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○貸しおむつの衛生確保について

(平成五年一一月二五日)

(衛指第二二四号)

(各都道府県・各政令市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生省生活衛生局指導課長通知)

環境衛生関係営業の監視指導については、日頃より種々御配慮を煩わしているところであるが、近年、老人介護や医療関連サービス等の分野において貸おむつが用いられることが一般化している。

しかし、これら貸おむつの処理等に関する取扱いは、営業者によりまちまちであることから、その統一されたものが策定されることが望まれていたところである。

このため、今般、貸おむつの衛生を確保するため、おむつを使用させるために貸与し、その使用済み後はこれを回収して洗濯し、さらに貸与することを繰り返して行うクリーニング業者(以下「貸おむつ業者」という。)が達成すべきガイドラインとして別添のとおり「貸おむつの衛生的処理等に関するガイドライン」及び「貸おむつの洗濯を行うクリーニング所の施設、設備及びそれらの管理に関するガイドライン」(以下「ガイドライン」という。)を定めたので、左記事項に留意の上、貴管下関係団体等に周知徹底させるとともに、貸おむつ業者に対する監視指導方よろしくお願いする。

なお、ガイドラインの周知方について、財団法人全国環境衛生営業指導センター、全国クリーニング環境衛生同業組合連合会及び社団法人日本ダイアパー事業振興会に対し依頼したので、申し添える。

1 貸おむつの衛生を確保するためには、その処理や取扱い等が適正に行われることが最も重要であるので、貸おむつ業者に対する環境衛生監視指導に当たっては、クリーニング業法の規定に基づき営業者が講ずべき措置等に係る事項によるほか、ガイドラインによられたいこと。

2 貸おむつの衛生的処理等に関するガイドラインの第三の1 衛生基準は、第二 処理等の規定により貸おむつについて適正に処理等が行われたかどうかを判定するための工程管理における目安として定められたものであること。

したがって、工程管理において、製品が衛生基準に適合しない場合には、貸おむつの処理等を適正に行うよう指導されたいこと。

3 既存の貸おむつ業者であって、直ちにガイドラインに基づく処理等並びに施設、設備及びそれらの管理(既にクリーニング業法の規定に基づき営業者が講ずべき措置等に係る事項とされているものを除く。)が困難なものについても、逐次その改善が図られるよう指導されたいこと。

別添

〔1〕 貸おむつの衛生的処理等に関するガイドライン

第一 目的

このガイドラインは、貸おむつの洗濯を行う事業者が遵守すべき貸おむつの処理等及び衛生基準等に関する事項を定め、もって貸おむつの衛生の確保及び向上を図ることを目的とする。

第二 処理等

貸おむつの処理等は、次のとおりとすること。

1 貸与したおむつは、使用後少なくとも三日以内に回収して処理すること。

2 おむつは、次のいずれかの方法により処理することとし、洗濯に当たっては、洗濯機の最大負荷量を超えないようにすること。

(1) バッチ式による洗濯

ア 洗濯工程中に消毒効果のある塩素剤を使用する方法

(ア) 洗濯は、適量の洗剤を使用して、六〇℃以上の温湯中で一〇分間以上本洗を行い、換水後、更に同様の本洗を行った後、すすぎ及び塩素剤添加による消毒を行うこと。

(イ) すすぎは清浄な水(水道法に基づく水質基準に適合する水であることが望ましいこと。以下同じ。)により四回以上(各回三分間以上)行い、各回ごとに換水すること。

(ウ) 塩素剤添加による消毒は、次亜塩素酸ナトリウム、さらし粉等を使用し、すすぎの二回目以降に遊離残留塩素が250mg/l以上となるように添加して行うこと。

イ 熱湯又は蒸気による消毒後洗濯する方法

(ア) 消毒は、八〇℃以上の熱湯に一〇分間以上浸すか、又は一〇〇℃以上の蒸気に一〇分間以上触れさせて行い、その後洗濯を行うこと。

(イ) 洗濯は、適量の洗剤を使用して、六〇℃以上の温湯中で一〇分間以上本洗を行い、換水後、更に同様の本洗を行った後、すすぎは清浄な水により四回以上(各回三分間以上)行い、各回ごとに換水すること。なお、八〇℃以上の熱湯を用いて本洗を行う場合は、(ア)の消毒工程を省略することができる。

(2) 連続式洗濯機による洗濯

ア 洗濯工程中に消毒効果のある塩素剤を使用する方法

(ア) 予洗は、適量の清浄な水又はすすぎ水を使用して四分間以上本洗を行うこと。

(イ) 洗濯は、適量の洗剤を使用して、六〇℃以上の適量の温湯中で一〇分間以上本洗を行うこと。

(ウ) すすぎは、適量の清浄な水を使用して、八分間以上(原則として四槽以上)行うこと。

(エ) 塩素剤添加による消毒は、次亜塩素酸ナトリウム、さらし粉等を使用し、すすぎの前半又は洗濯の後半の工程において、遊離残留塩素が250mg/l以上となるように添加して行うこと。

イ 熱湯を使用する方法

(ア) 消毒及び洗濯は、適量の洗剤を使用して、八〇℃以上の適量の温湯中で一〇分間以上行うこと。

(イ) 予洗及びすすぎは、それぞれ前記のアの(ア)及び(ウ)により行うこと。

3 洗濯終了後の仕上げ(伸展、折畳み等)及び包装を行う作業者は、常に専用の作業衣及び履物を着用し、手指を消毒又は洗浄して清潔を保って作業するとともに、洗濯等の処理が適正に行われたかどうか確認すること。

この場合、処理が適正でないと判断されるものを選別し、再処理するか、又は廃棄すること。

4 仕上げ済みの製品は、その衛生保持に十分留意し、速やかに配送すること。

5 おむつを処理するために使用する機械器具及び製品を運搬する容器等については、塩素剤又は界面活性剤等の消毒液を用いて清拭等により適宜消毒すること。

第三 衛生基準及び検査方法

製品としてのおむつの衛生基準及び検査方法は、次のとおりとすること。

1 衛生基準

(1) 変色及び異臭がないこと。

(2) 大腸菌群が検出されないこと。

(3) 黄色ブドウ球菌が検出されないこと。

(4) 一般細菌数は一枚当たり5×10^4個以下であること。

2 検査方法

(1) 官能検査

おむつを広げ、不潔な変色及び不快な臭気の有無を官能的に調べる。

(2) 細菌検査

ア 試料の調製

検体一枚を次のいずれかの方法により処理し、その抽出液を試料原液とする。

(ア) ストマッカー法

ストマッカー用滅菌ポリ袋に検体一枚及び滅菌生理食塩水五〇〇mlを入れ、ストマッカーで三分間程度処理して抽出液を得る。

(イ) 手振法

一〇〇〇ml容器の広口ビンに生理食塩水を五〇〇ml入れて高圧蒸気滅菌したものに検体一枚を入れ、三分間程度振って抽出液を得る。

イ 一般細菌

試料原液一mlを採り、滅菌生理食塩水を用いて、四~五段階まで一〇倍希釈を行い、その試料原液及び各希釈液一mlを滅菌ペトリ皿各二枚にそれぞれ正確に分注し、これにあらかじめ加温溶解して五〇℃以下の温度に保持させた滅菌標準寒天培地一五mlを加え、静かに回転混合して冷却凝固させ、更に前記標準寒天培地五mlを重層して静置する。

凝固後、これを倒置して、三五~三七℃で四八時間(±三時間)培養した後、発生した集落を数え、計算により検体一枚当たりの細菌数を算定する。

ウ 大腸菌群

試料原液一mlを二本のダーラム管入りBGLB培地(一〇ml)発酵管に入れ、三七℃で培養し、四八時間まで観察してガスが発生した場合には、その発酵管からEMB平板培地に画線塗抹し、三七℃で二四時間分離培養を行い、平板培地上に定型的な大腸菌群の集落を認めたときは、陽性とする。

エ 黄色ブドウ球菌

試料原液一mlを二本のSCD培地(Soybean‐Casein Digest Broth)一〇mlに入れ、三五~三七℃、二四~四八時間増菌培養した菌液から分離培養する。

増菌培養液の一白金耳を卵黄加マンニット食塩寒天培地上に塗抹し、三七℃で四八時間(±四時間)培養する。

平板培地上にマンニット分解及び集落周囲に明瞭な混濁帯(卵黄反応)が認められた場合は、その集落についてグラム染色及びコアグラーゼ試験を行い、ぶどうの房状の配列又は不規則な菌塊やフィブリンの析出を認めたときは、陽性とする。

〔2〕 貸おむつの洗濯を行うクリーニング所の施設、設備及びそれらの管理に関するガイドライン

第一 目的

このガイドラインは、貸おむつの洗濯を行う事業者が遵守すべき貸おむつの洗濯を行うクリーニング所の施設、設備及びそれらの管理に関する事項を定め、もって貸おむつの衛生の確保及び向上を図ることを目的とする。

第二 施設及び設備

1 クリーニング所は、隔壁等により外部と区分されていること。

2 クリーニング所は、隔壁等により居宅、台所、便所等の施設及び他の営業施設と区別されていること。

3 クリーニング所は、原則として貸おむつ及び医療関連洗濯物を取扱う専門施設とすること。

4 貸おむつの受取場、洗濯場、仕上げ場及び引渡し場は、洗濯物の処理及び衛生保持に支障を来さない程度の広さ及び構造であって、それぞれが区別されていること。

5 クリーニング所は、採光、照明及び換気が十分行える構造であること。

6 洗濯場の床及び腰張りは、コンクリート、タイル等の不浸透性材料を使用し、清掃が容易に行える構造であること。

7 クリーニング所には、貸おむつを適正に処理できる設備として、必要に応じ消毒、洗濯、脱水、乾燥、給湯に係わる機械又は器具類が備えられていること。

8 クリーニング所には、貸おむつの処理のために使用する消毒剤、しみ抜き薬剤等を専用に保管する保管庫又は戸棚等が設けられていること。

9 貸おむつを運搬する車は、未洗濯物と仕上げの終わったものを区分できる機能を有するものであること。

10 貸おむつの受取場所及び引渡し場所には、それぞれ取扱い数に応じた適当な広さの受取台及び引渡し台が備えられていること。

11 クリーニング所には、汚染のおそれのない場所に仕上げの終わった貸おむつの格納施設が設けられていること。

第三 管理

1 クリーニング師の役割

(1) クリーニング業法に基づき必ず設置することとされているクリーニング師は、公衆衛生及び貸おむつの洗濯処理に関する専門知識等を有するものであり、クリーニング所の衛生管理を行う上での実質的な責任者となるものであること。

(2) クリーニング師は、(1)の趣旨を十分確認し、2に掲げる施設、設備及び器具の衛生管理、貸おむつの消毒、洗濯等の適正な処理等について常に指導的な立場からこれに関与し、クリーニングに関する衛生の確保、改善及び向上に努めること。

2 施設、設備及び器具の管理

(1) クリーニング所内は、毎日清掃し、その清潔保持に努め、必要に応じ補修を行い、衛生上支障のないようにすること。

(2) クリーニング所内は、汚染程度により次の区域に分類し、従業員が各区域を認識し得るようにすること。

① 汚染作業区域(受取場、選別場、消毒場)

② 準汚染作業区域(洗い場、乾燥場)

③ 清潔作業区域(仕上げ場、引渡し場等)

(3) クリーニング所内は、ねずみ、昆虫等が生息しないようにすること。

(4) クリーニング所内は、採光及び照明を十分にすること。

(5) クリーニング所内は、換気を十分にすること。

(6) クリーニング所内外は、常に排水が良く行われるようにすること。

(7) 消毒、洗濯、脱水、乾燥、給湯に係わる機械又は器具類は、常に保守点検を行い、適正に使用できるように整備しておくこと。

(8) 消毒、洗濯、脱水、乾燥、たたみ等に係わる機械又は器具類、作業台、運搬、集配容器等で、貸おむつが接触する部分については毎日業務終了後に洗浄又は清掃し、仕上げの終わった貸おむつの格納設備又は容器については少なくとも一週間に一回以上清掃すること。また、これらについては適宜消毒を行うこと。

(9) 作業に伴って生じる繊維、くず等の廃棄物は専用の容器に入れ、適正に処理すること。

(10) 清掃用具は、専用場所に保管すること。

(11) 営業者(管理者を含む。)又はクリーニング師は、毎月クリーニング所の施設、設備及び器具の衛生全般について点検管理すること。

3 クリーニング所が天災等により、一時的にその業務の継続が困難となった場合において、その業務の代行について、あらかじめ必要な方策が講じられていること。