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○ドライクリーニングにおけるテトラクロロエチレン等の使用管理について

(平成元年七月一〇日)

(衛指第一一四号)

(各都道府県知事・各政令市市長・各特別区区長あて厚生省生活衛生局長通知)

ドライクリーニングの溶剤として使用されるテトラクロロエチレン及び一・一・一―トリクロロエタン(以下「テトラクロロエチレン等」という。)の使用管理については、「ドライクリーニングにおけるテトラクロロエチレン等の使用に係る暫定的措置等について」(昭和五九年八月二三日衛指第二○号厚生省生活衛生局指導課長通知、以下「昭和五九年通知」という。)等に基づき、その適正化につきクリーニング営業者等に対する指導方をお願いしてきたところであるが、今般、「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律施行令の一部を改正する政令(平成元年三月二九日政令第七五号)」(別添1)に基づき、テトラクロロエチレンが、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(以下「化審法」という。)第二条第三項に規定する第二種特定化学物質に指定され、これに伴い同法第二七条第一項の規定に基づき「クリーニング営業者に係るテトラクロロエチレンの環境汚染防止措置に関する技術上の指針(平成元年七月七日厚生省・通商産業省告示第六号、以下「指針」という。)」が別添2のとおり公表された。

今後、貴職におかれては、左記事項に留意の上、指針につき貴管下関係者に対する周知徹底を図るとともに、一・一・一―トリクロロエタンも含め、その使用管理の適正化について、関係行政部局とも十分連絡をとり、指針及び本通知に基づき指導に遺憾のないようされたい。

1 趣旨

(1) テトラクロロエチレンは、低蓄積性であるが、難分解性の性状及び長期毒性を有することから今般、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律施行令の一部を改正する政令により、化審法第二条第三項に規定する第二種特定化学物質に指定されたこと。

第二種特定化学物質については、化審法に基づき、製造業者に対する製造予定数量の届出、環境の汚染を防止するためにとるべき措置に関する技術上の指針の公表、第二種特定化学物質が使用されている容器の表示、製造若しくは輸入又は使用の制限に関する勧告、取扱いの方法に関する指導及び助言等の規定により、それぞれ所要の措置が図られることになったこと。

なお、同法第二七条第一項の規定による技術上の指針の公表、同条第二項又は同法第二九条の規定による勧告、同法第三○条の規定による指導及び助言等については、同法第三九条第一項の規定により、同法を所管する厚生大臣及び通商産業大臣のほかこれらの対象となる者の行う事業を所管する大臣も、主務大臣とされていることに留意すること。

(2) 化審法第二七条の規定に基づき、取扱事業者の取扱いに係る当該第二種特定化学物質による環境の汚染を防止するためにとるべき措置に関する技術上の指針を公表することとされているが、テトラクロロエチレンの取扱事業者のうち、クリーニング営業者については、ドライクリーニング溶剤として使用するテトラクロロエチレンの使用形態が、金属洗浄等における使用形態と異なることから、テトラクロロエチレンを使用するクリーニング営業者を適確に指導し、テトラクロロエチレンによる環境汚染を防止するためには、ドライクリーニング業におけるテトラクロロエチレンの使用形態に即した技術上の指針が必要となり、他のテトラクロロエチレンの取扱業種とは別に、昭和五九年通知で示した暫定的措置等を踏まえて、当該指針が制定、公表されることとなったこと。

なお、これに伴い昭和五九年通知は廃止するものであること。

2 運用上の留意事項

(1) クリーニング所におけるテトラクロロエチレンの取扱い作業における労働者の安全衛生に係る規制は、労働安全衛生法及び有機溶剤中毒防止規則等関係規則に基づいて行われるものであるが、指針中にも労働者の安全衛生に関する主な事項は参考までに記載されていること。

(2) クリーニング営業者に対しては、指針の適切な実施を期するため、指針1.2及び指針2.2の点検管理要領、指針2.3の作業要領及び指針2.4の溶剤漏出処置要領を策定させるとともに、保守管理点検表を作成させ、日常の使用管理に当たらせること。

(3) 溶剤蒸気の回収処理及びドライ機の排液処理に当たっては、指針2.5及び指針2.6によるほか、次の事項に留意して適切な管理を行わせること。

ア 溶剤蒸気の回収処理について

(ア) テトラクロロエチレンを使用するドライクリーニング機械の処理能力の合計が、三○kg以上のクリーニング所については、脱臭時に排出するテトラクロロエチレンを回収するための活性炭吸着回収装置等を設置すること。ただし、活性炭吸着回収装置を内蔵する密閉内部脱臭方式のドライクリーニング機械にあってはこの限りでないこと。

(イ) テトラクロロエチレンを使用するドライクリーニング機械の処理能力の合計が、三○kg未満のクリーニング所についても、脱臭時に排出するテトラクロロエチレンを回収するための活性炭吸着回収装置等を設置することが望ましいこと。ただし、活性炭吸着回収装置を内蔵する密閉内部脱臭方式のドライクリーニング機械にあってはこの限りでないこと。

(ウ) 活性炭吸着回収装置の活性炭は、活性炭の吸着作用が効果的に持続する期間の範囲内で適切に交換すること。

(エ) 水分離器から分離された排液は、排液処理装置に持続し適切に処理すること。

イ ドライクリーニング機械の排液処理について

(ア) ドライクリーニング機械の排液処理装置から排出されるテトラクロロエチレンの排液の管理基準濃度は、0.1mg/L以下とすること。これは、水質汚濁防止法及び下水道法の規定に基づき、事業場から公共水域、公共下水道又は流域下水道に排出される排水中のテトラクロロエチレンについての基準が0.1mg/L以下と定められ、本年一○月一日から施行されることによること。

(イ) 突沸等により高濃度の排液が活性炭吸着装置又は曝気式処理装置に流入することを防止するため、第一段階及び第二段階の水分離器は十分な内容積の容器とし、底部より随時溶剤を回収できる構造が望ましいこと。

(ウ) 空気吹込式等曝気装置にあっては、常に新鮮な空気を使用して曝気するよう注意すること。なお、曝気式処理装置には、必要に応じて、排気中の溶剤を除去するための装置を設けること。

ウ テトラクロロエチレンの検定方法について

溶剤蒸気及び排液中のテトラクロロエチレンの検定方法は、日本工業規格K○一二五の5に該当する方法によること。

ただし、この方法は装置が高価で操作手順も煩雑であり、高度の分析技術を要するため一般のクリーニング営業者が自ら測定することは困難であることから、適切な測定能力をもった外部の分析機関に分析を委託することが認められること。

なお、外部の分析機関に測定を委託する場合であっても、ガス検知管等の簡易測定法を用い営業者自らが排液等の適正管理に努めるよう指導されたいこと。

3 施行細則の制定等

ドライクリーニング機械の排液処理装置の設置等を推進し、クリーニング所におけるテトラクロロエチレンの使用管理の一層の適正化を図るためには、排液処理装置の設置等について、クリーニング業法第三条第三項第六号「その他都道府県知事が定める必要な措置」に基づく措置として、クリーニング業法施行細則等で定めることが適当である。このため、テトラクロロエチレンの貯蔵、排液処理装置の設置、溶剤蒸気回収装置の設置及び蒸留残渣物等の保管について指針の該当部分を参考にしてクリーニング業法施行細則等の制定、一部改正等所要の規定の整備を速やかに図られたいこと。

4 水質汚濁防止法施行令等の一部改正

テトラクロロエチレンは、「水質汚濁防止法施行令の一部を改正する政令(平成元年三月二九日政令第七六号)」、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令及び海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律施行令の一部を改正する政令(平成元年四月四日政令第一○三号)」及び「下水道法施行令の一部を改正する政令(平成元年四月一二日政令第一一四号)」等(別添3)により、本年一○月一日からは、水質汚濁防止法、下水道法、廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の法令においても、規制されることとなるのでクリーニング営業者の指導監督に当たっては、これら法令を所管する行政担当部局と、十分連絡を取りながら行うこと。

なお、水質汚濁防止法施行令の一部を改正する政令等の施行については、既に環境庁水質保全局長から別添4のとおり通知されているので、了知の上、クリーニング営業者の指導監督に当たられたいこと。

5 一・一・一―トリクロロエタンの取扱い

一・一・一―トリクロロエタンについては、第二種特定化学物質に指定される等の法令に基づく規制は行われていないが、ドライクリーニング溶剤として使用され、五九年通知に規定する管理目標値の超過が未だ報告されること等から、今後も引き続き使用管理の適正化を指導する必要があるので、次の事項に留意して指針を準用し、クリーニング営業者を指導されたいこと。

(1) 指針2.3.4の(2)中「130~140℃」とあるのは「100~120℃」と、「140℃以下」とあるのは「120℃以下」と、「3~4kg」とあるのは「1~2kg」と読み替え、同(3)中「蒸気を吹き込むか、又は水を注入し、」とあるのは「圧縮空気を吹き込み、」と読み替え、「ただし、吹き込み蒸気の量が多すぎると突沸を起こしやすいので注意すること。」を削り、指針2.6.2の(2)中「200mg/L以下」とあるのは「1,200mg/L以下」と読み替えるものとすること。

(2) 脱臭時に排出する一・一・一―トリクロロエタンの蒸気を回収するための処理装置は、冷却式で差し支えないこと。

(3) ドライクリーニング機械の排液処理装置から排出される一・一・一―トリクロロエタンの排液の管理基準濃度は3mg/L以下とすること。

(4) 前記2の(3)(2の(3)のアの(イ)を除く。)については、一・一・一―トリクロロエタンに準用すること。ただし、2の(3)のアの(ア)中「三○kg以上」とあるのは「二○kg以上」と読み替えること。

別添1~3 略

別添4

水質汚濁防止法施行令の一部を改正する政令等の施行について

(平成元年四月三日 環水管第五二号・環水規第六四号)

(各都道府県知事・各政令市市長あて環境庁水質保全局長通知)

水質汚濁防止法施行令の一部を改正する政令(平成元年政令第七六号)が、平成元年三月二九日に公布され、また、排水基準を定める総理府令の一部を改正する総理府令(平成元年総理府令第一九号)及び排水基準に係る検定方法を定める等の件の一部を改正する件(平成元年四月環境庁告示第一八号)が本日公布された。

これらの政令等の改正は、トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンによる水質の汚濁を防止するための排水規制に関するものであり、その実施に当たっては、「水質汚濁防止法の施行について(昭和四六年七月三一日付け環水管第一二号環境事務次官通達)」によるほか、左記の事項に留意のうえ、水質汚濁防止法の円滑かつ適切な運用を図られたい。

1 水質汚濁防止法施行令等の改正の趣旨

トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンについては、水環境の汚染を通じ、人の健康に影響を及ぼすおそれがあることから、国民の健康保護の観点に立ち、両物質を水質汚濁防止法(昭和四五年法律第一三八号。以下「法」という。)の有害物質に指定し、排水基準を設定するものである。

2 水質環境目標の設定

トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンの環境基準の設定については、平成元年三月一八日付けの中央公害対策審議会から環境庁長官あての答申(「水質汚濁に関する環境基準等の項目追加等について(答申)」)において、「発がん性が問題となる物質に関する環境基準の設定については、引続き検討を行っていく必要がある。」とされたところである。

しかしながら、水質汚濁防止法に基づく排水規制を実施するに際して、その目標を設定する必要があることから、公共用水域において当面維持することが適当な水質のレベルとして、世界保健機関(WHO)の飲料水暫定ガイドライン及び我が国の水道水の暫定水質基準を勘案し、次の値を水質環境目標として設定することとする。

トリクロロエチレン  ○・○三ミリグラム/リットル以下

テトラクロロエチレン ○・○一ミリグラム/リットル以下

3 水質汚濁防止法施行令等の改正内容

(1) 水質汚濁防止法施行令の改正

法第二条第二項第一号の「人の健康に係る被害を生ずるおそれがある物質」(有害物質)として、トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンを加える。

(2) 排水基準を定める総理府令の改正

トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンの排水基準については、水質環境目標を勘案するとともに、これまでの行政指導の経緯を踏まえ、次の値とする。

トリクロロエチレン  ○・三ミリグラム/リットル

テトラクロロエチレン ○・一ミリグラム/リットル

(3) 排水基準に係る検定方法を定める件の改正

トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンの測定方法については、日本工業規格「用水・排水中の低分子量ハロゲン化炭化水素試験方法JIS K○一二五」の5とする。

4 水質汚濁防止法施行令の一部を改正する政令等の施行日

水質汚濁防止法施行令の一部を改正する政令、排水基準を定める総理府令の一部を改正する総理府令及び排水基準に係る検定方法を定める等の件の一部を改正する件の施行日は、いずれも平成元年一○月一日とされた。

これは、関係事業者に対して政令等の改正の趣旨、内容を十分に周知徹底し、排水処理施設の整備等を指導するための準備期間を見込み、トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンの排水規制の円滑な実施を図ろうとするものである。

5 その他の留意事項

(1) 上乗せ排水基準の設定

トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンの排水基準については、他の有害物質と同様、上乗せ排水基準を設定できるが、水質汚濁防止法施行令(昭和四六年政令第一八八号)第四条の趣旨を踏まえ、水質環境目標が維持されるため必要かつ十分な程度の許容限度を定めるものとする。

(2) 届出事務

法第五条等の届出がなされる場合には、トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンが有害物質に指定されたことに伴い、排出水の汚染状態等の届出事項としてトリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンに係る事項が必要となる。

なお、排水規制の実施前において受理された届出に係る事業場については、法第二二条の報告聴取等を行うことにより、これらの物質に係る排出水の汚染状態の把握に努められたい。

(3) 排水処理における留意事項

排水処理において、曝気処理によりトリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンの大気中への相当量の放出が想定される場合には、吸着処理等の他の手法を用いるか、他の手法により前処理を行った後に曝気処理を用いるなど大気環境への影響に配慮を行うものとする。

(4) 測定方法における留意事項

トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンの測定に当たっては、次の点に十分留意する必要がある。

ア 溶媒抽出・ガスクロマトグラフ法及びヘッドスペース・ガスクロマトグラフ法の各々の特徴に十分留意して、試料に応じた方法を用いること。

イ トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンは揮発性が極めて高いので、操作中の揮散に十分留意するとともに、分析室内汚染、器具汚染等に十分注意を払うこと。