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○原子爆弾被爆者養護ホームの設備基準について

(昭和六三年一二月一三日)

(健医発第一、四一五号)

(広島・長崎県知事・広島・長崎市市長あて厚生省保健医療局長通知)

原子爆弾被爆者養護ホームの設備基準(以下「基準」という。)を別添のとおり定めたので通知する。

この基準は原子爆弾被爆者養護ホームの設備を整備することにより入所者に対する適切な処遇を確保することを目的とし、そのために必要とする最低の基準を定めたものであるから、左記事項に留意のうえ、貴管下の原子爆弾被爆者養護ホームに対し、この基準の周知徹底と、その設備の一層の向上が図られるよう、指導監督の万全を期されたい。

なお、この通知は昭和六三年一二月一三日から適用し、昭和四四年二月一四日衛発第一○五号「原子爆弾被爆者養護ホームの設備基準について」は廃止する。

第一 一般的事項

1 基本方針

原子爆弾被爆者養護ホームは、原子爆弾被爆者の福祉の向上を図るため、健全な環境のもとに設置されるべきものであり、敷地の衛生及び安全等について定めた建築基準法第一九条、第四三条及び同法施行令第一二八条の規定に定める要件を具備するとともに、入所者の生活を健全に維持するために、ばい煙、騒音、振動等による影響、交通、水利の便等を十分考慮して設置されたものでなければならないこと。

2 構造設備の一般原則

原子爆弾被爆者養護ホームの構造設備は、本基準及び建築基準法等の関係法令に従うとともに、日照、採光、換気等について十分考慮されたものとし、入所者の保健衛生及び防災に万全を期すべきものであること。

第二 規模及び設備に関する事項

1 規模

原子爆弾被爆者養護ホームの規模は、当該養護ホームの効果的な運営及び入所者に対する処遇の適正を期するために、常時五○人以上を入所させ得る規模を有すべきこととしたものであること。

2 設備の基準

(1) 原子爆弾被爆者養護ホームの設備は、当該養護ホームの運営上及び入所者の処遇上当然設けなければならないものであるが、同一敷地内に他の社会福祉施設等が設置されている場合等であつて、当該施設の設備を利用することにより原子爆弾被爆者養護ホームの効果的な運営が図られ、かつ、入所者の処遇に支障がない場合には、入所者が日常継続的に使用する設備以外の調理室等の設備について、その一部を設けないことができること。なお原子爆弾被爆者養護ホームが利用する他の施設の当該設備については、本基準に適合するものでなければならないこと。

(2) 静養室、食堂、便所等面積又は数の定めのない設備については、それぞれの設備のもつ機能を十分に発揮し得る適当な広さ又は数を確保するよう配慮すること。

(3) 居室及び静養室の「収納設備等」とは、押入れ(これに代わるものとして設置したタンス等を含む。)、床の間、踏込みその他これらに類する設備をいうこと。

(4) 原子爆弾被爆者養護ホームにおける廊下の幅は、入所者の身体的、精神的特性及び非常災害時における迅速な避難、救出の確保を考慮して定められたものであること。

なお、「中廊下」とは、廊下の両側に居室、静養室等入所者の日常生活に直接使用する設備のある廊下をいうこと。

廊下の幅については、基準に定めるほか、建築基準法施行令第一一九条の規定が適用されるので留意すること。

(5) 原子爆弾被爆者一般養護ホームの建物のうち居室、静養室、食堂等入所者が日常継続的に使用する設備を有するものについては、建築基準法第二条第九号の二に規定する耐火建築物又は同法第九条の三に規定する簡易耐火建築物としなければならないこと。

(6) 原子爆弾被爆者特別養護ホームの建物は、入所者が身体的、精神的に著しい障害を有する者であることにかんがみ、入所者の日常生活のために使用しない附属の建物を除き、耐火建築物としなければならないこと。ただし、入所者の日常生活に充てられる居室、静養室、食堂、浴室及び機能回復訓練室を二階以上の階及び地階のいずれにも設けていない建物については、簡易耐火建築物とすることができること。

(7) 原子爆弾被爆者養護ホームの建物であつて、倉庫、霊安室等入所者が日常継続的に使用することのない設備のみを有する建物については居室、静養室等のある主たる建物から防災上支障がないよう相当の距離を隔てて設けられる場合は、必ずしも耐火建築物又は簡易耐火建築物としなくてもよいこと。

(8) 原爆被爆者特別養護ホームに設けられる設備のうち、居室、静養室、食堂、浴室及び機能回復訓練室は、三階以上の階には設けてはならないこと。ただし、基準第七の4の各号に定める要件を具備する場合には、この限りでないこと。

(9) 傾斜路

原子爆弾被爆者特別養護ホームに設置する傾斜路は、入所者の歩行及び輸送車、車椅子等の昇降並びに災害発生時の避難、救出に支障がないようその傾斜はゆるやかにし、表面は、粗面又はすべりにくい材料で仕上げること。

なお、居室等を三階以上の階に設ける場合であつて、入所者の処遇に適したエレベーターを設け、かつ、建築基準法施行令第一二三条第三項に定める特別避難階段の構造を有する二以上の階段を設ける場合には、傾斜路を設けないことができること。

(10) 調理室

食器、調理器具等を消毒する設備、食器、食品等を清潔に保管する設備並びに防虫及び防鼠の設備を設けること。

(11) 汚物処理室

汚物処理室は、他の設備と区分された一定のスペースを有すれば足りるものであること。

(12) 焼却炉、浄化槽その他の汚物処理設備及び便槽を設ける場合には、居室、静養室、食堂及び調理室から相当の距離を隔てて設けること。

〔別添〕

原子爆弾被爆者養護ホームの設備に関する基準

第一章 総則

(養護ホームの種類)

第一 原子爆弾被爆者養護ホームの種類は、次のとおりとすること。

(1) 原子爆弾被爆者一般養護ホーム

(2) 原子爆弾被爆者特別養護ホーム

2 原子爆弾被爆者一般養護ホームは、身体上若しくは精神上又は環境上の理由により養護を必要とし、かつ、居宅において養護を受けることが困難な原子爆弾被爆者を入所させ、養護することを目的とすること。

3 原子爆弾被爆者特別養護ホームは、身体上又は精神上著しい障害があるために常時の介護を必要とし、かつ、居宅においてこれを受けることが困難な原子爆弾被爆者を入所させ、養護することを目的とする施設とすること。

(構造設備の一般原則)

第二 原子爆弾被爆者養護ホームの配置、構造及び設備は、日照、採光、換気等入所者の保健衛生に関する事項及び防災について十分考慮されたものでなければならないこと。

(設備の専用)

第三 原子爆弾被爆者養護ホームの設備は、もつぱら当該施設の用に供するものでなければならないこと。ただし、入所者の処遇に支障がない場合には、この限りでないこと。

第二章 原子爆弾被爆者一般養護ホーム

(規模)

第四 原子爆弾被爆者一般養護ホーム(以下単に「一般養護ホーム」という。)は、五○人以上の人員を入所させることができる規模を有しなければならないこと。

(設備の基準)

第五 一般養護ホームの建物(入所者の日常生活のために使用しない附属の建物を除く。)は、建築基準法(昭和二五年法律第二○一号)第二条第九号の二に規定する耐火建築物又は同条第九号の三に規定する簡易耐火建築物でなければならないこと。

2 一般養護ホームには、次の各号に掲げる設備を設けなければならないこと。ただし、他の社会福祉施設等の設備を利用することにより、施設の効果的な運営を期待することができる場合であつて、入所者の処遇に支障がないときは、設備の一部を設けないことができること。

(1) 居室

(2) 静養室

(3) 食堂

(4) 集会室

(5) 浴室

(6) 洗面所

(7) 便所

(8) 医務室

(9) 調理室

(10) 事務室

(11) 宿直室

(12) 寮母室

(13) 面接室

(14) 洗濯室又は洗濯場

(15) 汚物処理室

(16) 霊安室

3 2の各号に掲げる設備の基準は、次のとおりとすること。

(1) 居室

イ 地階に設けてはならないこと。

ロ 入所者一人当たりの床面積は、収納設備等を除き三・三平方メートル以上とし、各室の入所人員は、原則として二人以下とすること。

ハ 一以上の出入口は、避難上有効な空地、廊下又は広間に直接面して設けること。

ニ 入所者の寝具及び身の回り品を各人別に収納することができる収納設備を設けること。

(2) 静養室

イ 医務室又は寮母室に近接して設けること。

ロ 原則として一階に設け、寝台又はこれに代わる設備を備えること。

ハ イ及びロに定めるもののほか、(1)のイ、ハ及びニに定めるところによること。

(3) 洗面所

居室にある階ごとに設けること。

(4) 便所

居室のある階ごとに男子用と女子用を別に設けること。

(5) 医務室

入所者を診療するために必要な医薬品、衛生材料及び医療機械器具を備えるほか、必要に応じて臨床検査設備を設けること。

(6) 調理室

火気を使用する部分は、不燃材料を用いること。

(7) 寮母室

居室のある階ごとに居室に近接して設けること。

4 1から3までに規定するもののほか、一般養護ホームの設備の基準は、次に定めるところによること。

(1) 廊下の幅は、一・三五メートル以上とすること。ただし、中廊下の幅は、一・八メートル以上とすること。

(2) 廊下、便所その他必要な場所に常夜灯を設けること。

(3) 階段の傾斜は、ゆるやかにすること。

第三章 原爆被爆者特別養護ホーム

(規模)

第六 原子爆弾被爆者特別養護ホーム(以下単に「特別養護ホーム」という。)は、五○人以上の人員を入所させることができる規模を有しなければならないこと。

(設備の基準)

第七 特別養護ホームの建物(入所者の日常生活のために使用しない附属の建物を除く。)は、建築基準法第二条第九号の二に規定する耐火建築物でなければならないこと。ただし、入所者の日常生活に充てられる場所を二階以上の階及び地階のいずれにも設けていない特別養護ホームの建物は、同法第二条第九号の三に規定する簡易耐火建築物とすることができること。

2 特別養護ホームには、次の各号に掲げる設備を設けなければならないこと。ただし、他の社会福祉施設等の設備を利用することにより施設の効果的な運営を期待することができる場合であつて、入所者の処遇に支障がないときは設備の一部を設けないことができること。

(1) 居 室

(2) 静養室

(3) 食堂

(4) 浴室

(5) 洗面所

(6) 便所

(7) 医務室

(8) 調理室

(9) 事務室

(10) 宿直室

(11) 寮母室

(12) 看護婦室

(13) 機能回復訓練室

(14) 面接室

(15) 洗濯室又は洗濯場

(16) 汚物処理室

(17) 介護材料室

(18) 霊安室

3 2の各号に掲げる設備の基準は、次のとおりとすること。

(1) 居室

イ 地階に設けてはならないこと。

ロ 入所者一人当たりの床面積は、収納設備等を除き四・九五平方メートル以上とし、各室の入所人員は、原則として四人以下とすること。

ハ 寝台又はこれに代わる設備を備えること。

ニ 一以上の出入口は、避難上有効な空地、廊下又は広間に直接面して設けること。

ホ 床面積の一四分の一以上に相当する面積を直接外気に面して開放できるようにすること。

ヘ 入所者の身の回り品を保管することができる設備を備えること。

(2) 静養室

イ 看護婦室又は、寮母室に近接して設けること。

ロ 原則として一階に設けること。

ハ イ及びロに定めるもののほか(1)のイ及びハからヘまでに定めるところによること。

(3) 浴室

イ 身体の不自由な者が入浴するのに適したものとすること。

ロ 一般浴槽のほか、入浴に介助を必要とする者の入浴に適した特別浴槽を設けること。

(4) 便所

イ 居室のある階ごとに男子用と女子用を別に設けること。

ロ ブザー又はこれに代わる設備を設けるとともに、身体の不自由な者が使用するのに適したものとすること。

(5) 洗面所、医務室、調理室及び寮母室

第五の3の(3)及び(5)から(7)までに定めるところによること。

4 居室、静養室、食堂、浴室及び機能回復訓練室(以下「居室等」という。)は、三階以上の階に設けてはならないこと。ただし、次の各号に該当する建物に設けられる居室等については、この限りでない。

(1) 居室等のある三階以上の各階に通ずる建築基準法施行令(昭和二五年政令第三三八号)第一二三条第三項の規定による特別避難階段を二以上(防災上有効な傾斜路を有する場合は、一以上)有すること。

(2) 三階以上の階にある居室等及びこれから地上に通ずる廊下その他の通路の壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを不燃材料でしていること。

(3) 居室等のある三階以上の各階が耐火構造の壁又は建築基準法施行令第一一○条第一項の規定による甲種防火戸により防災上有効に区画されていること。

5 1から4までに規定するもののほか、特別養護ホームの設備の基準は、次に定めるところによること。

(1) 廊下の幅は、一・八メートル以上とすること。ただし、中廊下の幅は、二・七メートル以上とすること。

(2) 廊下、便所その他必要な場所に常夜灯を設けること。

(3) 階段の傾斜はゆるやかにすること。

(4) 居室等が二階以上の階にある場合は、一以上の傾斜路を設けること。ただし、居室等が三階以上の階にある場合であつて、エレベーターを設けるときは、この限りでないこと。

(5) 医務室は、医療法(昭和二三年法律第二○五号)第一条の二第二項に規定する診療所でなければならないこと。

附 則

(施行期日)

第一条 この基準は、昭和六三年一二月一三日から適用する。

(経過措置)

第二条 この基準が適用する際現に存する一般養護ホーム及び特別養護ホームについては、原子爆弾被爆者養護ホームの設備に関する基準(以下「設備基準」という。)第五の2の(15)及び第七の2の(16)の規定は、当分の間適用しない。

2 この基準が適用する際現に存する一般養護ホーム及び特別養護ホームについては、設備基準第五の3の(1)のロ及び第七の3の(1)のロの規定にかかわらず、なお従前の例による。