添付一覧
○ドライクリーニングにおけるテトラクロロエチレン等の使用管理に係る暫定的措置等について
(昭和五九年八月二三日)
(衛指第二〇号)
(各都道府県・各政令市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生省生活衛生局指導課長通知)
環境衛生関係営業の指導監督については、日頃より種々御配慮を煩わしているところであるが、最近、ドライクリーニングの溶剤として使用されているテトラクロロエチレン、一・一・一―トリクロロエタン(以下「溶剤」という。)による地下水の汚染が問題となつており、これに関連し、当該物質に係る水道水の暫定的な水質基準について本年二月一八日付けをもつて厚生省環境衛生局水道環境部長から通知されたところである。
ついては、当該溶剤による地下水の汚染問題の重要性と緊急性を勘案し、溶剤使用の管理について適正化を図るため、暫定的な措置として別紙のとおり「テトラクロロエチレン使用に係る暫定的保守管理マニュアル」(以下「管理マニュアル」という。)を定めたので、左記事項に留意の上、関係行政機関とも連絡を密にするなど貴管下関係者に対する周知徹底につき指導方よろしくお願いする。
記
1 管理マニュアルは、「クリーニング所における衛生管理要領」(昭和五七年三月三一日環指第四八号)を踏まえ営業者によるテトラクロロエチレン等の使用管理に係る暫定的指針として作成したものであり、環境衛生監視員の指導指針となるものであること。
2 テトラクロロエチレン、一・一・一―トリクロロエタンを使用するドライクリーニング用の機械(以下「ドライ機」という。)における排液等の処理に当たつては、次の措置を講ずること。
(1) 溶剤の排気口には、活性炭吸着式溶剤回収装置を設けること。
(2) 蒸留装置より生じる排液について、これを適正に処理するため、次の装置(以下「排液処理装置」という。)を設けること。
① 水分離機を二段階に分けて設けること。なお、ドライ機の構造等により二段階に分けて設置することが困難な場合は、上澄液を十分に採取できる容器をおいても差し支えないこと。
② 水分離機に連結して、次の装置を設けること。
ア 活性炭吸着式溶剤ろ過装置を二段階に分けて設けること。
イ 蒸気吹込等ばつ気方式の処理装置を設け、これに連結して活性炭吸着式溶剤ろ過措置を設けること。
なお、最終段階の活性炭吸着式溶剤ろ過措置の設置は、その前の処理段階において溶剤を適正に処理できればこの限りでない。
3 管理マニュアルの主な内容は、次のとおりであること。
(1) 溶剤の保管、充填中における漏出等を極力防止するための措置を講ずることとしたこと。
(2) ドライクリーニングを行う場合、室内の大気中に気化した溶剤が滞留しないよう機械換気設備を作動してからドライ機を操作することとしたこと。
(3) ドライ機からの溶剤の漏出及び大気拡散を防止するとともに、溶剤の回収率を高めるため、ドライ機のパッキングの状況、溶剤の循環工程における作動状況、蒸留温度及び蒸気圧力の適正な保持、水分離機等排液処理装置の作動状況等について必要な措置を講ずることとしたこと。
(4) 洗濯物の処理については、いわゆるササラ掛けなどの前処理について溶剤の大気中拡散を最小限にとどめ、従業者に対する暴露をできる限り避けるため極力行わないこと等としたこと。
(5) 使用済みのフィルターパウダー、蒸留残渣物、カートリッジフィルター及び活性炭は、密閉容器に入れるなど適正に処理することとしたこと。
(6) 一・一・一―トリクロロエタンについては、管理マニュアルを準用することとしたこと。
4 その他、特に次の事項に留意して指導されたいこと。
(1) ドライ機より生ずる排液の処理のための改善措置として排液処理装置を備え付けさせるに当たつては、ドライ機の型式、又はその設置場所の立地条件等により措置を講ずることが困難な場合も考えられるので、共同処理等営業者及び関係業界と十分協議し、遺憾のないように指導されたいこと。
(2) 排液処理装置については、その管理を適正に行うため次のことに留意すること。
ア 活性炭を使用する装置にあつては、活性炭の吸着作用が効果的に持続する期間の範囲内で適切に交換することとし、通常六か月に一回交換することが望ましいこと。
イ 蒸気吸込法等ばつ気装置にあつては、処理の効果及び時間に着目し、適切に行うこと。
ウ 排液の処理を共同で行う場合は、活性炭吸着式ろ過装置(第一段階)及びばつ気装置で処理したものについて行うこと。
(3) 環境庁水質保全局長から別添のとおり「トリクロロエチレン等の排出に係る暫定指導指針の設定について」が昭和五九年八月二二日付け環水管第一二七号・環水規第一四八号で通知されたところであるが、この遵守方も含め関係部局と連絡を密にし、関係営業者の指導に配意されたいこと。
5 営業者に対しては、自主管理の徹底を図るため管理マニュアルに基づき保守管理の点検表を作成させるなど定期的な点検が確実に実施できるように努めさせること。
6 使用済みの蒸留残渣物、フィルターパウダー、カートリッジフィルター及び活性炭の廃棄については、関係部局と連絡を密にし、適正に処理するように配意されたいこと。
7 溶剤の分析方法
本マニュアルを適用した場合の排水中の溶剤の分析方法は、厚生省環境衛生局水道環境部長通知(昭和五九年二月一八日環水第一五号)別表に示す方法に準拠すること。
別紙
テトラクロロエチレン使用に係る暫定的保守管理マニュアル
Ⅰ テトラクロロエチレン(以下「溶剤」という。)の保管及び充填について
1 溶剤は、金属缶等の密閉容器に入れ、直射日光の当たる場所、雨水がかかる場所、換気の悪い場所等における保管は避けることとし、できる限り通風の良い冷暗所で保管すること。
2 容器又はタンクローリーから溶剤をドライクリーニング機械(以下「ドライ機」という。)に充填する場合は、その漏出を防止するため次のことに留意して適切に操作すること。
① 充填は、作業場内の機械換気設備を作動してから行うこと。
② タンクローリーから充填する場合は、溶剤がこぼれないように行うこと。
③ 金属缶から充填する場合は、塩素系溶剤用のポンプを用い、溶剤が漏出しないように行うこと。また、ドラム缶の栓は、締具により開閉し、保管中は確実に密閉すること。
④ ドライ機が作動中の場合は、決して充填を行わないこと。
⑤ 充填後ドライ機の給油口は、直ちに密閉すること。
Ⅱ ドライ機の保守点検について
1 ドライ機は、作業場内の機械換気設備を作動してから操作すること。
2 溶剤が循環する工程の部分については、その漏出等がないよう次のことに留意して適切に操作すること。
なお、溶剤が漏出している場合は、直ちに溶剤ポンプ及び熱源(電気又は蒸気)を停止し、次に排気装置及びコンデンサーの作動状況について点検し、これが正常である場合は漏出部分の溶剤を完全に排出し、さらに布等で漏出した溶剤を拭き取つてから補修すること。
① ドライ機の排気ファン及び排気装置のドラフトファンが正常に作動していることを点検すること。
② タンク、ポンプ(ポンプのグランド部)、フィルター、パイプ(配管の継ぎ目や弁)、ガラスと金属の接合部(ゲージグラス、サイトグラス等)、蒸留器、ボタントラップ等における溶剤の漏出、又は蒸気等の詰まりの有無について点検すること。
③ ボタントラップ、フィルター、ドア、ダンパー、ダクトの継ぎ目等における密閉の状況について点検し、シール及びパッキングを必要に応じ取り替えること。
④ リントフィルター(乾燥機内送風空気のゴミ除去装置)及びヒーター吹込面におけるごみによる詰まりの有無について点検すること。
3 フィルターパウダー、蒸留残渣物(蒸留装置内に残存する汚れ、洗剤等のものをいう。)及びカートリッジフィルターの取扱いは、次のことに留意して適切に操作すること。
① パウダーフィルター(ろ過器)については、圧力が上昇し、フィルター能力の低下が見られる場合、そのパウダーを蒸留装置内に入れること。
② ①のパウダー及び蒸留残物渣は、溶剤を十分に回収するため約五分間蒸気を吹き込み、又は水を注入し、さらに数分間の間隔をおいて、同様の処理を繰返してから取り出すこと。
③ 吸着剤を使用しているカートリッジフィルターを取り替える場合は、カートリッジ容器内の溶剤を一二時間以上かけて十分に排出してから行うこと。
④ 蒸留装置に連結してペーパーフィルターを使用しているカートリッジフィルターを取り替える場合は、フィルター内の溶剤を一時間以上かけて十分に排出してから行うこと。
⑤ ③及び④で処理したものは、取り出してから直ちに乾燥装置に入れ、熱風循環(ドラムの回転を停止してから行うこと。)により十分に乾燥すること。なお、この場合、専用の蒸気吹込み方式による溶剤回収装置を用いてもよい。
4 蒸留装置は、溶剤を十分に回収するよう次のことに留意して適切に操作すること。
① 突沸(蒸留温度が高い場合や溶剤粘度が上がる場合等に発生し、汚れ及び洗剤の一部が溶剤と同時に蒸発し、蒸留液中に混入することがある。)を避けるため溶剤が充満しないよう負荷量を適正に保つこと。
② 蒸留は、一三○~一四○℃の範囲で温度を適正に保持して行うこと。なお、蒸気式の場合は、一四○℃以下に保つために一cm2当たり三~四kgの範囲で蒸気圧力を適正に保持して行うこと。
5 排液の処理を行う装置(以下「排液処理装置」という。)については、排液中の溶剤が十分に除去されるよう次のことに留意して適切に操作すること。
① 水分離器内の排液が高温にならないよう適正に保持すること。
② 排液のろ過に用いた活性炭は、その吸着効果を保つため、半年に一回の割合で定期的に交換することが望ましい。
③ 洗剤の粘稠化により、水分離器が目詰まりしないようにすること。
④ 蒸気吹込み等のばつ気装置は、吹込み時間等を適正に保持すること。
⑤ 排液処理装置により処理する排液中の溶剤の残留濃度は、暫定的に次の標準値を目標として適正に管理すること。
・水分離器(第二段階)の排液……二○○ppm以下
・活性炭吸着式溶剤ろ過装置(第一段階)又はばつ気装置の排液……六ppm以下
・活性炭吸着式溶剤ろ過装置(最終段階)の排液……○・一ppm以下
・注意 一・一・一―トリクロロエタンについては、最終段階の排液において三ppm以下とすること。
Ⅲ 洗濯物の処理に係る保守点検について
1 溶剤を含む処理液による前処理(ササラ掛け、ブラッシング、プリスポッティング等ともいう。)は、極力行わないこと。なお、やむを得ず前処理する場合は、換気のよい場所で速やかに行い、処理した洗濯物は直ちにドライ機に入れ、適宜処理を行うこと。
2 洗濯は、洗濯物を乾燥が早いもの(薄手のもの等)と乾燥が遅いもの(厚手のもの等)に分けて行うこと。
3 洗濯及び乾燥は、適正な負荷量(洗濯物の量)により行うこと。
4 洗濯物の乾燥は、乾燥機において溶剤臭が残留しなくなるまで十分に行うこと。
Ⅳ 使用済みのフィルターパウダー等の処理に係る保守点検について
使用済みのフィルターパウダー、蒸気残渣物、カートリッジフィルター及び活性炭は、合成樹脂製等の専用の容器に入れて密閉し、専用の保管場に置き、適切に処理を行うこと。
別添
トリクロロエチレン等の排出に係る暫定指導指針の設定について
(昭和五九年八月二二日 環水管第一二七号・環水規第一四八号)
(各都道府県知事・十大政令市市長あて 環境庁水質保全局長通知)
トリクロロエチレン等による地下水の汚染については、環境庁の昭和五七年度地下水汚染実態調査によりその広範な汚染が判明したほか、各地において汚染事例が確認されている。
地下水の汚染メカニズムについては、必ずしも十分に解明されるには至つていないが、トリクロロエチレン等を含む水の地下浸透に起因する地下水の汚染を防止し、あわせて公共用水域に排出されるトリクロロエチルン等の抑制を図る必要があることにかんがみ、別添のとおり、トリクロロエチレン等の排出に係る暫定指導指針を定めたので、当面、これに基づき工場及び事業場の指導に当たられたい。
なお、関係部局間の連絡を密にする等により円滑な指導の実施に十分配意されたい。
(別添)
トリクロロエチレン等の排出に係る暫定指導指針
1 指導の対象
本指針を適用する工場及び事業場は、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン及び一・一・一―トリクロロエタン(以下「トリクロロエチレン等」という。)並びにトリクロロエチレン等を含む物を取り扱う工場及び事業場とする。
2 地下浸透の防止
トリクロロエチレン等及びトリクロロエチレン等を含む水については、地下へしみこむこととならないよう適切な措置を講じなければならないものとし、トリクロロエチレン等の濃度が常に別表1の管理目標に適合する水を除いて、地下浸透は行つてはならないものとする。
3 公共用水域への排出の抑制
トリクロロエチレン等を含む水を公共用水域に排出する工場及び事業場については、トリクロロエチレン等の排出水への混入防止、水分離・回収の徹底等により、トリクロロエチレン等の排出を抑制するものとし、公共用水域に排出する水に含まれるトリクロロエチレン等の濃度を常に別表2の管理目標に適合するようにしなければならないものとする。
4 地域特性への配慮
別表2の管理目標は一般的条件の下で適用すべき目標として定められたものであり、地方公共団体において地域の特性に応じた管理目標が別途定められた場合には、当該管理目標を別表2の管理目標にかえて適用することができるものとする。
5 分析方法
別表1及び別表2に係る分析方法は、厚生省環境衛生局水道環境部長通知(昭和五九年二月一八日、環水第一五号)別表に示す方法に準拠すること。
別表1 地下浸透の防止に関する管理目標
トリクロロエチレン |
○・○三㎎/一以下 |
テトラクロロエチレン |
○・○一㎎/一以下 |
一・一・一―トリクロロエタン |
○・三㎎/一以下 |
別表2 公共用水域への排出の抑制に関する管理目標
トリクロロエチレン |
○・三㎎/一以下 |
テトラクロロエチレン |
○・一㎎/一以下 |
一・一・一―トリクロロエタン |
三㎎/一以下 |