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○水道法の施行について

(昭和三二年一二月二七日)

(発衛第五二〇号)

(各都道府県知事あて厚生事務次官通達)

水道法は、昭和三二年六月一五日法律第一七七号をもつて、公布され、これが施行に必要な、水道法の施行期日を定める政令(昭和三二年政令第三三五号)及び水道法施行令(昭和三二年政令第三三六号)並びに水道法施行規則(昭和三二年厚生省令第四五号)もそれぞれ公布されて、一二月一四日から施行されることとなつた。水道条例は、明治二三年以来六○余年の長い間水道布設の基本法として極めて効果的な役割を果してきたが、制定当時に比して格段の進歩を示し、複雑多岐にわたり発達を見るに至つた今日の水道を規制するには、法制上幾多の不備欠陥が認められるに至つたので、このたび、水道条例を廃止して、水道法の制定が行われるに至つたのである。

この法律は、水道条例において対象としていた水道事業のほか、水道事業にその用水を供給する水道用水供給事業及び自家用水道等の専用水道をも新たに規制の対象とすることとし、規制の内容も、事業に対する規制のほか、水道の布設及び衛生管理の規制等、広く水道の布設及び管理を適正かつ合理的ならしめるとともに水道事業を保護育成することによつて、清浄で豊富低廉な水の供給を図り、もつて公衆衛生の向上と生活環境の改善に寄与せんとするものである。それが施行に当つては、次の各事項に充分御留意のうえ、所期の目的達成のために遺憾のないようにつとめられたく、命によつて通知する。

第一 一般的事項

一 この法律は、水道の布設及び管理の適正合理化及び水道事業の保護育成等について細部にわたり必要な措置を規定するとともに、水道事業に関する権限の委任範囲の拡大、専用水道の新規規制を規定する等都道府県知事の所掌事務の範囲が広範なものになつたことに伴い、これが円滑な施行を期するために関係機関及び職員の充実並びにその資質の向上について充分な配慮をせられ万遺憾なきを期せられたいこと。

二 この法律において、居住に必要な水を供給する専用水道が、新たに法適用の対象となつたが、従前都道府県の条例でこれに関し規制措置を講じている向にあつては、条例改正について必要な措置を講ぜられたいこと。なお、学校、事務所、その他に布設される居住を対象としない水道は、水道法の適用外であるので、これに関する衛生上必要な措置は、井戸水その他一般飲用水の衛生と同様、都道府県において講ずる措置に委ねられていること。

三 この法律において、水道事業は、一般の需要に応じて水を供給するものであり、専用水道は寄宿舎、社宅、療養所等の自家用の水道のほか、水道事業の用に供する水道以外の水道をいうものであるが、その区別は、おおむね次の基準によられたいこと。

(一) 自家用水道及び自家用水道の集合体と認められる水道のほか、家主が借家人に給水する水道、炭鉱の鉱害地において井戸枯渇の補償として炭鉱経営者が被害者に給水する水道等給水する者と給水を受ける者との間に当該給水についての特別の関係が存在するものは、専用水道として取り扱うこと。

(二) 分譲住宅、分譲地等において分譲者が分譲後もその地区の住民に対し給水する水道、農業協同組合、生活協同組合等が組合員に給水する水道等給水する者と給水を受ける者との間に前号のような特別の関係がない水道その他当該給水について原価を充足する程度の金額を、料金として徴収するような水道については、水道事業として取り扱うこと。

四 水質基準及び施設基準に関してはおつて省令が定められる予定であるが、それまでの間法第四条及び第五条において規定するところにより運用されたいこと。

第二 事業に関する事項

一 計画給水人口が二万人以下の水道事業及び一日最大給水量が六千立方メートル以下の水道用水供給事業に関する厚生大臣の権限は、ほとんど都道府県知事に委任されることとなつたが、水道事業及び水道用水供給事業の認可にあたつては、事業の高度の公益性にかんがみて、法第八条及び法第二八条に規定せられる各号の基準に照らして、事業の計画の全般にわたり、広い観点から、その確実性と合理性を確保して、公衆衛生の向上その他公共の福祉の増進に寄与せられたいこと。

二 法第六条及び第二六条の事業の認可は、有機的一体をなす水道の各個について適用があるものであること。従つて法第一○条及び第三○条の事業の変更の認可は、当該各個別の水道ごとに適用があるものであること。

三 法第一○条及び第三○条の事業の変更のうち、水源の種別、取水地点又は浄水方法の変更が、給水区域の拡張、給水人口、給水対象又は、給水量の増加を来す場合においては、当該変更は、給水区域の拡張、給水人口、給水対象又は給水量の増加の認可として取り扱うべきものであること。

四 事業の認可には、処理期限は規定せられていないが、できるだけすみやかに事務処理を行うようつとめられたいこと。

五 地方公共団体以外の者の水道事業経営に附すべき法第九条の期限は、おおむね、計画目標年次を標準とし、法第九条及び第二九条の条件は、水道施設の譲渡制限、担保禁止等必要最小限度のものに限られたいこと。

六 水道用水供給事業の適用除外となるべき分水(法第三条第四項ただし書)とは、水道事業者又は専用水道の設置者が当該水の分与を主たる目的としない場合をいうものであること。

七 法第一四条第二項の地方公共団体の料金の変更の届出書及び同条第三項の供給条件の変更の認可申請書には、別紙様式第一による計算書を添附せしめ、水道事業の経営の能率化による低廉な料金を確保するよう指導せられたいこと。

八 水道事業者の給水義務(法第一五条第一項)は、水道事業の公共性確保のための中心をなす規定であり、免責理由たる正当な理由は、配水管の事業計画上の未設置の場合、正常な企業努力にもかかわらず水量が著しく不足する場合、地勢等の関係で給水が技術的に著しく困難な場合等水道事業者の努力にもかかわらずその責に帰すべからずしておきるものに限るものであることを、充分徹底せしめて、需用者の保護を図るとともに水道事業者のサービス精神を振起せしめるよう指導せられたいこと。

第三 専用水道に関する事項

一 専用水道は、水道法によつて新たに規制の対象となつたのであるが、従前よりの関係もあり、これに関する法の運用に関しては、関係諸機関等と密接な連絡を図り、法施行の円滑を期せられたいこと。

二 専用水道の定義(法第三条第六項)において、居住に必要な水を供給するものとは、継続的な生活を営むために必要な水を供給することをいい、一般的には寄宿舎、社宅、療養所、下宿、刑務所、少年院、養老施設等はこれに該当し、旅館、事務所等はこれに該当しないものであること。

三 専用水道の適用除外の基準(施行令第一条)は、地中又は地表に施設される水道施設が当該基準に該当するか否かで定まるものであつて、地表からの汚染の影響を受けない程度に高く設けられた水槽や導管の容量や延長は、この基準の数値には算入されないものであること。

四 専用水道が、あわせて一般の需要に応じて水を供給する場合は、その部分は、水道事業の規制を受けるものであること。この場合において、その部分が、一○○人以下であるときは、水道事業ではないので、当該部分は専用水道に含めて取り扱われたいこと。

五 専用水道の確認は、申請受理の日から起算して三○日以内に行うことに規定(第三三条第四項)せられているので、期限内に処理するよう充分留意せられたいこと。

第四 管理に関する事項

一 水道技術管理者は、水道の技術管理の中心責任者となるものであるから、その設置にあたつては、政令で定める資格を有する者のうちから、当該水道の規模、構造等に適応する充分の技能を有する者を選定するよう特に指導せられて、水道の技術管理に万全を期せられたいこと。

二 水質検査、健康診断、消毒その他の衛生上の必要な措置は、厚生省令の定めるところを励行せしめられるとともに、随時保健所職員等をして巡回指導せしめる等これが指導監督に遺憾なきを期せられたいこと。

三 水質検査の実施は、自己機関において行わない場合にあつては、なるべく保健所、地方衛生研究所等の公的機関に委託して行わせるよう指導せられたいこと。

四 給水人口が二万人をこえる水道事業及び一日最大給水量が六、○○○立方メートルをこえる水道用水供給事業についても、貴職におかれて、平素より必要な指導監督を行つて(法第三九条参照)、改善命令その他法による措置を必要とすると認めるときは、すみやかにその旨を具申せられ、事故発生の防止を期するよう特別の御配意を煩わしたいこと。この場合において、五大市については、地方自治法施行令第一七四条の四二において特例が規定された趣旨にかんがみて、立入検査等の権限の行使がなくてすむよう、その能力の自律的発揮によつて、管理の万全を期せしめられるよう平素の指導につとめられたいこと。

第五 その他

一 都道府県知事は、施行令第七条の規定により、水道事業又は水道用水供給事業に関する法第六条及び第一○条並びに法第二六条及び第三○条の規定による処分をしたときは、すみやかに厚生大臣に報告すること。

二 法附則第五条第一項の規定により旧水道条例に基く認可又は許可によらない水道事業は、すべて新法により認可を受けたものとみなされるので、水道事業の給水区域が重複する場合が生ずるものがあると思われるが、これは、法第八条第四号の趣旨から、極力避けるべきものであるので、法附則第五条第三項の規定により適当な期限又は条件を附して、近い将来において、その重複が解消するよう特別の考慮を払われたいこと。

三 昭和二七年一二月一二日厚生省発衛第二三一号厚生事務次官通達による「水道料金について」は廃止すること。

(様式第一)

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