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○原子爆弾被爆者の医療等に関する法律施行規則の一部を改正する省令の施行に伴う被爆者大腸がん検診の実施について

(平成四年四月一三日)

(健医発第四七五号)

(各都道府県知事・広島・長崎市市長あて厚生省保健医療局長通知)

原子爆弾被爆者の医療等に関する法律施行規則の一部を改正する省令は、平成四年四月一三日公布施行されたが、これに伴い原子爆弾被爆者の大腸がん検診が平成四年度から実施されることとなった。その実施方法等については、別紙「原子爆弾被爆者がん検診実施要領」によることとし、併せて従来のがん検診についても見直しを行ったので通知する。

なお、実施に当たっては、被爆者及び医療機関等に対し周知徹底及び指導を行う等がん検診事業の円滑な実施に特段の御配慮をお願いする。

おって、本事業に係る経費については昭和四三年七月三日厚生省発衛第一一六号厚生事務次官通知「原子爆弾被爆者の健康診断等に要する経費の交付について」により交付されるものである。

別紙

原子爆弾被爆者がん検診実施要領

一 目的

被爆者の高齢化に伴い健康に対する不安が増大している状況等に鑑み被爆者健康診断の一環としてがん検診を行うことにより、もって被爆者の健康に対する不安の解消と健康管理の充実を図ることを目的とする。

二 実施主体

都道府県、広島市及び長崎市(以下「都道府県」という。)とする。

三 対象者

当該都道府県の区域内(広島市及び長崎市にあっては市の区域内。以下同じ。)に居住地を有する被爆者健康手帳所持者及び健康診断受診者証所持者(以下「被爆者等」という。)とする。

四 検診項目

がん検診は、次の六項目を行う。

(一) 胃がん検診

(二) 肺がん検診

(三) 乳がん検診

(四) 子宮がん検診

(五) 大腸がん検診

(六) 多発性骨髄腫検診

五 検診実施機関

当該都道府県の区域内に位置し、都道府県知事、広島市及び長崎市にあっては市長(以下「都道府県知事」という。)が指定する医療機関のうち、原則として総合病院又は内科、外科及び産婦人科(婦人科)の診療科を有する病院若しくは診療所とする。

六 検診回数

被爆者等からの申請により実施する健康診断のうち一回を被爆者等の希望によりがん検診とし、四に定める各検診項目を年一回を限度して実施する。

七 実施に関する事項

(一) 検診実施機関の選定

都道府県知事は検診の実施に当たっては、地域の実情及び検査データの精度管理等の状況を勘案し、適切な検診実施機関を選定すること。

(二) 周知徹底

都道府県知事はがん検診の実施に当たっては、都道府県及び市町村の公報や被爆者等に対する個別通知等により本制度の周知徹底を図ること。

(三) 申請等

都道府県知事は、被爆者等からの申請により、受診しやすい方法及び場所を検討し、受診者名簿等を検診実施機関に送付するとともに、申請者に対し場所・日時を通知すること。

(四) 検診の実施

検診実施機関は、本要領に基づきがん検診を実施するとともに、その結果を健康診断個人票に記載し、都道府県知事に報告すること。

(五) 受診者への指導等

都道府県知事は、検診実施機関より報告を受けた検診結果を、被爆者健康手帳又は健康診断受診者証に記載するとともに、受診者に連絡し、検診結果内容に応じ精密検査の受診等の指導を行うこと。

(六) 精度管理

都道府県知事は、検診実施機関の精度管理の把握に努めること。

八 検査内容

(一) 胃がん検診

検査内容は、問診及び胃部エックス線検査とする。

ア 問診

昭和六三年五月一一日健医発第五六一号厚生省保健医療局長通知に定める「原子爆弾被爆者がん検診に係る問診票について」(以下「問診票」という。)により行う。

イ 胃部エックス線検査

(ア) 撮影方式

直接撮影又は間接撮影とする。ただし、間接撮影は七×七cm以上のフィルムを用いることとし、撮影装置は被爆線量の低減を図るため、Ⅰ・Ⅰ方式が望ましい。

(イ) 撮影枚数

最低七枚とする。

(ウ) 体位等

日本消化器集団検診学会の方式とする。

なお、造影剤の使用に当たっては、その濃度を適切に保つとともに、副作用等の事故に注意すること。

(エ) 読影

エックス線写真の読影は、原則として十分な経験を有する二名以上の医師により行うこと。

(オ) 写真の保存

エックス線写真は少なくとも三年間検診実施機関で保存しなければならない。

(二) 肺がん検診

検診内容は、問診、胸部エックス線検査及び喀痰細胞診とする。

ただし、喀痰細胞診は問診の結果医師が必要と認める者に対し行う。

ア 問診

問診票により行う。

イ 胸部エックス線検査

(ア) 撮影方式

直接撮影による。

(イ) 読影

エックス線写真の読影は原則として十分な経験を有する二名以上の医師により行い、その読影結果に基づいて過去に撮影した胸部エックス線写真と比較する。

(ウ) 写真の保存

エックス線写真は少なくとも三年間検診実施機関で保存しなければならない。

ウ 喀痰細胞診

(ア) 問診の結果喀痰細胞診の必要と認められた者に喀痰採取容器を配布し、喀痰を採取する。喀痰は、起床時の早朝痰を原則とし、最低三日の蓄痰又は三日の連続採痰とする。

また、採取した喀痰(細胞)は、固定した後、パパニコロウ染色を行い顕微鏡下で観察する。

(イ) 検体の顕微鏡検査は十分な経験を有する医師及び臨床検査技師が行う。この場合において、医師及び臨床検査技師は日本臨床細胞学会認定の細胞診指導医及び細胞検査士であることが望ましい。

また、同一検体から作成された二枚以上のスライドは、異なる技師が、少なくとも一枚づつスクリーニングする。

(ウ) 判定後の検体及び検診結果は、少なくとも三年間検診実施機関で保存しなければならない。

(三) 乳がん検診

検診内容は、問診、視診及び触診とする。

ア 問診

問診票により行う。

イ 視診

乳房、乳房の皮膚、乳頭及び腋窩の状況を観察する。

ウ 触診

乳房、乳頭及びリンパ節の触診を行う。

(四) 子宮がん検診

検診内容は、問診、視診、内診、子宮頚部の細胞診コルポスコープ検査及び子宮体部の細胞診(子宮内膜細胞診)とする。ただし、コルポスコープ検査及び子宮体部の細胞診は問診等の結果医師が必要と認める者に対し行う。

ア 問診

問診票により行う。

イ 視診

膣鏡により子宮頚部の状況を観察する。

ウ 内診

双合診を行う。

エ 子宮頚部及び子宮体部の細胞診

(ア) 子宮頚部の細胞診については子宮頚管及び膣部表面の全面擦過法、子宮体部の細胞診については吸引法又は擦過法によって検体を採取し、迅速に固定した後、パパニコロウ染色を行い顕微鏡下で観察する。

(イ) 検体の顕微鏡検査は十分な経験を有する医師及び臨床検査技師が行う。この場合において医師及び臨床検査技師は日本臨床細胞学会認定の細胞診指導医及び細胞検査士であることが望ましい。

(ウ) 子宮頚部の細胞診の結果は、細胞診クラス分類(Ⅰ、Ⅱ、Ⅲa、Ⅲb、Ⅳ、Ⅴ)によって分類する。

(エ) 子宮体部の細胞診の結果は「陰性」、「疑陽性」又は「陽性」に区分する。

(オ) 判定後の検体は少なくとも三年間検診実施機関において保存しなければならない。

(五) 大腸がん検診

検診内容は、問診及び便潜血検査とする。

ア 問診

平成四年四月一三日健医発第四七六号厚生省保健医療局長通知に定める「原子爆弾被爆者大腸がん検診に係る問診票の採用について」により行う。

イ 便潜血検査

免疫便潜血検査二日法で行う。

(ア) 検診受診者から受託実施機関への検体輸送は、温度管理が困難であり検査の精度が下がるので原則として行わない。

(イ) 検体の測定については、検体回収後速やかに行う。速やかな測定が困難な場合は冷蔵保存すること。

(ウ) 検診の結果は、「便潜血陰性」及び「要精検」に区分する。

(エ) 受託実施機関は、検診結果を少なくとも三年間保存しなければならない。

(六) 多発性骨髄腫検診

検診内容は、問診及び血清蛋白分画検査とする。

ア 問診

問診票により行う。

イ 血清蛋白分画検査

電気泳動法により行う。