添付一覧
○当面のインフルエンザ予防接種の取扱いについて
(昭和六二年八月六日)
(健医発第九二四号)
(各都道府県知事あて保健医療局長通知)
インフルエンザ予防接種については、昭和五一年九月一四日付衛発第七二六号公衆衛生局長通知に基づき、集団生活をする児童、生徒等を対象とし、予防接種法第六条の一般臨時の予防接種として実施しているところであるが、近年、その見直しを求める意見もあることから、厚生省としては、昭和六一年度に実施した「インフルエンザ流行防止に関する研究」の報告を踏まえ、公衆衛生審議会伝染病予防部会に検討をお願いしたところである。
今般、インフルエンザ予防接種の当面のあり方について、同部会より意見をいただいたので、これを踏まえ当面のインフルエンザ予防接種については、従来どおり予防接種法の規定に基づく予防接種として実施することとしたのでご承知ありたい。
また、その実施に当たつては、次の点に配慮するようお願いする。
記
インフルエンザ予防接種の実施に当たつては、説明書を配布することにより、その意義及び効果について、被接種者や保護者の十分な理解を得るよう努められたい。なお、説明書の例については、別途当局感染症対策室長より通知することとしているので申し添える。
二 問診を従来以上に十分に行われたい。
予防接種の問診票については、昭和四五年一一月三○日衛発第八五○号公衆衛生局長、児童家庭局長通知で示したところであるが、インフルエンザについては、今般、別紙のとおり、インフルエンザ予防接種の問診票の例を設定したので、今後は、これによることとされたい。
なお、問診票の項目の一から一二までについては、地域の事情等により変更してもさしつかえないことを申し添える。
また、この問診票は、あらかじめ説明書と同時に配布しておき、各項目について記載の上、接種の際に必ず持参されるようにされたい。
三 被接種者の健康状態に着目した被接種者及びその保護者の意向を記入する欄を問診票に設けること等により、その意向にも十分配慮されたい。
インフルエンザ予防接種の当面のあり方について(意見)
昭和62年8月6日
公衆衛生審議会伝染病予防部会
インフルエンザは、かぜ症候群の中でも全身症状と爆発的な流行を特徴とし、毎年数十万人、多い年は数百万人が感染する急性伝染病であり、現在のところワクチンの接種以外に有効な予防手段が存在しない。このため、昭和20年代から行政指導により、昭和51年からは予防接種法第6条に基づいて予防接種を実施してきているが、近年、そのあり方について見直しを求める声が出されている。
当部会は、こうした動きの中で、今後のインフルエンザ予防接種のあり方について審議を行い、当面の方策について意見をとりまとめた。
1 予防接種の考え方の変遷
インフルエンザ予防接種は、昭和32年のいわゆるアジアかぜの大流行を契機とし、社会的要請に応じて実施してきており、社会全体のために集団の免疫力を一定水準に維持していこうという、社会防衛の考え方に立脚して実施されてきている。
しかし、この社会防衛の考え方は、近年の健康に対する国民の意識の変化に対応して、国民が予防接種の意義を理解して自らすすんで接種を受け、こうした個人防衛の積み重ねにより社会防衛を図つていこうという考え方に変わつてきている。
昭和51年の予防接種法の改正により、定期及び一般臨時の予防接種について、罰則が外されたことも、これと符合するところである。
2 当面のインフルエンザ予防接種の実施について
現在の不活化インフルエンザワクチンを用いた予防接種では、社会全体の流行を抑止することを判断できるほどの研究データは十分に存在しないが、個人の発病防止効果や重症化防止効果は認められている。
また、インフルエンザについては、現在、ワクチンの接種以外に有効な予防手段は存在しない。
こうした現状を踏まえ、インフルエンザ予防接種は、当面、その法律上の取扱いを変更することなく行うこととするが、国民が自発的意思に基づいて予防接種をうけることが望ましいことから、被接種者の健康状態を最もよく知つている保護者の意向が反映できるよう次の点に留意して行うことが必要である。
(1) 予防接種の意義や効果について被接種者及び保護者に対して、十分な理解を得るよう努力し、
(2) 特に問診を従来以上に注意深く行い、
(3) 被接種者の健康状態に着目した被接種者及びその保護者の意向を記入する 欄を問診票に設けること等により、その意向にも十分配慮すること。
3 今後の検討課題
インフルエンザ予防接種については、国民がその意義及び効果について十分に理解し、自らすすんで接種を受けることが望まれる。
このためにも、より効果が高く、安全なワクチンの開発、改良と生産期間短縮のための技術の開発が必要である。
また、高齢者や高危険群の人への接種等接種対象者の範囲の問題や接種方法の見直しについて、さらに慎重に検討を進めることが必要である。
別紙