アクセシビリティ閲覧支援ツール

添付一覧

添付画像はありません

○有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律の施行について

(昭和四九年一〇月一日)

(環企第八九号)

(各都道府県知事・各政令市長あて厚生省環境衛生局長通達)

有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律(昭和四八年法律第一一二号。以下「法」という。)、有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律第二条第二項の物質を定める政令(昭和四九年政令第三三四号。以上「令」という。)及び有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律の施行に伴う関係政令の整理等に関する政令(昭和四九年政令第三三五号)並びに有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律施行規則(昭和四九年厚生省令第三四号。以下「規則」という。)の施行については、別途厚生省環第六八八号厚生事務次官通知により指示されたところであるが、なお、下記事項に留意のうえ、運用に当たつて遺憾のないようされたい。

第一 総則的事項

一 目的

本法は、有害物質を含有する家庭用品について保健衛生上の見地から必要な規制を行うことにより、国民の健康の保護に資することを目的とするものであり、従来規制の及んでいなかつた家庭用品一般について有害物質面の規制を行おうとするものであること。

なお、家庭用品一般の他の面の規制については、消費生活用製品安全法(昭和四八年法律第三一号)が制定され、通商産業省において施行されているところであること。

二 家庭用品及び有害物質の定義

(一) 家庭用品の定義

ア 家庭用品とは、主として一般消費者の生活の用に供される製品をいうものであつて、国民が日常生活で使用しているあらゆる物品がその対象となり、使用目的、使用者等からみて明確に業務用のものでないかぎりこれに該当することになること。

なお、従として業務用に用いられる製品については業務用のものも家庭用品に該当すること。

イ 次に掲げる製品は家庭用品に該当しないこと。ただし、(ウ)に該当する製品は現在存在しないこと。

(ア) 食品衛生法第二条第一項に規定する食品、同条第二項に規定する添加物、同条第四項に規定する器具及び同条第五項に規定する容器包装並びに同法第二九条第一項に規定するおもちや及び同条第二項に規定する洗浄剤

(イ) 薬事法第二条第一項に規定する医薬品、同条第二項に規定する医薬部外品、同条第三項に規定する化粧品及び同条第四項に規定する医療用具

(ウ) (ア)及び(イ)のほか、政令で定める法律の規定に基づき、規格又は基準を定めて、その製造、輸入又は販売を規制しており、かつ、当該規制によつて有害物質による人の健康に係る被害が生ずるおそれがないと認められる製品で政令で定めるもの

ウ 法の適用の対象となる家庭用品は、ア及びイのとおりであるが、法第四条の規定に基づき基準を定め、法第五条等の規定の適用を受ける家庭用品は、別途法第四条に基づく厚生省令において指定されるものであること。

(二) 有害物質の定義

ア 有害物質とは、家庭用品に含有される物質のうち、人の健康に係る被害を生ずるおそれがある物質として政令で定める物質をいうこと。

イ 令において、有害物質として塩化水素、塩化ビニル、ホルムアルデヒド、有機水銀化合物及び硫酸の五物質が定められたこと。

三 事業者の責務

法第三条の規定は、家庭用品の衛生確保について基本的な責任を有する家庭用品の製造又は輸入の事業を行う者について、家庭用品の基準の有無にかかわらず、事業者として家庭用品を取扱う以上健康被害を引き起してはならないのであり、そのための最大の努力を払うべき責務がある旨規定したものであること。

第二 家庭用品の基準に関する事項

一 有害物質の含有量等に関する基準

(一) 厚生大臣は、保健衛生上の見地から、厚生省令で、家庭用品を指定し、その家庭用品について、有害物質の含有量、溶出量又は発散量に関し、必要な基準を定めることができること。

(二) 規則第一条に基づく別表第一において、次のとおり、第一の二の(二)のイの五物質の基準が定められたこと。

ア 塩化水素又は硫酸の基準

(ア) 適用を受ける家庭用品は、住宅用の洗浄剤で液体状のものであること。ただし、塩化水素又は硫酸を含有する製剤たる劇物であるものは、毒物及び劇物取締法第一三条の二の規制するところであるので除かれること。

(イ) 基準は、当該規制が法附則第二項によつて毒物及び劇物取締法第二二条の二の規定が削除されたことに伴うものであるので、従来の同規定に基づく基準と同一のものとしたこと。

イ 塩化ビニルの基準

(ア) 塩化ビニルとは塩化ビニル・モノヤーをいうものであること。

(イ) 適用を受ける家庭用品は、家庭用エアゾル製品すべてであること。家庭用エアゾル製品としては、殺蟻剤、室内消臭剤、ガラスふき用のクリーナー等があること。ただし、薬事法の適用を受ける医薬部外品等は当然除かれるものであること。

(ウ) 基準は、塩化ビニルか特殊毒性を有することから、その含有量について所定の試験方法によつて検出されてはならないこととしたこと。

ウ ホルムアルデヒドの基準

(ア) 適用を受ける家庭用品は、次の二種であること。

① 繊維製品のうち、おしめ、おしめカバー、よだれ掛け、下着、寝衣、手袋、くつした、中衣、外衣、帽子、寝具であつて、出生後二四月以内の乳幼児用のもの

② 繊維製品のうち、下着、寝衣、手袋及びくつした((1)に該当するものを除く。)並びにたび並びにかつら、つけまつげ、つけひげ はくつしたどめに使用される接着剤

(イ) 基準は、(ア)の適用を受ける家庭用品の区分に応じて次のとおりであること。

① (ア)の(1)の家庭用品の場合

乳幼児の特殊性を考慮し、ホルムアルデヒドの溶出量について、所定の試験方法による吸光度が○・○五以下でなければならないこととしたこと。

② (ア)の(2)の家庭用品の場合

所定の試験方法による試料一gについてのホルムアルデヒドの溶出量が75μg以下でなければならないこととしたこと。

(ウ) ホルムアルデヒドの基準の運用に係る細部については、別途通知する予定であること。

エ 有機水銀化合物の基準

(ア) 適用を受ける家庭用品は、繊維製品のうち、おしめ、おしめカバー、よだれ掛け、下着、衛生バンド、衛生パンツ、手袋及びくつした並びに家庭用接着剤、家庭用塗料、家庭用ワックス、くつ墨及びくつクリームであること。

現在、繊維製品等に有機水銀化合物が使用されていることはほぼないものと思われるが、これらの家庭用品は身体と接触する度合が大きいことから今後とも使用させないという趣旨で指定したものであること。

(イ) 基準は、有機水銀化合物が特殊毒性を有することから所定の試験方法による吸光度が、同様の試験方法による水銀標準液(水銀標準液1ml=1μgHg)の吸光度より小さくなければならないこととしたこと。

二 毒物又は劇物を含有する家庭用品の容器又は被包の基準

(一) 厚生大臣は、保健衛生の見地から、厚生省令で、毒物及び劇物取締法第二条第一項に規定する毒物又は同条第二項に規定する劇物である有害物質を含有する家庭用品を指定し、その家庭用品について、その容器又は被包に関し、必要な基準を定めることができること。

(二) 規則第二条に基づく別表第二において、塩化水素又は硫酸を含有する住宅用の洗浄剤で液体状のもの(塩化水素又は硫酸を含有する製剤たる劇物を除く。)の容器及び被包について基準が定められたこと。基準は、当該規制が法附則第二項によつて毒物及び劇物取締法第二二条の二の規定が削除されたことに伴うものであるので、従来の同規定に基づく基準と同一のものとしたこと。

第三 家庭用品の規制に関する事項

一 販売等の禁止

(一) 法第四条第一項又は第二項の規定により基準が定められた家庭用品の製造、輸入又は販売の事業を行う者は、その基準に適合しない家庭用品を販売し、授与し、又は販売若しくは授与の目的で陳列してはならないこと。これに違反した者は、法第一○条の規定により罰則の適用を受けること。

(二) 「販売」とは、家庭用品を一定の対価で譲渡することをいい、「授与」とは、無償で譲渡することをいい、「陳列」とは、人の多数出入りする場所に人目につきやすい形態で置くことをいうものであること。なお、「販売」には、最終消費者に対する販売のみでなく、流通過程における卸売業者又は小売業者に対する販売も含まれること。

二 回収命令等

(一) 厚生大臣又は都道府県知事(保健所を設置する市にあつては、市長)は、法第四条第一項又は第二項の規定により基準が定められた家庭用品の製造、輸入又は販売の事業を行う者がその基準に適合しない家庭用品を販売し、又は授与したことにより人の健康に係る被害が生ずると認める場合において、当該被害の発生を防止するため特に必要があると認めるときは、その者に対し、当該家庭用品の回収を図ることその他当該被害の発生を防止するために必要な措置をとるべきことを命ずることができること。

(二) 厚生大臣又は都道府県知事(保健所を設置する市にあつては、市長)は、家庭用品によるものと認められる人の健康に係る重大な被害が生じた場合において、当該被害の態様等からみて当該家庭用品に当該被害と関連を有すると認められる人の健康に係る被害が生ずるおそれがある物質が含まれている疑いがあるときは、当該被害の拡大を防止するため必要な限度において、当該家庭用品の製造又は輸入の事業を行う者に対し、当該家庭用品の回収を図ることその他当該被害の拡大を防止するために必要な応急の措置をとるべきことを命ずることができること。

(三) (一)は、家庭用品について基準が定められている場合に、その基準に違反して販売又は授与された家庭用品により健康被害が生ずるおそれがあるときは、その被害の発生を防止するため当該家庭用品の製造業者等に対して、その家庭用品の回収等の措置をとるべきことを命ずることができることとしたものであり、また、(二)は、家庭用品について基準が定められていない場合であつても、その家庭用品が販売又は授与されたことによつて重大な健康被害が発生した場合には、その拡大を防止するため、当該家庭用品の製造業者又は輸入業者に対して、その家庭用品の回収等の措置をとるべきことを命ずることができるとしたものであること。

(四) (一)の「その基準に適合しない家庭用品を販売し、又は授与し」とは、(一)が家庭用品による健康被害の発生を未然に防止する趣旨のものであるから、故意・過失に関係なく認定されるものであること。

第四 立入検査等に関する事項

一 立入検査等

(一) 厚生大臣又は都道府県知事(保健所を設置する市にあつては、市長)は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、家庭用品の製造、輸入若しくは販売の事業を行う者に対し、必要な報告をさせ、又はその職員に、これらの者の事務所、工場、事業場、店舗若しくは倉庫に立ち入り、帳簿、書類その他の物件を検査させ、関係者に質問させ、若しくは試験に必要な限度において当該家庭用品を収去させることができること。

(二) 「この法律を施行するため必要があると認めるとき」とは、試買検査、消費者からの苦情などによつて、家庭用品の製造業者等が法第五条の規定に違反して基準に適合していない家庭用品の販売等をしているおそれがあると認められる場合、法第六条第一項又は第二項の命令を発するために、家庭用品の製造業者等に対して、当該家庭用品の原材料等の使用状況、販売先等について報告を徴し、又は事業場などに立ち入つて検査することが必要と認められる場合等である。従つて、収去試験も基準違反のおそれのある家庭用品等、限られたものについて行うことになるので、その他の、一般に流通している家庭用品の安全性をチェックするためには試買試験を行うことが必要であること。

二 家庭用品衛生監視員

(一) 一の(一)の立入検査、質問及び収去に関する職務は、家庭用品衛生監視員が行うこと。

(二) 家庭用品衛生監視員は、国・都道府県又は保健所を設置する市の職員であつて、次のいずれかの資格を有しているもののうちから、厚生大臣、都道府県知事又は市長が任命すること。

ア 医師、歯科医師、薬剤師又は獣医師

イ 学校教育法に基づく大学若しくは高等専門学校、旧大学令に基づく大学又は旧専門学校令に基づく専門学校において、医学、歯学、薬学、獣医学、農学、水産学、理学、工学、保健学、衛生学又は家政学の課程を修めて卒業した者であつて、家庭用品衛生監視について十分の知識経験を有するもの

ウ 厚生大臣の指定した家庭用品衛生監視員の養成施設において、所定の課程を修了した者

なお、イの資格については、大学等において所定の課程の修めたことのみでなく、家庭用品衛生監視について十分の知識経験を有しているかどうかを判定することが必要であること。

(三) 家庭用品衛生監視員は、立入検査、質問又は収去をする場合においては、規則第四条に基づく様式第二による身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならないとともに、家庭用品を収去しようとするときは、その相手方に、規則第三条に基づく様式第一による収去証を交付すること。

第五 試験検査等に関する事項

試験検査等については、厚生事務次官通知によるほか、次の点に留意されたいこと。

一 法に係る試験検査等については、工業品検査所、繊維製品検査所とも連絡を密にし実施すること。

二 検査能力を有しない製造業者等に対しては、民間検査機関、工業品検査所及び繊維製品検査所の活用を図るよう周知されたいこと。

第六 施行期日に関する事項

法、令及び規則の施行期日は、昭和四九年一○月一日であること。ただし、規則別表第一中有機水銀化合物に係る部分は、昭和五○年一月一日から、同表中ホルムアルデヒドに係る部分は、同年一○月一日から施行されること。