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測定対象物質

測定質量数

トルエン

91,92

o―、p―、m―キシレン

91,106

p―ジクロロベンゼン

146,148,111

トルエン―d8

99,100

2) GC/MSの分析条件の設定と機器の調整

GC/MSの分析条件の例を以下に示す。これを参考にして適宜設定する。分離及び定量が十分であればこの限りではない。測定対象物質を検証試験で確認する。なお、m―,p―キシレンは分離しなくても良い。

(10℃/min)

カラム温度 :40℃(1分間保持)―――――――→200℃

注入口温度 :200℃

試料注入法 :スプリット(スプリット比1:20~1:100)

インターフェース温度:220℃

イオン源温度:200℃

*MSに質量校正用標準物質(PFTBAまたはPFK)を導入し、質量校正用プログラムにより、マスパターン、分解能{質量数(m/z)=18~300程度の範囲で1質量単位(amu)以上}等を測定目的に応じて所定の値に校正する。質量校正結果は測定結果と共に保存する。

3.1.4. 試料採取および試験液の調製

(1) 試料採取

空気試料の採取は、室内では居間及び寝室2カ所、ならびに室外1カ所についてそれぞれ2回ずつ採取する。試料採取に際しては、トラベルブランクとして捕集管を密栓したまま状態で試料採取と同様に持ち運ぶ。

1) 室内空気の採取

(a) 新築住宅における試料の採取(概ね30分間採取):試料採取装置を用いて1L/min程度の流量で概ね30分間採取する。捕集管はアルミ箔等で遮光し、試料採取後、捕集管の両端を密栓し、活性炭入り保存缶に入れて分析時まで保存する。(注9)(注10)(注11)

(b) 居住住宅における試料の採取(24時間採取):試料採取装置を用いて捕集管に100ml/min程度の流量で24時間採取する。捕集管はアルミ箔等で遮光し、試料採取後、捕集管の両端を密栓し、活性炭入り保存缶に入れて分析時まで保存する。(注10)(注11)

2) トラベルブランク:トラベルブランク試験用として未使用の密栓した捕集管を用い、試料採取操作を除いて、室内空気の試料採取用の捕集管と同様に持ち運び、取り扱う。溶封した捕集管では試料の採取時に開封後、密栓して分析時まで同様に保存する。この操作は、一住宅の室内試料採取において一試料もしくは一連の試料採取において試料数の10%程度の頻度で実施する。(注12)

3) 2重測定用捕集管:試料は、室内の2カ所及び室外1カ所にそれぞれ2回ずつ採取し、2重測定(n=2)の意味を持たせる。2重測定のための試料採取は、一住宅の室内試料採取において一試料もしくは一連の試料採取において試料数の10%程度の頻度で行う。

(2) 試験液の調製

1) 試料空気試験液の調製:捕集管から吸着剤を抽出瓶に取り出し、二硫化炭素1mlを加えて栓をし、泡が出なくなるまで時々振り混ぜた後、内標準溶液(100μg/ml)を1μl加えたものを試験液とする。

2) 操作ブランク試験液の調製:試料空気用の捕集管と同一捕集管について1)と同様の操作を一連の操作の中で一回以上行い、操作ブランク試験液を調製する。(注13)

3) トラベルブランク試験液の調製:トラベルブランク試験用の捕集管について1)と同様の操作を行い、トラベルブランク試験液を調製する。(注14)

4) 2重測定用試験液の調製:2重測定用の捕集管について1)の操作を行い、2重測定用試験液を調製する。

3.1.5. 試験操作

(1) 測定

1) 試料空気の試験

(a) 測定:3.1.4の(2)の1)で調製した試験液の1μl程度をGC/MSに注入する。

(b) 対象化学物質の確認:3.1.3の(7)の1)のh)で設定した各測定対象物質の定量用質量数および確認用質量数によるクロマトグラムを記録し、両者の強度比を求める。(注15)

(c) 定量:検出された各測定対象物質の定量用質量数および内標準物質のピーク面積またはピーク高さを求め、そのピーク面積またはピーク高さの比から、あらかじめ(2)により作成した検量線を用いて、注入した試料液中の各測定対象物質の重量(As:ng)を求める。(注16)

2) 操作ブランク試験:3.1.4の(2)の2)で調製した操作ブランク試験液について1)の操作を行い、各測定対象物質の操作ブランク値を求める。(注17)

3) トラベルブランク試験:3.1.4の(2)の3)で調整したトラベルブランク試験液について1)の操作を行い、注入した試験液中の各測定対象物質の重量を測定する。本試験は3試料以上を測定し、平均値をトラベルブランク値(At:ng)とする。(注18)

4) GC/MS装置の感度試験:混合標準濃度系列の中から中間程度の濃度のものを選び、1)の操作を行って感度の変動を確認する。この確認は1日に1回以上行う。(注19)

5) 2重測定:3.1.4の(2)の4)で調製した2重測定用試験液について1)の操作を行って、各測定対象物質の重量を測定する。(注20)

(2) 検量線の作成

1) 混合標準濃度系列の調製

(a) 溶液混合標準列の調製:混合標準溶液を用いて、GC/MSの感度に合わせて混合標準濃度系列を調製する。(注21)

(b) 捕集管混合標準列の調製

a) 混合標準ガスを用いる場合:混合標準ガスを用いる場合は図4の例に示すように、検量線作成用T字管及び高純度窒素ガスを連結した捕集管に、毎分10~30ml程度の高純度窒素等を流して、混合標準ガス(0.1μg/ml)の0~10mlをガスタイトシリンジを用いて捕集管に吸着させた後、3.1.4の(2)の操作を行い、溶液濃度として0~1μg/mlの範囲で5段階程度の混合標準濃度系列を調製する。(注2)

b) 混合標準溶液の場合:3.1.2の(5)の標準溶液、または(6)の混合標準溶液を用いる場合は、図4の例に示すように、検量線作成用T字管及び高純度窒素ガスを連結した捕集管に標準溶液のX~Yμlを段階的に採り、注入口からマイクロシリンジを用いて添加した後、ゼロガスの20~50mlの流速で3分間通気して標準物質捕集管数本を調整し、3.1.4の(2)の操作を行い5段階程度の混合標準濃度系列を調製する。

2) 測定:

(a) 測定:1)で調製した混合標準濃度系列の1μl程度をGC/MSに注入し、3.1.3(7)1)のh)で設定した各測定対象物質の定量用質量数および確認用質量数によるクロマトグラムを記録する。

(b) 測定対象物質の確認:1)で調製した検量線用混合標準濃度系列の中から各測定対象物質のGC/MSへの注入量が検量線の中間程度のものを選び、各測定対象物質毎に定量用質量数および確認用質量数のピーク面積またはピーク高さを用いて強度比を算出する。

(c) 測定対象物質の検量線作成用質量数の決定:混合標準濃度系列毎に各測定対象物質の定量用質量数および確認用質量数の強度比を求め、(b)で求めた各測定対象物質毎の強度比と一致することを確認する。(注22)

(d) 検量線の作成:各測定対象物質の定量用質量数と内標準物質のピーク面積またはピーク高さの比を求め、そのピーク面積またはピーク高さの比と各測定対象物質の重量とにより検量線を作成する。

3.1.6. 検出下限値、定量下限値の測定

検量線作成時の最低濃度(定量下限値付近)の混合標準濃度系列について、3.1.5の(1)の1)操作を行って測定値(A:ng)を求め、(As―At)にAを代入して、3.1.7の濃度の算出式より空気濃度を算出する。(但し、V=1441、t=20℃、p=101.3kPaとする)5試料以上を測定して求めた標準偏差(S)から次式により、各測定対象物質の検出下限値及び定量下限値を算出する。ただし、操作ブランク値のある物質では操作ブランク値を測定し、混合標準濃度系列と操作ブランク値のうち、大きい方の標準偏差を用いて計算する。(注23)

この測定は機器の分析条件を設定した場合など必要に応じて必ず1回以上行う。

検出下限値 = 3s(μg/m3)

定量下限値 = 10s(μg/m3)

目標定量下限値はガイドライン値の1/10とする。

3.1.7. 濃度の算出

3.1.5の(1)で得られた結果から次式を用いて空気中の各測定対象物質の濃度を算出する。

C=(((As―At)×E×1000)/(v×V×293/(273+t)×p/101.3))

C:20℃における空気中の各測定対象物質の濃度(μg/m3)

As:GC/MSに注入した試料中の各測定対象物質の重量(ng)

At:各測定対象物質のトラベルブランク値(ng)

操作ブランク値と同等と見なせる場合は操作ブランク値を用いる。

E:試験液量(ml)

v:GC/MSへの注入液量(μl)

V:ガスメータで測定した捕集量(・)

t:試料採取時の平均の気温(℃)。湿式型積算流量計を使用しているときには、積算流量計の平均水温(℃)

P:試料採取時の平均大気圧(kPa)。湿式型積算流量計の場合には(P―Pw)を用いる。

ここで、Pwは試料採取時の平均気温tで飽和水蒸気圧(kPa)

結果には個々の測定値と各場所における平均値の両方を記載する。

注1:本方法は、捕集管に濃縮した測定対象物質を抽出溶媒で希釈するため、試料の捕集量を大きくする必要があり、捕集能力を考慮して保持容量の大きい吸着剤を用いる方がよい。抽出した試験液は繰り返し測定が可能である。捕集管のブランク値は比較的少ないが、抽出溶媒のブランク値が定量下限値に影響することもある。捕集管の捕集効率や溶媒による回収率をあらかじめ検討しておく必要がある。居住住宅においては、ここで述べられた方法と同様の信頼性が確保できる場合には拡散吸着法によって試料空気を採取してもよい。ただし、新築においては、この方法による試料採取では測定が困難である。

質量分析計がない場合には、精度が保証されているならば検出器として水素炎イオン化検出器(FID)、電子捕獲型検出器(ECD)等を用いることも可能である。

注2:試料採取量、濃縮操作及びGC/MSの条件等によって測定感度は異なるので、ここに示した濃度を目安に適宜変えてもよい。

注3:FID等を用いて測定する場合は、保持時間等を個々の標準溶液を用いて確認する。

注4:精製空気を使用してもよい。有機化合物を含有しないことが重要であり、測定対象以外の物質については全炭化水素で0.01ppm以下、一酸化炭素0.05ppm以下、二酸化炭素0.3ppm以下、水分濃度2ppm以下(露点-70℃以下)で純度99.999%以上のものが望ましい。

注5:標準原ガスの調製濃度(1μg/ml)は大体の目安であり、物質の感度や大気濃度を考慮して物質毎に変えても良い。

注6:市販のボンベ入り標準ガスは、精度保証されたものが望ましい。p―ジクロロベンゼンの標準ガスは市販品がない場合がある。

注7:ここで作製する標準原ガスは標準物質単独ばかりでなく、複数(トルエン、o―,p―,m―キシレン、p―ジクロロベンゼン)のそれぞれの100mgを一つの真空瓶に入れて混合標準原ガスとしてもよい。

注8:重量濃度で表示された市販の標準原ガスの場合における容積の換算は、測定対象物質100mgに相当する採取容積v(ml)=100×22.4(273+t)/273M(Mは分子量、tは気温)をガスタイトシリンジを用いて分取する。重量濃度で表示された市販の標準原液の場合における液体容量の換算は、測定対象物質100mgに相当する採取容積v(μl)=100/ρ(ρは比重又は密度)をマイクロシリンジを用いて分取する。また、市販の標準ガス濃度はppm(μl/l)表示であるので、重量/体積濃度(μg/l)への換算は、273M/{22.4(273+t)}(Mは分子量、tは気温)を乗じる。

注9:測定に十分な量が得られないと考えられる場合は、採取時間をある程度長くしても良い。

注10:吸引側及び空気取り入れ側を明確にしておく。

注11:湿度が高い場合は除湿管を使用してもよい。

注12:室外で塗装工事等が行われて室内より室外での化学物質濃度が高いと考えられる場合は、トラベルブランクは室外で行う。

注13:分析環境から試験操作過程で汚染されることがあるので、操作ブランクを一連の測定操作の中で少なくとも一回以上実施する。

注14:空気試料の測定に際して、その準備―機器の運搬―試料採取―持ち帰り―前処理―測定の過程で化学物質で汚染された空気で捕集管が暴露する可能性があるので試料採取時の記録を参考にして試験の頻度を考慮する。

注15:定量用質量数のピークに対する他イオンからの影響を判断するために行う操作であり、強度比が検量線作成時と大きくかけはなれている場合は、まず、装置の性能を確認するために再度標準試料を測定して強度比を算出する。その強度比が90~110%の範囲内であれば、測定済み試料のクロマトグラムのベースライン等を再検討したり、かけ離れた原因をチェックして再分析を行い、その強度比が検量線作成時と大きくかけはなれないことを確認する。

注16:室内空気中の各対象化合物の濃度は範囲が広いことが予想されるため、定量上限を明確に把握しておくことが必要である。試料空気の測定値が作成した検量線の直線範囲からはずれている場合は、分析の諸条件を検討したうえで検量線を作成し直し、再度測定する。

注17:操作ブランク試験は試料測定に先立って行い、操作ブランク値を大気濃度に換算した値が目標定量下限値を超える場合には、再洗浄や機器の調製を行った後、再度測定し、操作ブランク値を十分低減してから試験液を測定する。

注18:測定対象物質のトラベルブランク値が操作ブランク値と同等(等しいか小さい)とみなせる場合には移送中の汚染は無視できるものとして試料の測定値から操作ブランク値を差し引いて濃度を計算する。移送中の汚染がある場合には、3試料以上のトラベルブランク値を測定した時の標準偏差(s)から求めた定量下限値(10s:大気濃度への換算値)が目標定量下限値以下の場合、およびトラベルブランク値による定量下限値が目標定量下限値より大きくても試料の測定値が、トラベルブランク値による定量下限値以上の場合には、試料の測定値からトラベルブランク値を差し引いて濃度を計算する。

しかし、移送中に汚染があり、またトラベルブランク値による定量下限値が目標定量下限値より大きく、しかも試料の測定値がトラベルブランク値による定量下限値より小さい場合は原則として欠測扱いとする。この場合には、汚染の原因を取り除いた後、再度試料採取から行う。

注19:内標準物質の感度が検量線作成時の感度と大きく異ならないことを確認する。また、内標準物質との相対感度が検量線作成時の相対感度に対して±20%以内の変動であることを確認し、これを越えて感度が変動する場合には、その原因を取り除き、それ以前の試料を再測定する。さらに、保持時間については、比較的短い間に変動(通常、1日に保持時間が±5%以上、内標準物質との相対保持比が±2%以上)する場合には、その原因を取り除き、それ以前の試料の再測定を行う。

注20:定量下限値以上の濃度の測定対象物質に対して、測定値平均とそれぞれの測定値の間に±15%以上の開きがある場合は、原則として欠測扱いとして、その原因をチェックし、再度試料採取を行う。

注21:捕集管からの抽出効率が80~120%であることが確認されている物質では、捕集管に標準ガスを添加する操作を省いて、直接、抽出瓶に二硫化炭素1mlを加えて栓をし、混合標準溶液(100μg/ml)を0.5~10μl、内標準溶液1μlを添加して5段階程度の混合標準濃度系列を調製してもよいが、これが未確認の物質・捕集管の組み合わせにおいては捕集管混合標準列を調整し、混合標準濃度系列を調整する必要がある。

注22:測定対象物質のいずれかの強度比が(b)で算出した90~110%の範囲を超える場合は、その濃度の混合標準濃度系列を再度測定する。

注23:測定対象物質のいずれかの定量下限値が目標下限値より大きい場合には、試薬、器具、機器等をチェックして、目標定量下限値以下になるよう調整する。

3.2 第2法 固相吸着―加熱脱着―ガスクロマトグラフ質量分析法

3.2.1. 測定方法の概要

吸着剤を充填した捕集管に室内空気及び外気を一定流量で吸引し測定対象物質を捕集する。捕集管を加熱脱着装置に装着し、加熱脱着する測定対象物質をキャピラリーカラムに導入してGC/MSにより分離、定量することを基本とする。(注1)(注2)(注3)

3.2.2. 試薬

(1) メタノール:1μlをGC/MSに注入したとき、測定対象物質および内標準物質のクロマトグラムに妨害を生じないもの。

(2) 過塩素酸マグネシウム:元素分析用(粒径300~700μm)

(3) 標準物質:トルエン、o―、p―、m―キシレン及びp―ジクロロベンゼンは純度98%以上のJIS規格試薬特級、またはこれと同等以上のもの。

(4) 標準原液(1000μg/ml):各メスフラスコ100mlに標準物質100mgを精秤し、メタノールを加えて100mlとする。この溶液1mlは各々の標準物質1000μgを含む。市販の標準溶液を用いてもよい。(注4)(注5)(注6)

(5) 標準溶液(100μg/ml):標準原液の一定量をメタノールを用いて10倍に希釈する。この溶液1mlは各々の標準物質100μgを含む。(注4)(注6)

(6) 混合標準溶液(100μg/ml):各標準原液のそれぞれの一定量(1ml)をメスフラスコ(10ml)に入れ、メタノールを用いて10倍に希釈する。この溶液1mlは各々の標準物質100μgを含む。(注4)

(7) 高純度窒素ガス:測定対象物質及び内標準物質のクロマトグラムに妨害を生じないもの。(注7)

(8) 標準原ガス(1μg/ml):(注8)

1) 標準原ガス:ボンベ入りの標準ガスを使用してもよい。流量比混合法もしくは容量比混合法のいずれの混合標準ガス作成法でもよい。(注9)

2) 真空瓶による方法:ここで調製した標準原ガスは混合標準ガスの作製に用いることができる。真空瓶を高純度窒素で置換して大気圧に戻す。これに、単独または混合で各標準物質の100mgを精秤してマイクロシリンジを用いて注入口から注入し、真空瓶(1㍑)を60℃以上に加熱して標準物質を気化、混合し、これを100μg/ml標準原ガスとする。この100μg/ml標準原ガス10mlを高純度窒素で置換して大気圧に戻した別の真空瓶の注入口から注入して100倍に希釈し、これを1μg/ml標準原ガスとする。(注4)(注10)

(9) 混合標準ガス(5ng/ml):以下に示すいずれかの方法によって調整する。(注4)

1) 標準原ガスを用いた真空瓶による方法:高純度窒素で置換して大気圧に戻した別の真空瓶の注入口から1μg/mlの各標準原ガスの一定量(5ml)を注入して200倍に希釈し、混合標準ガスを調整する。(このガス1mlは各標準物質5ngを含む。)

2) 標準原液を用いた真空瓶による方法:高純度窒素ガスで置換して大気圧に戻した別の真空瓶の注入口から各標準原液(10mg/ml)の一定量(10μl)を注入して混合し、各標準物質0.1μg/mlの混合標準ガスを調整する。この混合標準ガス(0.1μg/ml)の一定量(50ml)を高純度窒素ガスで置換して大気圧に戻した別の真空瓶の注入口から注入して混合し、各標準物質5ng/mlの混合標準ガスを調整する。

2) 標準原ガスを用いた混合法

1) 流量比混合法による方法:図1に示すように高純度窒素ガスと標準原ガスにマスフローコントローラをそれぞれ接続し、さらにこれらを混合させて、その先に真空にした採取容器または真空瓶等で混合ガスを採取できるよう接続する。標準原ガス1に対して高純度窒素ガスが一定の割合になるように両方のマスコントローラで流量を調節して、真空にした採取容器または真空瓶に採取して調製する。

3) 容量比混合法による方法:a)又はb)の方法による。

a) T字管法:図2に示すように高純度窒素ガス流路にバルブ、ガスタイトシリンジが注入できるガス希釈用T字管を接続させ、その先に真空にした採取容器または真空瓶等に混合ガスが採取できるように接続する。流路内の空気を高純度窒素ガスで置換した後、窒素ガスを止め、バルブを閉じる。ついで、採取容器の栓を開け、ガス希釈用T字管からガスタイトシリンジを用いて測定対象である複数の標準原ガスを所定量づつ真空にした採取容器に注入する。さらに、高純度窒素ガスで大気圧まで加圧して加湿混合標準ガスを調製する。

b) 直接法:標準原ガスの一定量をガスタイトシリンジを用いて真空瓶に直接注入し、さらに高純度窒素ガスで10~200倍程度まで希釈する。

混合標準ガスの濃度は標準原ガスの濃度と希釈倍率により変えてもよい。

図1 流量比混合法による混合標準ガス調製の例

図2 容量比混合法による混合標準ガス調製の例

(10) 内標準原液(1000μg/ml):内標準物質(トルエン―d8)の100mgを精秤し、メタノール100mlに溶解する。この溶液1mlは内標準物質1000μgを含む。(注4)

(11) 内標準溶液(100μg/ml):内標準原液をメタノールで10倍に希釈する。この溶液1mlは内標準物質100μgを含む。(注4)

(12) 内標準ガス:高純度窒素で置換して大気圧に戻した別の真空瓶の注入口から内標準原液(1mg/ml)の一定量(100μl)を注入して混合し、内標準ガスを調整する。(このガス1mlは各標準物質0.1μgを含む。)(注4)(注9)(注11)

3.2.3 器具および装置

(1) 抽出瓶:スクリューキャップバイアル(容量2ml)

(2) 真空瓶:図3に示すような、1Lのガラス製の真空瓶でバルブと注入口セプタムが一体となった、内容積が正確に計算されたもの。瓶の中に混合用テフロン粒を数個入れておく。高純度窒素ガスで置換して60℃に加熱し、1時間放置した後、真空にする。この操作を数回繰り返した後、高純度窒素ガスで置換して保存する。使用にあたっては、新しい高純度窒素ガスで置換した後、真空にして使用する。

図3 真空瓶

(3) マイクロシリンジ:容量1~10μlまたは10~100μlが計りとれるもの。

(4) ガスタイトシリンジ:容量1~10mlまたは10~100mlが計りとれるもの。

(5) 検量線作成用T字管:図4に示すように、注入口のセプタム、捕集管及び高純度窒素ガスが接続できるもので、高純度窒素ガスを30~50ml/minの流速で3~5分間通気させることができるもの。

図4 検量線作成用T字管

(6) 試料採取装置:試料採取装置は、除湿管、捕集管、マスフローコントローラ、ポンプ、ガスメータとを連結したものから成り、その例を図5に示す。

試料採取装置に使用する器具類は十分に洗浄して汚染に注意する。試料採取に当たって装置を組み立てた後、漏れのないことを確認する。(注12)

図5 試料採取装置

1) 捕集管

a) 捕集管:内径3~4mm程度のガラス管に測定対象物質を吸着・保持し、且つ加熱による脱着が十分に行うことができる粒径60~80メッシュの吸着剤を充てんし、両端を石英ウールで押さえたもの、または測定対象物質に対して十分な捕集能力を有するもの。(注13)

b) 調整:加熱炉に捕集管を装着し、高純度窒素等を毎分50ml程度に流して捕集管内の空気を十分置換した後、高純度窒素等を流したまま300℃程度で2時間以上空焼き洗浄し冷却後、両端を密栓する。調製した捕集管は活性炭入り密閉できるガラスまたは金属管に保存する。なるべく使用直前に調製する。両端を溶封したものは、長期間の保存が可能である。(注14)

2) 除湿管:捕集管と雨よけを接続できるようにしたガラス管に過塩素酸マグネシウムを約15g充てんし、両端を石英ウールで押さえたもの。両端を密栓し、使用時まで活性炭入りの密閉容器に保存する。

3) マスフローコントローラー:流量を10~500ml/minの範囲で制御でき、設定流量に対して±10%以内の制御精度を有するもの。または、これと同等以上の性能を有するもの。

4) ポンプ:ダイヤフラム型等の密閉式のポンプで捕集管をつけた状態で10~500ml/minの捕集流量が確保できるもの。または、これと同等以上の性能を有するもの。

5) ガスメータ:湿式型のもの、またはこれと同等の能力のあるもので、積算測定が可能であり、マスフローコントローラの流量制御範囲で精度よく作動する性能を有するもの。

(7) 試料導入装置

捕集管の加熱部と、トラップ管及びクライオフォーカスの再捕集部の冷却・加熱部、またはそのどちらかが組み込まれたもので、その例は図6のようである。(注15)

捕集管が試料導入装置に装着されると流路と接続され、捕集管を加熱して、脱着する測定対象物質を再捕集部に濃縮した後、再捕集部を加熱して濃縮した対象物質をGC/MSに直結して導入できる装置であり、キャピラリーカラムの前段に内径0.5mm程度の中空細管、または内径2mm以下の細管に適当な吸着剤等を充填したものを取り付け、この部分を液体窒素等で-100℃以下に温度制御でき、かつ80℃以上に急速加熱できるもの、または、これと同等以上の性能を有するもの。(注16)さらに、捕集管及び、または再捕集部の後にスプリットができる装置を備えたもの。

1) トラップ部:トラップ管とその加熱部からなるもの。

(a) トラップ管:捕集管と連結され、捕集管から脱着してきた測定対象物質をトラップするもので、常温から-20~-100℃程度に冷却できるもの。(注17)

(b) 加熱部:80℃/minで加熱でき、かつ脱着流速が30~50ml/min確保できるもの。

2) クライオフォーカス部:クライオフォーカスとその加熱部からなるもの。

(a) クライオフォーカス装着:キャピラリーカラムの直前で冷却して測定対象物質をクライオフォーカスできるもの。

(b) 加熱部:250℃/minで加熱でき、スプリットが可能な流速が確保されること。

図6 試料導入装置の例

(8) ガスクロマトグラフ―質量分析計(GC/MS)

1) GC/MS装置

a) 試料注入口:スプリット/スプリットレス注入が可能なもの。

b) カラム恒温槽:恒温槽の温度制御範囲が35~300℃であり、測定対象物質の最適分離条件に温度制御できるような昇温プログラムが可能なもの。

c) 分離管:内径0.25~0.32mm、長さ25~60mの溶融シリカ製のものであって、内面にメチルシリコンまたは5%フェニルメチルシリコンを0.5~1.5μmの膜厚で被覆したキャピラリーカラム、またはこれと同等の分離性能を有するもの。

d) インターフェース部:温度を200~300℃程度に保つことができるもの。

e) イオン源:温度を160~300℃に保つことができ、イオン化電圧は70eV程度のもの。

f) 検出器(MS):EI法が可能で、SIM又はScan検出法が可能なもの。

g) キャリヤーガス:ヘリウム(純度99.999vol%以上)。1ml/min

h) 測定質量数:各測定対象物質の測定用質量数は表1による。

表1 各測定対象物質の測定用質量数

測定対象物質

測定質量数

トルエン

91、92

o―、p―、m―キシレン

91、106

p―ジクロロベンゼン

146、148、111

トルエンd―8

99、100

2) GC/MSの分析条件の設定と機器の調整

GC/MSの分析条件の例を以下に示す。これを参考にして適宜設定する。分離及び定量が十分であればこの限りではない。(注18)

(10℃/min)

カラム温度:40℃(1分間保持)―――――→200℃

注入口温度:200℃

試料注入法:スプリット(スプリット比1:20~1:100)

インターフェース温度:220℃

イオン源温度:200℃

*MSに質量校正用標準物質(PFTBAまたはPFK)を導入し、質量校正用プログラムにより、マスパターン、分解能{質量数(m/z)=18~300程度の範囲で1質量単位(amu)以上}等を測定目的に応じて所定の値に校正する。質量校正結果は測定結果と共に保存する。

3.2.4. 試料採取および試験液の調製

(1) 試料採取

試料採取に際しては、室内2カ所、外気1カ所を各2試料づつ、計6試料を採取する。また、トラベルブランクとして捕集管を密栓したまま状態で試料採取とを試料採取時の操作と同様に持ち運ぶ。

1) 室内空気の採取

(a) 新築住宅における試料の採取(概ね30分間採取):試料採取装置を用いて、概ね30分間、採取量が1~5Lになるように流量を設定して採取する。捕集管はアルミ箔等で遮光し、試料採取後、捕集管の両端を密栓し、活性炭入り保存缶に入れて分析時まで保存する。(注19)(注20)

(b) 居住住宅における試料の採取(24時間採取):試料採取装置を用い24時間、採取量が5~20Lになるように流量を設定して採取する。捕集管はアルミ箔等で遮光し、試料採取後、捕集管の両端を密栓し、活性炭入り保存缶に入れて分析時まで保存する。(注19)(注20)

2) 2重測定用の捕集管:試料は室内の2カ所及び室外1カ所でそれぞれ2回ずつ採取する。同時に2重測定(n=2)の意味を持たせる。2重測定のための試料採取は、一住宅の室内試料採取において一試料もしくは一連の試料採取において試料数の10%程度の頻度で行う。

3) トラベルブランク:トラベルブランク試験用として未使用の密栓した捕集管を用い、試料採取操作を除いて、室内空気の試料採取用の捕集管と同様に持ち運び、取り扱う。溶封した捕集管では試料の採取時に開封後、密栓して分析時まで同様に保存する。この操作は、一住宅の室内試料採取において一試料もしくは一連の試料採取において試料数の10%程度の頻度で実施する。(注21)

(2) 試験捕集管の調製

1) 試料空気捕集管の調製:図4の例に示すように、試料を採取した捕集管に検量線作成用T字管及び高純度窒素ガスを連結し、毎分10~30ml程度の高純度窒素等を流しながら、内標準ガス(0.1μg/ml)の0~10ml(要記録)をガスタイトシリンジを用いて流路中に注入して捕集管に吸着させるか、または内標準溶液をマイクロシリンジで注入して捕集管に吸着させる。

2) 操作ブランク試験捕集管の調製:試料空気用の捕集管と同一ロットの捕集管について1)と同様の操作を一連の操作の中で一回以上行い、操作ブランク試験捕集管を調製する。(注22)

3) トラベルブランク試験捕集管の調製:トラベルブランク試験用の捕集管については、内標準ガスまたは内標準液の添加の操作を省いて、そのままトラベルブランク試験捕集管とする。(注23)

4) 2重測定用試験液の調製:2重測定用の捕集管について1)の操作を行い、2重測定用試験液を調製する。

3.2.5. 試験操作

(1) 測定

1) 試料空気の試験

(a) 測定:3.2.4の(2)の1)で調製した捕集管を試料導入装置に装着し、GC/MSを操作させる。

(b) 対象化学物質の確認:3.2.3の(8)の1)のh)で設定した各測定対象物質の定量用質量数および確認用質量数によるクロマトグラムを記録し、両者の強度比を求める。(注24)

(c) 定量:検出された各測定対象物質の定量用質量数および内標準物質のピーク面積またはピーク高さを求め、そのピーク面積またはピーク高さの比から、あらかじめ(2)により作成した検量線を用いて、注入した試料液中の各測定対象物質の重量(As:ng)を求める。(注25)

2) 操作ブランク試験:3.2.4の(2)の2)で調製した操作ブランク試験捕集管を試料導入装置に装着し、1)の操作を行って各測定対象物質の操作ブランク値を求める(注26)。

3) トラベルブランク試験:3.2.4の(2)の3)で調整したトラベルブランク試験捕集管について(1)の操作を行い、注入した試験液中の各測定対象物質の重量を測定する。本試験は3試料以上を測定し、平均値をトラベルブランク値(At:ng)とする。(注27)

4) GC/MS装置の感度試験:混合標準濃度系列の中から中間程度の濃度のものを選び、(1)の操作を行って感度の変動を確認する。この確認は1日に1回以上行う。(注28)

5) 2重測定:3.2.4の(2)の4)で調製した2重測定用試験液について(1)の操作を行って、各測定対象物質の重量を測定する。(注29)

(2) 検量線の作成

1) 混合標準捕集管系列の調製

a) 混合標準ガスを用いる場合:混合標準ガスを用いる場合は図4の例に示すように、検量線作成用T字管に高純度窒素ガス及び捕集管を連結し、毎分10~30ml程度の高純度窒素等を流しながら、混合標準ガス(0.1μg/ml)の0~10mlをガスタイトシリンジを用いて経路内に注入し捕集管に吸着させる。同様の操作を、混合標準ガス量を変えて0.1~1μg/mlの範囲で5段階程度の混合標準捕集管系列を調製する。(注4)

b) 混合標準溶液の場合:3.2.2の(5)または(6)の標準溶液を用いる場合は、図4の例に示すように、検量線作成用T字管に高純度窒素ガス及び捕集管を連結し、高純度窒素ガスを20~50ml/minの流速で流しながら標準溶液の1~10μlを段階的に採り、捕集管の間近にマイクロシリンジを用いて注入し、さらに数分間通気して標準物質捕集管を調製する。同様の操作を数本について行い、混合標準捕集管系列を調製する。(注4)

2) 測定:

(a) 測定:1)で調製した混合標準捕集管系列を試料導入装置に装着し、GC/MSを操作させる。3.2.3の(8)の1)のh)で設定した各測定対象物質の定量用質量数および確認用質量数各のクロマトグラムを記録する。

(b) 測定対象物質の確認:1)で調製した検量線用混合標準捕集管系列の中から各測定対象物質のGC/MSへの注入量が検量線の中間程度のものを選び、各測定対象物質毎に定量用質量数および確認用質量数のピーク面積またはピーク高さを用いて強度比を算出する。

(c) 測定対象物質の検量線作成用質量数の決定:混合標準捕集管系列毎に各測定対象物質の定量用質量数および確認用質量数の強度比を求め、(b)で求めた各測定対象物質毎の強度比と一致することを確認する。(注30)

(d) 検量線の作成:各測定対象物質の定量用質量数と内標準物質のピーク面積またはピーク高さの比を求め、そのピーク面積またはピーク高さの比と各測定対象物質の重量とにより検量線を作成する。

3.2.6. 検出下限値、定量下限値の測定

検量線作成時の最低濃度(定量下限値付近)の混合標準濃度系列について、3.2.5の(1)の1)操作を行って測定値(A:ng)を求め、(As-At)にAを代入して、3.2.7の濃度の算出式より空気濃度を算出する。(但し、V=1441、t=20℃、P=101.3kPaとする)5試料以上を測定して求めた標準偏差(s)から次式により、各測定対象物質の検出下限値及び定量下限値を算出する。ただし、操作ブランク値のある物質では操作ブランク値を測定し、混合標準濃度系列と操作ブランク値のうち、大きい方の標準偏差を用いて計算する。(注31)

この測定は機器の分析条件を設定した場合など必要に応じて必ず1回以上行う。

検出下限値=3s(μg/m3)

定量下限値=10s(μg/m3)

目標定量下限値はカイドライン値の1/10とする。

3.2.7. 濃度の算出

3.2.5の(1)で得られた結果から次式を用いて空気中の各測定対象物質の濃度を算出する。

C=(((As-At)×1000)/(V×293/(273+t)×P/101.3))

C:20℃における空気中の各測定対象物質の濃度(μg/m3)

As:GC/MSに注入した試料中の各測定対象物質の重量(ng)

At:各測定対象物質のトラベルブランク値(ng)

操作ブランク値と同等と見なせる場合は操作ブランク値を用いる。

V:ガスメータで測定した捕集量(・)

t:試料採取時の平均の気温(℃)。湿式型積算流量計を使用しているときには、積算流量計の平均水温(℃)

P:試料採取時の平均大気圧(kPa)。湿式型積算流量計の場合には(P‐Pw)を用いる。

ここで、Pwは試料採取時の平均気温tでの飽和水蒸気圧(kPa)

測定結果については個々の値と各採取場所における平均値をそれぞれ記載する。

注1:居住住宅においては、ここで述べられた方法と同様の信頼性が確保できる場合には拡散吸着法によって試料空気を採取してもよい。ただし、新築においては、この方法による試料採取では測定が困難である。質量分析計がない場合には、精度が保証されているならば検出器として水素炎イオン化検出器(FID)、電子捕獲型検出器(ECD)等を用いることも可能である。

注2:捕集されたVOCsのほとんどが測定可能である。通常、捕集物の全量がカラムに導入されるため、濃度が高い物質では測定に際して内径の小さいカラムでは過負荷になり、検量腺の範囲をはずれる恐れもあるので注意する。

注3:本法はIS016017に対応する。

注4:試料採取量、濃縮操作及びGC/MSの条件等によって測定感度は異なるので、ここに示した濃度を目安に適宜変えてもよい。

注5:市販の標準原液は、精度保証されているものが望ましい。

注6:FID等を用いて測定する場合は、保持時間等を個々の標準溶液を用いて確認する。

注7:精製空気を使用してもよい。有機化合物を含有しないことが重要であり、測定対象以外の物質については全炭化水素で0.01ppm以下、一酸化炭素0.05ppm以下、二酸化炭素0.3ppm以下、水分濃度2ppm以下(露点-70℃以下)で純度99.999%以上のものが望ましい。

注8:標準原ガスの調製濃度(1μg/ml)は大体の目安であり、物質の感度や大気濃度を考慮して物質毎に変えても良い。

注9:市販のボンベ入り標準ガスは、精度保証されたものが望ましい。p‐ジクロロベンゼンの標準ガスは市販されていない可能性がある。市販の標準ガス濃度はppm(μl/l)表示であるので、重量/体積濃度(μg/l)への換算は、273M/{22.4(273+t)}(Mは分子量、tは気温)を乗じる。また、測定対象物質が重量濃度のガスの場合の容積の換算は、測定対象物質100mgに相当する採取容積(ml)は、=100×22.4(273+t)/273M(Mは分子量、tは気温)をガスタイトシリンジを用いて分取する。標準物質が重量濃度の標準液の場合の液体容量は、v(μl)=100/ρ(ρは比重又は密度)をマイクロシリンジを用いて分取する。

注10:ここで作製する標準原ガスは標準物質単独ばかりでなく、複数(トルエン、o‐,p‐,m‐キシレン、p‐ジクロロベンゼン)のそれぞれの100mgを一つの真空瓶に入れて混合標準原ガスとしてもよい。

注11:市販の内標準ガスを用いてもよい。

注12:バラツキが大きいのでマニホールドを使用すると良い。

注13:以下のような市販品の組み合わせがある。

Tenax GR+Carbopack B

Carbopack B+Carbosive SⅢ or Carboxen 1000

Carbopack C+Carbopack B or Carboxen 1000

Tenax TA

注14:合成樹脂などを焼成することにより製造された活性炭であるが、新しく調整または購入した捕集管は十分空焼きした後、同一の洗浄ロットから少なくとも10%以上の割合でブランク値の測定を行い、目的定量下限値よりも十分低い値であることを確認する。なお、300℃を超える温度で長時間空焼きすると炭素の酸化が進み、カーボンモレキュラシーブの性能が変化することがあるので注意する。

注15:試料導入装置には複数のタイプがあり、それぞれに最適条件を設定する。第1は、捕集管が試料導入装置に装着されると流路が確保され、加熱して脱着してトラップ管にいったん再捕集後、さらにトラップ管を加熱してクライオフォーカスに捕集し、さらに加熱してキャピラリーカラムに導入する方式である。第2には、捕集管が試料導入装置に装着されると流路が確保され、加熱して脱着してトラップ管またはクライオフォーカスに再捕集した後、いずれかを加熱してキャピラリーカラムに導入する方式である。

注16:ガラス製または溶融シリカ製の中空管または吸着剤を充填したトラップ管では冷却を要しない装置もある。また、トラップ管の冷却、加熱条件等は導入装置毎に決定する必要がある。市販の装置ではこれらの条件は提示されている場合が多い。

注17:トラップ管には石英等の不活性物質を詰めることもあるが、吸着剤を充てんする場合もある。その充てん剤は温度(-20℃程度の低温)でも破過を起こすことがあるので注意する必要がある。

注18:測定対象物質の分離と定量のカラム温度の設定は、できる限り短時間で終了できるような条件を設定してもよいが、検証試験で確認する。なお、m‐,p‐キシレンは分離しなくても良い。p‐ジクロロベンゼンが溶出したら急激に恒温槽を加熱して測定対象外の物質を排除してもよい。

注19:吸引側及び空気取り入れ側を明確にしておく。

注20:湿度が高い場合は除湿管を使用してもよい。

注21:室外で塗装工事等が行われて室内より室外での化学物質濃度が高いと考えられる場合は、トラベルブランクは室外で行う。

注22:分析環境から試験操作過程で汚染されることがあるので、操作ブランクを一連の測定操作の中で少なくとも一回以上実施する。

注23:空気試料の測定に際して、その準備―機器の運搬―試料採取―持ち帰り―前処理―測定の過程で化学物質で汚染された空気で捕集管が暴露する可能性があるので試料採取時の記録を参考にして試験の頻度を考慮する。

注24:定量用質量数のピークに対する他イオンからの影響を判断するために行う操作であり、強度比が検量線作成時と大きくかけはなれている場合は、まず、装置の性能を確認するために再度標準試料を測定して強度比を算出する。その強度比が90~110%の範囲内であれば、測定済み試料のクロマトグラムのベースライン等を再検討したり、かけ離れた原因をチェックして再分析を行い、その強度比が検量線作成時と大きくかけはなれないことを確認する。

注25:室内空気中の各対象化合物の濃度は範囲が広いことが予想されるため、定量上限を明確に把握しておくことが必要である。試料空気の測定値が作成した検量線の直線範囲からはずれている場合は、分析の諸条件を検討したうえで検量線を作成し直し、再度測定する。

注26:この操作は試料測定に先立って行い、操作ブランク値を大気濃度に換算した値が、目標定量下限値を超える場合には、再洗浄や機器の調製を行った後、再度測定し、操作ブランク値を十分低減してから試験液を測定する。

注27:測定対象物質のトラベルブランク値が操作ブランク値と同等(等しいか小さい)とみなせる場合には移送中の汚染は無視できるものとして試料の測定値から操作ブランク値を差し引いて濃度を計算する。移送中の汚染がある場合には、3試料以上のトラベルブランク値を測定した時の標準偏差(s)から求めた定量下限値(10s:大気濃度への換算値)が目標定量下限値以下の場合、およびトラベルブランク値による定量下限値が目標定量下限値より大きくても試料の測定値が、トラベルブランク値による定量下限値以上の場合には、試料の測定値からトラベルブランク値を差し引いて濃度を計算する。

しかし、移送中に汚染があり、またトラベルブランク値による定量下限値が目標定量下限値より大きく、しかも測定値がトラベルブランク値による定量下限値より小さい場合は原則として欠測扱いとする。この場合には、汚染の原因を取り除いた後、再度試料採取から行う。

注28:内標準物質の感度が検量線作成時の感度と大きく異ならないことを確認する。また、内標準物質との相対感度が検量線作成時の相対感度に対して±20%以内の変動であることを確認し、これを越えて感度が変動する場合には、その原因を取り除き、それ以前の試料を再測定する。さらに、保持時間については、比較的短い間に変動(通常、1日に保持時間が±5%以上、内標準物質との相対保持比が±2%以上)する場合には、その原因を取り除き、それ以前の試料の再測定を行う。

注29:定量下限値以上の濃度の測定対象物質に対して、測定値平均とそれぞれの測定値の間に±15%以上の開きがある場合は、原則として欠測扱いとして、その原因をチェックし、再度試料採取を行う。

注30:測定対象物質のいずれかの強度比が(b)で算出した90~110%の範囲を超える場合は、その濃度の混合標準濃度系列を再度測定する。

注31:測定対象物質のいずれかの定量下限値が目標下限値より大きい場合には、試薬、器具、機器等をチェックして、目標定量下限値以下になるよう調整する。

3.3 第3法 容器採取―ガスクロマトグラフ/質量分析法

3.3.1. 測定方法の概要

ステンレス製の試料採取容器を用いて空気を一定流量で採取する。

ついで、その一定量の空気を加熱脱着装置に装着し、加熱脱着する測定対象物質をキャピラリーカラムに導入してGC/MSにより分離、定量する。

3.3.2.試薬

(1) 水:測定対象物質を含まないもの。(注1)

(2) メタノール:1μlをGC/MSに注入したとき、測定対象物質および内標準物質のクロマトグラムに妨害を生じないもの。

(3) 過塩素酸マグネシウム:元素分析用(粒径300~700μm)

(4) 標準物質:トルエン、o―、p―、m―キシレン及びp―ジクロロベンゼンは純度98%以上のJIS規格試薬特級、またはこれと同等以上のもの。

(5) 標準原液(1000μg/ml):各メスフラスコ100mlに標準物質100mgを精秤し、メタノールを加えて100mlとする。この溶液1mlは各々の標準物質1000μgを含む。(注2)(注3)

(6) 混合標準溶液(100μg/ml):各標準原液のそれぞれの一定量(1ml)をメスフラスコ(10ml)に入れ、メタノールを用いて10倍に希釈する。この溶液1mlは各々の標準物質100μgを含む。(注2)(注3)

(7) 高純度窒素ガス:測定対象物質のクロマトグラムに妨害を生じないもの。(注4)

(8) 加湿高純度窒素ガス:高純度窒素ガスを水に通気して調整する。(25℃での相対湿度は約60~70%)。または、あらかじめ減圧にした採取容器に高純度窒素ガスを流しながら、シリンジで水(6L容器で約100μl程度:加圧した時の25℃での相対湿度として約50%)を注入して調整する。(注5)

(9) 標準原ガス(1μg/ml):(注6)

1) 標準原ガス:ボンベ入りの標準ガスを使用してもよい。流量比混合法もしくは容量比混合法のいずれの加湿混合標準ガス作成法でもよい。(注7)(注8)(注9)

2) 真空瓶による方法:ここで調製した標準原ガスは容量比混合法による加湿混合標準ガスの作製に用いることができる。真空瓶(1㍑)を高純度窒素ガスで置換して大気圧に戻し、これに、単独または混合で標準物質の100mgを精秤して液体シリンジを用いて注入口から注入し、真空瓶を60℃以上に加熱して標準物質を気化、混合し、100μg/ml標準原ガスとする。100μg/ml標準原ガス10mlを高純度窒素で置換して大気圧に戻した別の真空瓶の注入口から注入して100倍に希釈し、1μg/ml標準原ガスを調整する。(注2)(注8)(注9)

(10) 加湿混合標準ガス(0~0.1ng/ml):3.3.3(7)の1)の(a)のb)に従って充分洗浄し汚染のないことが確認された採取容器を用い、標準原ガス(1μg/ml)を各測定対象物質の定量範囲に応じて圧希釈、容量比混合、流量比混合等により加湿高純度窒素ガスで希釈して0~0.1ng/mlの5段階程度の加湿混合標準ガスを調製する。加湿混合標準ガスは加圧(200kpa程度)で調製する。(注2)(注8)

以下に示すいずれかの方法によって調整する。

1) 流量比混合法による方法:図1に示すような高純度窒素ガスにマスフローコントローラ、加湿器を接続、また、標準原ガスボンベにマスフローコントロラーを接続し、さらにこれらを混合させて、その先に真空にした採取容器または真空瓶等で混合ガスを採取できるよう接続する。標準原ガス1に対して加湿高純度窒素ガスを一定の割合になるように両方のマスコントローラで流量を調節して、真空にした採取容器または真空瓶に採取して調製する。

図1 流量比混合法による加湿高純度窒素ガスの調製

2) 容量比混合法による方法:a)又はb)による。

a) T字管法:図2に示すように高純度窒素ガスに加湿器を通した高純度窒素ガス流路にバルブ、ガスタイトシリンジが注入できるガス希釈用T字管を接続させ、その先に真空にした採取容器または真空瓶等に混合ガスが採取できるように接続する。流路内の空気を高純度窒素ガスで置換した後、窒素ガスを止め、バルブを閉じる。ついで、採取容器の栓を開け、ガス希釈用T字管からガスタイトシリンジを用いて複数の測定対象物質の標準原ガスを所定量づつ真空にした採取容器に注入する。さらに、高純度窒素ガスを大気圧まで加圧して混合標準ガスを調製する。(注10)

b) 直接法:標準原ガスの一定量をガスタイトシリンジを用いて真空瓶に直接注入し、さらに高純度窒素ガスで10~200倍程度まで希釈する。

図2 標準原ガスを用いた容量比混合法による加湿高純度窒素ガスの調製

(11) 内標準物質:内標準物質としてトルエン―d8(ρ=0.934)を用いる。(注11)

(12) 内標準原液(1000μg/ml):トルエン―d8の100mgを精秤し、メタノール100mlに溶解する。(注2)(注11)

(13) 内標準溶液(100μg/ml):内標準原液をメタノールで10倍に希釈する。この溶液1mlは内標準物質100μgを含む。(注2)(注11)

(14) 内標準原ガス:内標準物質または内標準原液(1mg/ml)の一定量(100μl)を高純度窒素で置換して大気圧に戻した別の真空瓶の注入口から注入して混合し、内標準原ガスを調整する。または、内標準物質を真空瓶を用いて複数回希釈してもよい。このガス1mlは各標準物質0.1μgを含む。(注2)(注12)

3.3.3. 器具および装置

(1) 真空瓶:図3に示すような、1Lのガラス製のものでバルブと注入口セプタムと一体となったもので内容積が正確に計算されたもの。瓶の中に混合用テフロン粒を数個入れておく。高純度窒素ガスで置換して60℃に加熱して1時間放置した後、真空にする。この操作を数回繰り返した後、高純度窒素ガスで置換して保存する。使用にあたっては、新しい高純度窒素ガスで置換した後、真空にして使用する。

図3 真空瓶

(2) マイクロシリンジ:容量1~10μlまたは10~100μlが計りとれるもの。

(3) ガスタイトシリンジ:容量1~10mlもしくは10~100mlが計りとれるもの。

(4) ガス希釈用T字管:ガスタイトシリンジ、注入口セプタム、加湿高純度窒素ガスおよび採取容器流路が接続できるもの。接続の例を図4に示す。

図4

(5) ガスメータ:湿式型のもの、またはこれと同等の能力のあるもので、積算測定が可能であり、マスフローコントローラの流量制御範囲で精度よく作動する性能を有するもの。

(6) 加湿器:高純度窒素ガスを水に通して加湿できるもの。

(7) 試料採取装置

1) 試料採取装置の部品

(a) 採取容器と洗浄

a) 採取容器:内面を不活性化処理(電気研磨、酸化皮膜処理、シリカコーティング等)したステンレス容器で、内容積が3Lから15L程度のもの、またはこれと同等以上の性能を有するもの。(注13)

b) 採取容器の洗浄とリークチェック:採取容器は使用の都度、13pa(約0.1mmHg)以下に減圧した後、加湿高純度窒素ガスを大気圧まで導入する操作を3回以上繰り返した後(試料採取容器は100℃程度に加温しておく)、加湿ゼロガスを充てんして24時間放置する。その一定量をGC/MSで分析して測定対象物質および内標準物質のクロマトグラムに妨害を生じないことを確認する。その後、容器を13Pa(約0.1mmHg)以下に減圧して保管する。使用前に圧力を確認しリークがないかを確かめる。

(b) マスフローコントローラー:流量を2~50ml/minの範囲で制御でき、差圧20kPa(約150mmHg)以上における流量の制御精度は設定流量に対して±10%以内のもの。耐圧は300kPa(約2200mmHg)程度、および大気圧下で13Pa(約0.1mmHg)以下の減圧に耐えること。(注14)

(c) ポンプ:加圧採取時に使用するポンプで、その構造は、メタルベローズまたはメタルダイヤフラム型で漏れがなく、接ガス部の材質はステンレスまたは酸化皮膜処理したアルミニウム、またはこれと同等以上の性能を有するもの。

(d) バルブ:全閉時の漏れがなく、構造はメタルベローズまたはメタルダイヤフラム型で接ガス部の材質はステンレスまたは酸化被膜処理をしたアルミニウムで構成されていること、またはこれと同等以上の性能を有するもの。耐圧は300kPa(約2200mmHg)程度で、大気圧下で13Pa(約0.1mmHg)以下の減圧に耐えること。

(e) 除湿器:捕集管と雨よけを接続できるようにしたガラス管に、過塩素酸マグネシウムを約15g充てんし、両端を石英ウールで押さえたもの。両端を密栓し、使用時まで活性炭入りの密閉容器に保存する。

(f) フィルター:ステンレス製でメッシュ・サイズが通常2μm程度で7μm以下のもの。

(g) 圧力計:ステンレス製で漏れがなく、―100kPa(約0.001mmHg)から300kPa(約2200mmHg)程度の圧力範囲が表示できるもの。

2) 試料採取装置の組み合わせ

(a) 減圧採取装置:フィルタ、マスフローコントローラ、バルブ、圧力計、試料採取容器から構成され、圧力計により試料採取容器内部圧力が真空状態であることを確認する。

図5 減圧採取装置

(b) 加圧採取装置:フィルタ、ポンプ、マスフローコントローラ、バルブ、圧力計、試料採取容器から構成され、圧力計により試料採取容器内部圧力を確認する。採取時間を自動で設定できる装置では、バルブをポンプの後に配置する。採取終了時の圧力は200kPa(約1500mmHg)程度とする。また、マスフローコントローラは設定流量に対して±10%以内で制御できる性能を有すること。

図6 加圧採取装置

(8) 試料導入装置

濃縮部(捕集管)及びクライオフォーカスの冷却・加熱部が組み込まれたもので、その例は図7のようで、その動作過程は以下のようである。(注15)

採取容器が試料導入装置に装着し、装置を作動させると流路が接続され、常温または冷却された濃縮部の捕集管に測定対象物質が濃縮される。ついで、濃縮部を加熱して対象物質をキャピラリーカラム手前でクライオフォーカスする。続いて、クライオフォーカス部が加熱されて対象化合物がキャピラリーカラムへ導入される。(注16)

試料導入装置には複数のタイプがある。第1は、捕集管が試料導入装置に装着されると流路が確保され、捕集管にいったん測定対象物質を捕集後、加熱してクライオフォーカスに捕集し、さらにクライオフォーカス加熱してキャピラリーカラムに導入する方式である。第2には、捕集管が試料導入装置に装着されると流路が確保され、捕集管またはクライオフォーカスに測定対象物質を捕集した後、いずれかを加熱してキャピラリーカラムに導入する方式である。

図7 試料導入装置の例

1) パージ用ガス:試料の濃縮、濃縮管からの追い出し、系内の洗浄に使用し、高純度窒素ガスまたはヘリウムを用いる。

2) 濃縮部:吸着濃縮管による方法と低温濃縮法がある。

a) 吸着による濃縮:吸着濃縮管を用い、脱着時にはこの吸着濃縮管を180℃以上に加熱できるもの。ただし、加熱温度は使用する吸着剤によって異なる。

吸着濃縮管は、内径1~3mmのガラス管、ガラスライニングステンレス鋼管またはステンレス管に、ポーラスポリマビーズやカーボン系吸着剤を単独または組み合わせて充てんし、両端を不活性処理した石英ウールで押さえたもの。

b) 低温による濃縮:低温濃縮管を用い、脱着時に低温濃縮管の温度を90℃以上に加熱できるもの。低温濃縮管は、内径1~6mmのガラス管、ガラスライニングステンレス鋼管またはステンレス鋼管に不活性処理したガラスビーズ(粒径250~500μm)、石英ビーズ(粒径250~500μm)、石英ウールまたは不活性処理したけい藻土(粒径250~500μm)等充てんしたもの。(注17)

3) クライオフォーカス部:キャピラリーカラム導入用トラップ(以降トラップ管という)で、キャピラリーカラムの前段に内径0.3~0.6mm程度の溶融シリカまたは不活性処理したステンレス鋼中空間を取り付け、この部分を液体窒素等で-100℃以下に温度制御でき、また80℃以上に急速加熱できるもの。この他、キャピラリーカラムの先端部分の一部またはカラム恒温槽の温度を-50℃以下に冷却するものもある。(注18)

4) 除湿部:試料濃縮の前に試料中の水分を除去するものであり、水を選択的に透過する高分子膜を用いたもの、ドライパージ方式によるもの、パージ・トラップの原理により水から選択的に揮発性物質を追い出せるもの、またはこれと同等以上の除湿能力のあるもの。(注19)

(9) ガスクロマトグラフ―質量分析計(GC/MS)

1) GC/MS装置

(a) 試料注入口:スプリット/スプリットレス注入が可能なもの。

(b) カラム恒温槽:恒温槽の温度制御範囲が35~300℃であり、測定対象物質の最適分離条件に温度制御できるような昇温プログラムが可能なもの。

(c) 分離管:内径0.25~0.32mm、長さ25~60mの溶融シリカ製のものであって、内面にメチルシリコンまたは5%フェニルメチルシリコンを0.5~1.5μmの膜厚で被覆したキャピラリーカラム、またはこれと同等の分離性能を有するもの。

(d) インターフェース部:温度を200~300℃程度に保つことができるもの。

(e) イオン源:温度を160~300℃に保つことができ、イオン化電圧は70eV程度のもの。

(f) 検出器(MS):EI法が可能で、SIMまたはScan検出法が可能なもの。

(g) キャリヤーガス:ヘリウム(純度99.999vol%以上)。1ml/min

(h) 測定質量数:各測定対象物質の測定用質量数は表1による。

表1 各測定対象物質の測定用質量数

測定対象物質

測定質量数

トルエン

91,92

o―、p―、m―キシレン

91,106

p―ジクロロベンゼン

146,148,111

トルエンd―8

99,100

2) GC/MSの分析条件の設定と機器の調整

GC/MSの分析条件の例を以下に示す。これを参考にして適宜設定する。分離及び定量が十分であればこの限りではない。測定対象物質を検証試験で確認する。なお、m―、p―キシレンは分離しなくても良い。

(10℃/min)

カラム温度:40℃(1分間保持)・・・・・→200℃

注入口温度:200℃

試料注入法:スプリット(スプリット比1:20~1:100)

インターフェース温度:220℃

イオン源温度:200℃

*MSに質量校正用標準物質(PFTBAまたはPFK)を導入し、質量校正用プログラムにより、マスパターン、分解能{質量数(m/z)=18~300程度の範囲で1質量単位(amu)以上}等を測定目的に応じて所定の値に校正する。質量校正結果は測定結果と共に保存する。

3.3.4. 試料採取及び試験容器の調製

(1) 試料採取

空気試料の採取は、室内では居間及び寝室の2カ所、ならびに室外1カ所についてそれぞれ2回ずつ採取する。同時に2重採取(n=2)としての意味を持たせる。試料採取に際しては、トラベルブランクとして加湿高純度窒素ガスを減圧採取法では80kPa(約610mmHg)、加圧採取法では200kPa(約1500mmHg)程度まで導入した容器を、試料採取操作を除いて試料採取容器と同様に持ち運ぶ。減圧採取法では持ち運び後できるだけ速やかに加湿ゼロガスで200kPa(約1500mmHg)程度まで加圧する。

1) 室内空気の採取

(a) 新築住宅における試料の採取(概ね30分間採取):真空が確認された採取装置を用いて所定の流量で30分間採取する。(注20)

(b) 居住住宅における試料の採取(24時間採取):真空が確認された採取装置を用いて所定の流量で24時間採取する。(注21)

(2) 試料空気の採取方法

試料はあらかじめ減圧(13Pa(約0.1mmHg)以下)にした採取容器を用いて採取する。試料採取には、機械式マスフローコントローラまたはサーマルマスフローコントローラを用いて一定流量で試料を容器に採取する。採取後に大気圧の80%(80kPa)になるように採取を終了する減圧採取法と、加圧ポンプを用いて200kPa(約1500mmHg)程度まで採取する加圧採取法がある。

1) 減圧採取

図5の試料採取装置を試料採取場所に設置する。ついで、居住住宅および新築住宅における試料の採取方法に従って流量を調節して所定の時間試料空気を採取する。採取後、バルブを閉じて試料採取を終了し、試料採取容器の先端部分を密栓する。試料採取開始時および終了時の時間と試料採取容器内圧力(p)を記録する。試料保存は加圧した状態で行う必要があるため、減圧採取した試料は、できるだけ速やかに高純度窒素ガスで200kPa(約1500mmHg)程度まで加圧する。試料加圧前圧力と試料加圧後圧力(P)を記録し、加圧による希釈倍率(n=P/p)を算出する。

2) 加圧採取法

図6の試料採取装置を試料採取場所に設置してポンプを作動させる。ついで、居住住宅および新築住宅における試料の採取方法に従って流速を設定して所定の時間試料空気を採取する。所定の時間経過後にバルブを閉じ試料採取を終了し、試料採取容器の先端部分を密栓する。試料採取開始時および終了時の時間と試料採取容器内圧力を記録しておく。

(3) トラベルブランク試験

加湿高純度窒素ガスを減圧採取法では80kPa(約610mmHg)、加圧採取法では200kPa(約1500mmHg)程度まで導入した容器を、試料採取操作を除いて試料採取容器と同様に持ち運ぶ。減圧採取法では持ち運びできるだけ速やかに加湿ゼロガスで200kPa(約1500mmHg)程度まで加圧する。

この操作は、一住宅の室内試料採取において一試料もしくは一連の試料採取において試料数の10%程度の頻度で、少なくとも3試料以上について実施する。(注22)

(4) 試験容器の調製

1) 試験容器の調製:捕集した試料容器に内標準ガスの一定量(100μg/ml)を加えたものを試験容器とする。

2) 操作ブランク試験容器の調製:ブランク試験容器について1)と同様の操作を一連の操作の中で一回以上行い、操作ブランク試験容器を調製する。(注23)

3) トラベルブランク試験容器の調製:トラベルブランク試験用容器について1)と同様の操作を行い、トラベルブランク試験容器を調製する。

3.3.5. 試験操作

(1) 試料空気の測定

1) 試料空気の試験

(a) 濃縮:減圧採取法及び加圧採取法で採取した採取容器を試料導入装置に接続し、試料空気を一定流量で濃縮部に濃縮させる。試料の濃縮量は、測定対象物質の濃度、機器の感度及び指針値の1/10が十分測定できる程度を目安とする。

(b) クライオフォーカス:濃縮部を加熱してクライオフォーカス部に再濃縮する。さらに、クライオフォーカス部を加熱し、キャピラリーカラムに導入される。これら一連の操作は、ほとんどの機器で自動的に実施される。

(c) 測定対象物質の確認:3.3.3の(8)の1)のh)で設定した各測定対象物質の定量用質量数および確認用質量数によるクロマトグラムを記録し、両者の強度比を求める。(注24)

(d) 定量:検出された各測定対象物質の定量用質量数および内標準物質のピーク面積またはピーク高さを求め、そのピーク面積またはピーク高さの比から、あらかじめ(2)により作成した検量線を用いて、注入した試料液中の各測定対象物質の重量(As:ng)を求める。(注25)

2) 操作ブランク試験

3.3.4の(4)の2)で調製した操作ブランク試験容器について、1)の操作を行って、各測定対象物質の操作ブランク値を求める。(注26)

3) トラベルブランク試験

3.3.4の(4)の3)で調整したトラベルブランク試験液について1)の操作を行い、注入した試験液中の各測定対象物質の重量を測定する。本試験は3試料以上を測定し、平均値をトラベルブランク値(At:ng)とする。(注27)

3) GC/MS装置の感度試験

混合標準濃度系列の中から中間程度の濃度のものを選び、1)の操作を行って感度の変動を確認する。この確認は1日に1回以上行う。(注28)

4) 2重測定

3.3.4の(4)の1)で調製した試験容器について再度1)の操作を行って、各測定対象物質の重量を測定する。(注29)

(2) 検量線の作成

1) 混合標準濃度系列容器の調製

図1または2に示す加湿混合標準ガスの調製にならって加湿高純度窒素ガスと標準原ガスとを混合し、これを真空にした採取容器に採取する。ついで、内標準原ガスを注入し、さらに加湿高純度窒素ガスで加圧して200kPaとする。標準源ガスの希釈率を変えた同様の操作によって5段階程度の混合標準濃度系列を調製する。(注30)

2) 1)で調製した混合標準濃度系列容器を試料導入装置に接続し、加湿混合標準ガスを一定流量で流し濃縮部に濃縮させる。濃縮部を加熱してクライオフォーカス部に再濃縮させ、今度は、クライオフォーカス部を加熱して試料をキャピラリーカラムに導入する。これら一連の操作は、ほとんどの機器で自動的に実施される。3.3.3の(8)の1)のh)で設定した各測定対象物質の定量用質量数および確認用質量数による各測定対象物質のクロマトグラムを記録する。

3) 2)で測定した検量線用混合標準濃度系列の中から各測定対象物質のGC/MSへの注入量が検量線の中間程度のものを選び、各測定対象物質毎に定量用質量数および確認用質量数のピーク面積またはピーク高さを用いて強度比を算出する。

4) 混合標準濃度系列毎に各測定対象物質の定量用質量数および確認用質量数の強度比を求め、3)で求めた各測定対象物質毎の強度比と一致することを確認する。(注31)

5) 各測定対象物質の定量用質量数と内標準物質のピーク面積またはピーク高さの比を求め、そのピーク面積またはピーク高さの比と各測定対象物質の重量とにより検量線を作成する。

3.3.6 検出下限値、定量下限値の測定

検量線作成時の最低濃度(定量下限値付近)の混合標準濃度系列について、3.3.5の(1)の操作を行って測定値(A:ng)を求め、(As―At)にAを代入して、3.3.7の濃度の算出式より大気濃度を算出する。(但し、V=1441、t=20℃、p=101.3kPaとする)5試料以上を測定して求めた標準偏差(s)から次式により、各測定対象物質の検出下限値及び定量下限値を算出する。ただし、操作ブランク値のある物質では操作ブランク値を測定し、混合標準濃度系列と操作ブランク値のうち、大きい方の標準偏差を用いて計算する。(注32)

この測定は機器の分析条件を設定した場合など必要に応じて必ず1回以上行う。

検出下限値=3s(μg/m3)

定量下限値=10s(μg/m3)

目標定量下限値はガイドライン値の1/10とする。

3.3.7 濃度の算出

3.3.5の(1)で得られた結果から次式を用いて空気中の各測定対象物質の濃度を算出する。

C=(((As-At)×1000)/(V×293/(273+t)×P/101.3))

C:20℃における大気中の各測定対象物質の濃度(μg/m3)

As:GC/MSに注入した試料中の各測定対象物質の重量(ng)

At:各測定対象物質のトラベルブランク値(ng)

操作ブランク値と同等と見なせる場合は操作ブランク値を用いる。

V:GC/MSへの注入ガス量(・)

t:試料採取時の平均の気温(℃)。湿式型積算流量計を使用しているときには、積算流量計の平均水温(℃)

P:試料採取時の平均大気圧(kPa)。湿式型積算流量計の場合には(P―Pw)を用いる。

ここで、Pwは試料採取時の平均気温tでの飽和水蒸気圧(kPa)

注1:測定対象物質の確認には、水を高純度窒素ガスで通気したガスを採取容器に採取し、これをGC/MSで確認する。市販のミネラルウォーターの中には揮発性物質が極めて少ないものがあるので、確認した上で使用することができる。ただし、塩類が含まれており配管や採取容器の内部に塩類が析出することがあるので注意する。

注2:試料採取量、濃縮操作及びGC/MSの条件等によって測定感度は異なるので、ここに示した濃度を目安に適宜変えてもよい。

注3:標準原液の調製で、標準物質の採取量とメスフラスコの全量は、秤取る比が同じであれば、ここに規定した通りでなくてもよい。市販の標準溶液を用いてもよいが、精度保証されているものが望ましい。

注4:濃度が目標定量下限値より低い値である高純度窒素を使用する。使用に際して測定対象物質の濃度を確認する。精製空気を使用してもよい。有機化合物を含有しないことが重要であり、測定対象物質以外については全炭化水素で0.01ppm以下、一酸化炭素0.05ppm以下、二酸化炭素0.3ppm以下、水分濃度2ppm以下(露点-70℃以下)で純度99.999%以上のものが望ましい。

注5:加湿高純度窒素ガスは、真空瓶または採取容器に標準原ガスや検量線用標準ガス列を作成するときに用いる。通気あるいは水注入のいずれの操作においても汚染に注意する。

注6:標準原ガスの調製濃度(1μg/ml)は大体の目安であり、物質の感度や大気濃度を考慮して物質毎に変えても良い。

注7:市販のボンベ入り標準ガスは、精度保証されたものが望ましい。p―ジクロロベンゼンについては標準ガスが入手不可能な場合がある。

注8:ここで作製する標準原ガスは標準物質単独ばかりでなく、複数(トルエン、o―,p―,m―キシレン、p―ジクロロベンゼン)のそれぞれの100mgを一つの真空瓶に入れて混合標準原ガスとしてもよい。

注9:重量濃度で表示された市販の標準原ガスの場合における容積の換算は、測定対象物質100mgに相当する採取容積v(ml)=100×22.4(273+t)/273M(Mは分子量、tは気温)をガスタイトシリンジを用いて分取する。重量濃度で表示された市販の標準原液の場合における液体容量の換算は、測定対象物質100mgに相当する採取容積v(μl)=100/ρ(ρは比重又は密度)をマイクロシリンジを用いて分取する。また、市販の標準ガス濃度はppm(μl/l)表示であるので、重量/体積濃度(μl/l)への換算は、273M/{22.4(273+t)}(Mは分子量、tは気温)を乗じる。

注10:圧希釈は、容量比混合の一つで、容器内の圧力を計測し、圧力の増加分から希釈倍率を計算する。容器で調製した加湿ゼロガスで希釈する時には、希釈より相対湿度が低くなるおそれがあるので注意する。

注11:内標準物質として、フルオロベンゼン(ρ=1.024)、クロロベンゼン-d5(ρ=1.157)等を用いてもよい。また、ρは比重(20℃:4℃の水に対して)である。

注12:真空瓶の代わりに採取容器を用いてもよい。

注13:回収率と保存性が確認されたもの。漏れがなく、容器は300kPa(約2200mmHg)程度の加圧および大気圧下で13Pa(約0.1mmHg)以下の減圧に耐えること。

注14:漏れがなく、接ガス部の材質はステンレスまたは酸化皮膜処理をしたアルミニウムで構成されていること、またはこれと同等以上の性能を有するもの。また、マスフローコントローラは設定流量に対して±10%以内で制御できる性能を有すること。

注15:ガラス製または溶融シリカ製の中空管または吸着剤を充填した捕集管では冷却を要しない装置もある。また、トラップ管の冷却、加熱条件等は導入装置毎に決定する必要がある。市販の装置ではこれらの条件は提示されている場合が多い。

注16:キャピラリーカラムの前段に内径0.5mm程度の中空細管、または内径2mm以下の細管に適当な吸着剤等を充填したものを取り付け、この部分を液体窒素等で-100℃以下に温度制御でき、かつ80℃以上に急速加熱できるもの、または、これと同等以上の性能を有するもの。さらに、捕集管及び、または再捕集部の後にスプリットができる装置を備えたもの。

注17:濃縮部で、低温濃縮に用いる冷媒には液体窒素(bp:-196℃)、液体酸素(bp:-183℃)等があるが、液体窒素では試料中の酸素の凝縮が起き、流路を閉塞することがある。また、低温濃縮時に、水分や二酸化炭素等により、流路の閉塞が生じることがあるので、流路が閉塞していないことを確認する。

注18:捕集管では冷却時に、水分、二酸化炭素による流路の閉塞が生じることがあるので注意する。また、トラップ管の冷却、加熱条件などは導入装置ごとに決定する必要がある。市販の装置ではこれらの条件は提示されている場合が多い。

注19:試料採取容器から試料導入装置に注入された空気中には水分が含まれているので、クライオフォーカス部に凝結することがある。このため、種々の方式によって除湿装置やシステムが装着されている。しかし、除湿装置やシステムが装着されていても試料空気の状況によってはキャピラリーカラム導入前に凝縮することがあるので注意する。

注20:容積が6Lの採取容器を用いて減圧採取を行う場合の採取流量は100~150ml/minである。また、加圧採取を行う場合の採取流量は270~400ml/minである。

注21:容積が6Lの採取容器を用いて減圧採取を行う場合の採取流量は約3ml/minである。また、加圧採取を行う場合の採取流量は約8ml/minである。

注22:室外で塗装工事等が行われて室内より室外での化学物質濃度が高いと考えられる場合は、トラベルブランクは室外で行う。

注23:分析環境から試験操作過程で汚染されることがあるので、操作ブランクを一連の測定操作の中で少なくとも一回以上実施する。

注24:定量用質量数のピークに対する他イオンからの影響を判断するために行う操作であり、強度比が検量線作成時と大きくかけはなれている場合は、まず、装置の性能を確認するために再度標準試料を測定して強度比を算出する。その強度比が90~110%の範囲内であれば、測定済み試料のクロマトグラムのベースライン等を再検討したり、かけ離れた原因をチェックして再分析を行い、その強度比が検量線作成時と大きくかけはなれないことを確認する。

注25:室内空気中の各対象化合物の濃度は範囲が広いことが予想されるため、定量上限を明確に把握しておくことが必要である。試料空気の測定値が作成した検量線の直線範囲からはずれている場合は、分析の諸条件を検討したうえで検量線を作成し直し、再度測定する。

注26:この操作は試料測定に先立って行い、操作ブランク値を大気濃度に換算した値が、目標定量下限値を超える場合には、再洗浄や機器の調製を行った後、再度測定し、操作ブランク値を十分低減してから試験液を測定する。

注27:測定対象物質のトラベルブランク値が操作ブランク値と同等(等しいか小さい)とみなせる場合には移送中の汚染は無視できるものとして試料の測定値から操作ブランク値を差し引いて濃度を計算する。移送中の汚染がある場合には、3試料以上のトラベルブランク値を測定した時の標準偏差(s)から求めた定量下限値(10s:大気濃度への換算値)が目標定量下限値以下の場合、およびトラベルブランク値による定量下限値が目標定量下限値より大きくても試料の測定値が、トラベルブランク値による定量下限値以上の場合には、試料の測定値からトラベルブランク値を差し引いて濃度を計算する。

しかし、移送中に汚染があり、またトラベルブランク値による定量下限値が目標定量下限値より大きく、しかも試料の測定値がトラベルブランク値による定量下限値より小さい場合は原則として欠測扱いとする。この場合には、汚染の原因を取り除いた後、再度試料採取から行う。

注28:内標準物質の感度が検量線作成時の感度と大きく異ならないことを確認する。また、内標準物質との相対感度が検量線作成時の相対感度に対して±20%以内の変動であることを確認し、これを越えて感度が変動する場合には、その原因を取り除き、それ以前の試料を再測定する。さらに、保持時間については、比較的短い間に変動(通常、1日に保持時間が±5%以上、内標準物質との相対保持比が±2%以上)する場合には、その原因を取り除き、それ以前の試料の再測定を行う。

注29:定量下限値以上の濃度の測定対象物質に対して、測定値平均とそれぞれの測定値の間に±15%以上の開きがある場合は、原則として欠測扱いとして、その原因をチェックし、再度試料採取を行う。

注30:この操作は、測定対象物質の確認をするために行うもので、検量線の作成毎に行う。

注31:測定対象物質のいずれかの強度比が3)で算出した90~110%の範囲を超える場合は、その濃度の混合標準濃度系列を再度測定する。

注32:測定対象物質のいずれかの定量下限値が目標下限値より大きい場合には、試薬、器具、機器等をチェックして、目標定量下限値以下になるよう調整する。