添付一覧
○旅館業における善良風俗の保持について
(昭和五九年八月二七日)
(衛指第二三号)
(各都道府県知事・各政令市市長・各特別区区長あて厚生省生活衛生局長通知)
いわゆるラブホテル、モーテル類似施設といわれるものは、従来、商業地域等に立地することが多かつたが、最近は住宅地域に立地することが多くなり、その特異な外観及び営業形態により、地域住民と建設をめぐり紛争を起こす事例が多発している。
旅館業法(昭和二三年法律第一三八号。以下「法」という。)においては、学校等からおおむね一○○メートル以内の地域に旅館が立地する場合には施設周囲の良好な環境保持のための調整を行う等旅館設置者に対し周囲の環境との調和に留意した建築物、営業形態となるよう調整を図ることを通じて紛争の事前防止に努めてきたところであるが、なお、解決困難な問題が多い実状にある。
ついては、今般、旅館業における善良の風俗の保持を図るため、法に基づき左記のとおりの措置を講ずることとしたので、御了知の上この趣旨に沿つて遺憾のないよう図られたい。
記
第一 基準規則・条例準則について
一 旅館業法施行令(昭和三二年政令第一五一号。以下「令」という。)第一条第一項第一一号、第二項第一○号、第三項第七号及び第四項第五号の規定に基づく「その他都道府県知事が定める構造設備の基準」として、旅館業によつて善良な風俗が害されることがないように、都道府県知事が必要があると判断する地域については、当該地域につき別記Ⅰの基準規則準則を参照して所要の事項を定めることができること。
なお、本準則に基づく規則等の適用に当たつては、既設の営業施設であつて構造設備基準に直ちに適合させることが営業者にとつて多大な負担を伴う場合に限り、その一部につき適用緩和する等の所要の経過措置等を設けることができるものであること。
この場合、当該施設については、営業者に対し、構造設備基準に速やかに適合したものとなるよう計画的改善を行うよう指導する等により経過措置期間をおおむね三年をめどに長期にわたらないよう留意されたいこと。
また、構造設備の改善に要する必要な資金については、環境衛生金融公庫の融資の活用について周知されたいこと。
二 法第四条第二項の営業施設について講ずべき「措置の基準」を定めるに当たつては、別記Ⅱの基準条例準則を参照して、所要の事項を定められたいこと。
第二 許可の条件について
法第三条第六項に規定する許可の条件として、善良の風俗の保持と関連を有する施設の構造設備について大規模又は主要な構造設備に係る変更(軽微な変更を除く。)が生ずる場合には、新たに法第三条第一項に規定する許可を要すること等の条件を付することができるものであること。
第三 利用基準及び宿泊者名簿について
一 令第三条の利用基準の運用に当たつては、次のことに留意し、指導監督を強化すること。
(一) 第一号の規定にある「その他の物件」として人の性的好奇心をそそるおそれのある性具及び彫刻品等の装飾品が含まれるものであること。
(二) 第二号の善良の風俗が害されるような広告物として、けばけばしく色彩が著しく奇異なネオン、広告設備が含まれるものであること。
二 営業者は、法第六条第一項に基づき宿泊者名簿を整備しなければならないものであるが、当該名簿を備えていない場合又は当該名簿に所要の記載を行つていない場合にあつては、その改善を行うよう指導監督を強化すること。
なお、団体で宿泊する場合等の宿泊者名簿の取扱いについては、昭和四五年三月一一日環衛第三六号により更に周知徹底を図ること。
第四 改善指導について
善良風俗の保持のための監視指導については、定期的に一斉監視指導又は重点施設を定めて監視指導を行うなど従前にもまして強化を図り、営業者の営業活動によって地域の善良の風俗が害されることのないよう十分配慮されたいこと。
また再三の改善指導に対して、正当の理由なく改善が行われない場合にあつては、施設の構造設備について、法第七条の二に規定する必要な措置をとるべきことを命ずることができるほか、当該措置命令違反その他の法違反については、法第八条に規定する営業の停止又は営業の許可の取消処分を含めて必要な措置を講ずることができるものであること。
別記Ⅰ@ 構造設備基準規則準則
施設の構造設備は、善良の風俗が害されることがないよう次の各号に定めるところによること。
一 施設の外壁、屋根、広告物及び外観等は、立地場所における周囲の善良な風俗を害することがないよう意匠等が著しく奇異でなく、かつ、周囲の環境に調和する構造設備であること。
二 玄関帳場(フロント)には、宿泊者その他の利用者の出入りを容易に見ることができないような囲いを設けたり、また相対する宿泊者等に直接面接できないような構造等の措置を講じてはならないこと。
三 施設には、人の性的好奇心をそそるおそれのある鏡、寝具、器具、がん具その他これに類するものを備えつけてはならないこと。
四 浴室の内部が当該浴室の外から容易に見えるような人の性的好奇心をそそるおそれのある構造であってはならないこと。
五 施設の外部には、人の性的好奇心をそそるおそれのある休憩料金その他の表示を示す広告物を備え付けてはならないこと。
別記Ⅱ@ 営業施設の措置基準条例準則
一 営業者は、施設ごとに当該従事者のうちから公衆衛生及び善良風俗の保持に関する責任者(以下「宿泊衛生責任者」という。)を定めて置かなければならないこと。
ただし、営業者が宿泊衛生責任者を兼任する場合は、この限りでないこと。
二 宿泊衛生責任者は、営業者の指示に従い、施設内の衛生及び善良風俗の管理に当たるものとすること。
三 営業者又は宿泊衛生責任者は、公衆衛生の保持に必要な措置を講ずることのほか善良な風俗の保持のため法第五条及び令第三条に定めることにつき従業者に対し衛生及び施設内の善良風俗の保持の教育に努めなければならないこと。