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○旅館業法の一部を改正する法律の施行について

(昭和四五年六月一一日)

(環衛第八三号)

(各都道府県知事・各指定都市市長あて厚生省環境衛生局長通達)

旅館業法の一部を改正する法律(以下「改正法」という。)が昭和四五年五月一八日法律第六五号をもつて公布され、同日施行された。今回の改正は、近年都市近郊、主要幹線道路周辺等に多数設置されているいわゆるモーテルと称する旅館のなかに風紀上及び教育環境上好ましくない影響を与えるものがあり、一部地域においては社会的に批判を受けるような事例も見受けられることにかんがみ、これらモーテルに対する規制の強化を主たる目的として行なわれたものである。

改正の要旨及び運用上留意すべき事項は左記のとおりであるので、これが運用に遺憾のないようにされたい。なお、近く関係政省令についても改正を行なう予定であるので申し添える。

第一 改正の要旨

一 旅館業の営業施設の設置場所が、次に掲げる施設の敷地(その用に供するものと決定した土地を含む。以下同じ。)の周囲おおむね一○○メートルの区域内にある場合において、その設置によつて当該施設の清純な施設環境が著しく害されるおそれがあるときは、営業の許可を与えないことができることとしたこと(第三条第三項)。

(一) 児童福祉施設

(二) 社会教育に関する施設その他の施設で、学校及び児童福祉施設に類するものとして都道府県の条例で定めるもの

二 都道府県知事(指定都市にあつては、市長)は、一に掲げる施設の敷地の周囲おおむね一○○メートルの区域内の施設につき営業の許可を与える場合には、あらかじめ、その施設の設置によつて一に掲げる施設の清純な施設環境が著しく害されるおそれがないかどうかについて、児童福祉施設については児童福祉法第四六条に規定する行政庁の、都道府県の条例で定める施設については当該条例で定める者の意見を求めなければならないこととしたこと(第三条第四項)。

三 旅館業の営業の許可には、公衆衛生上必要な条件のみならず、善良の風俗の保持上必要な条件も附することができることとしたこと。この場合、改正法の施行前にした営業の許可についても、改正法の施行の日から二箇月以内に限り善良の風俗の保持上必要な条件を附することができることとしたこと(第三条第六項及び附則第二項)。

第二 運用上留意すべき事項

一 今回の改正は、いわゆるモーテルと称する旅館業のうち風紀上及び教育環境上好ましくない影響を与えるものについて規制を強化することを主たるねらいとするものであるので、この趣旨にそつて個々具体的な事例につき実情に即した運用を図られたいこと。

二 「児童福祉施設」とは、具体的には助産施設、乳児院母子寮、保育所、児童厚生施設、養護施設、精神薄弱児施設、精神薄弱児通園施設、盲ろうあ児施設、虚弱児施設、肢体不自由児施設、重症心身障害児施設、情緒障害児短期治療施設及び教護院をいうが、これら施設における児童の利用実態、清純な施設環境の保持の必要性等にはその施設の機能、種類によつておのずから程度の差があるので、清純な施設環境が害されるか否かの認定にあたつては、この点を十分勘案のうえ処理されたいこと。

三 「児童福祉法第四六条に規定する行政庁」とは、設置者が国である児童福祉施設については厚生大臣、その他の施設については都道府県知事(指定都市の区域内の施設であつて設置者が国又は都道府県である施設以外のものについては指定都市の市長)をいうこと。

ついては、児童福祉施設の周辺の営業施設について許可を与える場合には事前に、旅館業法(以下「法」という。)を所管する部局と児童福祉施設を所管する部局との間で十分意見調整を行なうものとし、当該児童福祉施設の設置者が国であるときは、当該施設の長を経由して厚生大臣の意見を求めることとされたいこと。

四 改正後の法第三条第三項第三号及び同条第四項に基づく条例については、すみやかに制定の手続をとられたいこと。

なお、条例の制定にあたつては、おおむね次の方針によられたいこと。

(一) 法第三条第三項第三号に基づく条例

ア 学校及び児童福祉施設と同様、主として児童の利用に供されるもの又は多数の児童の利用に供されるものであつて、当該施設の清純な施設環境を保持することが特に必要と認められる施設を十分調査検討のうえ指定すること。

イ いかなる施設と指定するかは旅館業を営むことができるかどうかについての権利義務と直接関連するものであるので、当該施設が具体的かつ客観的に特定できる指定方法をとること。この場合条例ですべての施設を特定することは一般的には困難であると思料されるので、その場合は条例では対象施設を例示するにとどめ、具体的な施設は都道府県知事が告示等で個別に指定する方法をとること。

ウ 指定の対象となる具体的な施設としては、次に掲げる施設が考えられること。

図書館、博物館(美術館、動物園等を含む。)公民館、青少年教育施設(児童文化センター等)スポーツ施設等で主として児童の利用に供されるもの又は多数の児童の利用に供されるもの。

(二) 法第三条第四項に基づく条例

原則として次の者の意見を求めることとすること。

ア 当該施設の設置者が国であるときは、当該施設の長と協議のうえ定めるものとするが、通例は当該施設の長

イ 当該施設の設置者が地方公共団体であるときは、当該施設を所管する教育委員会又は地方公共団体の長

ウ ア及びイ以外の施設であつて、当該施設について監督庁があるときは、当該監督庁

エ その他の施設については、当該施設の存する市町村の長

五 営業の許可に際し善良の風俗の保持上必要な条件を附することができることとされたが、これについては、政令で定めることとされている構造設備の基準及び利用基準のように設置場所、営業形態のいかんを問わず一律に規制すべき内容のものを条件として附することは適当でなく、設置場所、営業形態等について当該施設に特有の事情が存する場合に条件を附さなければ善良の風俗の保持が困難であると認められる場合に限り附することができるものであるので、いやしくも法の趣旨目的を逸脱することのないよう配慮されたいこと。

六 いわゆるモーテル等旅館業の健全化を図るためには、営業者による法の遵守の徹底を図るほか、営業者の自粛にまつべき点が多いので今後ともこの監視指導に特段の配慮をされたいこと。