添付一覧
○環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律の施行について
(昭和三二年一一月一二日)
(発衛第四六三号)
(各都道府県知事あて厚生事務次官通達)
環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律は、去る第二六国会において成立し、昭和三二年六月三日法律第一六四号をもって公布、同年九月二日から施行されたが(環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律の施行期日を定める政令(昭和三二年政令第二七八号))、これに基き環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律施行令及び環境衛生同業組合等登記令がそれぞれ昭和三二年八月三一日政令第二七九号及び政令第二八〇号をもって、環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律施行規則が、昭和三二年九月二日厚生省令第三七号をもって公布され、いずれも昭和三二年九月二日から施行され、更に環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律施行令の一部を改正する政令が昭和三二年九月五日政令第二八一号をもって、公布即日施行された。本法は、環境衛生関係営業についての衛生措置の基準を遵守させ、衛生施設の改善向上を図るため、これらの営業者の組織の自主的活動を促進させるとともに、過度の競争により適正な衛生措置を講ずることが阻害され、又は阻害されるおそれがある場合に、料金等の規制その他経営の安定をもたらすための措置を講ずることができるようにし、もって公衆衛生の向上及び増進に資することを目的とするものであって、その運用の適否は、これら営業の適正な経営に関してはもとより、広く国民生活の安定と生活環境の改善に関し、影響するところ大なるものがあるから、諸般の準備に万全を期するとともに、特に次の事項に留意のうえ、これが実施に遺憾なきを期せられたく、命によって通達する。
おって、この通達については、環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律を「法」と、改正後の環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律施行令を「令」と、環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律施行規則を「規則」とそれぞれ略称する。
記
第一 制定の趣旨
環境衛生関係営業は、国民の日常生活にとって極めて密接な関係を有する重要なものであるところから、かねてより食品衛生法(昭和二二年法律第二三三号)、理容師法(昭和二二年法律第二三四号)、美容師法(昭和三二年法律第一六三号)、興行場法(昭和二三年法律第一三七号)、旅館業法(昭和二三年法律第一三八号)、公衆浴場法(昭和二三年法律第一三九号)及びクリーニング業法(昭和二五年法律第二七号)によって、それぞれ構造設備の基準、営業上遵守すべき措置の基準等を定め、主として公衆衛生上の見地からする指導監督が行われているのであるが、近時営業の施設の濫立等による競争の結果、かかる衛生面についての直接的規制のみをもってしては、業界の健全な育成に万全を期し難いおそれも生じてきている。すなわち、これらの営業者の大部分は、零細資本をもってする中小企業の範疇に属する経済的基盤の極めて脆弱な業態であること及びその数の尨大に及ぶこと等から、一部においてはややともすれば顧客の争奪のために過度の競争に陥り、その結果は、営業者の大部分が衛生措置の基準の保持に困難を来すおそれなしとしないので、この際これらの営業者の組織の自主的活動の促進を図り、あるいは料金等の制限、営業方法の制限等の措置を講じて過度の競争の防止その他経営の安定をもたらすための措置を講じ、もって公衆衛生の向上及び増進に寄与せんとする趣旨のもとに本法が制定されたものであること(法第一条)。
第二 適用営業等
本法の適用を受ける営業は、法第二条第一項各号に掲げるものであるが、これらの営業は、それぞれの取締法規に定めるところにより、すべて許可又は届出を要することとされているから、当該営業についてそれぞれの取締法規に基き、許可又は届出をした者であって、かつ、現に業を営んでいる者である限りはすべて本法の適用を受けることとなるものであること。換言すれば、営業が営利を目的とするものであると否との別にかかわりなく、当該営業にかかる営業者は、当然適用を受けることとなるものであるが、ただ経済的規制をも併せ有する本法の性格にかんがみ、消費生活協同組合、農業協同組合、労働組合その他これらに類する組合等の経営に係るもの又は官公署、会社、工場等において、当該従業員の福利厚生のために経営されるもの等営利を目的としないものを一般の営利を目的とするものと同様に一率に規制の対象とすることは、現実問題として不合理を生ずる点も多多存するので、その特殊性を十分考慮に入れた運用を図ることが望ましく、そのためには、環境衛生同業組合において特に料金等の規制に関する適正化規程を設定するに当っては、いわゆる員外利用等当該施設の本来の目的以外に利用させる部分を除いては、別段の取扱とされるよう指導願いたいこと。従って、法第五七条第一項の規定に基く厚生省令の制定の場合においてもこれらの営利を目的としないものに係る料金等の規制については、右に準じて別段の取扱がなされる方針であること。
第三 権限委任
(一) 法第六四条第一項の規定に基く令第一二条の規定によって、令別表第七号から第九号までに掲げる営業(食肉販売業関係営業及び氷雪販売業)及び環境衛生同業組合連合会(以下「連合会」という。)に係る権限並びに法第五七条第一項の規定に基く命令制定に関する権限を除いては、環境衛生同業組合(以下「組合」という。)の設立の認可、適正化規程の認可及び組合の指導監督等厚生大臣の権限は、すべて都道府県知事に委任されたが、これは、従来それぞれの取締法規に基く営業の指導監督は、都道府県知事において行われてきたので、これとの一元化を期すること及び各都道府県の地域の実情をも考慮に入れた行政運用を図ることのためであること(法第六四条第一項及び令第一二条)。
(二) 昭和三一年六月に行われた地方自治法(昭和二二年法律第六七号)の一部改正によつて、同法第二五二条の一九第一項に規定する指定都市の区域に所在する営業の施設については、当該指定都市の長において指導監督が行われているので、本法の施行に関しても、この点を考慮し、指定都市の区域をその区域に含む都道府県を統轄する都道府県知事と指定都市の長との間の連携方法等について、令第一三条の規定により特別の措置を講ずべきこととなつたが、これが運用については、別途公衆衛生局長から関係府県に指示するものであること(令第一三条)。
第四 環境衛生適正化審議会
厚生大臣の権限の一部を除きその権限が都道府県知事に委任されたことにより、都道府県に郡道府県環境衛生適正化審議会(以下「審議会」という。)を設けなければならないこととなるが、本審議会は適正化規程に関する処分並びに役員の解任勧告及び組合の解散命令に関し、諮問に応じて答申するとともに、本法の施行に関する重要事項を調査審議する機関であつて、本法の施行に極めて大きな役割を有し、その組織及び運営の適否は、ただちに本法運営の適否に通ずるものであるから、その委員の選任にあたつては、真に適任とされる者を選任しうるよう十分慎重を期すること(法第五八条第二項)。
第五 組合運営上留意すべき事項
(一) 本法に基いて設立される組合は、他のいわゆる経済統制事業のみを行うことを主とするものと異なり、組合員に対する衛生施設の維持改善に関する指導、規格又は基準に関する検査、共同施設、資金のあつ旋等の共同事業によつて組合員の経営の安定をもたらすための措置を講ずることがその重要な事業の一とされるものであるから、いたずらに適正化規程の設定に頼ることなく、爾余の事業をも十分推進してその目的を達成するよう努めさせるとともに、組合におけるこれらの共同事業の実施を通じて、組合員の衛生措置の積極的遵守を図り、行政庁による取締との一体性を確保するよう指導されたいこと。なお、本法の制定に関連し、商工組合中央金庫法(昭和一一年法律第一四号)及び中小企業金融公庫法(昭和二八年法律第一三八号)等の一部が改正せられ、組合及び連合会もこれらの法律の適用を受けることとされたが、これが取扱に関しては、関係機関とも協議のうえ、おつて指示する予定であること(法第八条及び附則第七項から第一○項まで)。
(二) 適正化規定は、当該業種における過度の競争があることに起因して、組合員が遵守すべき衛生措置を講ずることが阻害され、又は阻害されることが相当期間内に確実に予見し得るときに限り、これを設定することができるものであるが、適正化規程の趣旨からして各都道府県の区域間において均衡がとれたものでなければその実効も確保でき難くなるので、適正化規程の設定は、連合会が設定する適正化基準が認可された後において行うよう指導すること。なお、適正化規程は、その内容如何によつては、消費者又は利用者に及ぼす影響も大なることにかんがみ、また、その設定は、法第五七条第一項の規定に基く命令制定にも通ずるものであるからこれが認可に当つては、十分慎重を期するものとすること(法第八条第一項及び第二項、法第五四条第一項第一号並びに法第五七条第一項)。
(三) 都道府県知事は、適正化規程の認可に当つて、公正取引委員会と協議をしなければならないものとされているが、同委員会との協議がととのうまでは適正化規程の認可は行わないこと。なお、協議方法その他の関係については、同委員会とも合議のうえ、おつて指示する予定であること(法第一三条)。
(四) 本法に基いて設立される組合は、制定の趣旨において述べたとおり、営業者の自主的活動体であるから、いやしくもその自主的活動を阻害するがごときことのないよう、また、一部の者による組合支配等の弊を生ずることのないよう指導に十分留意すること。
第六 その他
(一) 連合会は、全国を通じて業種ごとに一箇であり、かつ、強制加入の措置がとられていること及び連合会の行う事業の性格等からして設立を予見される組合数の少くとも過半数以上が設立され、しかもこれらの組合が会員となる場合において認可する方針であること(法第五三条、法第五四条及び法第五五条)。
(二) それぞれの取締法規に基く営業の指導監督については、今後とも十分意を用いるものとし、この種営業の環境衛生の向上に万全を期せられたいこと。
(三) 令別表第七号から第九号までに掲げる業種(食肉販売業関係営業及び氷雪販売業)については、厚生大臣において設立の認可その他の処分を行うものとされているが、これに関する取扱については、別途指示する予定であること。