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○環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律の一部を改正する法律等の施行について
(昭和三七年三月二三日)
(発環第七八号)
(各都道府県知事あて厚生事務次官通達)
環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律の一部を改正する法律(以下「改正法」という。)は、昭和三六年一一月一六日法律第二三○号をもつて公布され、昭和三七年二月一日から施行された(環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律の一部を改正する法律の施行期日を定める政令(昭和三七年政令第一三号)。また、これに伴う環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律施行令等の一部を改正する等の政令及び環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律施行規則の一部を改正する等の省令も、それぞれ昭和三七年一月二六日政令第一四号及び厚生省令第二号をもつて制定公布され、改正法と同じく昭和三七年二月一日から施行されるに至つた。今回の改正法令の施行によつて、従来、環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律(昭和三二年法律第一六四号)に基づき実施運営されてきた制度について、かなりの改革が加えられることとなつたが、その運営の適否は、ひとり、関係営業者のみならず、広く一般国民生活にも、影響するところ少なからぬものがあるので、その趣旨の普及徹底を図るとともに、特に次の事項に留意の上、その実施に遺憾なきを期せられたく、命によつて通達する。
なお、この通達においては、改正後の環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律を「法」と、改正前の同法を「旧法」と、改正後の環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律施行令(昭和三二年政令第二七九号)を「施行令」と、改正前の同政令を「旧施行令」と、改正後の環境衛生同業組合等登記令(昭和三二年政令第二八○号)を「登記令」と、改正前の同政令を「旧登記令」と、改正後の環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律施行規則(昭和三二年厚生省令第三七号)を「施行規則」と、改正前の同省令を「旧施行規則」と、環境衛生同業組合を「組合」と、環境衛生同業組合連合会を「連合会」と、それぞれ略称する。
第一 法改正の趣旨
従来、旧法に基づき、環境衛生関係営業について、その衛生措置の基準を遵守させ、及び衛生施設の改善向上を図るため、営業者の組織の自主的活動を促進し、並びに過度の競争により適正な衛正措置を講ずることが阻害され、又は阻害されるおそれがある場合に、料金等の規制その他経営の安定をもたらすための措置が講ぜられてきたのであるが、今回の法改正は、営業者の組織の自主的活動の基盤を強化するために必要とされる法制上の諸条件の整備をはかること及び営業者の組織が行なうカルテル行為の実効を確保するための補完的制度として行政庁による員外者に対する事業活動の改善の勧告の制度を新設することを主内容とするものであつて、いずれも、本来の立法目的のより効果的な達成をはかる趣旨によるものであること。
第二 運用上の留意事項
1 組合の事業について
(一) 今回の法改正により、組合の行なうことができる事業として、新たに組合員の福利厚生に関する事業が加えられることとなつたが、これはこの種の事業が、組合員の福利の向上及び増進並びにその親和をはかる上においてきわめて重要な機能をはたすものであることにかんがみ、組合がこれを行なうことができる旨を明文化することにより、この種の事業の飛躍的伸展を期そうとするものであること(法第八条第一項第九号)。
(二) 今回の改正により、組合は、組合員に出資をさせることができるものとされた(法第一六条の二第一項)が、組合員に出資をさせない組合(以下「非出資組合」という。)は、一般に、組合員に出資をさせる組合(以下「出資組合」という。)に比して、その事業経営のための財産的基礎が脆弱であると認められるところから、法第八条第一項第六号、第七号又は第一○号に掲げる事業を行なうことができないものとされたこと(法第八条第二項)。ただし、経過措置として、現にこれらの事業を実施している組合は、この法律の施行の日から起算して六箇月間(昭和三七年二月一日から同年七月三一日まで)は、出資組合に移行することなく、なお当該事業を実施できるものとされたこと(法附則第二項)。したがつて、昭和三七年二月一日以降において設立される組合にあつては、出資組合として認可されたものでなければ、法第八条第一項第六号、第七号又は第一○号に掲げる事業を行なうことができないこととなり、また、改正法施行の際現に出資組合でなければ行なうことのできない事業を実施している組合も三七年七月三一日までに、当該事業の廃止又は出資組合への移行を行ない、その定款の変更の認可を受けることを要するものであることに留意されたいこと。
(三) 従来、組合が組合員以外の者にその行なう事業を利用させること(以下「員外利用」という。)は、認められていなかつたのであるが、組合が行なう事業のうちには、その性質からみて、恒常的に一定の事業量を確保して組合の事業経営を円滑ならしめるため、又は組合員の家族、使用人の福祉の増進に資するため、員外利用を認めることがむしろ適当とされるものであるので、この種の事業、すなわち、法第八条第一項第四号から第六号まで及び第八号から第一一号までに掲げる事業については、組合員の利用に支障がない限り、当該事業年度における組合員の利用分量の総額の一○○分の二○を限度として、員外利用を認めることができるものとされ(法第八条第三項)、特に組合員の親族又は使用人は、法第八条第一項第六号、第七号又は第一○号の事業の利用に関しては組合員とみなされ、その無制限の利用が許されるものとされたこと(法第八条第四項)。
(四) 従来、組合が行なう組合の共済に関する事業の基準等は、旧法第八条第二項の規定に基づき、すべて環境衛生同業組合等共済事業令(昭和三三年政令第三一一号)及びこれに基づく環境衛生同業組合等共済事業規則(昭和三三年厚生省令第三九号)において規定されていたのであるが、今回の法改正により、保険業法その他の類似の立法例との均衡を図る等の見地から、共済に関する事業に係る重要事項は、法律自体において規定されたこと(法第一四条の二から第一四条の八)。また、これに伴い、環境衛生同業組合等共済事業令及び環境衛生同業組合等共済事業規則が廃止され、従来、環境衛生同業組合等共済事業規則等において規定されていた事項は、施行規則において規定することとされたこと(環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律施行令等の一部を改正する等の政令第三条、環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律施行規則の一部を改正する等の省令第二条及び施行規則第五条の二から第五条の八まで)。しかしながら、その実質的な内容においては、原則的に、ほぼ従前と変りはないこと。
なお、改正法の施行の際現に組合員の共済に関する事業を行なつている組合が、改正法の施行の日から起算して六箇月間に、出資組合に移行した場合には、改正法の施行前に環境衛生同業組合等共済事業令第一条第二項の規定によりなされた当該事業に係る認可は、法第一四条の二の規定によりなされた認可とみなされるものであること(改正法附則第三項)。
二 出資組合について
(一) 従来、組合が組合員に出資をさせ、この出資された財産を基礎として組合の事業を経営することは認められていなかつたのであるが、今回の改正により、組合の事業活動の活発化をはかり、かつその存立の基礎を強固ならしめるため、組合は定款の定めるところにより組合員に出資をさせることができるものとされたこと(法第一六条の二第一項)。したがつて、今後、組合は、出資組合と非出資組合とに分れることとなるが、出資組合になることができるものは、組合のうち、第八条第一項第六号、第七号又は第一○号の事業を行なおうとするものに限られるものであること(法第四九条の八第一項)。
(二) 出資組合の制度を認めたことに伴い、出資組合の運営に関する重要事項を出資組合に係る定款の必要記載事項として加えたこと(法第二八条第一項及び第二項)。
(三) その他出資組合に係る出資の運用基準等に関する規定を整備し、その運営の適正化を図ることとしたこと(法第一六条の二から第一六条の二から第一六条の四まで、法第二一条第二項第二号、法第二一条の二から第二一条の五まで、法第二五条の二、法第四九条の二から第四九条の七まで)。なお、出資組合に係る設立及び定款変更の認可の申請を行なうにあたつて、申請書に添附すべき書面等についても新たに規定したこと(施行規則第一条第七号及び第二条第二項から第四項まで)。
三 移行について
(一) 今回の改正で、出資組合の制度が認められたことに伴い、非出資組合であつて、法第八条第一項第六号、第七号及び第一○号に掲げる事業の行なおうとするものは、定款を変更して、出資組合に移行することができるものとされたこと(法第四九条の八第一項)。なお、定款の変更については、総代会の議決事項としている組合にあつても、この移行に関する定款の変更についての議決は、総会において行なわれなければならないものであること(法第四九条の八第三項)。
(二) その他非出資組合の出資組合への移行に関して必要な事項を定めたこと(法第四九条の八第二項、及び第四項から第六項まで)。
(三) 出資組合は、定款を変更して、非出資組合に移行することができるものとしたこと(法第四九条の九第一項)。この場合において、当該組合が従来有していた組合員からの出資金の処理等については、出資組合の組合員の脱退、及び出資一口の金額の減少の場合の取扱いに準じて行なうべきものとされ、また、その移行についての定款の変更の議決は、総会において行なうことを要するものとされたこと(法第四九条の九第二項)。
四 組合員以外の者に対する事業活動の改善の勧告等について
(一) 従来、組合が設定した適正化規程の実効が当該組合の努力にもかかわらず、確保できない場合の措置として、法第五七条に規定する料金等の制限に関する命令(以下「規制命令」という。)があつたが、今回の改正によつて、新たに組合員以外が者に対する事業活動の改善の勧告の制度が設けられるにいたつた。
規制命令は、一定地域の全営業者を対象として発動されるものであり、しかも、その違反者に対しては司法処分が科せられるという極めて強い性質のものであるので、その発動は厚生大臣が中央環境衛生適正化審議会に諮り、公正取引委員会に協議した上で行なうという極めて慎重な手続きを要するものとされているが、業界の営業の健全化のためにもつぱらこうした強い制裁を伴なう措置の発動にのみ依存することなく、つとめて関係者の自発的協力により、問題を解決することが望ましいという趣旨などから、行政庁が組合員以外の者に対して勧告を行ない、組合の適正化規程の実施について、その協力を求める道をも開くことによつて、立法目的のより効果的な達成をはかろうとしたものにほかならないこと(法第五六条の二)。また、この勧告は、法第五七条の規定による命令と同様、組合からの申出に基づいて行なわれるものであつて、この意味において、必ずしも、常にこの勧告権の発動が、法第五七条の規定による命令の発動に先行すべきものとは解し得ないが、この勧告制度の設置の趣旨等をも勘案の上、組合の指導等に努められ、その適切な運用を図られたいこと。なお、この勧告の取扱基準については、おつて、指示する予定であること。
(二) 法第五六条の二後段及び法第五七条第一項後段の規定は、いずれも、一般営業者とは直接競争関係にない職域の福利厚生施設について勧告又は命令の全部又は一部を受けないものとすることができる旨定めたものであつて、これはこれらの料金等の規制に関する措置の円滑な実施を目的とするものであることに留意されたいこと。
なお、この勧告又は命令を受けないものとすることができる福利厚生施設の認定の基準についてもおつて指示する予定であること。
五 権限の委任について
(一) 施行令第一二条第一項の改正によつて、施行令別表第七号及び第八号に掲げる営業に係る権限を除いては、新たに、法第一四条の二第一項及び第三項の規定に基づく共済規程の設定、変更等の認可に関する権限並びに法第五六条の二の規定に基づく勧告に関する権限が都道府県知事に委任されたが、これらの権限の行使にあたつては、万遺憾なきを期せられたいこと。
(二) 地方自治法(昭和二二年法律第六七号)第二五二条の一九第一項に規定する指定都市の区域に所在する営業の施設については、現在当該指定都市の長において指導監督を行なつていることを考慮して、従来、指定都市の区域をその区域に含む都道府県を統轄する都道府県知事は、本法に基づく権限を行使しようとするときは、あらかじめ当該指定都市の長の意見を聞かなければならないとされていたが、今回新たに都道府県知事に委任した権限を当該都道府県知事が行なおうとするときも、同様とし、かつ、これを当該権限の行使が当該指定都市に係るものである場合に限ることを明らかにしたこと(施行令第一三条)。
六 その他
(一) 連合会の制度についても、組合の制度についての変更に準じて、変更がなされたこと(法第五四条第一項及び第五六条)。
(二) 改正法の附則において、所得税法、法人税法及び地方税法の一部が改正され、非出資組合である組合及び連合会につき、所得税、法人税及び法人事業税は非課税とされるにいたつた等組合及び連合会の税制上の取扱いが改善されたこと(改正法附則第四項から第一○項まで)。
(三) 出資組合の制度の新設に伴い、出資組合に係る登記事項及びその登記の手続を定め、(登記令第一条、第二条第一項、第五条から第五条の三まで、第一二条から第一二条の三まで、及び第一七条)並びに従来、旧登記令第一条において組合及び連合会は、その役員の全部についてそれぞれ氏名及び住所を登記しなければならない旨定められていたのを、今後は代表権を有する者についてのみこれを行なえば足りるものとしたこと(登記令第一条)。