添付一覧
○ウエットワイパー類の安全衛生自主基準について
(昭和六一年八月二五日)
(衛家第七号)
(各都道府県・各政令市衛生主管部(局)家庭用品安全対策主管課長あて厚生省生活衛生局企画課家庭用品安全対策室長通知)
標記製品について、安全、衛生の一層の向上のため業界団体である日本清浄紙綿類工業会に対し、自主基準の検討を進めるようかねてより要請していたところ、今般、別添のとおり自主基準を作成し、明年一月一日から実施することとして会員に対し周知徹底した旨報告がありました。
ついては、貴管下関係業者に対する御指導の参考とされるよう送付します。
〔別添〕
ウエットワイパー類の安全衛生自主基準
(昭和六一年七月)
(日本清浄紙綿類工業会)
目次
はじめに
ウエットワイパー類の安全衛生自主基準
一 目的
二 定義
三 製造基準
四 安全・衛生基準及び試験方法
五 製造設備・構造
六 製造管理
ぬれティシュの自主表示基準
一 目的
二 用途に関する表示の許容範囲
三 表示規制
四 一般表示事項
使い捨ておしぼり・お手ふきの自主表示基準
一 目的
二 定義
三 用途表示範囲
四 一般表示事項
ウエットワイパー類自主基準解説
一 自主基準制定までの背景について
二 自主基準のポイント
三 用途表示上の注意事項
はじめに
日本清浄紙綿類工業会は昭和四九年四月設立以来、厚生省のご指導並びに会員相互のご協力によつて発展してまいりました。
昭和五五年二月には、当工業会技術委員会(相京委員長)を中心として、昭和四六年九月二三日付薬事第三二七号厚生省薬務局薬事課長通知に基づく「医薬部外品清浄綿」の製造承認申請要項を自主策定し、円滑な申請手続の実務書として運用され、かつ、安全性の確保と品質向上に努めてまいりました。
このたび、この実績をふまえて、「ぬれティシュ」及び「使い捨ておしぼり・お手ふき」を定義づけ、「ウエットワイパー類の安全衛生自主基準」を策定し、かつ目的を明確にした「ぬれティシュ」並びに「使い捨ておしぼり・お手ふき」の「自主表示基準」を夫々策定するに至りましたことは、益々拡大予想されるこの種、商品群の安全性と品質の確保に、よりよい指針となり消費者の保健衛生志向に貢献することを企業の使命として本基が正しく運用され業界の発展に資することを期待するものであります。
本基を策定するに当り厚生省薬務局並びに同生活衛生局ご当局の並々ならぬご指導ご援助を賜わりましたことに深甚なる感謝の意を表するものであります。
なお、会員各位におかれても本基策定に際しまして、積極的にご尽力ご協力を賜わりましたことを深く御礼申上げる次第であります。
昭和六一年七月
日本清浄紙綿類工業会
会 長 今 岡 義 雄
ウエットワイパー類の安全衛生自主基準
一 目的
ウエットワイパー類の安全ならびに衛生性を確保し、品質の向上を図ることを目的とする。
二 定義
ウエットワイパー類(以下本品という)とは、「ぬれティシュ」、「使い捨ておしぼり」、「お手ふき」等の総称で、「ぬれティシュ」にあつては、手・指・皮膚、「使い捨ておしぼり」「お手ふき」にあつては、手・指の清拭を目的としてつくられた再使用しない商品をいい、医薬品、医薬部外品、化粧品を除く。
三 製造基準
1 製法
紙・不織布・脱脂綿・レーヨンステーブル綿又はこれらにプラスチックフィルム等を複合した基布に、水・アルコールあるいは皮膚に対する安全性に支障のない薬液・香料を含浸させて得た本品を、密閉容器・被包に収納する。
2 使用材料
本品を製造するに際して古紙、古綿及び再生基布(注)を使用してはならない。
3 使用する薬品の原則的範囲
(一) 使用する薬品は、原則として、次の範囲であること。
① 化粧品原料基準(昭和四八年七月厚生省告示第二○九号)ならびに食品添加物公定書収載品目の範囲内のものであること。
② 殺菌消毒剤については、日本薬局方収載品目の範囲とする。
(二) 薬液の濃度
保健衛生上支障がなく、本品の安全、衛生ならびに品質の確保を充足する範囲内であること。
(三) 前期以外の許容範囲
安全性について十分な知見があり、使用濃度においても安全性の確証がある迄は、本品に使用しないこと。
四 安全・衛生基準及び試験方法
1 品質基準
(一) 著しい変色及び異臭がないこと。
(二) 著しい蛍光又は著しい汚染を疑わせる蛍光を認めない。
(三) ホルムアルデヒドは、別に定められた試験に適合すること。
(四) 大腸菌群が検出されないこと。
(五) 一般生菌数は一g当り三○○○個を超えないこと。
2 試験方法
二―一 蛍光
本品に暗所で紫外線を照射し、目視にて判定する。
二―二 ホルムアルデヒド
(一) 試験溶液の調整
本品を湿潤状態のまま細片したのち二・五○gを二○○mlの共栓フラスコに正確に量り入れ、精製水一○○mlを加えたのち密栓し、四○度の水浴中で時々振り混ぜながら一時間抽出する。
次にこの液をガラスろ過器(工業標準化法昭和二四年法律第一八五号)に基く日本工業規格(以下「日本工業規格」という)のガラスろ過器(細孔記号G二)に適合するものを用いて温時ろ過し、これを試験溶液とする。
(二) 試験方法
試験溶液五・○mlを正確に採り、アセチルアセトン試液五・○mlを加えて振り混ぜ、四○度の水浴中で三○分間加温し、三○分間放置したのち、精製水五・○mlにアセチルアセトン試液五・○mlを加えて同様に操作したものを対照として、層長一cmで四一二―四一五mmにおける吸収の極大波長で吸光度Aを測定する。
別に試験溶液五・○mlを採り、アセチルアセトン試液の代りに精製水を用いて同様に操作したのち、精製水を対照として、吸光度Aを測定した場合と同じ波長における吸光度Aを測定するとき、A― A0の値は○・○五以下でなければならない。
ただし、A― A0の値が○・○五を越えたときは、次の試験により、吸光度A及び A0を測定した波長における吸収がホルムアルデヒドによるものであることを確認しなければならない。
試験溶液五・○mlを共栓試験管に採り、ジメドン・エタノール溶液一・○mlを加えて振り混ぜ、四○度の水浴中で一○分間加温し、更にアセチルアセトン試液五・○mlを加えて振り混ぜ、四○度の水浴中で三○分間加温し、三○分間放置したのち、試験溶液の代りに精製水五・○mlを用いて、同様に操作したものを対照として、吸収スペクトルを測定するとき、波長四一二―四一五mmにおいて、吸光度A及び A0を測定した場合と同様の吸収のスペクトルを示してはならない。
(三) 試薬・標準液等
① 精製水
薬事法(昭和三五年法律第一四五号)に規定する日本薬局方(以下、日局という)精製水を用いる。
② アセチルアセトン試液
酢酸アンモニウム(日本工業規格試薬特級)一五○gに適量の精製水を加えて溶かし、氷酢酸(日本工業規格試薬特級)三ml及びアセチルアセトン(日本工業規格試薬特級)二mlを加え、更に精製水を加えて、一○○○mlとしたものを用いる。
用事調製する。
③ ジメドン・エタノール溶液
ジメドン(日本工業規格試薬特級)一gにエタノール(日本薬局エタノール)を加えて溶かし、一○○mlとしたものを用いる。
用時調製する。
(注) 本試験は、有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律施行規則(昭和四九年九月厚生省令第三四号)を適用した。
二―三 微生物試験
(一) 試料の調製
本品一gを次のいずれかの方法により処理し、その抽出液を試料とする。
① ストマッカー法
ストマッカー用滅菌ポリ袋に検体一g及び滅菌生理食塩水一○○mlを入れストマッカーで約三分間処理して抽出液を得る。
② 手振法
約五○○ml容量の広口ビンに生理食塩水一○○mlを入れて、高圧蒸気滅菌したものに検体一gを入れ、三分間程度振つて抽出液を得る。
(二) 大腸菌群
試料各一mlを二本のBGLB醗酵管に入れ、三七度で培養し、四八時間まで観察してガスが発生した場合には、その醗酵管からEMB平板培地に画線塗抹し、三七度で二四時間分離培養を行ない、平板培地上に定型的な大腸菌群の集落を認めたときは陽性とする。
(三) 一般生菌数
試料一mlを採り、滅菌生理食塩水を用いて、四―五段階まで、一○倍段階希釈を行ない、その各希釈液一mlを滅菌ペトリー皿各二枚に入れ、これにあらかじめ溶解して約四五度に保つた標準寒天培地約一五mlを加え、静かに回転混合して冷却凝固させ静置する。
凝固後これを倒置して、三七度で約四八時間培養した後、発生した集落を数え計算により検体の集落数を算定する。
ただし、防腐剤(パラベン、安息香酸等)添加製品の試料を用いる時は不活化剤(ポリソルベート類、レシチン、ポリエトキシラウリルエーテル)を配合した希釈液を用いて、別に一―三段階程度で、一○倍段階希釈を行なうことにより、集落数の算定を行なう。
五 製造設備・構造
1 製造所は、採光・照明・換気等に留意した構造であること。
2 便所は隔壁によつて製造所と区分されていること。
3 製造所は、防虫・防鼠に意を用いた構造であること。
4 製造所内に作業者専用の手洗設備を設けること。
六 製造管理
1 製造所は、常に清潔を保持し、不衛生な用品を持込まないこと。
2 手指は、消毒液等により常に清潔を保つこと。
3 使用する薬品・香料を取扱う器具類は、事前、事後に洗浄し、衛生的な状態を保つこと。
4 着衣は常に清潔にし、落髪防止のための帽子又は頭巾を着用すること。
5 不良品発生に際し、原因訴求を可能ならしめる体制(例えばロット管理)を確立すること。
注 本文にいう古紙・古綿・再生基布とは、一度何らかの用途に供された紙又は天然・化学・合成の各繊維をいい、損紙・裁落・打抜き片等は含まない。
付則 この自主基準は、昭和六一年七月二八日に決定され、昭和六二年一月一日から実施する。
ぬれティシュの自主表示基準
一 目的
医学部外品である清浄綿の「用法」及び「効能効果」と明確に区別し、手・指・皮膚の清拭を目的につくられた商品(以下本品といい、ぬれティシュを指す)の表示について規定するものであつて、本品の用法について消費者に誤解をあたえぬようにすることを目的とする。
二 用途に関する表示の許容範囲
(一) お子さま、老人、病人、寝たきりの人、入浴できない人の皮膚の清拭。
(二) 手、指の清拭、顔(ただし、目への使用は避けるよう明示)、首すじの清拭。
(三) 汗ふき、肌、又は皮膚の汚れ落し。
(四) 皮膚の清拭、身体ふき。
(五) お尻ふき(ただし、性器又はこう門への使用は避けるよう明示)。
(六) お子さまの食べこぼしに、又は、お子さまの口もとの清拭。
(七) 化粧おとし又は化粧直し。ただし、「連続取出方式」のものに限る。
三 表示規制
以下については、本品の容器・被包のみならず、本品の広告に際しても表示・標ぼうしない。
(一) 乳児(満一二か月以下)もしくは幼児への使用を奨める字句・イラスト・図案及び写真。
(二) 授乳時の乳首・乳房あるいは目・性器・こう門などへの使用を奨める字句・イラスト・図案及び写真。
四 一般表示事項
小売販売単位の容器・被包に、以下の事項を表示する。
(一) 製造・販売業者又は授与者の名称及び住所。
(二) 製造年月日又は製造ロット番号。
(三) 本品の基布の寸法。
(四) 小売販売単位当りの入り枚数。
(五) 香料を配合する場合は「香料配合」の字句。
(六) 水洗トイレへの投薬を禁ずる意の字句。
但し、本品に水に分散する基布を使用した場合はこの限りではない。
付則 この自主表示基準は、昭和六一年七月二八日に決定され、昭和六二年一月一日から実施する。
使い捨ておしぼり・お手ふきの自主表示基準
一 目的
手・指の清拭を目的につくられた商品(以下、本品といい、使い捨ておしぼり・お手ふきを指す)の表示について規定する。
二 定義
(一) 業務用
本品を使用するに際して、使用者が本品に対する対価を支払うことなく、サービスとして提供されるものをいう。
(二) 一般市販用
使用者が、手・指の清拭を目的として、対価を支払つて本品を購入するものをいう。
三 用途表示範囲
手・指の清拭以外の用途を表示する場合は、別に定める「ぬれティシュ自主表示基準」を適用する。
四 一般表示事項
(一) 業務用
① 個装毎に、製造・販売・授与者のうちいずれか一者の名称。
② 個装或いは外装毎に、製造年月日或いは製造ロット番号。
③ 本品に香料を配合した場合は、個装或いは外装毎に「香料配合」の字句。
(二) 一般市販用
小売販売単位の容器・被包に表示する。
① 製造・販売業者の双方又はいずれか一者の名称及び住所。
② 本品の基布の寸法。
③ 本品の一包装数量(本数又は枚数)。
④ 香料を配合する場合は、「香料配合」の字句。
付則 この自主表示基準は、昭和六一年七月二八日に決定され、昭和六二年一月一日から実施する。
ウエットワイパー類自主基準解説
一 自主基準制定までの背景について
1 厚生省環境衛生局の通達「貸しおしぼりの衛生確保について」
貸しおしぼりが不衛生であるとの声が各地で後を断たず、その実態を調査した厚生省は、環境衛生局環境指導課長名にて昭和五七年一一月一六日付の前記通達(環指第一五七号)を出し、「貸しおしぼりの衛生確保」のための行政指導に乗り出した。
なお、厚生省は、一年後をメドにぬれティシュ(使い捨ておしぼり・おてふきを含む)についてもガイドラインづくりを行なうとの意向を示した。
2 ぬれティシュ類の試買テスト
「神奈川県立婦人綜合センター生活科学部商品テスト室」では『最近、おしぼりや汚れ落しに手軽な「ぬれティシュ類」が販売されているが、薬事法の適用を受ける医薬品・医薬部外品と、その適用を受けない日用雑貨品とがある。
日用雑貨品のぬれティシュ類は、容器や包装形態が多様で、ティシュやガーゼ等素材も様々である。また、殺菌消毒剤等の表示についても法的義務もないため、消費者はその選択に戸惑うことも多いと思われる』とし、昭和五七年五月~七月の期間、横浜市内のデパート・スーパーで雑品一五銘柄、医薬部外品一銘柄、計一六点を試買し、微生物ならびに殺菌・消毒剤の定性試験を実施、その結果は昭和五八年五月一日付朝日新聞にて報道された。
衛生試験の結果は、一六銘柄中六銘柄から菌が検出され、中、二銘柄からは、一gあたり二○万~一○○万個の菌が検出されたという、ショッキングなものであつた。但し、異常な菌汚染は、「おてふき」であることを判明した。
3 厚生省(研究班)によるぬれティシュ類の衛生性確認のための基礎データー収集
婦人綜合センターの報告を、消費者安全対策面から重視した厚生省(研究班=主任研究者(財)食品薬品安全センター副所長岩原繁雄先生、分担研究者横浜市衛生研究所所長河村太郎先生、同日本清浄綿工業会副会長・兼技術委員長相京育三先生)は、(財)食品薬品安全センターに微生物試験を依頼、その数は、
喫茶店・レストランで使われる使い捨ておしぼり 一二九点
弁当・サンドウィッチに添えてあるおてふき 二九一点
店頭市販のぬれティシュ 三七点
計 四五七点
の多きに上つた。
この微生物試験の結果、大腸菌は殆んど発見されなかつたが、一般生菌数は、おてふきは二九一本中三一%が、全体(四五七本)でも一四%の検体から、一枚当り一○万個を超える菌が発見されたと報告されている。
4 日本清浄綿工業会(当時)自主基準作成に着手
当工業会は、神奈川県立婦人綜合センターの調査を重視し、昭和五八年一一月、当会技術委員会が『ぬれティシュの安全衛生基準』を起案、当工業会に対策委員会を設けて、鋭意、基準案の検討に注力した。
昭和六○年、厚生省の意向を受けて基準案の検討を精力的に行なう一方、消費者や流通の誤解を解き、『ぬれティシュ類』に対する信頼を勝ち取るため、工業会内に、『清浄綿部会』『ぬれティシュ部会』ならびにおてふきを包含した『おしぼり部会』を設置し、ぬれティシュとおしぼりは、個々に自主基準を設ける方向で検討を重ねたが、行政当局や消費者に対して簡明さが必要との判断から、ぬれティシュ、使い捨ておしぼり、おてふきを包含するウエットワイパー類安全衛生自主基準として一本化し、表示基準のみ二つに分けた今回の基準案が制定された。
二 自主基準のポイント
1 ウエットワイパーの衛生・安全性の確保
日用雑貨品ではあるが、手・指・皮膚等の清拭という用途に鑑み、消費者に安心して使つていただけるよう、品質の確保を目的とする『ウエットワイパー類の安全衛生基準』を制定した。
2 清浄綿との用途区別の明確化
ぬれティシュは、用法・使用部位が清浄綿と類似しており、消費者に誤つて用いられる懸念が大きいため、清浄綿との用途区別を明確化することを主眼とする表示基準を制定した。
三 用途表示上の注意事項
清浄綿との用途目的を明確に区別するため、紛らわしい表示標ぼうは避けられたい。
事例
1 「乳児」「幼児」および「赤ちゃん」
2 「ミルクや離乳食を吐いたとき」
3 「指しやぶりを始めた赤ちゃんの手・指ふきに」
4 「おむつの交換のときに」
5 「汗のにおい消しに」
6 「赤ちゃんづれの外出に」