に関する事項

(一) 牛乳、部分脱脂乳、脱脂乳、加工乳及び乳飲料

ア 常温保存可能品(牛乳、部分脱脂乳、脱脂乳、加工乳又は乳飲料のうち、連続流動式の加熱殺菌機で殺菌した後、あらかじめ殺菌した容器包装に無菌的に充填したものであつて、食品衛生上一○℃以下で保存することを要しないと厚生大臣が認めたもの。以下同じ。)にあつては、一○℃以下の保存を要せず、常温を超えない温度で保存することとしたこと。

イ 牛乳等の保存基準のうち、都道府県知事の例外承認に係る規定を削除したこと。

ウ 常温保存可能品について、従来の成分規格のほか、次の成分規格を設けたこと。

(ア) 牛乳、部分脱脂乳、脱脂乳及び加工乳

a アルコール試験(三○±一℃で一四日間保存又は五五±一℃で七日間保存する前及び保存した後において) 陰性

b 酸度(三○±一℃で一四日間保存又は五五±一℃で七日間保存する前と保存した後の差が乳酸として) ○・○二%以内

c 細菌数(三○±一℃で一四日間保存又は五五±一℃で七日間保存した後において標準平板培養法で一ml当たり) ○

(イ) 乳飲料

細菌数(三○±一℃で一四日間保存又は五五±一℃で七日間保存した後において標準平板培養法で一ml当たり) ○

エ 乳等の成分規格の試験法に乳のアルコール試験を加えたこと。

オ 常温保存可能品の殺菌に係る自記温度計の記録は一年間保存することとしたこと。

カ 牛乳、部分脱脂乳及び脱脂乳について超高温直接加熱殺菌法を認めたこと。

(二) ナチュラルチーズ

ア 原料として生めん羊乳、バターミルク又はクリームを用いたものも乳等省令上のナチュラルチーズの範囲に含めたこと。

イ 従来の製造技術以外の凝固を含む製造技術を用いて製造され、従来の製造方法によるものと同様の物理的、化学的、官能的特性を持つたものも乳等省令上のナチュラルチーズの範囲に含めたこと。

(三) 生めん羊乳

搾取したままのめん羊乳を生めん羊乳とし、乳等省令上の乳の範囲に加えたこと。

(四) 無糖れん乳、無糖脱脂れん乳、加糖れん乳、加糖脱脂れん乳、全粉乳、脱脂粉乳及び加糖粉乳

塩化カルシウム、クエン酸カルシウム等れん乳、粉乳類に使用される添加物について製品毎にその使用に関する基準を設定し、当該基準に適合する添加物の使用については、厚生大臣の承認を要しないこととしたこと。

二 表示に関する事項

(一) 常温保存可能品については、常温で保存することが可能である旨、常温を超えない温度で保存を要する旨及び品質保持期限の表示を要することとしたこと。

(二) 牛乳、部分脱脂乳、脱脂乳、加工乳、クリーム及び乳飲料であつて一○℃以下の保存が義務づけられているもの並びに特別牛乳、殺菌山羊乳、濃縮乳及び脱脂濃縮乳については一○℃以下で保存を要する旨の表示を要することとしたこと。

(三) 牛以外の動物の乳を原料として製造したナチュラルチーズについては、当該動物の種類の表示を要することとしたこと。

三 容器包装に関する事項

常温保存可能品の容器包装について、従来の規格基準のほか、次の規格を設けたこと。

(一) 破裂強度は、内容量が三○○ml以下のものは、四・○kgf/cm2以上、三○○mlを超えるものは、八・○kgf/cm2以上であること。

(二) 遮光性を有し、かつ、気体透過性のないものであること。

四 その他

前記改正に伴い、定義、規格基準等の文言の整理等所要の改正をしたこと。

五 施行期日

ア この改正は、昭和六○年七月八日から施行することとしたこと。

イ 牛乳、特別牛乳、殺菌山羊乳、部分脱脂乳、脱脂乳、加工乳、クリーム、ナチュラルチーズ、濃縮乳、脱脂濃縮乳又は乳飲料であつて、昭和六一年六月三○日以前に製造され、加工され、又は輸入されるものに係る表示については、従前の例によることができることとしたこと。

ただし、常温保存可能品に係る表示については、前記アによるものとしたこと。

ウ この改正の際現に保存の方法について、乳処理場所在地及び販売地の都道府県知事の承認を受けている牛乳については、改正後の規定にかかわらず当分の間従前の例によることができることとしたこと。

エ 無糖れん乳、無糖脱脂れん乳、加糖れん乳、加糖脱脂れん乳、全粉乳、脱脂粉乳又は加糖粉乳に使用される添加物であつて、この改正の際現にその種類及び混合割合につき厚生大臣の承認を受けたもの(この改正により定められた基準に適合して使用されるものを除く)については、改正後の規定に基づく厚生大臣の承認を受けているものとみなすこととしたこと。

第三 運用上の注意

一 常温保存可能品の衛生確保に当たつては、原料乳の選別、殺菌充填工程、製品管理等その処理加工等の全般にわたる衛生管理が必要不可欠であるので、これらを十分踏まえ随時立入検査を行う等営業者の監視指導に努められたいこと。

特に、使用する生乳については、常温長期保存における酵素による品質の変化を防止する上からも細菌数が極めて少ないものを使用するよう指導されたいこと。

なお、常温保存可能品以外の牛乳、加工乳等飲用乳に使用する生乳についても細菌数の少ないものを使用するよう指導されたいこと。

二 常温保存可能品について常温を超えない温度で保存を要することとしたが、これは夏期において外気温を超える温度で保存されることを防止するために設けたものであり、特に、夏期における保管、車両等での輸送等に当たつては、その温度管理に十分配慮するよう関係営業者を指導されたいこと。なお、常温保存可能品については加温式自動販売機による販売は認められないものであること。

三 今回設けた常温保存可能品の成分規格のうち、その保存試験に係る事項については、夏期において著しく高温の地で流通するものにあつては、三○±一℃で一四日間及び五五±一℃で七日間の条件を満たし、それ以外のものにあつては三○±一℃で一四日間の条件のみを満たせばよいものであること。

四 常温保存可能品は、一○℃以下の保存を要しないこととされたが、その流通、販売に当たつては一般の牛乳等と同様衛生的取扱いについて十分配慮するよう関係営業者を指導されたいこと。

なお、その販売に当たつては、従来どおり乳類販売業の許可を要するものであるが、その販売施設であつては、常温保存可能品の保管設備を設け、冷蔵設備を省略しても差し支えないこととすること。

五 常温保存可能品の品質保持期限の設定に当たつては、常温における保存試験の結果等を勘案し、その品質の確保が可能な期限を設定するよう営業者を指導されたいこと。

六 常温保存可能品については、開封後はできる限り早く消費すること、開封後保存する場合は、一○℃以下に冷却して保存すること等その適正な取扱いを容器包装に表示すること等により、消費者に十分啓発を図るよう関係営業者を指導されたいこと。

七 ナチュラルチーズの定義については、限外ろ過膜を用い、乳から水、乳糖等を除去濃縮させたものを、乳酸菌ではつ酵させ、しかるのち凝固させる等の製造技術が開発されていることを考慮し、改めたものであること。