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○食品衛生法施行規則及び食品、添加物等の規格基準の一部改正について

(昭和五二年三月二三日)

(環食第五二号)

(各都道府県知事・各政令市市長・各特別区区長あて厚生省環境衛生局長通知)

食品衛生法施行規則(昭和二三年厚生省令第二三号。以下「規則」という。)及び食品・添加物等の規格基準(昭和三四年厚生省告示第三七○号。以下「告示」という。)の一部が、昭和五二年二月一八日それぞれ厚生省令第三号及び厚生省告示第一七号をもつて別添のとおり改正されたので、左記に留意の上、これが運用に遺憾のないようにされたい。

第一 改正の要旨

即席めん類のうち、めんを油脂で処理したもの、及び容器包装詰殺菌食品のうち、かん詰食品、びん詰食品、レトルトパウチ食品等食品を気密性のある容器包装に入れ、密封した後加圧加熱殺菌したものを対象に、食品衛生上の危害の発生を防止するため、新たに規格基準等の設定が行われたこと。

また、昭和五○年一二月二三日環食化第五三号で既に指導基準をもつて指導を行つていた塩化ビニル樹脂製器具又は容器包装の材質中に残存する塩化ビニルモノマーについて、規格の設定が行われたこと。

第二 改正の要点

一 即席めん類について

即席めん類のうち、めんを油脂で処理したものが対象とされたこと。

(一) 成分規格

含まれる油脂の酸価が三を超え、又は過酸化物価が三○を超えるものであつてはならないとされたこと。

(二) 保存基準

直射日光を避けて保存しなければならないとされたこと。

(三) 表示基準

油脂で処理した旨を表示することとされたこと。

二 容器包装詰加圧加熱殺菌食品について

食品を気密性のある容器包装に入れ、密封した後、加圧加熱殺菌した食品(既に規格基準が設けられている清涼飲料水、食肉製品、鯨肉製品及び魚肉ねり製品を除く。)が対象とされたこと。

(一) 成分規格

食品中に発育し得る微生物が陰性でなければならないとされたこと。

(二) 製造基準

ア 原料は鮮度その他の品質が良好で、かつ、十分に洗浄したものでなければならないとされたこと。

イ 保存料又は殺菌料として用いられる化学的合成品たる添加物(次亜塩素酸ナトリウムを除く。)を使用してはならないとされたこと。

ウ 加圧加熱殺菌は自記温度計を付けた殺菌器で行い、その記録は三年間保存しなければならないとされたこと。

エ 加圧加熱殺菌は、次の条件により殺菌方法を定め、その定めた方法により行わなければならないとされたこと。

(ア) 当該食品中に存在し、かつ発育し得る微生物を死滅させるのに十分な効力を有する方法であること。

(イ) ボツリヌス菌による食中毒対策が必要な食品(ph五・五を超え、かつ、水分活性○・九四を超える食品)については、120°で四分間加熱する方法又はこれと同等以上の効力を有する方法であること。

オ その他食品の製造に使用する器具等について所要の基準が定められたこと。

(三) 容器包装の規格(かん詰食品及びびん詰食品を除く。)

ア 内容物が油脂の変敗による品質の低下のおそれのない場合を除き、しや光性を有し、かつ、気体透過性のないものであることとされたこと。

イ その他耐熱性、耐圧強度、熱封かん強度等について所要の規格を定めたこと。

(四) 表示基準(かん詰食品及びびん詰食品を除く。)

食品を気密性のある容器包装に入れ密封した後、加圧加熱殺菌した旨及び製造年月日を表示することとされたこと。

三 塩化ビニル樹脂製の器具又は容器包装について

(一) 器具又は容器包装の規格

ア 材質試験中に新たに塩化ビニルモノマーに関する試験法が定められたこと。

イ この試験法による材質中に残存する塩化ビニルモノマー濃度は一PPM以下でなければならないとされたこと。

四 その他

食肉製品及び鯨肉製品の製造基準並びに魚肉ねり製品の製造基準等について、所要の改正が行われたこと。

第三 運用上の注意

一 即席めん類について

(一) 今般定められた即席めん類の規格基準においては、めんに含まれる油脂の変敗による食品衛生上の危害の発生を防止しようとする観点から、油脂の古さ、使用歴等を示す酸価と油脂の酸化変質の過程で生成される過酸化物の量を示す過酸化物価とを指標として規格が定められた。

(二) 指標の数値については、通例、過酸化物の生成過程における誘導期間がかなり長いこと及び誘導期間を過ぎた場合の過酸化物の生成が速やかであること等を考慮し、規制値を可能な限り低い水準に置くことが望ましいとの観点から、定められたものであること。

(三) 食品中に含まれる油脂の変敗については、日光光線の与える影響が著しいので、当該食品が日光に直接曝露されることのないように保存基準が定められたものであること。

(四) 食品中に含まれる油脂の変敗を防止するためには、保存基準の遵守のみならず、製造時における処理油の品質保持、温度管理等及び流通販売時における光線等を考慮した製品管理等が的確に行われることが望ましいので、これらの点に留意して適切な監視指導を実施されたいこと。

なお、このように油脂の変敗はその食品の流通販売時における管理状態に影響されるところが大きいので、成分規格違反に対する処分等は、これらの事情を十分に勘案して、行われたいこと。

(五) 即席めん類であつて、めんを油脂で処理したものにあつては、「油脂で処理した旨」を表示することとされたが、その表示方法は「油揚げめん」「油処理めん」等その趣旨が十分に表現されているものであれば、差し支えないものであること。

(六) 今般、保存基準が定められたことに伴い、その基準に適合する保存の方法を表示することとされたが、この表示は「直射日光を避けて保存すること」「直射日光に当てないこと」等その趣旨が十分に表現されているものであれば差し支えないものであること。

二 容器包装詰加圧加熱殺菌食品について

(一) 成分規格及び製造基準は当該食品が常温下で長期流通する食品であることを考慮して定められたものであること。

(二) 成分規格にいう「発育し得る微生物が陰性」であることとは、恒温試験を一四日間行つた結果、容器包装の膨張又は漏えいを認めず、かつ、その検体について細菌試験を行つた結果、培養基のいずれにも菌の増殖を認めないこと、すなわちいわゆる商業的無菌状態をいうものであること。

(三) この成分規格に合致していないこと、すなわち、「発育し得る微生物が陰性」でないことの判断は、恒温試験の過程において、容器包装の膨張若しくは漏えいを認めたこと、又は、恒温試験の過程における検体について細菌試験を行い、培養基のいずれかに菌の増殖を認めたことをもつて行つても差し支えないこと。

(四) 原料に関する規定は、原料等に由来する病原微生物や腐敗細菌の除去減少を図ることにより、製造時における加圧加熱殺菌の効率を高める等の効果を得ることを企図して定められたものであること。

(五) 合成保存料及び合成殺菌料に関する規定は、当該食品が加圧加熱殺菌食品であることにかんがみ、これらの使用の必要性が認められないことからその使用を禁止することとしたものであること。ただし、次亜塩素酸ナトリウムについては、原料の洗浄等原料の衛生確保のための処理に使用されることを考慮し、その使用を認めたものであること。なお、この規定は原材料に由来する合成保存料及び合成殺菌料については適用されないものであること。

(六) 殺菌器の自記温度計に関する規定は、殺菌操作を正確に行わせることを企図し、記録の保存に関する規定は、自主管理の徹底を図るとともに監視時における殺菌方法の遵守状況の点検及び事故発生時の原因の究明等を配慮して定められたものであること。

(七) 加圧加熱殺菌に関する規定は、製造業者が、適切な科学的データに基づきいわゆる商業的無菌状態を得るために十分であり、かつ当該食品中でボツリヌス菌が増殖する可能性のある食品にあつては、これを死滅させるために十分であるような殺菌方法を設定し、これを遵守すべきことを定めたものであること。

したがつて、監視指導に当たつては、設定された殺菌方法の遵守状況のみならず、製造業者による殺菌条件の設定方法にも十分に留意され、適切に行われたいこと。

(八) 冷却水に関する規定は、冷却時における微生物による汚染を防止しようとするものであること。

(九) 容器包装の規格は、容器包装詰加圧加熱殺菌食品が常温下で長期流通することを考慮して定められたものであること。

(十) 内容物が油脂の変敗による品質の低下のおそれのない場合を除き、遮光性を有し、かつ、気体透過性のないものであることとされたことは、流通過程等における油脂の変敗を防止しようとする観点から定められたものであること。

(十一) 内容物が油脂の変敗による品質の低下のおそれのない場合とは、次の場合をいうものであること。

(ア) 内容食品が赤飯等ほとんど油脂を含んでいない食品である場合

(イ) 外包装等により遮光の措置及び容器包装内への酸素の透過を防止する措置が講じられている場合

(ウ) 当該食品の流通が短期間に限定されており、かつ、含まれる油脂の変敗による品質の低下のおそれのない適切な期間が明示されている場合

(十二) 容器包装に関するその他の規定は、流通過程等における容器包装の破損等による二次汚染を防止するという観点から物理的強度等の要件を設定したものであること。

(十三) 今般の表示基準の改正により、かん詰食品及びびん詰食品以外の容器包装詰加圧加熱殺菌食品にあつては、「食品を気密性のある容器包装に入れ、密封した後加圧加熱殺菌した旨」の表示を行うこととされたので、その旨が的確に表示されるよう指導されたいこと。

(十四) 容器包装詰加圧加熱殺菌食品の製造年月日の表示は、加圧加熱殺菌した年月日をもつてこれを行うこと。

三 塩化ビニル樹脂製器具及び容器包装について

塩化ビニル樹脂中に残存する塩化ビニルモノマーについては、昭和五○年一二月二三日環食化第五三号「塩化ビニル樹脂製容器包装の取り扱いについて」により通知したところであるが、今後もこの趣旨に沿つて指導取り締りに当たられたいこと。

四 その他

(1) 食肉製品及び鯨肉製品の製造基準において、混合プレスハム及び混合ソーセージ以外の食肉製品であつても魚肉を含むものにあつては、80°で二○分間加熱殺菌することとされたので、今後、これに沿つて適正な指導に当たられたいこと。

(2) 魚肉ねり製品の保存基準において、魚肉ソーセージ、魚肉ハム及び特殊包装かまぼこであつて保存基準の適用を除外される製品のうち、「phが六・○以下であり、かつ、その水分活性が○・九四以下」である製品が「phが五・五以下又はその水分活性が○・九四以下」である製品に改められ、ph又は水分活性のいずれか一方が基準値以下であれば、保存基準の適用が除外されることとされ、これに伴い表示基準についても所要の改正が行われたものであるので、これらに留意して適正な指導に当たられたいこと。

第四 施行期日

(一) 表示に関する規則の改正規定は、魚肉ねり製品については、昭和五二年二月一八日から施行することとされ、即席めん類及び容器包装詰加圧加熱殺菌食品については、昭和五二年八月一日から施行され、同日以降に製造され、加工され又は輸入される製品について適用することとされたので、速やかに改正後の規定に適合するよう指導されたいこと。

(二) 成分規格、製造基準及び保存基準に関する告示の改正規定は、食肉製品及び鯨肉製品の製造基準の目の(七)、魚肉ねり製品の製造基準並びに魚肉ねり製品の保存基準については、昭和五二年二月一八日から適用することとされ、塩化ビニル樹脂製の器具又は容器包装の規格並びに食肉製品及び鯨肉製品の製造基準の目の(六)については、昭和五二年三月一日から適用することとされ、即席めん類、容器包装詰加圧加熱殺菌食品及び容器包装詰加圧加熱殺菌食品の容器包装については、昭和五二年八月一日から適用され、同日以降製造され、加工され、又は輸入される食品及び当該食品の容器包装について適用することとされたので、速やかに改正後の規定に適合するよう指導されたいこと。