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○食品衛生法施行規則及び食品、添加物等の規格基準の一部改正について
(昭和四一年三月三日)
(環食化第五〇〇八号)
(各都道府県知事・各指定都市市長・各政令市市長あて厚生省環境衛生局長通知)
食品衛生法施行規則(昭和二三年厚生省令第二三号。以下「規則」という。)及び食品、添加物等の規格基準(昭和三四年一二月厚生省告示第三七○号。以下「規格基準」という。)の一部がそれぞれ昭和四一年二月一七日厚生省令第二号及び厚生省告示第六八号をもつて別添のとおり改正されたので、左記の諸点に留意のうえ、この運用に遺憾のないようにされたい。
記
第一 改正の要旨
一 規則関係
(一) 食品衛生法(昭和二二年法律第二三三号以下「法」という。)第六条の規定に基づき、人の健康をそこなうおそれのない化学的合成品たる添加物として新たに次の三品目が指定されたこと。
酢酸ナトリウム(無水)、水酸化ナトリウム(結晶)、炭酸ナトリウム(結晶)
(二) 法第六条の規定に基づき、従来脂肪族高級アルデヒト類、エステル類等として包括的に指定されていた着香料のうち、繁用される次の一一品目が分離指定されたこと。
オクチルアルデヒド、カプリル酸エチル、カプリン酸エチル、酢酸シクロヘキシル、デシルアルコール、ヒドロキシシトロネラールジメチルアセタール、フエニル酢酸イソアミル、プロピオン酸エチル、l―ペリラアルデヒド、酪酸シクロヘキシル・リナロール。
(三) 従来酢酸ナトリウムが指定されていたが、今回さらに酢酸ナトリウム(無水)が指定されたため、酢酸ナトリウムの名称が酢酸ナトリウム(結晶)に改められたこと。
二 規格基準関係
(一) 食品一般の成分規格について
食品は、原則として抗生物質を含んではならないこととされているが、例外として一定の漁業に従事する漁船により採取された特定の魚類については、保存用氷雪から移行するクロルテトラサイクリンの含有が認められているところであるが、今般の漁業法関係法規の改正に伴い、食品一般の成分規格2中ただし書の一部が改められたこと。なお、これは、法令技術上の必要からの改正であつて、クロルテトラサイクリンの使用が許可されている漁法及び漁種の範囲を変更するものではないこと。
(二) 添加物の成分規格等について
(Ⅰ) 新たに指定された酢酸ナトリウム(無水)等三品目、分離指定されたオクチルアルデヒド等着香料一一品目、化学的合成品以外の添加物である活性炭、白陶土及びケイソウ土並びにすでに指定されている食用赤色2号アルミニウムレーキ等一○品目について成分規格が定められたこと。
またこれに伴い、色素レーキ試験法が添加物一般の試験法として新たに定められ、また塩化メチルロザニリン等二品目の試薬及び塩化メチルロザニリン試液等四品目の試液が追加されたこと。
(Ⅱ) 従来法第七条の規定に基づき、成分規格が定められていたL―アスコルビン酸等七九品目につき、成分規格の一部が改められたこと。また、これに伴い添加物一般の試験法中の二項目並びに試薬、試液及び標準品の一部が改められたこと。これらの改正の要旨は、それぞれ次のとおりである。
(ア) 沸点および留分の測定法は、従来一つの方法で行なわれてきたが、これによると沸点が一七○度以下の物質については、規定された留出温度内では蒸留が行なわれにくいので、新しく第二法が追加され、従来の測定法が第一とされたこと。
第二法で行なうものは次のとおりである。
アセトン、イソ吉草酸エチル、カプロン酸エチル、ギ酸イソアミル・酢酸イソアミル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸イソアミル、プロピオン酸エチル、ヘキサン、酪酸、酪酸シクロヘキシル、酪酸ブチル。
(イ) L―アスコルビン酸及びL―アスコルビン酸ナトリウムの定量法において、操作を簡単にするために、試料及び溶媒の量がそれぞれ改められたこと。
(ウ) イソ吉草酸エチルの比重の下限を実情に即するように改められたこと。
(エ) L―イソロイシンの比旋光度は、従来の規格の上限にかたよつているので、上限・下限ともひきあげられたこと。
(オ) β―カロチンの分解点は、その二重結合が容易に異性化または酸化を起こすため、規格に合わないものが多いので、減圧封管中で測定するよう改められたこと。これに伴い、一般の試験法の融点測定法中に減圧封管中の説明が加えられたこと。
(カ) サイクラミン酸カルシウム及びサイクラミン酸ナトリウムの純度試験については、従来塩化物に関する規定は定められていなかつたが、製造工程中に混入するおそれがあるので、その規定が加えられたこと。
(キ) ジブチルヒドロキシトルエン及びブチルヒドロキシアニソールは、減圧デシケーター中で乾燥すると昇華するので、これらに関する従来の乾燥減量の規定が、カールフイシヤー法による水分の規定に改められたこと。
(ク) 食用赤色一号は昭和四○年七月五日をもつて、法第六条に基づく厚生大臣の指定が取消されたところであるが、食用赤色二号等一五品目の純度試験中他の色素は食用赤色一号の純度試験(6)を準用するとあるので、食用赤色二号の純度試験(6)に他の色素の試験法を規定し、食用赤色三号等一四品目の純度試験中他の色素は食用赤色二号の純度試験(6)他の色素を準用するに改められたこと。
(ケ) 繊維素グリコール酸ナトリウムについては、溶解性の高い粒状のものが製造されるようになつたので、性状中に粒状の規定が加えられたこと。
(コ) ソルビン酸カリウム及びデヒドロ酢酸ナトリウムの定量法中無水酢酸が溶解性の高い氷酢酸(非水滴定用)に改められたこと。
(サ) チアミンチオシアン酸塩、チアミンナフタリン―一・五―ジスルホン酸塩、チアミンナフタリン―二・六―ジスルホン酸塩及びチアミンフタリン塩については、定量は蛍光法により行なわれているが、定量誤差のため、含量の上限値が一○○・五%をこえる場合があるので、含量規定が九八~一○二%に改められたこと。
(シ) デンプンリン酸エステルナトリウムの確認試験(2)は、結合リンの試験であるが、疎解した後でないと発色し難いので、純度試験(4)で行なう疎解の操作を確認試験(2)で行なうよう改められたこと。また確認試験(2)のイオン交換樹脂柱の流出速度は一分間約四mlであつたがはや過ぎるので、一分間約二mlに改められたこと。
(ス) DL―トリプトフアン及びL―トリプトファンの確認試験(2)は、呈色が薄いので濃くするために加熱するように改められ、また純度試験中溶状は、水に加熱溶解すると着色し、または結晶が折出するので、冷時水酸化ナトリウム溶液に溶かし、比色標準溶液と比較するよう改められたこと。また重金属の試験については、従来の方法では希酢酸に溶け難いので、塩酸と硝酸に溶かすよう改められたこと。
(セ) ピリドキシン塩酸塩の定量法が、比色法から標準品が不要でかつ誤差の少ない非水滴定法に改められたこと。
(ソ) 油性ビタミンA脂肪酸エステルの定量法の計算式中の係数が改められたこと。
(タ) リボフラビンの比旋光度については、製品の向上によつて従来の規格に合わなくなつてきたので、その試験法が改められたこと。
(三) 添加物の使用基準について
今回指定されたオクチルアルデヒド等着香料一一品目及び水酸化ナトリウム(結晶)について使用基準が次のとおり定められたこと。
(Ⅰ) オクチルアルデヒド等一一品目の着香料は、着香の目的以外に使用してはならないとされたこと。
(Ⅱ) 水酸化ナトリウム(結晶)は、最終食品の完成前に中和または除去しなければならないとされたこと。
第二 運用上の注意
一 今回新たに分離指定されたオクチルアルデヒド等着香料一一品目及び酢酸ナトリウム(結晶)については、新たに規則第五条第一項第一号イに規定する名称の標示を行なうべきこととされたが、昭和四一年八月一六日までは猶予期間があるので、それまでに関係業者を指導する等十分周知徹底を図られたいこと。
二 今回新たに成分規格が規定されたオクチルアルデヒド等着香料一一品目、食用赤色2号等アルミニウムレーキ一○品目及び活性炭等化学的合成品以外の添加物三品目の成分規格の規定は、昭和四一年八月一七日から適用されるので、それまでに関係業者を指導する等十分周知徹底を図られたいこと。
三 次に掲げる添加物の成分規格に関する規定は、昭和四一年八月一七日から適用されるので、それまでに関係業者を指導する等十分周知徹底を図られたいこと。
アセトン、イソ吉草酸エチル、L―イソロイシン、カプロン酸エチル、β―カロチン、ギ酸イソアミル、サイクラミン酸カルシウム、サイクラミン酸ナトリウム、酢酸イソアミル、酢酸エチル、酢酸ゲラニル、酢酸ブチル、ジブチルヒドロキシトルエン、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、デンプンリン酸エステルナトリウム、DL―トリプトフアン、L―トリプトファン、ピリドキシン塩酸塩、L―フエニルアラニル、ブチルヒドロキシアニソール、プロピオン酸イソアミル、ヘキサン、メタリン酸カリウム、油性ビタミンA脂肪酸エステル、酪酸、酪酸エチル、酪酸ブチル及びリボフラビン
第三 その他参考事項
新たに指定された添加物の特長及び使用目的は次のとおりである。
一 酢酸ナトリウム(無水)は、保存中、湿度が低いと風化したり、また温度の差がはげしいと吸湿して固まるという現象を起こすことが少ないという利点を持つている。使用目的は酢酸ナトリウム(結晶)と同様である。
二 水酸化ナトリウム(結晶)は、結晶水が多いので、吸湿性が低いという利点を持つている。使用目的は水酸化ナトリウムと同様である。
三 炭酸ナトリウム(結晶)は、吸湿性が低く、水に溶かした場合発熱しないので使用に際しては便利である。使用目的は炭酸ナトリウム(無水)と同様である。