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○旅館業法等施行に関する件

(昭和二三年八月一八日)

(発衛第一〇号)

(各都道府県知事あて厚生事務次官通達)

従来旅館、ホテル、下宿、アパート等のいわゆる旅館業及び公衆浴場並びに映画館、演劇場その他の興行場に対する取締は、警察命令に基づき各都道府県が区々にこれを実施して来たところであるが、新憲法の趣旨にかんがみ、これ等は何れも法律をもつて規定すべきこととなつたので、今回、旅館業法、公衆浴場法及び興行場法が制定され七月一五日からそれぞれ施行されることとなつたのである。いうまでもなく、これ等多数人の集合出入する場所の衛生上の取締は、公衆衛生の見地からすこぶる重要な事項であり、かつその運営の適否は直接国民に影響を及ぼすものであるから、法の運営にあたつては、立法の趣旨及び左記各項に十分留意の上、その万全を期せられたく命によつて通知する。

第一 一般事項

一 立法の趣旨

旅館業法、公衆浴場法及び興行場法は、旅館業、公衆浴場及び興行場の経営が公衆衛生の見地から支障なく行われることを目的とするものである。従来これ等の営業に対する取締は行政警察の一環として、衛生、風紀、保安等の見地から実施せられて来たものであるが、警察制度の改革及び新憲法の趣旨に則り、営業の取締は一に公衆衛生の見地からのみこれを実施するように改められたこと。但し警察、消防等の見地からする一定限度の行政権がこれ等の営業に対して、関与することは、軽犯罪法(昭和二三年法律第三九号)警察官等職務執行法(昭和二三年法律第一三五号)又は消防法(昭和二三年法律第一八六号)等の規定するところであり、従つて旅館業法、公衆浴場法及び興行場法の施行に当たつては、夫々関係当局とも密接に連絡協調の上その万全を期すること。

二 運用上の注意

本法の運用にあたつては、前記立法の趣旨に鑑み、いたずらに取締に偏することなく、営業者に対しては、取締を実施する反面、公衆衛生知識の普及向上を図り、もつて営業の社会公共性を自覚せしめるようその指導育成に努めること及びこれ等営業の許可処分、その他行政処分等の実施はその公正明朗なることを期するため要すれば、関係行政庁の官吏、吏員、学識経験者、営業各代表者等による各運営協議会等の組織をも考慮すること。

三 営業許可手数料

許可手数料は何れも、地方公共団体手数料令により規定する必要があり、目下これを改正すべく別途手続中であること。

四 営業不許可の取扱

従来営業不許可の場合は、許可出願者に対して別段の通知を必要としなかつたのであるが、本法においては、とくにかかる場合は、必ず理由を附した書面をもつて、その旨を通知することとしたこと。

五 立入検査

当該吏員が、営業施設に立入検査を行う場合は、必ず「環境衛生監視員の証」を携帯し、且つ、営業者、管理者、従業者等関係人の請求があるときは、これを呈示しなければならないこととなつているが、請求の有無にかかわらず、積極的に呈示するよう指導すること及び立入の時間は原則としてその営業時間(公開時間)中に限り且つ、みだりに営業者の正当な業務を妨害してはならないこと。

六 公開による聴聞

営業許可の取消、停止等の行政処分を行う場合は、公開による聴聞を行うこととなつているが、これは行政処分を適法かつ妥当ならしめようとする趣旨であるから、とくにこの点に留意し、その運用に万全を期すること。

七 経過措置

従来の警察命令は何れも昭和二二年一二月末日をもつてその効力を失うこととなつたので本法施行までの間に、新たに営業を開始し、本法施行当時これを営んでいるものが相当あるので、これらの者は、とくに本法施行後二月間は引き続きこれを営むことができることとし、更に、この期間内にその旨を届け出るときは所定の許可を受けた者とみなすこととなつている。

併し乍らこの場合においても、公衆衛生上必要な措置は十分講ずる必要があるので、届出のあつた際その施設を実地調査し、不十分のものについては改修その他の措置を講ずるよう指導すること。

第二 旅館業に関する事項

一 削除

二 宿泊者名簿

従来宿泊者については、宿泊人名簿の外投宿届、宿泊人出発届、下宿転宿出発届等を作製提出することとされていたのであるが、これ等を全て廃止して宿泊者名簿のみに統一したのであつて、更に又これは犯罪捜査等の参考に供せしめるものであり、従つてその様式を定めるに当たつては右趣旨を考慮の上これを実施すること。

第三 浴場業に関する事項

一 公衆浴場の適正配置

公衆浴場は燃料事情窮迫の今日国民生活に及ぼす影響は至大なものがあるので、営業許可にあたつては利用者の人口、密度、距離の遠近等を考慮し公衆浴場の偏在を避けて、利用者数に比例した適正配置を図るよう努めること。

二 法第三条に規定する風紀に必要な措置とは、主として男女混浴の禁止を意味するものであつて、警察的風紀取締に非ざること。

三 法第四条の規定の趣旨は患者と一般健康者との混浴による公衆衛生上の危害を防止することにあるので、厳正に実施するよう監督指導すると共に、特殊の業態に従事する者等のためには、それ等の利用のみに供し、逆に健康者の利用を禁止ないし制限するごとき公衆浴場の設置を図るよう指導すること。

第四 興行場営業に関する事項

一 興行場の範囲

本法第一条の興行場の範囲は、所謂映画館、劇場、音楽堂、野球場その他の運動競技場、演芸場及び観せ物場であり、各種展覧会、博覧会、公営の動物園、植物園、博物館等は本法の適用外であること。

二 仮設興行場の取扱

常設の施設でなく季節的又は一時的に仮設して営業を行う興行場の取扱は、常設のものと区別し従来簡易な手続を以つて実施されて来たものであるが、本法施行後は別段の取扱をせず常設のものと同様に取り扱うこと。(但しその施設の構造設備の基準及び法第三条の措置の基準設定に当たり多少の考慮は差し支えない。)

別紙一・二 削除