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○水道法の一部改正に伴う簡易専用水道の規制等について

(昭和五三年四月二六日環水第四九号各都道府県知事あて厚生省環境衛生局水道環境部長通知)

水道法の一部を改正する法律は、昭和五二年六月二三日法律第七三号をもつて公布され、既に施行されている部分を除いて昭和五三年六月二三日から施行されることとなつているが、これに伴い水道法施行令の一部を改正する政令が昭和五三年四月七日政令第一二三号をもつて公布され、また水道法施行規則及び建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行規則の一部を改正する省令が昭和五三年四月二五日厚生省令第二三号をもつて公布された。このうち、権限の委任に関する部分については昭和五三年五月一日から、簡易専用水道に関する部分については昭和五三年六月二三日から施行されることとなつた。

これらの改正は、水道法の一部改正により新たに規制されることとなつた簡易専用水道の適用除外の基準を定め、また、簡易専用水道の設置者が遵守すべき管理の基準等を定めるとともに、認可等に関する厚生大臣の権限の都道府県知事への委任の範囲を拡大することとしたものであるが、特に左記事項に留意のうえ、運用に遺憾なきを期されたく通知する。

第一 簡易専用水道について

一 制定の趣旨

居住者に水を供給する自家用等の水道については、これまで飲料水の衛生確保の観点から一定の規模を有するものを専用水道として水道事業と同様の規制がなされる等により衛生的で安全な水の供給の確保が図られてきたところである。

ところで、これまで建築物は、高層化、大型化の途をたどるとともにその数も急速に増加してきたが、これらの建築物に設けられる受水槽以下の給水施設についてはそのほとんどが水道法(昭和三二年法律第一七七号。以下「法」という。)の規制の対象とならなかつた。

このため、水道事業により供給される水を水源とするものであつても、受水槽以下の施設の管理が十分でない事例も指摘されてきた。

このような実情にかんがみ、ビル、マンション等に設けられる受水槽その他の給水のための施設であつて水道事業により供給される水のみを水源とするものについて今回、簡易専用水道として法の規制の対象とし、その設置者は、適正な管理を行わねばならないものとされたものであること。

二 規制の対象

法の規制を受ける簡易専用水道は、水道事業の用に供する水道及び専用水道以外の水道であつて、水道事業の用に供する水道から供給を受ける水のみを水源とするもののうち、水の供給を受けるために設けられる水槽の有効容量の合計が二○立方メートルを超えるものとされたこと(法第三条第七項、水道法施行令(昭和三二年政令第三三六号。以下「令」という。)第一条の二)。

規制の対象となるものの確定に当たつては、特に次の点に留意されたいこと。

(一) 水道事業者から供給を受ける水のみを水源とするものであること。

したがつて、水源とする水の全部又は一部が井戸等からのものである場合は除かれるものであること。

(二) 規制の対象を確定するための水槽は、水道事業の用に供する水道から水の供給を受けるために設けられるもののみをいい、したがつて、通常受水槽といわれるものに限定されるものであること。

(三) 有効容量とは、水槽において適正に利用可能な容量をいい、水の最高水位と最低水位との間に貯留されるものであること。

(四) 事業所等に設置されるもの及びもつぱら消防法(昭和二三年法律第一八六号)第一七条に規定する消防用設備等(以下「消防用設備等」という。)として設置されるものであつて、まつたく飲用に供されることのないもの並びに船舶、航空機等に設置されるものは除かれるものであること。

三 管理の基準

(一) 簡易専用水道の設置者は、厚生省令で定める基準に従い、その水道を管理しなければならないものとされたが、この管理の基準は、供給される水の安全衛生を確保するために通常必要と考えられるものであり、その内容は次のとおりであること(法第三四条の二第一項、水道法施行規則(昭和三二年厚生省令第四五号。以下「規則」という。)第二三条)。

ア 水槽の掃除を一年以内ごとに一回、定期的に行うこと。

イ 水槽の亀裂等によつて有害物、汚水等の混入がないように定期的に点検を行い、欠陥を発見したときは、速やかに改善の措置を講ずること。

その他、地震、凍結、大雨等水質に影響を与えるおそれのある事態が発生したときも速やかに点検を行うこと。

ウ 給水せんにおける水の色、濁り、鼻い、味等の外観に注意し、これに異常があると認められるときには、必要な水質検査を実施し、その安全性の確認を行うこと。

エ 供給する水が人の健康を害するおそれがあることを知つたときには、直ちに給水を停止し、また、その旨を利用者等に周知せしめること。

(二) (一)の管理については、帳簿を備え記録し保存するよう指導されたいこと。

(三) 簡易専用水道の設置者は、当該水道の管理を行う義務を有するものであり、設置者自らが管理を行わない場合には実際に管理を担当する者を明確にし、また、水槽の掃除、水質の検査等については専門的な知識、技能を有する者をしてこれを行わしめることとするよう指導されたいこと。

なお、この場合の水槽の掃除については、建築物における衛生的環境の確保に関する法律(昭和四五年法律第二○号。以下「ビル管理法」という。)に基づき建築物の飲料水の貯水槽の清掃を行う事業の登録を受けた者の活用を図ることとするよう指導されたいこと。

(四) ビル管理法の適用がある簡易専用水道については、同法の規定により管理されるものであること。

(五) 消防用設備等と共用されている簡易専用水道の清掃に当たつて水槽内の水を抜く等により消防用設備等の機能が低下するおそれのあるときは、あらかじめ現地消防機関に連絡する等不測の事態に対する配慮を行うよう指導されたいこと。

四 検査機関

(一) 簡易専用水道の設置者は、一年以内ごとに一回、定期に、地方公共団体の機関又は厚生大臣の指定する者(以下「検査機関」という。)の検査を受けなければならないものとされたこと(法第三四条の二第二項、規則第二四条)。

この検査は、設置者自らがその管理の適否について専門的な知識を有する者の検査を受けることによつて当該水道により供給される水の衛生確保をより実効あらしめるためのものであつて、行政権限の行使に係るものではないこと。

(二) 検査は、検査機関が行うものであるが、地方公共団体の機関とは、都道府県又は市町村の機関であつて、水の衛生に関し専門的な技術と能力を有するものをいい、厚生大臣の指定する者とは、民法第三十四条の規定により設立された公益法人で厚生大臣がその申請に基づき指定するものであること。

(三) 検査機関は、検査手数料を徴収して検査を行うことができるものであるが、その額は、検査に要する実費の額を考慮した適正なものでなければならないこと。

なお、地方公共団体の機関も検査手数料を徴収することが望ましいが、その場合には条例の制定を必要とするものであること。

(四) 検査の方法その他必要な事項については、別途通知するところにより行うこととすること。

五 報告の徴収、立入検査、改善命令等

簡易専用水道に関する報告の徴収、立入検査、管理の方法の改善命令及び給水停止命令の都道府県知事の権限については、次のとおりであること。

(一) 都道府県知事は、必要があると認めるときは、簡易専用水道の設置者から管理について必要な報告を求め又はその職員に立入検査させることができることとされたこと(法第三十九条第二項)。

簡易専用水道の管理の実態については、検査機関と連絡を密にとり、簡易専用水道に係る行政の円滑な運用を図られたいこと。

(二) 都道府県知事は、簡易専用水道の管理が法第三十四条の二第一項の厚生省令で定める基準に適合していないと認めるときは、設置者に対して期間を定めて、清掃その他必要な措置を命ずることができるとともに、設置者が命令に従わない場合において、給水を継続させることが当該水道の利用者の利益を害すると認められるときは、給水を停止すべきことを命ずることができるものとされたこと(法第三十六条第三項、第三十七条)。

法第三十六条第三項の改善命令の内容は、清掃その他必要な措置とされているが、これには関係設備の補修等が含まれること。

法第三十七条の給水停止命令は、法第三十六条第三項の命令を行つた後、設置者が単にその命令に従わないというだけでなく、それによつて当該水道を利用する者の健康が害されるか又は害されるおそれが具体的に予見できる等著しく不適当な状態にある場合に行うものであること。

なお、当該簡易専用水道が消防用設備等と共用されている場合には、給水停止命令を発するに際し、その機能に配慮し、消防用設備等の機能が低下するおそれのあるときは、あらかじめ現地消防機関に連絡するものとすること。

(三) ビル管理法が適用される簡易専用水道についての報告の徴収、立入検査、改善命令等は、同法の規定により行うこととし、水道法による規制を重複させないようにすること。

なお、法第三四条の二第二項の検査についての規定はビル管理法が適用される簡易専用水道についても適用があることに留意されたいこと。

六 広報等

市町村、水道事業者等の協力により簡易専用水道の実態は握に努めるとともに、設置者に対し規制の内容等を周知徹底し、法の円滑な施行を図られたいこと。

七 その他

地方公共団体において法に規定する規模以下のものについて、その地域的実情と必要とに応じて条例により規制し、又は要綱等により指導することは法の制定の趣旨からみて差し支えないものと解するものであること。

第二 権限の委任について

水道事業及び水道用水供給事業に関する行政事務の簡素化を図るため、昭和五三年五月一日から認可等に関する厚生大臣の権限を次のとおり都道府県知事に委任することとしたのでこの旨了知し、適切な体制整備を図るとともに、水道事業等に周知徹底せしめられたいこと。

(一) 給水人口が五万人以下である水道事業に関する認可(法第六条第一項)、変更認可(法第一○条第一項)、認可の取消(法第三五条)、改善命令(法第三六条)、給水停止命令(法第三七条)等の権限は、都道府県知事に委任されるものであること(令第七条第一項)。

(二) 一日最大給水量が二万五○○○立方メートル以下である水道用水供給事業に関する認可(法第二六条)、変更認可(法第三○条)、認可の取消(法第三五条)、改善命令(法第三六条)、給水停止命令(法第三七条)等の権限は、都道府県知事に委任されるものであること(令第七条第二項)。

(三) 給水人口が五万人を超える水道事業又は一日最大給水量が二万五○○○立方メートルを超える水道用水供給事業の水源の種別、取水地点又は浄水方法の変更であつて、変更に要する工事費の総額が五○○○万円以下であるものについての変更の認可の権限は、都道府県知事に委任されるものであること(令第七条第三項)。