添付一覧
○給水装置の構造及び材質の基準の改正について
(平成九年七月二三日)
(衛水第二〇三号)
(各都道府県水道行政担当部(局)長あて厚生省生活衛生局水道環境部水道整備課長通知)
日頃から水道行政の推進につきましては種々ご配意賜り感謝申し上げます。
さて、今般、水道法施行令の一部を改正する政令(平成九年政令第三六号)により、水道法(昭和三二年法律第一七七号。以下「法」という。)第一六条に基づき水道法施行令(昭和三二年政令第三三六号。以下「令」という。)第四条に規定する給水装置の構造及び材質の基準(以下「構造・材質基準」という。)が改正され、新たに構造・材質基準の技術的細目を厚生省令で定めることとされるとともに、当該厚生省令として給水装置の構造及び材質の基準に関する省令(以下「基準省令」という。)が平成九年三月一九日厚生省令第一四号をもって公布され、平成九年一〇月一日より施行されることとなりました。
つきましては、左記の事項に留意の上、法に基づく給水装置の使用に関する規制が適正に行われるよう、貴管下の水道事業者に対する周知及び指導方よろしくお願いします。
記
第一 構造・材質基準の改正等の趣旨
構造・材質基準は、水道事業者が法第一六条に基づき給水契約の申込みの拒否又は給水停止の権限を発動するか否かの判断に用いるためのものであるから、給水装置が有すべき必要最小限の要件を基準化しているものであること。
今般、この基準について、生活環境審議会水道部会給水装置専門委員会報告書「給水装置に係る使用規制の合理化について」(平成九年三月)において、現行の構造・材質基準の考え方は妥当であり基準項目を改める必要はないが、その明確化、性能基準化を図るため、技術的な細目を定めるべきとされたことから、これを踏まえて令第四条が改正され、同条に第二項を新たに設けて、構造・材質基準を適用するために必要な技術的細目を厚生省令で定めることとされたこと。
この厚生省令として、新たに基準省令を定め、個々の給水管及び給水用具が満たすべき性能及びその定量的な判断基準(以下「性能基準」という。)及び給水装置工事が適正に施行された給水装置であるか否かの判断基準を明確化することとしたこと。
第二 基準省令の概要
二―一 基準省令の各技術的細目について
基準省令において定めている技術的細目は、令第四条の各号列記の基準項目のすべてについて定めたものではなく、当該基準項目のうち技術的細目を必要とするものについて定めたものであること。
(一) 耐圧に関する基準(基準省令第一条)
令第四条第一項第四号の「水圧に対し充分な耐力を有するものであること」及び「水が漏れるおそれがないものであること」についての技術的細目を次のように定めたこと。
ア 給水装置(最終の止水機構の流出側に設置されている給水用具を除く。次のイにおいて同じ。)に一定の静水圧を加えたとき、水漏れ、変形、破損その他の異常を生じないものでなければならない。
イ 給水装置の構造及び材質に応じた適切な接合が行われているものでなければならない。
ウ 家屋の主配管は、配管の経路について構造物の下の通過を避けること等により漏水時の修理を容易に行うことができるようにしなければならない。
(二) 浸出等に関する基準(基準省令第二条)
令第四条第一項第四号の「水が汚染されるおそれがないものであること」についての技術的細目を次のように定めたこと。
ア 飲用に供する水を供給する給水装置は、供試品からの金属等の浸出が基準値以下となるものでなければならない。
イ 給水装置は、末端部に排水機構が設置されているものを除き、水が停滞する構造であってはならない。
ウ シアン等の水を汚染するおそれのある物の貯留・取り扱い施設に近接して給水装置が設置されていてはならない。
エ 油類が浸透するおそれのある場所に設置されている給水装置は、当該油類が浸透するおそれがない材質のもの又は適切な防護措置が講じられているものでなければならない。
(三) 水撃限界に関する基準(基準省令第三条)
令第四条第一項第五号の「破壊を防止するための適当な措置が講ぜられていること」についての技術的細目として、水栓その他水撃作用を生じるおそれのある給水用具は、一定の流速又は動水圧条件において止水機構を急閉止した際に生ずる水撃作用による上昇圧力が一定以下となるものであるか、又は水撃防止器具を設置すること等の水撃防止措置が講じられているものでなければならないことを定めたこと。
(四) 防食に関する基準(基準省令第四条)
令第四条第一項第五号の「侵食を防止するための適当な措置が講ぜられていること」についての技術的細目を次のように定めたこと。
ア 酸又はアルカリによる侵食のおそれのある場所に設置されている給水装置は、それらに対する耐食性材質のものであるか、又は適切な侵食防止措置が講じられているものでなければならない。
イ 漏えい電流による侵食のおそれのある場所に設置されている給水装置は、非金属製のものであるか、又は適切な電気防食措置が講じられているものでなければならない。
(五) 逆流防止に関する基準(基準省令第五条)
令第四条第一項第四号の「水が汚染されるおそれがないものであること」及び同条第一項第七号の「水の逆流を防止するための適当な措置が講ぜられていること」についての技術的細目を次のように定めたこと。
ア 水が逆流するおそれのある場所に設置されている給水装置は、一定の逆流防止性能を有する減圧式逆流防止器、逆止弁等の給水用具が水の逆流を防止することができる位置に設けられ、又は一定以上の吐水口空間が確保されているものでなければならない。
イ 事業活動に伴い、水を汚染するおそれのある場所に給水する給水装置は、一定以上の吐水口空間が確保され、当該場所の水管等と分離すること等により、適切な逆流防止措置が講じられているものでなければならない。
(六) 耐寒に関する基準(基準省令第六条)
令第四条第一項第五号の「凍結を防止するための適当な措置が講ぜられていること」についての技術的細目として、屋外で気温が著しく低下しやすい場所その他凍結のおそれのある場所に設置されている給水装置であって、断熱材で被覆すること等により適切な凍結防止措置が講じられていないものについて、次のように定めたこと。
ア 減圧弁、逃し弁、逆止弁、空気弁及び電磁弁(給水用具の内部の弁を除く。以下「弁類」という。)は一定回数の開閉操作後、一定の低温条件下で保持した後通水したとき、基準省令に規定する耐圧性能、水撃限界性能及び逆流防止性能を有するものでなければならない。
イ 弁類以外の給水装置は、一定の低温条件下で保持した後通水したとき、基準省令に規定する耐圧性能、水撃限界性能及び逆流防止性能を有するものでなければならない。
(七) 耐久に関する基準(基準省令第七条)
頻繁な開閉作動を繰り返すうちに弁類の耐圧性能、水撃限界性能及び逆流防止性能に支障が生じることを防止するための基準であり、弁類は一定回数の開閉操作後、基準省令に規定する耐圧性能、水撃限界性能及び逆流防止性能を有するものでなければならないことを定めたこと。
二―二 基準省令の性能基準に係る試験方法について
(一) 基準省令の性能基準に係る試験方法として、基準省令第一条第一項第一号、第二条第一項、第三条、第五条第一項第一号イ及び第六条の規定に基づき給水装置の構造及び材質の基準に係る試験(平成九年厚生省告示第一一一号。以下「試験告示」という。)を定めたこと。
(二) 給水装置工事に使用する材料(以下「給水装置工事材料」という。)が基準省令の性能基準に適合している製品(以下「性能基準適合品」という。)であるか否かについての試験は試験告示に定める方法により行われなければならないこと。
第三 給水装置の構造及び材質の基準の運用
三―一 既存の給水装置等と基準省令との関係について
(一) 基準省令は、改正前の令第四条に規定していた構造・材質基準の範囲内で、そのうちのいくつかの基準項目について適用の技術的細目を定めたものであることから、既設の給水装置及び(社)日本水道協会の検査証紙表示製品又は日本工業規格表示製品、その他現に水道事業者が使用を認めている給水管及び給水用具については、基準省令が定められたことをもって再検査を実施する等により、水の供給を受ける者、製造業者等に過重な負担を及ぼすことがないようにすること。
(二) 同様に、基準省令第一条第三項その他の配管方法に係る規定は従来の規制を強化するものではないため、改正前の令第四条に適合している配管方法については基準省令にも適合するものであり、建築主等に新たな負担を課すものではないこと。
(三) 基準省令の性能基準を満足する製品規格(日本工業規格、製造業者等の団体の規格、海外認証機関の規格等の製品規格のうち、その性能基準項目の全部に係る性能条件が基準省令の性能基準と同等以上に厳しいものをいう。)に適合している製品については、基準省令の性能基準に適合したものとなること。
したがって、当該製品規格に適合していることが明確な製品(例えば当該製品規格の体系において規格適合の認証が行われ、製品にその旨表示されている製品)について、重ねて基準省令に係る試験を行う必要はないこと。
三―二 性能基準適合品であることの判断について
(一) 基準省令及び試験告示の制定により、給水装置工事材料が性能基準適合品であるか否かについての判断内容及び判断方法が明確化されたため、給水装置工事材料を製造、輸入又は販売する製造業者等、給水装置工事材料を購入して工事に用いる指定給水装置工事事業者、水道法第一七条に基づき給水装置の検査を行う水道事業者等、すべての関係者が同一の定量的な判断を行うことが可能となったこと。
(二) したがって、製造業者等が自らの責任において性能基準適合品であることを証明できる制度になったこと。
(三) 水道事業者は、給水装置が構造・材質基準に不適合であれば法第一六条に基づく給水停止等の権限を発動できるが、当該権限の発動を回避するために、製造業者等や指定給水装置工事事業者に対して特定の基準認証機関の利用を義務付けることはできないこと。
(四) 水道事業者は、性能基準適合品である給水装置工事材料について、自らが推薦する製品ではないこと、又は特定の基準認証機関による認証が行われていないこと等を理由として、指定給水装置工事事業者にその給水装置工事材料を使用させないことはできないこと。
(五) 水道事業者は、法第一六条の権限の発動とは別に、災害防止並びに漏水時及び災害時等の緊急工事を円滑かつ効率的に行う観点から、配水管への給水管の取付工事及び当該取付口から水道メータまでの給水装置工事についてその材料や工法等の指定を行うことは可能であるが、この場合であっても災害時の給水や災害復旧工事の円滑な実施を確保するために、必要最低限のものに限定して材料指定等を行うこと。
なお、このような指定等は、法第一六条の権限の発動と明確に区分されていなければならないこと。
(参考)
一 「自己認証」について
製造業者等は、自らの責任のもとで性能基準適合品を製造し若しくは輸入することのみならず、性能基準適合品であることを証明できなければ、指定給水装置工事事業者等の顧客の理解を得て販売することは困難となる。この証明について、製造業者等が自ら又は製品試験機関等に委託して得たデータ、作成した資料等によって行うことが自己認証といわれ、性能基準適合品であることの証明方法の基本となるものである。
なお、自己認証の具体例としては、製造業者等が、性能基準適合品であることを示す自社検査証印等の表示を製品等に行うこと、製品が設計段階で基準省令に定める性能基準を満たすものとなることを示す試験証明書及び製品品質の安定性を示す証明書(一例として、ISO(国際標準化機構)九〇〇〇シリーズの規格への適合証明書)を製品の種類ごとに指定給水装置工事事業者等に提示すること等が考えられる。
二 「第三者認証」について
基準適合性の証明方法としては、自己認証のほかに、製造業者等との契約により、中立的な第三者機関が製品試験、工場検査等を行い、基準に適合しているものについては基準適合品として登録して認証製品であることを示すマークの表示を認める方法(以下「第三者認証」という。)があるが、これは製造業者等の希望に応じて任意に行われるものであり、義務付けられるものではない。
第三者認証を行う機関の要件及び業務実施方法については、国際整合化等の観点から、ISOのガイドライン(ISO/IECガイド六五:製品認証機関のための一般的要求事項)に準拠したものであることが望ましい。なお、厚生省においては、平成九年六月、「給水装置に係る第三者認証機関の業務等の指針」を定めたところである。
別添一:給水管及び給水用具の性能基準の解説〔略〕
別添二:給水装置標準計画・施工方法〔略〕