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○原子爆弾被爆者に対する一般疾病医療費の支給と社会保険との関係について

(昭和三五年一一月一五日)

(衛発第一一二〇号)

(各都道府県知事・広島・長崎市市長あて厚生省公衆衛生局長通達)

標記については、昭和三五年九月九日厚生省発衛第三九号事務次官依命通達及び昭和三五年九月九日衛発第八五八号本職施行通達をもつて通知したところであるが、なお疑義を存する向きもあるので、左記のとおりの取扱いとすることとしたから、御了知のうえ、被爆者及び関係医療機関に対して周知徹底方よろしくお取り計らい願いたい。

1 国民皆保険の下においては、特別被爆者は、国民健康保険法第六条第六号又は第八号に該当する者を除き、必らず健康保険、船員保険、日雇労働者健康保険又は各種共済組合(以下「被用者保険」という。)の被保険者、組合員又は被扶養者(以下「被保険者等」という。)であるか、国民健康保険の被保険者であるかのいずれかである。ただし、経過的に、国民健康保険を実施しない市町村がある場合には、当該市町村に住所を有する者のうちには、被用者保険の被保険者等でもなく、かつ、国民健康保険の被保険者でもない者がありうる。

したがつて、特別被爆者が被爆者一般疾病医療機関から医療を受けるに際して、被用者保険の被保険者証、組合員証若しくは被保険者手帳(以下「保険証」という。)又は国民健康保険の被保険者証を提示できない場合としては、

(1) 当該被爆者の住所地の市町村等が未だ国民健康保険を実施していない場合、

(2) 当該被爆者が国民健康保険法第六条第六号又は第八号に該当する場合、

(3) 国民健康保険の被保険者であるにかかわらず、届出を行なわない等の理由により未だ被保険者証の交付を受けていない場合のいずれかが考えられる。

このうち(1)(2)の場合には、他に結核予防法等による医療費の公費負担がない限り、健康保険の例により算定した医療費の全額につき、一般疾病医療費を支給することとなるが、(3)の場合には、国民健康保険の一部負担金に相当する額の一般疾病医療費を支給することとなり、残額は被爆者本人の自己負担となる。後者の場合に、被爆者一般疾病医療機関としては、自己負担分については、特別被爆者から徴収する必要があるので、特別被爆者が保険証又は被保険者証を提示できない理由が、(1)(2)であるか、(3)であるかを確認しなければならない。

このため(1)(2)に該当する者が、一般疾病医療費の支給の対象となる医療を被爆者一般疾病医療機関から受けるときは、(1)(2)に該当する者であることを証する書類(具体的にいえば、(1)の場合はその者の住所地の市町村が国民健康保険を実施していない旨の市町村長の証明書。(2)の場合には(イ)国民健康保険法第六条第六号に該当する者にあつては、生活保護を受けている者である旨の福祉事務所長の証明書、(ロ)同法第六条第八号に該当する者にあつてはたとえば貧困のため市町村税を免除される者はその旨の市町村長の証明書等。)を、当該医療機関に提示することとし、被爆者一般疾病医療機関は、これによつて(1)(2)に該当する者であることを確認し、これを提示できない者は(3)に該当する者として取り扱うこと。

2 日雇労働者健康保険の被保険者たる特別被爆者にあつては、その者が被保険者手帳の交付を受けていても、日雇労働者健康保険法第一○条第三項の受給要件を満たさないため、同法第四項の規定による日雇労働者健康保険受給資格票の確認を受けることができず、したがつて日雇労働者健康保険の療養の給付を受けられない場合があるが、この場合は法第一四条の二第一項ただし書には該当しないので、他に結核予防法等の医療費の公費負担がない限り、健康保険の例により算定した医療費の全額につき、一般疾病医療費を支給することとなるものであること。

3 前記1の(3)に該当する者について国民健康保険の一部負担金相当額についてのみ一般疾病医療費を支給する理由は、次のとおりであること。

国民健康保険の被保険者である者が、保険料を納入したくない等の理由により届出を行なわないため被保険者証の交付を受けていないとき、又は届出を行なつたが、未だ被保険者証の交付を受けていないときは、いずれも原子爆弾被爆者の医療等に関する法律第一四条の二第一項ただし書の「その者が、当該負傷又は疾病につき、……国民健康保険法………の規定により医療に関する給付を受けることができたとき」に該当するので、この場合の一般疾病医療費の支給額は、当該被爆者の属する国民健康保険の保険者の行なう療養の給付に伴う一部負担金の額を限度とするものであり、残額については、国民健康保険の療養費払いの対象となるか否かは別として、一応被爆者本人の自己負担となるものである。

4 被爆者一般疾病医療機関が、一般疾病医療費請求明細書を記載するに当つては、次の事項に留意すること。

(1) 前記1の(1)(2)に該当する者については、保険等併用を無としたうえ、(1)又は(2)に該当する事由を適当な箇所に記入すること。なお、この場合の請求額は、当該被爆者の当該医療につき他に公費負担がない限り、健康保険の例により算定した額の全額となること。

(2) 前記1の(3)に該当する者については、保険等併用を有、国保とし、被保険者証の交付を受けていないことを示すため、その右側に「未交付」と記入すること。なお、この場合の請求額は、当該被爆者が当該国民健康保険の療養の給付を受けたものとして負担すべきこととなる一部負担金の額となること。(例えば五割給付の市町村の場合は、請求額は五割となること。)したがつて医療費の残額は、被爆者本人から直接徴収すること。

(3) 前記2に掲げる場合にあつては、保険等併用を無とし、日雇労働者健康保険の被保険者である日雇労働者健康保険の療養の給付を受けられない者であることを示すため、その右側に「日雇受給要件無」と記入すること。

(4) 国民健康保険の被保険者である特別被爆者の属する保険者が、国民健康保険法施行法第一四条第一項の規定により、国民健康保険法施行令附則第五項に規定する範囲の療養の給付を行なつていない場合には、当該被爆者の属する保険者が給付制限を行なつている旨及びその範囲(往診、補綴、給食及び寝具設備のうち該当するもの)を記入すること。