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○食品衛生法施行に関する件

(昭和二三年八月五日)

(発衛第六号)

(各都道府県知事あて厚生省事務次官通達)

さきに制定をみた食品衛生法(昭和二二年法律第二三三号)の施行規則は、本年七月一三日厚生省令第二三号を以つて制定されたのであるが、食品衛生は公衆の保健衛生上極めて重要性を有するものであつて、現下この取締が緊急に要請されている事実に鑑み、左記事項につき留意の上、その運営に遺憾なきを期されたい。

第一 立法の趣旨

一 本法は、法第一条に規定するように、飲食に起因する危害の発生を防止すること、即ち、公衆衛生の向上及び防止に必要な条件を確保することを目的としたものである。食品に関する取締としては、その経済面についても一括して行うことが適当であると考えられるのであるが、この法律では衛生上の安全確保に必要な限度に一応止められているのである。

二 本法は、経済取締、風俗取締その他とは独立的に解釈され適用さるべきものであるが、他の法律による規定を拘束するものでないから、その施行に当たつては関係方面と十分連絡調整を図ることが必要である。

例えば飲食営業緊急措置令及び風俗営業取締法によるそれぞれの許可と本法の営業許可とは別個に取り扱われるものであるが関係方面との連絡が必要であるようなことをいうものである。

第二 運用に関する事項

一 本法において指導取締の対象となるものは、主として関係営業者であるが、その他営利を目的とせぬもの(例えば学校、病院、工場、寄宿舎、公園等)であつても、それが飲食関係の業務を行う不特定又は多数の人の健康に影響を及ぼすものであるときは、その対象とみなすものである。(法第三条、法第四条、法第二九条第二項参照)

なお、その対象が運輸省、農林省、文部省等他省の直轄下にある場合といえども、本法の規定執行を妨げるものではない。但し、かかる場合にはその各関係官庁と連絡の後で取締指導を実施されたい。

二 本法は、単に食品、添加物のみでなく、その安全を保持するためこれ等の製造加工等に使用する器具、施設、並びに飲食の用に供する器具及び食品、添加物の容器包装にまで及んで規定しているものである。この飲食関係事業に従事する従業員の健康については規定されていないが、必要に応じて伝染病予防法、結核予防法等を適用するよう措置されたい。

三 本法の施行は、国民に対し、その日常生活上最も関係の深い食生活の面を通じて、その健康を保全することを目的とするものであり、いわゆる国民の健康増進、衛生向上のために、施行すべきもので、これを怠り、又は一部業者の利害を主として考える等のことがあれば、これは国民の信頼を裏切るものといわねばならない。この意識を全係官に徹底せしめ法の解釈、執行、運営を十分な責任と自信を以つて行うよう指導されたい。

四 新憲法の施行に伴なつて衛生行政警察権が警察機構から衛生機構へ移管され、これも転機となつて本法が制定されたものであるから、この機を利用して食品衛生行政が大躍進を遂げるよう努められたい。

なお従来の警察的取締に備することなく、指導啓蒙とし、関係営業者の社会公共性の自覚と国民大衆の理解協力にまち、強権発動は必要最少限度とされたい。

五 本法はその施行の大部分を都道府県知事に委任して行わしめることとしているが、食品その他とも多くはその販路が全国的であるため、一都道府県の監視の過誤は他の多数府県に迷惑を及ぼすものであることと認識し、全国的な観点に立つて運営にあたられたい。

なお都道府県知事はその業務遂行を能率化するため県下保健所長又は特定市長にその職権を必要に応じて委任するよう考慮されたい。

六 本法の運用は、できる限り科学的計画的にこれを行い、且つ、経済事情の変動と十分に連関を保つことに留意されたい。

七 食品衛生行政は、時機を失することにより、その意識の半ば以上を減ずることもあるため、できる限り機動性を以つて処理されたい。

第三 食品、添加物、器具及び容器包装に関する事項

一 法第三条及び第八条は取扱上の一般原則を示したもので、罰則を伴なうものではないが、この趣旨に副つて厳に指導されたい。

二 法第四条第四号の「その他の事由により」とは、例えば有効成分の抽出の如き場合であつて、この規定の発動はこれにより人の健康を害う恐れのある場合に限ること勿論である。

なお取扱の適正を期するため第四号の適用をされるときは、直ちに当該主務局に連絡されたい。

三 法第五条及び第六条は、これまでの取扱上の経験より第四条の規定を更めて別の形で取りあげたものである。即ち、第五条は獣畜の乳肉等はすべて健康な生畜に仰ぐことを要求しているもので、但書の例外は、第二条に示すように屠場法の関連せしめて極めて狭く解釈、運用さるべきものであり、当該吏員とは通常屠畜検査員とする。

四 法第六条は全く新しい化学的合成品が次々に生産され、これをそのまま食用に供せしめ、事故が生じて後初めて有毒物又は有害物としてその使用を禁止するのでは、公衆衛生上の安全が保ち難く又その危険が大であるためその全部を一応禁止し、厚生大臣の許可したもののみを利用せしめることとしたのであり、従つて適当なものはその都度許可の上、規則別表に追加する方針である。

五 法第七条及び第一○条は一応従前の関係省令で規定されていたものを再掲するに止めることを原則としているが将来は必要に応じて追加していく予定である。

第四 製品検査に関する事項

一 法第一四条乃至第一六条の製品検査に関する規定は一定の食品、添加物、器具又は容器包装はすべて厚生大臣又は都道府県知事の検査を受ける事を要求し、これに合格したものに対してのみ合格証を与え、販売、陳列、営業上の使用を認めることとし、差し当たり、厚生大臣は「溶性サツカリン」「ズルチン」「タール色素」「ロダン酢酸エチルエステル及びその製剤」について、都道府県知事は「溶性サツカリ、ズルチン、タール色素又は合成膨脹剤原料を主要成分とする製剤」についてこれを行うこととする。

二 各都道府県はそれぞれの製品製造社の所在、製造量を確認し必要な連絡を行うと共に、検査施設の器具試薬及び検査員並びに試料採取を行う食品衛生監視員等の整備訓練に努め、製品検査の遂行に支障ないよう措置されたい。

三 厚生大臣の行う製品検査の試料の採取については、都道府県の食品衛生監視員にこれを行わしめ、これが試料の送付その他について都道府県の協力援助を願いたい。

第五 食品衛生監視員に関する事項

一 食品衛生監視員は、食品衛生行政の第一線機関として重要なものであるから、十分な行政活動をなすために必要な数の専任者を任命されたい。

二 都道府県知事が食品衛生監視員を命ずるには、必ず次の条件に合う者でなければならない。

(イ) 都道府県吏員であること。

(ロ) 規則第一七条に規定する資格を有すること。

三 都道府県知事は、食品衛生監視員をして、臨検検査及び収去の権限を行わしめるに当たつて次の事項に対し留意されたい。

(イ) 食品衛生監視員の証を必ず携帯し、関係人から要求のある時は勿論、更に食品衛生監視員より進んでこれを提示するよう指導すること。

(ロ) 臨検権限は原則として日出より日没まで又は営業時間(準備整理等のため開かれる時間を含む)に限ることとし、みだりに不必要な場所に立ち入り又は業務の著しい妨害とならないよう注意すること。

(ハ) 収去権限を行うに当たつてはその理由を述べ収去証を発行し、収去量は試験のために必要な量に限り、濫に理由を附して大量に亘らないこと。若し関係人より要求のある時は事情の許す限り収去したと同量の物件を採り、之を封緘して後日の証拠として手交すること。

四 都道府県知事は、食品衛生監視員に対し、食品衛生監視員が有害の虞ある食品等を発見したとき、販売の停止、移動の禁止等公衆衛生上直ちに採らねばならない簡易にして業者の損害の少ない最小限度の応急措置を採り得るよう考慮されたい。

五 食品衛生監視員がその職務を行うに当たつても、収賄、越権秘密の漏えい、その他不正の行為があつたときは、商法その他の法令に依つて処分されることは勿論であるが、かかる事態の生じないよう十分指導監督をされたい。

第六 営業許可に関する事項

一 規則第一九条に規定する営業は都道府県知事の許可を受けなければならないのであるが、これが取扱については従来の営業権的の思想は一掃し、都道府県知事が公衆衛生上必要として定めた一定の基準に合うと認められたものはすべて許可を与えなければならない。

二 従つてその判定はその施設の実施につき必ず食品衛生監視員をして個人の主観に左右されず基準に照らして調査せしめ、その上申によることとし、法第二一条の「許可しなければならない」の項を尊重されたい。

三 営業の許可又は不許可は敏速、公平を旨とすると共に不許可の場合もその理由を附して申請書に通知することとされたい。

四 法第三六条の規定により従来許可を受けて営業を営んでいる者は、本法により許可を受けたものと見做されることとなつているが、この場合に於いても公衆衛生上必要な措置は十分に講ずる必要があるので、これ等に対してもすべて食品衛生監視員をして都道府県知事の定めた基準に合致するや否や臨検検査せしめ、法第二四条の規定により、その整備改善を命じ又は許可の取消等の必要な措置を講じ新法の主旨に合致せしめられたい。

第七 行政処分及び司法処分に関する事項

一 法第二二条乃至第二四条にもとづく行政処分は公衆衛生上の安全保持のために行う必要な措置であつて、処罰として考えるべきでない。

二 食品衛生監視員には司法警察権は現在与えられていないのであるから、司法処分を必要と認めるときは、検察当局へ告発するよう指導されたい。

第八 地方食品衛生委員会に関する事項

一 食品衛生行政は国民大衆のためであるから、その要望を容れ且つ、後援協力を得ると共に、行政を妥当適正ならしめるために、都道府県知事の諮問機関として地方食品衛生委員会を設けることとしたものである。従つて、これは執行機関ではないが都道府県知事はこの意見にできるだけ従うと共に、新たなる企画とか行政処分を行うに当たつてはなるべくこれに諮問されたい。

二 委員には営業者の比率を余り多くせず、学識経験者を少なくとも三分の一程度以上確保し、なお受験者代表を加えるよう考慮されたい。

第九 手数料に関する事項

一 都道府県の行う製品検査手数料及び営業許可手数料(地方公共団体手数料令に基く)を府県の収入とするよう措置中である。

なお、右手数料の納入手続は都道府県の定める手数料徴収に関する規則によることとされたい。

この財源は本通牒第五の一による食品衛生監視員設置に要する費用等に充当することとされたい。

二 厚生大臣の行う製品検査手数料納入については/厚生省/物価庁共同告示に定める金額につき検査申請書に収入印紙をちよう付することによりこれを行うこととするから、右申請書の受理に当たつてはこれに留意の上処理されることと致されたい。